食事と栄養の最新トピックス⑱
どこまでが有効で、どこからは無効か?<その5>
せんいのとり方
月刊ボディビルディング1982年4月号
掲載日:2020.09.24
健康体力研究所 野沢秀雄
1.野菜不足が致命的
健康体力研究所では「体重をふやしたい人」「胸囲をふやしたい人」「体力をつけたい人」「うまく脂肪を除きたい人」など,全国の人びとを対象とした通信指導をおこなっている。
毎日寄せられる食事表をもとに,カロリー計算・たんぱく質・炭水化物のg数や%を算出している。これを基に採点表を作成しているが,なかなか満点になる人は出てこない。それどころか40点~60点の低い点数の人が意外に多く,まことに残念である。
たとえば19才で身長180cm ・体重64kgの山本清志さんの例をみると,朝食はトースト1枚・紅茶1杯・ゆで卵,昼食はピラフ1皿・コーヒー1杯,夕食はごはん2杯・焼魚・みそ汁1杯,りんご半個,間食としてココアまたは紅茶,菓子パンまたはラーメン,もしくはポテトチップスといった内容である。計算すると総カロリー1700,たんぱく質50g,脂肪30g,炭水化物30gとなり,たんぱく質は体重1kg当り0.7g,炭水化物が全体の80%,野菜・果物は260gという低い水準になってしまう。当人は普通くらい食べているつもりで,がっちり体力をつけたい希望なのだが,この食事内容では目標達成がむずかしい。
「自分はそんなことはない」と思いこんでいるが,意外に食事面で不備な人が多い。とりわけ,野菜の摂取について無関心すぎるようだ。
一流選手の食事法を拝見しても,野菜や果物の摂取量が標準に満たない人が圧倒的に多い。そのために点数が低くなり,90点を超す人はまれである。
毎日寄せられる食事表をもとに,カロリー計算・たんぱく質・炭水化物のg数や%を算出している。これを基に採点表を作成しているが,なかなか満点になる人は出てこない。それどころか40点~60点の低い点数の人が意外に多く,まことに残念である。
たとえば19才で身長180cm ・体重64kgの山本清志さんの例をみると,朝食はトースト1枚・紅茶1杯・ゆで卵,昼食はピラフ1皿・コーヒー1杯,夕食はごはん2杯・焼魚・みそ汁1杯,りんご半個,間食としてココアまたは紅茶,菓子パンまたはラーメン,もしくはポテトチップスといった内容である。計算すると総カロリー1700,たんぱく質50g,脂肪30g,炭水化物30gとなり,たんぱく質は体重1kg当り0.7g,炭水化物が全体の80%,野菜・果物は260gという低い水準になってしまう。当人は普通くらい食べているつもりで,がっちり体力をつけたい希望なのだが,この食事内容では目標達成がむずかしい。
「自分はそんなことはない」と思いこんでいるが,意外に食事面で不備な人が多い。とりわけ,野菜の摂取について無関心すぎるようだ。
一流選手の食事法を拝見しても,野菜や果物の摂取量が標準に満たない人が圧倒的に多い。そのために点数が低くなり,90点を超す人はまれである。
2.せんいの効用
現代人の食生活は便利になりすぎ,ムダを排除しすぎてきた。たとえば米粒ひとつとっても,精製をくりかえし白米しか食べない人が大部分である。麦も外側のフスマを除去して,胚芽をとり去って,白い部分しか利用していない。本当に栄養がコンパクトに詰っているのは除去した部分であるにもかかわらず……。
魚の皮や骨,大根の葉など同様の例はいくつも見られる。
栄養学の研究も,五大栄養素については詳しく研究されてきたが,一見,無用と思われる「せんい」については勉強する人はほとんど居なかった。
ここ2~3年,世界的にせんいの効用が見直され,成人病の予防に良いことが判明してきた。
<せんいの6大効用>
①せんいはよく噛まねばならないので歯が丈夫になり,唾液の分泌を促し消化力を増強する。
②よく噛むことによって満腹感が早く来て,摂取量を少なくし,肥満を予防する。
③腸内に分泌された過剰のコレステロールを吸着して排泄し,再吸収を防ぐ。その結果,血中コレステロールの低下に役立つ。
④腸内での細菌叢を好転して,微量栄養素のビタミンBI・B2・B6・B12・Kなどを作らせ,栄養状態を良くする。
⑤せんいは水分を含み,便を柔らげ,腸間を刺激して便通を促し,便秘を解消する。
⑥せんいに含まれる多糖質成分は,網状内皮系に作用し,組織の炎症を治し,組織を強化する。
一以上はフード・サイエンス・コンサルタントの今井良次博士が「アルフアルファ」という小冊子に発表しているものである。とくに,今井先生は便秘とガンについて,次のように補足説明している。
「便秘をすると,便に含まれるトリプトファンが腸内腐敗細菌によってアンモニアとインドールに分解される。また胆汁と共に滞った脂質は,腐敗細菌によって発ガン物質をつくると報告されている。インドールは発ガン増感物質として,発ガン性を助長する。
便秘は単に不健康であるばかりではなく,発ガンの大きな原因であることは切実な問題である。便秘をしないように,せんいの多い食品を多く食べることが大切です」
魚の皮や骨,大根の葉など同様の例はいくつも見られる。
栄養学の研究も,五大栄養素については詳しく研究されてきたが,一見,無用と思われる「せんい」については勉強する人はほとんど居なかった。
ここ2~3年,世界的にせんいの効用が見直され,成人病の予防に良いことが判明してきた。
<せんいの6大効用>
①せんいはよく噛まねばならないので歯が丈夫になり,唾液の分泌を促し消化力を増強する。
②よく噛むことによって満腹感が早く来て,摂取量を少なくし,肥満を予防する。
③腸内に分泌された過剰のコレステロールを吸着して排泄し,再吸収を防ぐ。その結果,血中コレステロールの低下に役立つ。
④腸内での細菌叢を好転して,微量栄養素のビタミンBI・B2・B6・B12・Kなどを作らせ,栄養状態を良くする。
⑤せんいは水分を含み,便を柔らげ,腸間を刺激して便通を促し,便秘を解消する。
⑥せんいに含まれる多糖質成分は,網状内皮系に作用し,組織の炎症を治し,組織を強化する。
一以上はフード・サイエンス・コンサルタントの今井良次博士が「アルフアルファ」という小冊子に発表しているものである。とくに,今井先生は便秘とガンについて,次のように補足説明している。
「便秘をすると,便に含まれるトリプトファンが腸内腐敗細菌によってアンモニアとインドールに分解される。また胆汁と共に滞った脂質は,腐敗細菌によって発ガン物質をつくると報告されている。インドールは発ガン増感物質として,発ガン性を助長する。
便秘は単に不健康であるばかりではなく,発ガンの大きな原因であることは切実な問題である。便秘をしないように,せんいの多い食品を多く食べることが大切です」
3.せんいの上手な摂取法
ラーメンや菓子パン,ケーキなど加工食品がふえているので,どうしてもせんいの摂取量は少なくなりがちだ。「生野菜をサラダなどにして多く食べなさい」と,つい一昔前までは,生野菜がすすめられていたが,現在ではむしろ生野菜よりも,煮たり,ゆでて野菜を料理して食べる方法が流行になっている。
なぜなら,生野菜ではボリュウムが大きすぎて,すぐに満腹してしまうので,量としてはあまり食べられない。煮たり,バターでいためれば量として多く食べられるわけだ。この点,すき鹿きや寄せ鍋,チャンコ鍋などにすれば,多くの種類の野菜をたっぷり食べられるので理想的である。
「トマト・レタスが少し付いている」という程度ではとうてい野菜が不足する。外食中心の人は,ぜひ小さな鍋を買って,春菊やほうれん草など色の濃い野菜を多く食べていただきたい。
その他,私がみなさんにすすめている方法には次のような項目がある。
①みかん,ネーブル,グレープブルーツなど,必ず袋ごとよくかんで食べること。
②ピーナッツは茶色の渋皮ごとよくかんで食べよう。
③大根の葉はなるべく捨てずに,チャーハンにまぜて食べる。
④半切をみそ汁の具に多く使用する。
⑤柿やりんごはよく洗って,皮ごと全体を食べる。
⑥ごぼうやさつまいもをなるべく食べるようにする。
⑦ビールのおつまみには,枝豆を好んで食べるようにする。
⑧毎日必ずデザートに果物を食べる。
バナナや夏みかんなどは,1年中出まわっているので便利である。
なお,野菜ジュースを飲むビルダーがふえているが,細かくミキサーにかけているので,せんいは小さくなりすぎているケースが多い。なるべく加工品やミキサーにかけたジュースより野菜や果物を利用するほうがよい。
薬局にゆくと「ダイエット・ファイバー」が販売されている。コンニャク粉から得られたマンナンや木材のセルロースなどを配合したもので,腸内で膨潤してコレステロール除去などの役割をする。
アメリカでは「プラン」といって,ふすまを袋に入れて販売しており,パンを焼くときやスープに加えて飲む方法が流行している。
このように本来はムダとされ,見捨てられていた物質が脚光を浴びる時代になっている。高価な費用を投じて,せんいを買うのも変な時代であるが,加工されすぎた食品に対ずる警鐘であろう。
なぜなら,生野菜ではボリュウムが大きすぎて,すぐに満腹してしまうので,量としてはあまり食べられない。煮たり,バターでいためれば量として多く食べられるわけだ。この点,すき鹿きや寄せ鍋,チャンコ鍋などにすれば,多くの種類の野菜をたっぷり食べられるので理想的である。
「トマト・レタスが少し付いている」という程度ではとうてい野菜が不足する。外食中心の人は,ぜひ小さな鍋を買って,春菊やほうれん草など色の濃い野菜を多く食べていただきたい。
その他,私がみなさんにすすめている方法には次のような項目がある。
①みかん,ネーブル,グレープブルーツなど,必ず袋ごとよくかんで食べること。
②ピーナッツは茶色の渋皮ごとよくかんで食べよう。
③大根の葉はなるべく捨てずに,チャーハンにまぜて食べる。
④半切をみそ汁の具に多く使用する。
⑤柿やりんごはよく洗って,皮ごと全体を食べる。
⑥ごぼうやさつまいもをなるべく食べるようにする。
⑦ビールのおつまみには,枝豆を好んで食べるようにする。
⑧毎日必ずデザートに果物を食べる。
バナナや夏みかんなどは,1年中出まわっているので便利である。
なお,野菜ジュースを飲むビルダーがふえているが,細かくミキサーにかけているので,せんいは小さくなりすぎているケースが多い。なるべく加工品やミキサーにかけたジュースより野菜や果物を利用するほうがよい。
薬局にゆくと「ダイエット・ファイバー」が販売されている。コンニャク粉から得られたマンナンや木材のセルロースなどを配合したもので,腸内で膨潤してコレステロール除去などの役割をする。
アメリカでは「プラン」といって,ふすまを袋に入れて販売しており,パンを焼くときやスープに加えて飲む方法が流行している。
このように本来はムダとされ,見捨てられていた物質が脚光を浴びる時代になっている。高価な費用を投じて,せんいを買うのも変な時代であるが,加工されすぎた食品に対ずる警鐘であろう。
4.望ましい摂取量
健康体力研究所の食事分析では,野菜と果物を合計して500g以上食べる場合に,ランク4の最高点が与えられる。〔図1参照〕「500g というと多いなあ」と感じる人が多いかもしれないが実はりんご1個で約200g,グレープフルーツ1佃で約300gとれる。1日に1種類の果物をとり,残りを野菜でとればそれほど困難な量ではない。
できるなら種類をいろいろ増やして種類を多く食べるほうが望ましい。
また可能ならば,ごはんは麦ごはんにしたり,玄米を食べれば,せんいが多くなる。海藻やしいたけなど日本に昔から伝わっている自然食も,せんいの点からみれば好ましいといえる。
せんいの多い食品はアルカリ性食品である場合が多いので,この点からみても野菜や果物をたっぷり食べることがすすめられる。
以下はボディビルを目指しながら野球をおこなっている飯田-寿さん(17才・高校生)の食事法である。野菜や果物をしっかり食べていて好ましい例といえる。
<朝食>お茶づけ(サケ・卵・ノリ)プロティン牛乳1本,季節の果物1個
<昼食>弁当(ごはん,ハンバーグ,たらこ,魚1切れ,野菜煮物),牛乳1本
<夕食>ごはん3杯,みそ汁(さつもいも),焼肉,野菜いため(鳥たっぷり),果物2~3個
<間食>パン2個,ジュース1杯,プロティン,牛乳,コーヒー2~3杯
以上であるが,これに納豆や枝豆を加えれば種類がいっそう増えて,完壁に近い内容になる。プロテインやジャーオイルなどサプルメントフードの多くは,せんいの点から見るかぎり,ほとんど含有されないので,意識して野菜や果物をふやしておくとよい。クロレラやアルファルフア,スピルリナなどの製品はせんいの点では充分であるが,量として多く食べるわけではないので,やはり野菜や果物・もやし等をご愛用いただきたい。
外食している人を観察していると,スシに付いているツマ(大根)やしょうが,海草類を残す人が多い。またハンバーグに付いているキャベツやパセリを残している人が大部分である。せっかく与えられたチャンスを逃がさないようにしよう。
できるなら種類をいろいろ増やして種類を多く食べるほうが望ましい。
また可能ならば,ごはんは麦ごはんにしたり,玄米を食べれば,せんいが多くなる。海藻やしいたけなど日本に昔から伝わっている自然食も,せんいの点からみれば好ましいといえる。
せんいの多い食品はアルカリ性食品である場合が多いので,この点からみても野菜や果物をたっぷり食べることがすすめられる。
以下はボディビルを目指しながら野球をおこなっている飯田-寿さん(17才・高校生)の食事法である。野菜や果物をしっかり食べていて好ましい例といえる。
<朝食>お茶づけ(サケ・卵・ノリ)プロティン牛乳1本,季節の果物1個
<昼食>弁当(ごはん,ハンバーグ,たらこ,魚1切れ,野菜煮物),牛乳1本
<夕食>ごはん3杯,みそ汁(さつもいも),焼肉,野菜いため(鳥たっぷり),果物2~3個
<間食>パン2個,ジュース1杯,プロティン,牛乳,コーヒー2~3杯
以上であるが,これに納豆や枝豆を加えれば種類がいっそう増えて,完壁に近い内容になる。プロテインやジャーオイルなどサプルメントフードの多くは,せんいの点から見るかぎり,ほとんど含有されないので,意識して野菜や果物をふやしておくとよい。クロレラやアルファルフア,スピルリナなどの製品はせんいの点では充分であるが,量として多く食べるわけではないので,やはり野菜や果物・もやし等をご愛用いただきたい。
外食している人を観察していると,スシに付いているツマ(大根)やしょうが,海草類を残す人が多い。またハンバーグに付いているキャベツやパセリを残している人が大部分である。せっかく与えられたチャンスを逃がさないようにしよう。
〔図1〕せんいのとり方(野菜十果物)
月刊ボディビルディング1982年4月号
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