フィジーク・オンライン

なんでも Q&A お答えします 1983年3月号

この記事をシェアする

0
月刊ボディビルディング1983年3月号
掲載日:2020.10.09

ボディビル開始直後は効果がみられたが6ヵ月を過ぎた頃から進歩しないが

Q ボディビルを始めてから10ヵ月になります。初めの頃はからだの発達も少しは得られたのですが、この3、4ヵ月はほとんど変化が見られません。トレーニングのやり方に問題があるのでしょうか。
 ボディビルを始めてから現在までのトレーニング法と体位の経過は下記のとおりです。よろしくご指導ください。
記事画像1
≪体位の経過≫

身 長 開始時 172cm 2か月後 172cm
体 重 開始時 54kg 2か月後 55.5kg
胸 囲 開始時 87cm 2か月後 90cm
上腕囲 開始時 27cm 2か月後 28cm
前腕囲 開始時 26.5cm 2か月後 27.5cm
大腿囲 開始時 46.5cm 2か月後 47.5cm
腹 囲 開始時 72cm 2か月後 72.5cm

身 長 4か月後 172cm 10か月後(現在) 172cm
体 重 4か月後 58kg 10か月後(現在) 59kg
胸 囲 4か月後 93cm 10か月後(現在) 93.5cm
上腕囲 4か月後 29.5cm 10か月後(現在) 29cm
前腕囲 4か月後 28cm 10か月後(現在) 28cm
大腿囲 4か月後 49cm 10か月後(現在) 50cm
腹 囲 4か月後 74cm 10か月後(現在) 75cm
(広島県 安田富夫 会社員 24歳)
A ここ3~4ヵ月の間ほとんど効果が得られなかったのはオーバー・ワークとはいわないまでも、やはりトレーニングのやり方に問題があったと考えられます。
 その原因として考えられることはいくつかありますが、わけても、トレーニングの頻度を増したことに最大の原因があるものと考えられます。したがって、なによりもまず、トレーニングの頻度を適切なものに改めることが必要であると思われます。
 しかし、あなたの場合、トレーニングの効果をあげるためには、それだけでは不十分であるとも考えられます。
 あなたはこれまで、トレーニングの充実度を高めるのに、量的な拡充のみに重点を置いてこられたフシがあります。つまり、セット数を増やし、運動種目を増やし、さらにトレーニング頻度を増やすなど、トレーニングの量的な増加にだけ眼目を置いてやってこられた感がします。しかし、トレーニングの充実度を高めるためには、いまひとつ大切なことがあります。
 ボディビルは別名、漸増的過負荷運動ともいわれ、順当な効果を得るためには、筋力的な向上につれて、からだに与える負荷、つまり、運動における使用重量を適切な範囲で少しずつ増やしていく必要があるといえます。それをあなたはまったく無視しているといえます。すなわち、ボディビルを始めた時から10ヵ月後の現在まで、あなたはトレーニングの量を増やしただけで、運動における使用重量は少しも増やしておられません。これは、いったいどういうことでしょうか。
 もとより、これにはあなたなりの考えもあってのこととは思いますが、ボディビルを筋の肥大、および筋力の強化の手段として行う限りは、筋力が向上するにつれて使用重量も然るべく増やしていく必要があるといえます。
 では、トレーニング・スケジュール例を3例記述しておきますので参考にしてください。ただし、個々の運動における使用重量は、あなた自身の課題といたしますので、ご自分で適切な重量を選ぶようにしてください。
記事画像2

肥満解消と体力回復のためにボディビルを始めたいが、必要器具と練習法は?

Q 私は今年43歳になります。このところ、からだも太りぎみで腹も出てきています。また体力の方も近年衰えが目立ち、ことに脚、腰が弱くなっております。そのようなわけで、からだのために何か運動をしなければとは考えているのですが仕事の面での時間的な制約もあって、ついついなにもせずに過ごしている現状です。
 ところが、最近になって、さる友人から、ボディビルならば初めにひと通りの器具さえ揃えれば自宅で安直にできるということを聞きました。友人の言うことが本当であれば、仕事の合間にも手軽に運動ができると思いますので、早速、ボディビルを試してみる気になりました。
 そこで、ボディビルを始めるについてお伺いしたいことがあります。失礼とは存じますが、箇条書にて質問させていただます。

<1>私のような年令の者でもボディビルを行なって差しつかえないでしょうか。
く2>ボディビルを始めるとすれば、最初にどのような器具を揃えればよいでしょうか。費用はある程度かかってもかまいません。また、スペースも十分にあります。
<3>運動を開始するとき、最初はどのようなかたちから始めるのがよいでしょうか。

≪現在の体位≫

身長 160cm 上腕囲 31cm
体重 63kg 前腕囲 28cm
胸囲 91cm 大腿囲 89cm
腹囲 89cm
(名古屋市Y・S商店主43歳)
A 一般に30代の後半から体力の衰えが目立ちはじめ、また全身、とくに腹部のまわりに脂肪が蓄積して肥満ぎみになってくる人が多いようです。これらの原因はほとんど運動不足と食事の摂り方に原因があるといっていいでしょう。あなたの場合も、まさにそれで、さっそく運動を始めることをおすすめします。では質問順にお答えすることにします。

<1>40歳を過ぎてからのボディビルは是か非か

 ボディビルは、もともと実施者の年令と体力に合わせて行うものといえます。したがって、あなた自身の年令と体力を十分に考慮し、それに応じた無理のない内容で運動を行うのであれば、43歳のあなたが新たにボディビルを始めたからといって、なんら問題はありません。
 しかし、あなたの場合、やはり若い人たちとは違うので、一応、大事をとって、念のため健康診断を受けの運動を行うことの是非を医師に確めてからボディビルを始めるようにされるのがよいと思います。

<2>差し当り用意する器具

 ボディビルの器具にもいろいろありますが、差し当り初心者として必要なものは下記の通りです。
①バーベル・シャフト 1本
②ダンベル・シャフト 2本
③プレート12.5kgを4枚 2.5kgを4枚 5kgを2枚
[註]1.25kg、2.5kgのプレートは、ダンベルを使用するときのことを考慮してそれぞれ4枚ずつ購入されるのがよいでしょう
④フラット・ベンチ 1台
[註]なるべくラック付のもの。
⑤スクワット用スタンド 1台
⑥腹筋台(ベンチと兼用のものでもよい)

<3>開始当初のトレーニング・スケジュール

◆第1段階(隔日的,週3日)
①シット・アップ 10回×2セット
当初, 10回行うことができなければ,反復回数にかかわりなく2セットを行うようにする。腰に負担が掛るようであれば,両膝を立てた状態で運動を行うようにするとよい。
②スクワット 10回× 1セット
当初は両膝をあまり深く屈しないように行うのがよい。大腿部が水平になるくらいにとどめる。
③ベンチ・プレス 10回× 1セット
左右のグリップの間隔を肩幅よりも3コブシくらい広くしてバーベルを握る。
④ベント・オーバー・ローイング 10回×1セット
健康法としての意味合いでこの運動を行う場合には,シャフトを大胸の下辺部あたりに引きつけるようにするのがよい。

◆第2段階(隔日的,週3日)
第1段階の効果があがり,体力的な余裕が生じてくるにつれて,第1段階における各運動を漸次2セットずつ行うようにする。

◆第3段階(隔日的,週3日)
第2段階のトレーニングにおいて4種目の運動がそれぞれ2セットずつ,体力的にゆとりをもって行る上うになったら,漸次,下記⑤⑥⑦の3種目を加えるようにする。
⑤スタンディング・プレス1セットの反復回数を8回として初めのうちは1セット,運動に慣れきたら様子を見て2セット行うようにする。
⑥オールターニット・カール1セットの反復回数は10回、初めは1セットから出発し,運動に慣れてきたら2セット行うようにする。
⑦ストレート・アーム・プルオーバー(スティッフ・アーム・プルオーバ)
ごく軽い重量を用い,筋肉を鍛練するというよりは,上半身のスジを伸ばすという気持で運動全行うようにする。つまり,両腕を頭の先の方へ伸ばした状態で、上体のスジを十分に伸ばすようにして,これを数回反復する。
この運動は、他の運動と違って、一定のリズムで動作を行わなければならないという必要はない初めは1セット,慣れたら2セット行うようにする。
第3段階における最終的なトレーング内容は次に記すようなものになる。

《第3段階における最終的なトレーニング・スケジュール)
①シット・アップ 10回×2セット
②スクワット 10回×2セット
③ベンチ・プレス 10回×2セット
④ベント・オーバー・ローイング 10回×2セット
⑤スタンディング・プレス 8回× 2セット
⑥オールターニット・カール 10回×2セット
⑦ストレート・アーム・プルオーバー 数回×2セット

 以上、第1段階から第3段階までのトレーニングの進め方について述べてきましたが、いずれの場合も、体力を出し切ってしまうことなく、余力を持ってトレーニング終了させるようにすることが望ましいといえます。
 つまり、トレーニング後に、十分に運動を行なったという感じになるよりは、いくぶんもの足りなさを感じるくらいがちょうどよいかと思います。
 なお、使用重量についても、やはり十分に余裕をもたせることが必要であるといえます。いずれにしても、運動不足の解消、健康管理といった目的でトレーニングを行う場合は、決してあせることなく、気長にトレーニングを楽しむという心掛けが大切です。

ベント・アーム・プルオーバーの正しいやり方は?

Q ボディビル歴は1年4ヵ月です。自宅で専門書などを参考にして1人でトレーニングしています。ところで、私は以前、ベント・アーム・プルオーバーで肩を痛めた経験があります。おそらく運動のやり方に誤りがあったのだと思います。
 現在は肩の痛みもなく、患部もすっかりよくなったようなので、再びベント・アーム・プルオーバーを採用しようかと考えています。しかし、正直なところ、また肩を痛めるのではないかといった不安もありますので、実際に採用するに当り、どうしてもちゅうちょしてしまいます。ベント・アーム・プルオーバーの安全なやり方を教えていただきたいと思います。
(神戸市 上田章次 会社員 25歳)
A ベント・アーム・プルオーバーは、上半身の発達を促すのに非常に有効な運動であるといえます。そのような意味で、ビルダーとしては一度は取り組んでみたい種目であるといえます。
 しかし、この運動は、あなたのように肩を痛めてしまう人が多いせいか、あるいは、他の運動に比べて運動時に多少苦痛感がともなうせいか、有効な運動種目のわりには実行している人が意外と少ないようです。
 では、前置きはこのくらいにして、本題に入ることにします。
 ベント・アーム・プルオーバーを行う場合、最も注意しなければならないことは、運動中、とくにバーベルを頭の先へ深くおろしたときに、上腕部の内側を上に向けないようにすることです。上腕部の内側を上に向けるようにして運動を行うと、床面に近い中間動作において、広背筋と大胸筋とが作用しにくくなるので、肩の関節があたかも逆を取られたような感じになります。したがってそのような運動のやりでは、肩の関節に無理が生じ、それが原因で肩を痛めるということにもなります。そしてそのような危険性は、バーベルを床面の方へ深くおろすほどに強くなるといえます。〔写真参照〕
〔ベント・アーム・プルオーバー〕

〔ベント・アーム・プルオーバー〕

 それでは、実際にベント・アーム・プルオーバーを行う場合、肩を痛めないためにはどのようなことに留意すればよいか、その要点について記述することにしましょう。

◆ベント・アーム・プルオーバーの動作上の要点

①バーベルを頭越しに床の方へおろす動作では、意識的に両肘を内側へしぼり寄せるようにする。そうすることによって、バーベルを床面の方へおろす中間動作において、上腕部の内側が上に向かないようになる。
②肩の関節が硬いと、バーベルを床面の方へ深くおろすにつれて、両肘が開きかげんになるので、そのような場合は、バーベルを無理に深くおろさないようにする。
③上述したことがらに留意して運動を行なっても、なおかつ、左右の上腕部の内側が運動中に上向きかげんになってしまう場合は、そのときは、左右のグリップの間隔を狭くして運動を行うようにするのがよい。
④以上のことがらに留意し、初めのうちは余裕のある重量を用いて運動を行い、より安全なフォームが身についたなら、そこで、運動動作の範囲と使用重量を徐々に増していくようにする。

 なお、ベント・アーム・プルオーバーは、肩のみではなく、肘を痛めることも多いので、軽い重量で必ずウォーム・アップを行うようにするのがよい。

ワン・ハンド・プリーチャーズ・カールで上腕二頭筋の短頭に効かすには

Q ボディビル歴は2年2ヵ月、自宅で1人でトレーニングしています。さっそくお伺いしたいことがあります。
 私は現在、上腕二頭筋の運動としてワン・ハンド・プリーチャーズ・カールを行なっています。ところが、なぜか長頭の方にばかり強く効いてしまい短頭の方にはあまり効きません
 自分としては、短頭の方にもなんとか効かせたいと思って運動を行なっているのですが、どうもうまく効かすことができません。これは、やはり運動のやり方に問題があるのでしょうか。もし、運動のやり方に問題があるとすれば、今後はどのようにすればよいでしょうか。
(長崎県 渡辺達夫 農業 23歳)
A カールにはバーベルを用いて行うものと、ダンベルを使って行うもの、補助器具を使って行うもの等、いろいろなかたちの運動がありますが、多くの人の中にはそれらの運動を試みても長頭には効くが、短頭には効かないという人がけっこうおります。
 しかし、だからといって、そのような結果が生じるのは、必ずしも運動のやり方に原因があるとは限りません。
 上腕二頭筋のかたちから考えて、先天的に短頭には効きにくいタイプの人もいます。あなたが、はたしてそのようなタイプであるかどうかはわかりませんが、そのことは一応横に置いといて、ワン・ハンド・プリーチャーズ・カールについて考えてみましょう。
 ワン・ハンド・プリーチャーズ・カールにおいて、運動の負荷が上腕二頭筋の短頭の部分に十分にかからない理由としては、おおよそ次の2つのことが考えられます。

<1>運動中に、掌側前腕部が内側に向いていないか

 運動中に掌側前腕部が内側に向いているということは、つまり、前腕がきちんと回外された状態になっていないということになります。そのような状態では、カール運動を行なっても、上腕二頭筋の作用の仕方から考えて、どうしても長頭の方に負荷が強くかかるようになります。
 そのようなわけで、短頭の方にも十分な負荷がかかるようにするためには、前腕を十分に回外させ、掌側前腕部をきちんと上方(動作のスタートでは前方、フィニッシュでは手前)に向けた状態で運動を行うようにする必要があるといえます。
 なお、そのための実際的な方法としては、手のひらを平らにかまえ、常にダンベルを水平に保って運動を行うようにすることです。また、運動時の感触としては、ダンベルの重みをいくぶん掌の外側(小指側)の方で受けるようにして動作を行うのがよいようです。〔写真参照〕
記事画像4

<2>運動中にからだの向きが半身の状態になっていないか

 片腕をプリーチャー・ベンチの上に載せたときに、からだの向きが半身の状態になるからといって、そのことだけで問題が生じるということではありません。ただ、からだの向きが半身になると、その体勢上、前腕の向きが前項で注意したような内向きかげんになりやすくなるということです。
 からだを半身にしてかまえても、常側前腕部をきちんと上に向けた状態で運動を行えば、上腕二頭筋の短頭の部分にも十分に負荷がかかるようにはなります。しかし、運動に慣れないと、動作の上で多分に不自然さがともなうので、どちらかといえば、からだを正面に向けて、腕を肩の位置からまっすぐにプリーチャー・ベンチの上に差し入れた体勢で運動を行うほうがよいようです。
 なお、その場合、空いている方の腕もベンチの上に載せ、双方の腕を並行の状態にして運動を行うと、より一層、短頭に効かせ易くなるので試してみられるのもよいかと思います。
〔回答は1959年度ミスター日本、NE協会指導部長・竹内威先生 演技指導は平井ボディビル・センター会長・熊岡健夫先生〕
月刊ボディビルディング1983年3月号

Recommend