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やさしい科学百科<17>
ビタミンCの効果<その4>

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月刊ボディビルディング1985年1月号
掲載日:2021.05.06
畠山晴行

◇ビタミンCとカゼ

ある薬が本当に効果があるかどうかを知るために、二重盲検法という検査が行われる。

「いわしの頭も信心」という言葉があるが、効くと信じて飲めば、小麦粉でも化学調味料でも、治癒を早めてしまうのは事実である。「病いは気から」というのもウソではない。

ビルダーは、トレーニング時に目的部位に意識を集中する。これが大きな効果を上げる一助になっていることから、意識するとか、信じ込むということは、生化学反応に大きな影響を与えてしまうのだ。

一方に薬を与えて、他方には与えないというような検査方法では、両者に心理的影響による差が出てしまう。これをなくすために二重盲検法という検査方法がとられる。

ある一群には試したい薬を与える。そして、対象群には、その薬そっくりに作られたニセ物を与えるのだ。このニセ薬をプラシーボという。

こうすることによって患者に対する心理的影響に差はなくなる。だが、その薬を与える医師が本物とニセ物の区別を知っていれば、以心伝心という言葉もあるように、なんらかの影響を披検者に与えてしまうということも考えられる。そこで、与える医師にも本物とニセ物の区別は内緒にして行うというのが、二重盲検法である。

薬を与える方も、与えられる方も二重に目かくしされているわけだ。そして、第三者のみが知っているというようにすれば、被検者にバレることはない。

二重盲検法の説明が長くなってしまったが「さらば風邪薬」の中に、ビタミンCのカゼに対する効果を二重盲検法によって調べた例がいくつか紹介されている。

1961年スイスのリッツェルは、スキー場の少年279名を対象にして次のような実験を行なっている。

第一群には1日1gのビタミンCを与え、第二群にはニセ物・プラシーボを与えた。その結果、カゼをひいた回数、カゼにかかっていた日数の合計に下図のようなちがいが出た。

こういったデータの解析はややこしいところがあるので、わかりやすいものを図に示したが、これでわかることは、ビタミンCを飲んでいたほうがよい、ということである。

ポーリングは、ビタミンCの必要量には大きな個人差があり、要求量の多い者には増量すれば、もっと効果がでてくるとみている。
記事画像1

◎ビタミンCがカゼに効く理由<1>

カゼがどんなものかをまず知る必要がある。カゼの原因となるウィルスは生物であって生物でないヘンテコリンなものだ。というのは、タンパク質のカプセルに遺伝子が入っているだけの簡単なシカケだからである。

生物はふつう、自分自身で生きていくことができる。他の生物に寄生している生物でも、奪いとった栄養素をうまく使って自分の仲間を増やすことができる。細菌にしてもそうだ。

しかし、ウィルスは、タンパク質のカプセルに遺伝子が入っただけのもので、栄養素を与えただけでは増殖することはできない。栄養素を利用するシカケをウィルスはもっていないからである。

他の生物にとりついたウィルスは、タンパク質のカプセルを切り離して、己の遺伝子を、とりついた細胞に抽入する。つまり、遺伝子だけが細胞内に入る。

ウィルスは、自分ではタンパク質製造器(リボゾーム)などを持っていないから、入り込んだ細胞にあるものを拝借して、自分と同じものを作っていく。つまり他人のフンドシで角力をとるようなことをして、仲間をふやす。

こうして、細胞内はタンパク質のカプセルに入った遺伝子(ウィルス)でいっぱいになり、そのうちにパンクする。そこに細菌がワッと押しよせる。カゼの引き金はたいていこんなふうだという。

さて、ビタミンCがカゼに効くのはビタミンCの持つ1つのはたらきだけではないと考えられている。

まず、ビタミンCがウィルスを殺すはたらきである。ウィルスはもともと生命といえるほどのものを持っていないのだから、ウィルスを殺すという言葉は適切ではないかも知れない。しかし、他人のフンドシで角力をとれなくすれば、もはや悪さはしないだろう。つまり、ウィルスの遺伝子を切断すれば悪さができなくなるだろう。そしてビタミンCによってこれがなされる。

1935年にユンゲルブルートは、ビタミンCによって、小児まひウィルスが殺されることを発見している。

これに関する詳しい研究が、佐賀大学の村田晃教授の手で行われている。

ビタミンCは体内で変化して不安定な状態になる。そこで他の物質から電子を奪って安定状態になろうとする。このようなものをラジカルというが、ビタミンCのラジカルがウィルスの遺伝子から電子を引き抜いて切断してしまうというのである。

ところで、われわれは成長期を過ぎてからは、1日に何億という数の細胞を失っていく。カゼはこれに拍車をかけるのだ。

季節の変わりめにカゼにかかりやすいのは、われわれの体が環境に順応できないで、体内の化学反応が混乱する結果だと考えられる。このとき弱いところができて、ウィルスのターゲットになる。

◎ビタミンCがカゼに効く理由<2>

インターフェロンという言葉は、すでに新聞や週刊誌などにも度々とりあげられてきた。このインターフェロンは、ガンの予防に効果がある、と理解している人も多いことだろう。しかしこれに関してわかっていないことがたくさんある。

ただ、インターフェロンは、ウイルス性疾患はもとより、細菌などの微生物増植をも阻害するということはわかっている。さらに、インターフェロンが、先ほどのビタミンCラジカルのように、直接的にウィルスなどに働きかけるものではなく、細胞内にウィルスなどが増殖できないような変化をもたらすものであることもわかっている。

そして、ビタミンCの細胞内濃度が上昇すれば、インターフェロンの産性能の向上がみられることは、シーゲルやシュワートの動物実験により確認されている。結果として、ビタミンCがウィルスの増殖を阻害して、カゼにかかりにくくなるということになる。

◎ビタミンCがカゼに効く理由<3>

ビタミンCは喰菌細胞の活動を強くする。これについては、すでに紹介したとおり、昭和30年にわが国で刊行されている専門書「ビタミン(川崎近太郎著・岩波書店」)にも記されている。つまり、からだの防衛力がビタミンCで増大されるのだ。なお、ビタミンCはリンパ球の新生と抗体の産生を促すことも知られている。(1977年、バランスによる)

抗体は免疫にかかわるものだが、ビタミンCの摂取量の少ないモルモット(モルモットは自前でビタミンCの合成ができない)に、他のモルモットの皮膚を移植しても拒否反応は生じないが、ビタミンCを増やすと拒否反応がみられるという。異物を認識し、これを拒否しようとする力が強まるからである。抗体のこのような働きは、いま基礎医学のなかで最も注目されている分野である。

◎ビタミンCがカゼに効く理由<4>

ポーリングが強く主張してきたことだが、ビタミンC強化摂取により、細胞間を埋めているコラーゲンが強化されるというものである。

細胞間のコラーゲンが貧弱になればウィルスがここをわけなく通り抜け、体中のあちこちを駆けまわることになる。強いコラーゲンはこれを阻止するという。

それにしても、コラーゲン新生のために、骨折や外傷時など、ビタミンCを強化摂取したほうがよいことは、もはや常識であるし、カゼやカゼ薬(本来、からだのなかにないもの)によるストレスで、ビタミンCの消耗が激しくなることは、セリエのストレス学説以来まかり通っていることである。

理由はともかく、カゼのときにビタミンCを強化する、そのこと自体を否定する人は、私の知るかぎりにおいては、ほとんどいない。


ビタミンCによるガンの予防・治療に関する研究がいまさかんに行われている。10gとか、場合によっては100gも投与することがあるというが、それだけ必要かどうかは、現在ではまだわかっていない。私見ではあるが、健康のためということならば、1日当り1~3gで十分だと思う。

喫煙によってビタミンCを消耗する(ストーンは、タバコ1本で25mgのビタミンCを消耗するといっているが、4本で100mg消費するというようにはならない)とか、ビタミンC投与で血中コレステロール値を低下させることができるということは、すでに言い古されているが、こんなことだけみてもビタミンCの効果を見捨てることはできない。

ソ連や中国などでもビタミンCを用いた治療が行われているという。

水虫やタムシにビタミンCが効いたという例もいくつかある。これは私のアイディアであるが、L―アスコルビン酸の微粉末を少量の水で溶いて患部に塗布し、さらにビタミンCとカルシウムのサンプリメントを摂るといったものだ。

◇減量とビタミンC

減量時には、ストレス対策と共に、別の意味でもビタミンCを増量しておいたほうがよい。

減量は、たんに体重が減少すればよいというものではなく、余分な体脂肪を落とさなくてはならない。

脂肪はグリセリン1分子に、脂肪酸の分子が3本くっついたものである。この脂肪酸がうまく水と炭酸ガスに変化してくれればよい訳だ。

ではここで、脂肪酸分解の過程をながめてみよう。

細胞内の脂肪酸はまず、コエンザイムAという物質と結合して活性化される。このとき、マグネシウムとカリウムが使われる。コエンザイムAはパントテン酸から作られる。

活性化された脂肪酸は次々にちぎられて分解される(β酸化、ビタミンB₂が重要)。この反応は、細胞内のミトコンドリアというところで行われる。ミトコンドリアは、1つの細胞に50から5000個もあるウインナー・ソーセージ形の器管で、エネルギーを引っぱり出すための重要なところである。

さて、活性化された脂肪酸がミトコンドリアに行きつくためには、実は運び屋が必要である。その運び屋をカルニチンという。このカルニチンが少ないと、脂肪酸の分解がうまくいかないことになる。

そこで、カルニチンの原料だが、これはタンパク質を構成するアミノ酸のひとつ、リジンが基になっている。それに、やはりアミノ酸のメチオニンが必要である。

メチオニンとATP(アデノシン3リン酸――体内でのエネルギーのカンヅメ)によって作られた物質が、リジンに働きかけて、脂肪酸の運び屋であるカルニチンが作られていく。また、カルニチンを完成させるためには、ビタミンCと鉄が必要なこともわかっている。

ここでのビタミンCの役割は、コラーゲンをつくる時と同じ化学反応であることもかなり前から知られている。

ここまでをまとめてみると、脂肪酸が活性化され、運び屋であるカルニチンが十分であるためには、パントテン酸、リジン、メチオニン(つまり良質のタンパク質)、鉄、マグネシウム、カリウムが必要で、ビタミンCはストレスによる消耗や食事量の制限の上からもぜひ強化すべきである。ビタミンB₂の強化についても忘れてはならない。

ビタミンCを大量にとったからといって、体脂肪がスイスイ分解される訳ではないが、ビタミンC不足では、脂肪分解がままならないということがわかる。

貧血ぎみの人がうまく減量できない理由は、酸素を運ぶヘモグロビン不足以外に、カルニチン合成に必要な鉄が不足しているということも考えられるよう。

◇腰痛とビタミンC

ウェイト・トレーニングの実施者、中でもパワーリフターがいちばん恐れているのは、スクワットやデッドリフトなどのときに、腰を痛めないだろうかということだろう。

すでに御存知のように、いわゆる背骨は、椎骨がいくつも積み上げられてできている。ちょうどダルマたたきの分割された腹のようなものだと思えばよいだろう。

背骨がちゃんとした状態を保っていられるのは、多くの筋肉群がそれを保護しているからである。ダルマたたきのダルマに上下方向から頑丈に輪ゴムをかけておけば、外力が加わっても崩れることがないのと同様である。

以前、ぶらさがり健康法なるものが流行したが、筋肉を弱ったままにしておいて、いくらぶらさがってみても、それほど効果があるわけでもなく、またその効果が持続するものでないことはすぐわかる。

たるんだ輪ゴムをかけたダルマたたきのダルマは、一度まっすぐに積み直しても、ちょっとひっぱたけばすぐに崩れてしまう。腰痛の人が背筋などのトレーニングをして、よい効果を得たという話をよくきくが、つまり、弱ってゆるんだ輪ゴムを丈夫なものでしっかり結び直したことと同じで、理にかなっている。

パワーリフターの場合、筋肉、とくに背筋が弱いということはまず考えられないが、問題は椎間板であろう。

椎間板は、椎骨と椎骨の間にはさまれているクッションだが、これが変形したり、外力が急に加わったりするとズレたり、とび出したりする。このとき、椎骨の中心を貫いている神経の束を圧迫するのだ。

椎間板は年とともに水分を失なってくるという。そして、水分が少なくなった椎間板はズレやすくなってくる。

では、この腰痛を予防する手段はないものだろうか。

アメリカのグリーンウッドによれば初期の椎間板障害は手術なしで治るという。ビタミンCの投与がよい結果を招くというのである。椎間板の主成分はコラーゲンであり、ビタミンCを強化すれば、椎間板がまともになると彼は主張する。

よく椎間板ヘルニアなどに行われる索引療法が、ぶらさがり健康法と同じ意味をもつものであれば、これに合せてタンパク質ビタミンCが不足しないように注意すべきである。腱の主成分がコラーゲンであることも見落とせない。
月刊ボディビルディング1985年1月号

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