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なんでもQ&Aお答えします 1982年5月号

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月刊ボディビルディング1982年5月号
掲載日:2020.09.03

背中の中央部の発達を促すには

Qボディビル歴は3年10ヵ月。高校時代の友人たちと同好会をつくってトレーニングしています。メンバーは10人前後ですが,みんな一生懸命にやっています。

 ところで,私は今年あたりからボディ・コンテストに出てみようかと思っています。もちろん,初めから入賞できるとは考えてもいませんが,コンテストに出ても,そんなにみっともない体をしているとも思いません。未完成ながら,それなりにバランスのとれた発達をしていると思っています。

 しかし,友人たちの前々からの意見によれば,私の体は,背の中央部の凸凹が弱いために,バックの迫力がとぼしいとのことです。広背筋はけっこう大きいのですが,それだけに,かえって間がぬけた感じがするのではないかと思います。

 以上のようなわけで,半年ほど前から背の中央部のための特別なトレーニングを行なっています。そのメニューについては後述しますが,結果はどうもかんばしくありません。

 そこでお尋ねしますが,背の中央部の発達を促し,凸凹をよくするにはどのような運動を行なったらよいのでしょうか。2種類ほど運動を教えていただきたいと思います。

◇現在実施している背の中央部のためのメニュー
 ①ハイ・プルアップ    3セット
 ②バーベル・シュラッグ  3セット
 ③デッド・リフト     3セット
◇現在の体位
 身 長 174cm  上腕囲   37cm
 体 重  69kg  前腕囲 30.5cm
 胸 囲 114cm  大腿囲   57cm
 腹 囲  70cm  下腿囲   37cm
 腰 囲  93cm
  (岡山県 T・O 公務員 22歳)
A 友人のいわれるとおり,コンテスト・ビルダーを目指すからには,広背筋にばかり気をとられないで,背の中央部の諸筋の発達にも気を配ることが大切です。さもないと,広背筋が大きくなればなるほど,かえって背全体が平坦な感じになるので,バックの印象が迫力に欠けたものになります。

 そして,このことは単に上半身だけの問題にとどまらず,コンテストにおいては全身的な印象にまで影響をおよぼすことにもなります。したがって,コンテスト・ビルダーを目指す者にとって,背の中央部諸筋の発達を促すことは,全身的な完成度を高めるための重要な課題の1つであるといえます。少々前置きが長くなりましたが,本題に入ることにします。

 背の中央部の主な筋はなんといっても僧帽筋です。しかし,背の中央部には,僧帽飭の下に菱形筋,肩甲挙筋,といった筋もあります。したがって,背の中央部の隆起を高めるためには,それらの飭を総合的に鍛えていくことが必要です。

 背の中央部に位置する諸筋は,がいして,肩甲骨を内方向,または上方へ動かす働きを有するので,それらの飭の発達を促すには,そのような動作がともなう運動を行えばよいということになります。

 現在,あなたが採用しておられる運動も,上述のような動作がともなう運動であることにはちがいありません。しかし,運動としての効果が,どちらかといえば僧帽筋の上部に偏っているきらいがあります。そのようなわけで背の中央部の発達を集中的に促すといら意味では,いまひとつ決め手に欠くようです。

 それでは,背の中央部の発達に比較的効果があると思われる運動を2種目ほど紹介することにしましょう。

◎ベンド・フォワード・ラタラル・レイズ

<かまえ>両手にそれぞれダンベルを持ち,立った姿勢で上体を45度くらいに前傾させる。
<動作>肘をいくぶんまげた状態で,左右の腕を下から横へ拡げるようにして上へあげる。
<注意事項>この場合は,三角筋のためではなく,背の中央部のために運動を行うのであるから,ダンベルをあげるときに,肩と背をすくめるようにして,意識的に左右の肩甲骨を上方内側へ寄せるようにする。

◎ベント・オーバー・ラタラル・レイズ

<かまえ>両手にそれぞれダンベルを持ち,立った姿勢で上体を床面とほぼ平行になるまで前倒させる。
<動作>肘をいくぶんいくぶん曲げた状態で、左右の腕を下から横へあげる。
<注意事項>ダンベルを上へ上げるときに、左右の肩甲骨を意識的に内側へ寄せるようにする。なお、通常、ベント・オーバーという語と、ベント・フォワードという語は同意語として使われている。しかし、この項目では、運動時における上体の前傾度を区別するために使い分けることにした。つまり、上体を床面と平行になるまで前倒させた場合をベント・オーバー、45度くらいに前傾傾させる場合をベント・フォワードとした。
〔ベント・フォワード・ラタラル・レイズ〕

〔ベント・フォワード・ラタラル・レイズ〕

〔ベント・オーバー・ラタラル・レイズ〕

〔ベント・オーバー・ラタラル・レイズ〕

トレーニング時間の都合で,現在の採用種目を2分割,または3分割にしたいが

Q ポディビルを始めてから約8ヵ月になります。開始当初は1ヵ月ほどジムに通っていましたが,現在は自宅で1人でトレーニングしています。しかし,このところ仕事が忙しくなり,トレーニングの時間も思うようにとれなくなりました。そのようなわけで,これからは全種目を一度に行わずに,2~3日に分けて少しずつ運動を行なっていきたいと考えています。

 そこでお伺いします。現在採用している運動種目を2分割,または3分割して行うにはどのように分けたらよいでしょうか。現在採用している運動種目と体位は次のとおりです。なお,トレーニングは1日おき週3回です。

≪現在採用している運動種目≫
 ①シット・アップ
 ②スクワット
 ③カーフ・レイズ
 ④ベンチ・プレス
 ⑤インクライン・プレス
 ⑥ベンド・オーバー・ローイング
 ⑦バック・プレス
 ⑧カール
 ⑨デッド・リフト
 ⑩リスト・カール
 ⑪レスラー・ブリッジ
≪現在の体位≫
 身 長  163cm  上腕囲  33cm
 体 重  59kg  前腕囲  28cm
 頸 囲  37cm  大腿囲  51cm
 胸 囲  98cm  下腿囲  35cm
 腹 囲  72cm
  (三重県 高橋一夫 商業 23歳)
A 筋の発達は,1日1日のトレ-ニングの積み重ねによって得られます。そのような意味で,トレーニング・スケジュールというものは,体力的,かつ時間的に十分消化し得るものであることが望ましいといえます。

 不規則的トレーニング法といって,その日,その日の体調とか都合によって,トレーニング内容を加減して行う方法もあるにはあります。しかし,そのような方法は,体調をくずしやすいので,トレーニング経験が浅い初・中級者にはあまり向いた方法であるとはいえません。コンディションの調整が未熟な初・中級者の場合は,やはり規則的な方法によってトレーニングをするのが無難でしょう。

 では,あなたの要望にお答えして,現在の採用種日を2分割,および3分割したトレーニング・スケジュール例を記述することにします。

≪2分割によるスケジュール例≫
◇Aコース――月曜・木曜
①ベンチ・プレス
②インクライン・プレス
③ベンド・オーバー・ローイング
④バック・プレス
⑤カール
⑥リスト・カール
◇Bコース――火曜・金曜
①シット・アップ
②スクワット
③カーフ・レイズ
④デッド・リフト
⑤レスラー・ブリッジ
≪3分割によるスケジュール例≫
◇Aコース――月曜・木曜
①シット・アップ
②ペンチ・プレス
③インクライン・プレス
④バック・プレス
◇Bコース――火曜・金曜
①ベンド・オーバー・ローイング
②カール
③リスト・カール
④レスラー・ブリッジ
 ◇Cコース――水曜・土曜
 ①シット・アップ
 ②スクワット
 ③カーフ・レイズ
④デッド・リフト

フレンチ・カールとベンド・フォワード・カールの運動法

Q ボディビル歴は約1年,仲間2人と一緒にトレーニングしています。自分でトレーニングを始める前からボディビルには興味をもっていたので,7年ほど前から貴誌を愛読していました。そして,先日たまたま古い号に目を通していたところ,聞いたことのない運動名が出てきました。

 それはフレンチ・カールとベンド・フォワード・カールという名の運動です。仲間に聞いても,どのような運動なのか分かりません。今の段階では,そのようなことを知らなくても別に差しつかえはないと思いますが,どうも気になります。この2つの運動のやり方と効果についてご説明ください。
  (滋賀県 小山忠雄 学生 20歳
A ボディビルの運動名は,同じ運動でもいくつかの呼び名があったり,もっと効率的な新しい運動器具が開発されたため,以前に行われていた運動が徐々に行われなくなるということもあります。ご質問の2つの運動についても,そのようなことがいえると思います。

◎フレンチ・カール 

 フレンチ・カールという名称は,今ではほとんど使う人がいなくなりましたが,フレンチ・プレスの別称です。フレンチ・プレスという名の運動であれば,すでにご存知かも知れませんが一応,念のために,そのやり方と効果について説明しておくことにします。

<かまえ>両手の間隔を肩幅よりも狭くして,バーベルをオーバー・グリップで持ち,両腕を頭上へ差し伸ばす。

<動作>両腕をできるだけ垂直の状態に保ったまま,前腕だけを後方へ屈するようにして,バーベルを首の後ろの方へおろす。おろしたなら,両肘を前方へ動かさないように留意して,バーベルを上方へあげ戻す。

<効果>上腕三頭筋。
〔フレンチ・カール〕

〔フレンチ・カール〕

◎ベンド・フォワード・カール

 この運動は,上腕二頭筋の運動として,以前はかなりみんなに愛好された運動です。しかし,プリーチャーズ・ベンチが普及されるにつれて,あまりやらなくなったといえます。

<かまえ>両手の間隔を2こぶし以内にして,バーベルをアンダー・グリップで持ち,上体を少し前傾し,左右の上腕の間をせばめて,両肘を腹部に当てがう。

<動作>両肘を腹部に当てがった状態でカールを行う。

<効果>上腕二頭筋(盛りあがりをよくする)
〔ベンド・フォワード・カール〕

〔ベンド・フォワード・カール〕

トレーニングを5年間もやったのに,ほとんど効果がないが

Q 私はもうすぐ33歳になろうとする者です。自宅でボディビルを始めてすでに5年になりますが,トレーニングの効果がどうも思わしくありません。

 私はボディビルを始める前からいろいろな運動をしていたので,筋力は強い方だったし,また,からだつきも筋肉質であったと思います。ちなみに,ボディビルを始めて間もない頃に,ベンチ・プレスを50kgで10回×10セット行なっていました。

 ところで,ここ2年ばかりトレーニングの成果が一向にあがらず悩んでいます。からだのサイズも,また筋力もほとんど変わりません。なんとか現在の状態を脱したいと思うのですが,成果があがらないのは,トレーニングのやり方に問題があるからでしょうか。アドバイスをお願いします。

≪体位の経過≫ 開始時    現在
 身 長     173cm    173cm
 体 重     61kg    66kg
 胸 囲     96cm    105cm
 腹 囲     76cm    81cm
 首 囲      -    37cm
 上腕囲     32cm   36.5cm
 前腕囲     28cm    30cm
 手首囲      -   17.5cm
 大腿囲     47cm    52cm
 下腿囲     36cm    36cm
≪パワーの記録≫
 ベンチ・プレス       95kg
 スクワット         125kg
 デッド・リフト       150kg
 スタンディング・プレス   60kg
≪トレーニング・スケジュール≫
  分割法を採用して2年近くになるが,使用重量はあまり変化なし。

◇Aコース
①ベンチ・プレス      60~75kg 10~6回×5セット
②インクライン・プレス  50~55kg   6回×2セット
③スタンディング・プレス  35~40kg   6回×2セット
④バック・プレス        35kg   6回×1セット
⑤ダンベル・プレス    10~17.5kg   6回×2セット
⑥アップ・ライト・ローイング 32.5kg   6回×2セット
⑦ネック・カール      22.5kg   10回×3セット
⑧カーフ・レイズ       85kg   12回×6セット
◇Bコース
①スクワット         65~85kg 10~6回×4セット
②レッグ・プレス         85kg   10回×2セット
③レバレッジバー・ロ-イング   50kg   8回×3セット
④デッド・リフト         70kg   6回×3セット
⑤カール        27.5kg~32.5kg  6~8回×3セット
⑦リスト・カール         30kg   10回×3セット
⑧シット・アップ              50回×2セット
    (和歌山県 中村保夫 33歳)
A トレーニング上の問題点を明らかにするために,まず,現在までのトレーニングの効果について,部位的に検討してみることにしましょう。ただし,キャリア5年ということを前提にして意見を述べさせていただきます。

<胸>――やや不良
  5年間で胸囲が9(3しか増えなかったのは,少々もの足りない感じがする。

<肩>――やや不良
  肩の種目における使用重量と反復回数から判断すると,僧帽筋はともかくとして三角筋の発達が不充分のようである。

<背>――やや不良
  デッド・リフトの力量から考えると,仙棘筋の発達は良好のように思われる。しかし,胸囲から判断すると,広背筋の大きさが足りないように思われる。

<上腕>――良好
  上腕囲36.5cmというのは,現在の段階では立派。

<前腕>――良好
  上腕と同様,前腕囲30cmというのは立派である。

<大腿>――やや不良
  大腿囲はあと3cm位増え, 55cmくらいになってもよいと思われる。

<下腿>――不良
  下腿囲が5年前のトレーニング開始当初と変らないというのはどういうことか。

 以上,推察される範囲で,各部位の発達状態についての意見を述べさせていただいたが,次に,各部位における問題点とその対策について,具体的に考えてみることにしましょう。

◎胸について――
 ベンチ・プレスにおける筋力から判断して,大胸筋そのものの筋量が少ないように思われる。したがって今後,胸のトレーニングについては筋力の向上と筋の肥大はほぼ比例ナるという観点にたって,ベンチ・プレスの筋力向上を第一義的に考えて行うようにするのがよい。

 現在でも,おそらくそのような考えでトレーニングを行なっているものと思われるが,なお一層,徹底させることである。

◎肩について――
 先にも述べたように,僧帽筋の発達はまあまあと思われる。しかし,三角筋の発達が弱いようである。したがって,胸の場合と同様,肩の運動における筋力を向上させることに重点を置いてトレーニングを行うようにするのがよい。

  その意味では,当分の間,肩の採用種目を今よりも少なくするほうがかえってよい結果が得られるということもいえる。

◎背について――
 上半身のVシェイプを形成する広背筋と大円筋の発達が弱いように思われる。したがって,今後は,ただ漠然と運動を行うのではなく,広背筋を多角的に鍛えることを意図してトレーニングを行うようにするのがよいといえる。

 現在は広背筋のための運動を1種目しか行なっていないが,多角的に鍛えるという意味では,最少限度2種目は採用する必要があると思う。


◎上腕について――
 先にも述べたように,サイズの面では十分といえる。しかし,発達の度合が上腕二頭筋の方に偏っているようにも感じられる。したがって,上腕をさらに大きくするためには,今後,上腕三頭筋の運動も行うようにするのがよい。

◎前腕について――
 現段階では別に問題とするところはないと思う。

◎大腿について――
 大腿囲52cmでは,いささか太さがもの足りない。今後は,大腿部を全体的にバルク・アップさせるために2種類のスクワットを行うようにするのがよい。
 なお,場合によっては,運動としての趣きを変えるために,多回数制を採用してトレーニングを行なってみるのもよい。大腿部のバルク・アップに多回数制が意外と効くことがある。

◎下腿について――
 現在の大腿囲(52cm)と比較して下腿囲36cmというのは,特別に細すぎるというわけではないが,これから先のことを考えれば,今のままでよいということはない。カーフ・レイズのやり方に問題があると考えられるので,運動のフォームを検討してみる必要があると思う。

 では終りに,一応念のためにトレーニング・スケジュール例を記述しておきますので参考にしてください。

≪トレーニング・スケジュール例≫

 分割法を採用。A,B各コースをそれぞれ週2回ずつ行う。

 ――Aコース(月曜・土曜)――
 ①シット・アップ(胸の上にウェイトを保持して) 10回前後×3セット
〔註〕平らな所で行うシット・アップ運動では,ウェイトを首の後ろに持って行うと,腰を痛める場合があるので注意する。

②ペンチ・プレス
  ウォーム・アップ  10~3回×3~4セット
              5~4回×3セット
 [註]ウォーム・アップは,ごく軽いウェイトから徐々に重くして行う。ただし,この場合の反復回数は,力をあまり出しきることのない回数にする。 40~50%程度の筋力発揮にとどめるのがよい。
 ③インクライン・プレス        8回×3セット
④スタンディング・プレス       8回×3セット
⑤バック・プレス            8回×3セット
⑥トライセプス・プレス・ライイング  8回×3セット
⑦ネック・カール           10回×3セット
⑧スティッフ・レッグド・ジャンプ 20回×2~3セット
〔註〕両膝をなるべく
――Bコース(火曜・金曜)――
①シット・アップ          50回×2セット
②スクワット(Wヒールズ,図参照)
   ウォーム・アップ     10~8回×2セット
                15~20回×2セット
〔註〕両足の間隔を15~25cmくらいにとり,両爪先を下図のように開いた状態でスクワットを行う。ただし,運動中は両膝が常に足の母指の示す方向で屈伸するように留意する。運動中,とくに立ちあがるときに両膝が内側に寄ると内股に与える効果が減少するので注意。
記事画像5
③スクワット(普通のスクワット) 10~12回×3セット
〔註〕場合によっては15~20回×2セットにする。上体をあまり前傾させないようにして,フル・スクワットを行うように心がける。
 ④レッグ・プレス          10~12回×2セット
⑤ベンド・オーバー・ローイング     8回x3セット
⑥レバレッジバー・ローイング      10回×2セット
⑦ワン・ハンド・ローイング       10回×2セット
⑧デッド・リフト            6回×3セット
⑨カール                8回×3セット
⑩リスト・カール            10回×3セット
⑪カーフ・レイズ            15回×3セット
〔註〕足先を板の上にのせ,動作の可動範囲が大きくなるようにして運動を行うのがよい。


〔回答は1959年度ミスター日本,NE協会指導部長・竹内 威先生
演技指導は平井トレーニング・センター会長・熊岡健夫先生〕
月刊ボディビルディング1982年5月号

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