フィジーク・オンライン
  • トップ
  • スペシャリスト
  • 第19回全日本学生ボディビル選手権大会 学生日本一の栄冠は江口(東京大学)に 久々、3年生チャンピオン誕生 12月2日(日)★法政大学学生会館

第19回全日本学生ボディビル選手権大会
学生日本一の栄冠は江口(東京大学)に
久々、3年生チャンピオン誕生
12月2日(日)★法政大学学生会館

この記事をシェアする

0
月刊ボディビルディング1985年1月号
掲載日:2021.05.10
東大の3年生・江口が、大会前の予想をくつがえして堂々の優勝を成し遂げた。

前年度2位で今季の東日本大会優勝者・岩間(神奈川大)、同3位で今季の関東大会優勝者・江口(東大)、同4位で進境著しい酒井(東大)。今年度締めくくりの全日本学生ボディビル選手権大会は、これら有力選手を中心とするハイレベルな優勝・順位争いの場となった。

東日本大会・西日本大会の上位20名ずつ、計40名の選手によって競われるこの大会だが、前年につづいて東日本勢が西日本勢を圧倒。そうした状況の中で、優勝の本命は今大会の2週間前に東日本を制したばかりの岩間と目されていた。しかし、その岩間は過度な減量がたたって全く精彩を欠き、東日本大会から今大会にかけて絶好調の酒井も、過去最高の仕上がりで臨んだ江口には今一歩及ばず。ついに、1年生当時から大物ぶりを発揮してきた江口の全日本制覇が実現した。

東京大学からの全日本チャンピオン誕生は、1976年の石井直方(81・83年度ミスター日本チャンピオン)以来8年ぶり2度目。4年生以外の全日本大会優勝は、1971年の宮下武徳(近大)以来、実に13年ぶりのことである。
▲左から2位・酒井、優勝・江口、3位・岩間

▲左から2位・酒井、優勝・江口、3位・岩間

記事画像2
▲優勝・江口武久(東京大)

▲優勝・江口武久(東京大)

▲2位・酒井 功(東京大)

▲2位・酒井 功(東京大)

▲3位・岩間 勧(神奈川大)

▲3位・岩間 勧(神奈川大)

▲4位・高橋 純(東北学院大)

▲4位・高橋 純(東北学院大)

▲5位・古沢昌彦(早稻田大)

▲5位・古沢昌彦(早稻田大)

▲6位・木下正英(筑波大)

▲6位・木下正英(筑波大)

▲7位・曽根原 隆(神奈川大)

▲7位・曽根原 隆(神奈川大)

▲8位・古澤 登(京都大)

▲8位・古澤 登(京都大)

▲9位・本田昌裕(法政大)

▲9位・本田昌裕(法政大)

▲10位・道田泰三(早稲田大)

▲10位・道田泰三(早稲田大)

▲モストマスキュラーをかけた激しいぶつかり合い。左から1位・江口、2位・酒井、4位高橋、3位・岩間

▲モストマスキュラーをかけた激しいぶつかり合い。左から1位・江口、2位・酒井、4位高橋、3位・岩間

取材メモ

東日本制覇で俄然優位に立った岩間が、最高の舞台である全日本大会を前に力尽きた。2週間前の東日本大会で彼自身としてほぼ完璧とも思える仕上がりを見せたのにもかかわらず、ここへきて体調が急降下。体全体がしぼんだような状態になり、絶賛された大腿前面の筋肉の張りは信じがたいほどに失われていた。徹底した減量によって今日の地位を築いた岩間とはいえ、大事な場面でそれまでの疲れが一気に噴出したかのようである。

対する江口は、東日本大会終了後いったん体重を増やして体力を温存、直前に再度しぼり込む作戦をとった。大腿のカットをはじめ、今度もまた最高の仕上がりを示し、日本一にふさわしい風格さえ感じられたほど。

しかし、そんな江口にも難点はある。獲得した部分賞はわずかに1か所。モストマスキュラーを加えても2つにしか過ぎない。岩間を抜いて2位に進出した同じ東大の酒井が3か所をおさえたのとは対照的で、部分的に筋肉そのものを吟味していけばむしろ酒井の方に軍配が上がっても不思議ではないという状況ですらあった。「ポージングの練習が不足していた」と反省する江口とは逆に、酒井はベストポーザー賞も獲得。“未完の大器”江口にとって、今回の優勝は決して楽なものではなかった。江口、そして岩間の両大型3年生が来季再び雌雄を決することになったとしても、前回優勝した松山(法政大)のような完成度の高いチャンピオンになるまでにはお互い多くの課題が残されている。

一方、上位3強に迫る選手として、並居る関東勢と伍して戦う高橋(東北学院大)の健闘が目をひいた。部分賞をとった背中の厚みをはじめ、豊かなバルクを武器に東北地区からただ一人の入賞。堂堂第4位にくい込んだ。また、西日本勢は前回につづいて不振で、15名の決勝進出者のうち西は3名、入賞は8位の古澤(京大、西日本1位)のみという寂しさ。優勝・青野(西南学院大)以下、10位以内入賞5名、決勝進出者8名を数えた前々回とはあまりにも違いすぎる。

もっとも、今回の場合は「西日本勢の不振」というよりは「東日本勢の充実」という言葉を当てた方が適切であるかもしれない。それほどに厳しい戦いであり、“天国と地獄”を2週間のうちに味わった岩間の調整失敗も、そのような緊迫した情勢が背景となっていたことは否めないだろう。「優勝できたことよりも試合が終わったことの方が今はもっとうれしい」と語った江口。その彼の言葉が多くの選手の気持ちを代弁していたような気がする。
(秀)
▲左端は西日本からただ一人入賞の古澤(京大)。3年生で西日本大会優勝を飾った古澤は、スケールの大きいバルキーな体で強者ぞろいの東日本勢に対抗した。左から古澤(8位)、高橋(4位)、古沢(5位)、本田(9位)、木下(6位)

▲左端は西日本からただ一人入賞の古澤(京大)。3年生で西日本大会優勝を飾った古澤は、スケールの大きいバルキーな体で強者ぞろいの東日本勢に対抗した。左から古澤(8位)、高橋(4位)、古沢(5位)、本田(9位)、木下(6位)

▲背面を競う上位3名。左から3位・岩間、1位・江口、2位・酒井

▲背面を競う上位3名。左から3位・岩間、1位・江口、2位・酒井

▲全日本大会に団体戦はないが、ここでも東大と神奈川大、両強豪の競り合いはつづく。左から曽根原(神奈川大4年)、岩間(神奈川大3年)、江口(東大3年)、酒井(東大4年)

▲全日本大会に団体戦はないが、ここでも東大と神奈川大、両強豪の競り合いはつづく。左から曽根原(神奈川大4年)、岩間(神奈川大3年)、江口(東大3年)、酒井(東大4年)

▲腹の部分賞審査。最後に残ったのは左から酒井(東大)、古沢(早大)、高橋(東北学院大)

▲腹の部分賞審査。最後に残ったのは左から酒井(東大)、古沢(早大)、高橋(東北学院大)

優勝者の横顔――江口武久(えぐち・たけひさ)

昭和37年12月12日生まれ。大会の10日後に最高の気分で22歳の誕生日を迎える。大阪府豊中市出身。東京大学法学部3年生。兵庫県灘高校1年のとき大阪の十三トレーニングセンターでボディビルを始め、東京大学入学後、迷わず同大のB&W(ボディビルディング&ウェイトリフティング部)に入部。江口選手が入学する前年の秋から東大の破竹の快進撃が始まっており、1年生当時から選手として活躍している彼は、団体戦で負け知らず。

1年の秋に関東学生新人王に輝いたばかりか、全日本大会で早くも8位入賞。以後、各大会で常に2位・3位の位置をキープし、“宿敵”岩間(神奈川大)の欠場はあったものの、今季の関東大会では念願の初優勝を遂げている。同学年のライバル岩間には前年の東日本から今季の東日本まで3連敗していたが、最高峰の今大会で見事に逆転。「とても勝てるとは思えなかった」相手を破ったことにより、3年生にして最高のタイトルを手中に収めた。次回に優勝を果たせば史上初の全日本2連覇となるが、「大会当日の朝、夢にまで見た」ほどの大目標を達成したばかりの今は、まだ先のことを思い描く気分にはなれないという。
▲中央が江口選手。部分賞表彰も終え、喜びと安堵の笑顔が

▲中央が江口選手。部分賞表彰も終え、喜びと安堵の笑顔が

月刊ボディビルディング1985年1月号

Recommend