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食事と栄養の最新トピック⑯
どこまで有効で、どこからは無効か?<その6>
―カルシウムのとり方―

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月刊ボディビルディング1982年5月号
掲載日:2020.09.02
 健康体力研究所 野沢秀雄

1.今なぜカルシウムか?

 ボディビルで成功する要素の1つは骨格の太さと大きさである。同じようにトレーニングしても,がっちりした体型になれる人と,なれない人の差は,骨格の差によるところが大きい。
 小さい時から運動をよく行ない,食事をしっかり食べた人は骨まで太く大きく発達しているので,ウェイトトレーニングで筋肉が発達するのが早く,しかも維持されやすい。
 このような人は,骨格自体の重さが相当にあるので,減食で脂肪を除いても,体重はそれほど低下しない。
 逆に,骨格が細い人は,筋肉をつけるのにも大きな苦労が伴なう。骨の長さは長く伸びていても,太さが伴なわないので,骨組みか弱々しく見える。ちょっと転んだり,ボールが当っただけで骨折してしまう。こんな人が最近は急増している。
 日教組の調査によると,現在の小学生の骨折率は,10年前の小学生に比べて約2倍に増加している。このように骨の弱い若者がふえつづけているわけだが,適切な運動と栄養でぜひ骨太のがっちりした体格と体力増強をはかっていただきたい。
 栄養の中でも,特にカルシウムが注目されているのは,このような背景による。厚生省が毎年実施している「国民栄養調査」によると,カルシウムだけはいつも必ず不足していることが指摘されている。基準を100とすると,国民平均充足率は90で,個人差を考えると,中には大幅に不足している人が多いと推定される。

2.まちがいだらけのカルシウム知識

 骨の形成とカルシウムが関係深いことは誰でも理解しているが,実際に応用するとなると,まちがった方法をとっている人が意外に多い。
 あなたはカルシウムに関して,次のような誤解をしていないかどうかチェックしてみよう。次の項目で正しいと思うものに○,まちがっていると思うものに×を記入してみよう。「むずかしいなあ」と思うような高度の内容のものも含まれているので,自分で分かるところだけで結構である。

 ◆カルシウムに関する常識テスト
①骨は99%までカルシウムで構成されている(答 )
②牛乳や小骨に含まれているカルシウムは,ほとんど100%吸収される。(答 )
③炭酸カルシウムは,水に溶けないので,体内に吸収されない(答 )
④カルシウムは骨や歯の成分であり,筋肉とはあまり関係がない(答 )
⑤牛や豚の骨のカルシウムは, 1500度もの高熱で処理されるので,もはやカルシウムとしての作用は期待できない(答 )
⑥骨はいったんできると,何年たってもそのままで変化しない(答 )
⑦成長期を過ぎた者は,いくらカルシウムを多くとっても,骨は太くなったり,長くなったりしない(答 )
⑧牛乳にも豆乳にも同じくらいのカルシウムが含まれている(答 )
⑨カルシウムだけでなく,リンやマグネシウムも骨の成分なので,これらの成分も多くとるとよい(答 )
⑩骨形成に関係深いビタミンDは,体内で作られないので,ビタミンDを含む食品や,ビタミン剤などを使うとよい(答 )

 以上のうち,〇印のついたものはいくつだろうか? ちょっと専門的すぎて分らない問題もあったと思うが,実はこの質問の正解はすべて×なのである。
 骨格をつくる大切なカルシウムについて,この記事をきっかけに正しく認識していただきたい。そして,適切なカルシウムの摂り方を実行して成功していただきたい。

3.骨はこうして作られる

 筋肉や内臓は新陳代謝を行なって,常に新しい細胞に入れ替っていることを理解している人は多いが,固い組織の骨が,約200日でその半分が入れ替っていることを知っている人は少ないのではないだろうか。骨も生きている」のである。死なない限り……。
 次表は,筋肉と骨の成分を比較したものである。
◆筋肉と骨の化学成分比較表

◆筋肉と骨の化学成分比較表

 以上のようであるが,骨にも種類があり,関節軟骨や骨端軟骨は,水分やたんぱく質の比率がもっと高くなる。
 骨に含まれる灰分は,約85%がリン酸カルシウムで,そのほか,炭酸カルシウム(10%),リン酸マグネシウム(1.5%)などから構成されている。
 このように,カルシウムは骨の主成分であるが,全体のうち約50%以下であることがわかる。
 近年,我が国の青少年の体位が急増しており,なかでも平均身長は,男子169.7cm,女子157.1cmと伸びている。そして,この身長の伸びとたんぱく質摂取量が比例すると発表されている。カルシウムと共に,たんぱく質が骨の新陳代謝に関係深いことがわかる。
 骨の形成にはビタミンC,ビタミンDも関与する。ビタミンCは,骨細胞を相互に緊密に連結する作用をおこなうことが知られている。
 ビタミンDについては〔図1〕の模式図がわかりやすい。
〔図-1〕ビタミンDの代謝とはたらき

〔図-1〕ビタミンDの代謝とはたらき

 ビタミンDは,それ自体,食品に含まれるが,皮下に持ちこまれたビタミンDの前駆物質であるデヒドロコレステロ―ルが,皮膚で日光の紫外線によってビタミンDに合成される。これが肝臓や腎臓で「活性型ビタミンD」になり,そこではじめて腸からのカルシウム吸収を促進する働きをもつようになる。
 と同時に血液中にカルシウムが不足したときには,骨にプ-ルされているカルシウムが血液中に補充されるようにはたらく役目も果している(「日本人の食生活とカルシウム」コア26号より)。だから骨を強くするのに日光浴が大切だといえる。
 成長期にあっては,副甲状腺ホルモンのほかに,脳下垂体前葉から分泌される成長ホルモンが重要であることは言うまでもない。成長期にある人の脚や腕の両先端には,骨の成長腺があり軟骨状になっている。骨細胞が分裂して数をふやして,両先端の先へ先へと伸びてゆく。ちょうど木の若芽が伸びるように……。
 16才~17才になると,性ホルモンの分泌が盛んになり,成長ホルモンを抑制する。それが拮抗的に作用して,やがて骨の伸びをストップしてしまう。

4.カルシウムの吸収率がポイント

 以上のように,骨の栄養として,カルシウム・たんぱく質・ビタミンC・D・日光が大切なことを述べた。このほかに微量栄養素であるビタミンB₂やB₆などが重要である。逆に,リンやマグネシウムは多すぎると,骨に蓄積されているカルシウムを奪ったり,カルシウムの吸収を妨げるので,適度にセーブする配慮が好ましい。
 ところで,カルシウムを食べているつもりでも,意外に体内へは吸収されずムダになっていることが多い。
 次表は兼松・田村氏らが学界に発表している吸収率で,一般に妥当と認められているものである。
 ◆カルシウムの吸収率

 ◆カルシウムの吸収率

 意外なことに牛乳や小魚のカルシウムは約50%しか体内に吸収されないことがわかる。また,炭酸カルシウム粉末(石灰)や貝殻・真珠等の炭酸カルシウムを主成分とする製品も約50%程度は吸収されるわけで,一部業者のいうように,「炭酸カルシウムは水に溶けにくいので利用されない」という説は医学的データから誤りであることがわかる。
 これに関連して,牛骨・豚骨を特別に処理して得たカルシウム粉末を,東京農大・栄養生理学教室の五島孜郎教授(医博)に依頼して吸収率テストを実施していただいた。結果は約81%吸収されることがわかり,「牛骨や豚骨は利用されない」という説があてはまらないことが確認された。
 国立栄養研究所の岩尾部長の説明では「カルシウムはたんぱく質と一緒に摂ると吸収がよくなる」といわれ,牛乳や小魚,それに骨髄粉末は,いずれもたんぱく質が共存するので吸収率が高いと考えられる。
 ただし,たんぱく質は多すぎてもかえって吸収を阻害するし,少なくてはカルシウムの吸収が悪いので,一般成人で1日に100g前後のたんぱく質をとることが望ましいとされている。
 ウェイトトレーニングで筋肉の大きさを増す段階の人なら,たんぱく質をこれよりやや多く,体重1g当り2gを目標に摂る方針が適切である。

5.理想的なカルシウム摂取法

 カルシウムが不足すると次のような障害が現われてくる。

①骨や歯の形成が不充分になり,骨折しやすくなったり,骨粗鬆症といって,骨の密度が弱くなり,歯も弱くなる。

②筋肉の収縮が弱くなり,運動神経の作用を低下させる。

③日大薬理学教授の田村豊幸博士は,「カルシウム不足の筋肉は,いわば家畜でいえばムレ肉になった状態であり,大腿四頭筋短縮症・側わん症などをおこす」と述べている。

④ケガをして出血したとき,血液が凝固しにくくなる。

⑤神経がイライラして,怒りっぽくなりやすい。

⑥カルシウム不足だと,体液が酸性になりやすく,バテやすくなる。

――このほか種々の悪い影響を与えやすい。カルシウム不足にならないように次の点に注意しよう。

①カルシウムの多い食品を別表に示すので,どれかを毎日必ず食べて,1日600mg以上にすること。

②スポーツ練習期,成長期にある人,骨折している人は特にカルシウムを多く要求する。カルシウムを強化してある製品や,カルシウム剤そのものを利用することを考えたい。

③せっかくカルシウムの多い食品を食べていても,片方でコーラ,コーヒー,ラーメン,ハム,ソーセージ,チーズなど,リンを多く含む食品をとると,カルシウムとリンが結合して体外へ排出されてしまう

④それだけでなく,リンが多すぎると食事中に含まれるカルシウムだけでなく,骨や歯をつくっているカルシウムを奪い,リンと結びつけて体外へ排出してしまう。リンのとりすぎに注意しよう。

⑤カルシウムイオン水と称して販売されているものは,カルシウムの濃度としてppm (1mgの1/1000)単位にすぎないので,それほど摂取量プラスには役立たない。

⑥牛乳1本200cc中にカルシウムが約200mg含まれるが,豆乳には30mgしか含まれない。だから赤ちゃんや子供に豆乳だけを飲ませていると,カルシウム不足になる。

⑦ビタミンDを多く含むまぐろ,いわし,さんま,さば,さけなど魚類やレバー,バターを食べることもよいが,植物性の酵母やしいたけなどを食べて日光浴すれば体内で活性型ビタミンDに変化する。したがって特にビタミンD剤は使わなくてよい。

――以上のように食事内容に注意を払って,日光浴とトレーニングに励めば骨の太さは年令にかかわらず太くなってくる。筆者らはトレーニングと手首の太さの関連について研究しているが,中級・上級と使用重量が増すにつれて,手首の太さや指の太さが太くなっている。まして成長期にある人なら筋肉や腱だけでなく,骨格も大きく太くなる。
◆カルシウムを多く含む食品ベスト10

◆カルシウムを多く含む食品ベスト10

月刊ボディビルディング1982年5月号

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