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食事と栄養の最新トピックス46
食生活赤信号<11>
菓子はだいじょうぶか?

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月刊ボディビルディング1984年12月号
掲載日:2021.04.26
ヘルスインストラクター 野沢秀雄

1.グリコ・森永事件の影響

雑誌や本の原稿を書いている時点と読者が読まれる時点に、少なくとも1ヵ月のブランクが生じる。版を作ったり、印刷や製本をするのに最低限の時間がかかるためである。

この原稿を書いている10月17日は、21面相が「青酸入りと書かずに菓子をスーパー等に置く」と予告していた日で、テープの声やビデオが公開されて日本全国がこの話題でもちきりになっている。果して本誌が発表になる11月下旬のころは解決して、もう話題にものぼらないかも知れない。

だがこの事件を契機にして、はっきり消費者の菓子や食品に対する認識が変ってきていることは事実である。

①市販の菓子はなるべく控えて、手づくりのクッキーなどを食べる動き。

②菓子はやめて、果物をおやつに与える動き。

③悪意を持つ人間が、簡単に毒物を入れられることを気付いたこと。菓子や食品に対する不安が増し、信用低下の動き。

――筆者自身、関西弁のニュアンスが良くわかり、また菓子・食品業界に籍を置いただけに、今回の事件には大きな関心を抱いている。

2.菓子なんてつまらない?

高校生のころ、自分の進路を「食品と栄養」に決めた理由は、ボディビルと関係が深い。20年以上も前のアメリカの雑誌に、プロティンの広告や記事が出ており、「筋肉をつくるのに不可欠の製品」と知っていたからだ。

農学部の農芸化学科が幅広い研究分野であることを知り、栄養や生化学の基礎を学び、午後は実験や実習、食品工場見学の機会も多かった。卒業も迫り、「どの企業ならスポーツ用の食品を作れるか?」を基準に、製薬メーカーを含めて候補をいくつか絞り、結局「明治製菓なら夢がかないそう」となり、スムーズに入社が決定した。

ところが最初に配属されたのが、最新鋭の菓子設備を有する大阪工場(高槻市)であった。当時、マーブルチョコレートといって、七色のカラフルな粒状チョコレートが爆発的に売れて、24時間操業でラインが動いていた。この工場現場に見習いで入ったわけである。

その後、チョコレートの製造係・検査係として満4年間、菓子工場に在籍したことになる。

「子供が食べる菓子なんて、大の男が従事する仕事じゃない。早く夢の食品をつくりたい」と、20歳台前半は悩み続けていた。

それでもこの4年の間に興味ぶかいことがいくつか起こった。

①会社創立50周年にあたり、「わが社の将来」のテーマで全社員にリポート提出が呼びかけられ、「明治製菓こそ食品と薬品の両部門を持っており、健康食品を手がけるとよい」と主張。これが入賞して、社長賞と月給以上の副賞をいただいた。

②マーブル係に八尋君という大型ビルダーがいて、同好会を設立。30名くらいの練習生が集まるようになった。ミスター大阪コンテストに田中君を加えて3名で出場したのはこの頃である。
ダンベルのカラーの締め方が悪くて、内林君の前歯が折れたことは今でも申し訳なく思っている。

③チョコレート工程改善の提案で、本社の社長賞を得た。(特賞A。今のQCサークルの初期であった)

④「菓子は子供が食べる物だが、よく考えると、子供は1日3食では足りない、胃腸が小さいなからだ。それなのによく動き、よく遊ぶ。腹が減ってたまらない。その時に食べる菓子こそ、子供の体を大きくし、筋骨を強める原料である。良い栄養食品を力いっぱい作ろう」と考え方が進歩した。

3.食品試作の体験

 不思議なもので、人間は「こうしたい」と強く願っていると夢は実現される。5年目に上司だったF氏が川崎工場の試作研究所という開発部門に呼んでくれ、キャラメル、チョコレート、キャンデーなど、基礎的な配合や製法をマスターできた。ナッツやレーズン、ミルクがたっぷりのチョコバーを懸命に研究したわけである。

 だが、すぐ隣りの部屋では食品や薬品の開発研究をおこなっている。「食品に移りたい」と願い出て、1年足らずのうちに食品試作課へ転籍。ここでコーヒー、缶詰、たんぱく食品、甘酒等の試作を満3年にわたり担当。この間に食品工場をいくつも訪問させてもらった。また「健康茶」など自ら提案し、健康食品の%を徐々に増やすように努力した。

 「あの当時から健康、健康と、目をつけるのが早かった」と当時の仲間から今でも語られている。S課長には大変お世話になったが、もう60歳の定年が近づいている。お元気だろうか?

 この食品開発課の時代に、「食品をつくるのに、いかに多くの添加物を利用するか」をまざまざと身をもって体験している。クリームパンやアンパンが添加物なしに作れないことを知ったのもこの時代である。

 そして忘れもしない昭和48年4月に「健康食品事業部」が明治製菓本社に大きな期待を共に誕生することになり食品技術者のナンバーワンとして、7名の創立スタッフの一人に加えられることになった。まさに夢の実現、やりたい仕事であった。8年にわたる主張が認められた。

 10月に石油ショックが起こり、需要が冷え、健康食品や自然食品も一時的に低迷。何を売れば成功するか、誰もが模索している時に、「今こそプロテインを作ろう。外国製のバカ高い製品しか出ていない。喜ばれるにちがいない」と考え、本社の社員でありながら1ヵ月間、川崎の食品研究所に通い、完成したのが「セシリア・プロティン85」であった。

お世話になった平松課長はじめ皆さんに厚くお礼申し上げたい。(川崎工場時代にも玉村君らとボディビル同好会を柔道部室にてスタート。現在も森リーダーのもと多くの若者が汗を流しているという)
 
 試験的に発売したプロティンを、まず最初に注文してくれたのが群馬の大塚さんや兵庫の長宗五十夫さん。プルトップの缶ふたが開いて迷惑をかけてしまったことは今も忘れられない。

4.今の菓子に問題はないか?

 菓子のテーマから離れて、明治製薬時代の回顧談になったが、当時やその後の経過はいくら書いてもページが尽きない。いつか、健康体力研究所の歴史とつないで、1冊の本に書きあげたい。「夢はいつか実現するもの」という楽観的な考え方と、「菓子や食品を企業が製品化するときは、加工のために添加物を相当に使用する」という実体験をしたことが、筆者の将来に大きな影響を与えたわけである。

 さて本題に戻って、現在、スーパーやデパート等に出廻っている菓子類について、問題点を拾いだそう。

①甘い砂糖やでんぷんが主原料のため炭水化物が多く、栄養的にみるとバランスが悪い。

②とくに、体を作るたんぱく質に欠けている。ビタミンやミネラルも不足している。

③消費者の甘味離れで、塩分の多いスナック菓子が増えているが、炭水化物と脂肪でカロリーはあるが、大切なたんぱく質やビタミンやミネラルは不足がちである。

④塩分が必要以上に多い。

⑤香料や着色料、酸化防止剤などの添加物が使われている。とくにドロップはひどい。人工的な色と香りをつけているだけにすぎない。

⑥前号でパンを紹介したが、原料がほとんど同様のビスケットやパイも同じように多種類の食品添加物が使われている。ビスケットの上に赤や茶色のクリーム(フォンダント)を塗った製品は子供に食べさせてはダメ(動物の形やアルファベッドになっているが……)。

⑦キャラメルやチョコレートにも着色料や着香料が使われている。とくに糖衣錠で、派手な色がついている製品にはタール系色素が使用される。

⑧せんべい、あられ類にも、しょうゆに見せかけて、色素のカラメルが使われるケースがある。

⑨ケーキやカステラにも、界面活性剤(乳化剤)、防腐剤(プロピレン)、着色料、着香料などが使われがちだ。

⑩アイスクリームも以前に述べたように、添加物が多用されがち。また、チューインガムも全体が食品添加物の固まりと見ていいほど。

――以上のように、子供の満腹感はみたしても、本当に体に役立つ栄養菓子は少ない。代りに危険な添加物を食べすぎることになる。

「おいしい菓子に舌がなれて、かんじんの1日3回の食事を拒否する」という子供が増えているという。良心的な菓子メーカーはないのだろうか?

5.ボディビルダーと菓子

本格的にトレーニングする人は間食に菓子をほとんど食べていない。毎月連載されている一流選手の食事法を見ても明らかである。

間食をとるなら、食事回数を1~2回増やすほうが、栄養素のバランスはずっと良い。あるいはプロティンドリンクやプロティンタブレットを採用する人が多いが、筋肉の発達を期待するなら、プロティンに優るものはない。

最近は3~4才の子供でありながら、両親がプロティンタブレットを与えるケースが増えている。「おいしい」と好物になっており、子供は背も高いし、体重も多い。

もし菓子業界に、安くて栄養素が豊富で、バランスの良い製品を発売するメーカーがあれば、健康第一と人々が考える今日なので、必ずヒットすると確信する。たとえば「プロティン入りチョコバー」「ナッツとミルクバター入りスナック」などである。

ボディビルダーだって、本当に体のためになる菓子があるなら、進んで購入する。残念ながら今はない。

自然食のブームで、神田精養軒などから、胚芽入り菓子や黒糖キャンデーなども発売されている。大手メーカーの添加物入り菓子に比べれば、ずっと安心だが、価格が5割も高いのが難点である。消費者が増せば大量生産でコスト安で作れようが、そうなると添加物使用なしに、保存させる工夫が大変になる。

アメリカのボディビル界にならってプロティンバーも輸入されているが、価格が高い。サバ缶1個と同じくらいの価格で、たんぱく質が多くとれるような工夫を望みたい。

体を大きく発達させるのに、間食は切実に必要である。菓子こそ、本来栄養補給のトップバッターである。今後はトレーニングする人だけでなく、登山、スキー、ヨットなど、スポーツマン向けの需要が増加する。ぜひ、味が良く、しかも栄養効果のある菓子を期待したいものだ。

俳優シュワルツェネガー“ザ・ターミネイター”に主演

今や完全に主演俳優になってしまったアーノルド・シュワルツェネガーが、また新作映画“ザ・ターミネイター”で、半分人間、半分ロボットという役で主役を演じている。

彼の仕事は人を殺すことで、ロスアンゼルスのある女性を殺すために、未来から現代に送られたという、サスペンス・サイエンス・フィクションの物語りである。

日本での封切は、たぶんクリスマス映画(12月始め)になるようだ。
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月刊ボディビルディング1984年12月号

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