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なんでもQ&A お答えします 1983年4月号

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月刊ボディビルディング1983年4月号
掲載日:2020.10.14

大胸筋と広背筋に重点をおいた分割法を採用したいが

Q ボディビル歴は1年2ヵ月、1人でトレーニングをしています。質問の前に、現在のトレーニング・スケジュールと体位を書いておきます。

◆トレーニング・スケジュール
(1~2日おき、週3日)

[注]トレーニング後は、かなり疲労感がある。

[注]トレーニング後は、かなり疲労感がある。

◆体 位
身 長 175cm 上腕囲 34cm
体 重 75kg 前腕囲 29cm
胸囲(拡張) 104cm 大腿囲 57cm
腹囲(収縮) 78cm 下腿囲 37cm

◆質 問
①分割法を採用してトレーニングの内容を充実させたいと考えているのですが、第1段階としてはどのような内容で行えばよいのでしょうか。
②希望としては、とくに大胸筋と広背筋に重点を置いてトレーニングをしいのですが、どのような種目を採用するのがよいでしょうか。なお、チンニングを行う場所もあります。
③現在、チェスト・バーという中央部がイラストのように湾曲したバーを用いて正確な動作でベンチ・プレスを行なっていますが、使用重量が思うように増えません。ベンチ・プレスを強くするには、やはり、まっすぐなバーを使うほうがよいのでしょうか。
 以上、3点についてよろしくお願いいたします。
(山形県 鶴田昭二 会社員 25歳)
湾曲したバー

湾曲したバー

A 1年2ヵ月のキャリアにしては立派なからだをしておられるようですね。今後の精進次第ではボディビルダーとして大成するのも夢ではないと思います。では、質問にお答えすることにします。

<1>第1段階の分割法について

 あなたは現在、腹部と胸部を除いて、各部位の運動を1種目ずつ行なっておられます。しかし、分割法を採用される場合には、主要な部位については少なくとも2種目くらいの運動を行うようにされるのがよいと思われます。
 からだのどこの部位を主要な部位とするかについては、個人的な希望もあると思われるので、いちがいにはいえませんが、現在のからだの発達状態をよく見きわめた上で、常識的な判断に基づいて取り決める必要があると思います。
 なお、具体的なトレーニングのやり方に関しては、最後にトレーニング・スケジュール例のかたちで記述することにします。

<2>大胸筋と広背筋のための運動

 大胸筋と広背筋に重点を置いたトレーニングをしたいとのことですが現在のあなたのからだの発達度合から考えると、それぞれ3種目、場合によっては4種目の運動を行うようにしてもよいのではないかと考えられます。
 しかし、現在あなたが採用している運動は、大胸筋が2種目、広背筋が1種目ということなので、第1段階としては3種目ずつにとどめるのが無難かと思れわます。では次に、採用すべき種目について述べることにします。
 あなたの場合、大胸筋も広背筋もそれぞれ筋量を増やしていかなければならない段階にあると考えられます。したがって、現在のところは双方ともバルク・アップすることに重点を置いて種目を選ぶ必要があるといえます。実際にどのような種目を採用するのがよいかという点についてはいろいろな意見もあるとは思いますが、さし当り下記の種目を採用されるのがよいでしょう。

<大胸筋の運動>

●ベンチ・プレス
●ダンベル・ベンチ・プレスまたはベント・アーム・ラタラル・レイズ・ライイング
●ディップ

<広背筋の運動>

●ベント・オーバー・ローイング
●チンニング・ビハインド・ネック
●チンニング

<3>ベンチ・プレスのバーについて

 ベンチ・プレスという運動は、中央部が湾曲したチェスト・バーで行う場合と、まっすぐなバーで行う場合とでは、厳密にいうと大胸筋に与える効果が異なってきます。
 結論から申しあげれば、ベンチ・プレスを強くするためには、やはりまっすぐなバーを用いて運動を行うことが必要であるといえます。だからといってチェスト・バーによる運動が、ベンチ・プレスを強くするということに関してまったく効果がないということではありません。
 たしかにチェスト・バーを用いて行うベンチ・プレスは、それのみを単独で行う場合には、正規のベンチ・プレスを強くするという点ではあまり期待が持てないということがいえます。だが、ひとたびこれを正規のベンチ・プレスと併せて行うようにすると、ベンチ・プレスのパワーを高めるという点で、ときには驚くほどの効果を発揮することもあります。したがって、あなたも今後は、双方のバーを用いた二様のベンチ・プレスを行うようにするのがよいと思います。
 そして、もしも二様のベンチ・プレスを採用するとすれば、その場合は、先ず、まっすぐなバーによる正規のベンチ・プレスを行い、その後で補強運動的な感覚で、チェスト・バーによるベンチ・プレスを行うようにするのがよいでしょう。
 では、分割法によるスケジュール例を記述することにします。

◆トレーニング・スケジュール例
(分割法――2分割法)

記事画像3

器具なしで出来る上腕のトレーニング

Q ボディビル歴は2年です。普段は自宅でトレーニングしています。しかし、私は仕事の関係で出張することが多く、そのようなときには、出張先で「器具なしトレーニング」を行うようにしています。
 ところで、私は現在、上腕の鍛練を課題としており、下記の運動を実施しています。

◆自宅で行う場合
<上腕二頭筋>
①ツー・ハンズ・カール
②オールターニット・カール
③プリチャーズ・カール
<上腕三頭筋>
①ナロウ・グリップ・ベンチ・プレス
②フレンチ・プレス・スタンディング
③フレンチ・プレス・ライイング

◆出張先で行う場合
<上腕二頭筋>
①マニュアル・レジスタンスによるカール運動
<上腕三頭筋>
①マニュアル・レジスタンスによるトライセップス・プレス運動

 以上の運動を、自宅、出張先を問わず1~2日おき、週3日のペースで行なっています。しかし、自宅で行う場合はよいのですが、出張先の場合は、上記の運動のみではなんとも物足りない感じがします。
 そこで、お願いがあります。上記の運動の他に器具を必要としない上腕の運動があれば教えてください。
 ちなみに、私の現在の上腕囲は、パンプ・アップさせた状態で35cm、コールドの状態で34cmです。
(金沢市 中島利夫 会社員 24歳)
A マニュアル・レジスタンスによる運動でも、やり方によってはかなり効果を期待できると思います。しかし、せっかくのご依頼でもあるので、いくつかの運動を紹介することにします。まず、上腕二頭筋の運動を紹介し、その後で、上腕三筋の運動を紹介することにしたいと思います。

◆上腕二頭筋の運動
◎脚の抵抗を利用したカール
<かまえ>まず、床に直接腰をおろして両膝を立てる。次いで、片方の肘を同じ側の大腿の内側に固定し、手は他方の大腿の裏側(できるだけ膝に近い場所)に当てる。
<動作>上記のように肘を固定した状態で、手を当てた方の脚を上下させ、その負荷を利用してカール運動を行う。もとよりこの場合、腕に十分な負荷がかかるように脚によって手を圧することはいうまでもない。

◎バケツを使ったカール
<動作>バケツに適当の量の水を入れ取っ手をアンダー・グリップで握り水の重さを利用してワン・ハンド・カールを行う。

◆上腕三頭筋の運動
◎ナロウ・グリップ・プッシュ・アップ
 両手の間隔を胸幅よりも狭くして行う腕立て伏せ運動、両手の間隔を狭くするほどに傾向として運動の強度が増す。
 
◎プッシュ・アップ・ウイズ・ハンド・パラレル
 この運動は、同じプッシュ・アップ運動ではあるが、前述のナロウ・グリップの場合とは上腕三頭筋に与える効果がいくぶん異なる。ナロウ・グリップ・プッシュ・アップが、どちらかといえば上腕三頭筋の外側頭に効くのに対し、この運動は長頭に強く効く。
<かまえ>両手の間隔を胸幅ぐらいにして、腕立て伏せの姿勢をとる。
<動作>左右の前腕が常に平行を保つように留意して肘を屈し、プッシュの・アップ(腕立て伏せ)を行う。運動中に両肘が外へ開くと、上腕三頭筋の長頭に負荷が十分にかからなくなるので注意。長頭に十分な負荷を与えるには、両肘を内側へいくぶんしぼり込むようにして運動を行うのがよい。
 なお、適当な高さの台の上に手をついて運動を行うようにすれば、腕にかかる負荷が軽減できるので、腕の筋肉が弱い場合は、このような体勢で運動を行うようにすれば運動がやり易い。

ボディビル開始後6ヵ月で体重が5kg増えたが、その7ヵ月間変化がないが

Q トレーニングを始めてから1年1ヵ月になります。体位の経過についてはのちほど記述しますが、初めの6ヵ月くらいは私のやせたからだにも少しずつ肉がつき、サイズも体重も順調に増えました。
 ところが、その後どうしたことか、いっこうに変化が得られなくなってしまいました。せめて人並みに体重が60kgくらいになったらと思い、トレーニングは自分なりにまじめに行なっております。しかし、7ヵ月もの間、からだに変化が見られないと、どうしても焦らずにはいられなくなります。
 そのようなわけで、思いあまってご相談する次第です。どうかよきアドバイスをお願いします。
 
◆現在のトレーニング・スケジュール
 週3回(火・木・土)、1日当りの所要時間は約1時間20分
[註]トレーニング後の疲労は翌日には感じない。

[註]トレーニング後の疲労は翌日には感じない。

◆体位の経過
身 長 開始時 171cm 現在 171cm
体 重 開始時 51.5kg 現在 56kg
胸 囲 開始時 85cm 現在 91cm
上腕囲 開始時 28cm 現在 30.4cm
前腕囲 開始時 25cm 現在 26.3cm
腹 囲 開始時 67cm 現在 70.4cm
腰 囲 開始時 80cm 現在 83.8cm
大腿囲 開始時 46cm 現在 50.3cm
下腿囲 開始時 31cm 現在 31cm

 トレーニング開始時より禁煙し、食事も肉、魚、野菜、果物等、バランスよく摂っています。なお、職業は建設関係の軽作業です。
(神奈川県川崎市 巽 啓 22歳)
A あなたのトレーニング・スケジュールは、それだけ見れば非常によくできたものであるといえます。しかし、いかによくできたスケジュールであっても、その内容が実施者自身にマッチしたものでなければなんの価値もなくなります。
 実際にあなたがトレーニングをしておられるところを拝見したわけではないのではっきりとは申しあげられませんが、体位から推測されるあなたの体力的な面を考慮すると、現在実施中のトレーニング・スケジュールは内容的にいって、少なからぬ無理があるのではないかと考えられます。
 つまり、トレーニング・スケジュールそのものはよいとしても、運動で使用する重量に問題があるのではないかということです。
 あなたが現在、種々の運動で使っておられる重量を拝見すると、ほとんどの種目で重すぎるように思われます。
 ベンチ・プレス、スクワット、デッド・リフトの3種目はともかくとしてウェイトを使用して行う他の4種目は重量の面でかなり無理をしているものと考えられます。そして、そのことからさらに推しすすめて考えると、あなたは、採用種目の多くを、かなりずさんな動作で行なっているものとも判断されます。
 先にもおことわりしたように、実際にあなたが運動を行なっておられるところを拝見した上でのことではないので、はっきりとは申せませんが、この判断にはおそらく誤りはないと思います。
 しかし、こう書いただけでは、あなたも得心がいかないかも知れないのでとくに問題があると考えられる4種目の運動に関して、念のために使用筋に刺激を的確に与える運動法と、その要点を記述しておくことにします。ただし、他の読者の参考に供するため、少し詳しく運動のやり方、および注意点などについて説明しますので、その点をご了承ください。

◎ベント・アーム・ラタラル・レイズ・ライイング[写真参照]
[ベント・アーム・ラタラル・レイズ・ライイング]

[ベント・アーム・ラタラル・レイズ・ライイング]

<かまえ>左右の手にそれぞれダンベルを持ち、ベンチに仰臥する。次いで、左右のダンベルを胸の上方へ差しあげて平行にかまえる。
<動作>両肘をいくぶん曲げるようにして、両腕を横に広げ、ダンベルを床の方へ十分におろす。ダンベルをおろしたとき、できるだけ両肘を下方へさげて胸を張るようにする。十分におろしたなら、両腕をつぼめあげるようにして、ダンベルをかまえの位置に戻す。
<呼吸>ダンベルをおろしながら息を吸い、あげながら吐く。
<要点>ダンベルをおろすときに肘をまげすぎないように留意する。ダンベルをおろしたときに、上腕二頭筋の付着部(肘に近い部分)の辺に過当な負荷がかからないようにするために、ほんの少しまげるくらいでよい。
 ダンベルをあげるときは、肘の角度を狭めないように留意し、2/3くらいあげたところから両腕を伸ばして左右のダンベルを胸の上方で合わせるようにする。

 ダンベルをあげるときに、肘の角度を狭めるようにすると、大胸筋に負荷が的確にかからなくなるので、それだけ効果が減少する。
 肘の角度を狭めるということは運動の動作がダンベル・ベンチ・プレスの動作に近くなるので、そのような中途はんぱな動作で運動を行うくらいなら、いっそのこと初めからダンベル・ベンチ・プレスを行うようにするのがよい。
 次に、運動中に背中を反らしすぎると、大胸筋に対して広範囲に負荷がかかりにくくなる。
 大胸筋に広範囲に負荷をかけるためには、頭をもちあげながらダンベルをおろすようにするとよい。

◎ベント・オーバー・ローイング[写真参照]
●ベント・オーバー・ローイング

●ベント・オーバー・ローイング

くかまえ>バーベルをオーバー・グリップで持ち、上体を床面と平行になくらいまで前倒し、その体勢で腕を垂直に伸ばしてバーベルをぶらさげる。なお、この場合の左右のグリップの間隔は、肩幅よりも左右1こぶしほど広くするくらいがよい。
<動作>上体を起こさないように留意し、腕を屈してシャフトが中腹部の下あたりにくるようにバーベルを引きあげる。
<呼吸>バーベルを引きあげながら息を吸い、おろしながら吐く。
<要点>かまえの姿勢、および運動中に上体が起きないように注意する。上体が起きると、運動負荷が僧帽筋や肩甲挙筋等、背中の上部の筋肉にかかるようになる。
 また、肩甲骨をできるだけ内側へ動かさないようにしてバーベルを引きあげる。肩甲骨を内側へ動かすようにしてバーベルを引きあげると、運動の負荷が背の中央にある菱形筋るの方に分散されてしまうので、広背筋に与える効果が減少してしまうおそれがある。
 次に、前腕とグリップの力をできるだけ抜くようにして、肘で引く感じでバーベルを引きあげる。前腕とグリップに力が入りすぎると、腕力でバーベルを引きあげるようになるので、広背筋に負荷がかかりにくくなる。
 バーベルを中腹部のあたりに引き寄せるようにする。上腹部や胸のあたりに引き寄せると、バーベルを引きあげたときに両肩が前方(クビの方)へ押し出される感じになるので負荷が広背筋に十分にかからなくなる。

◎プレス・ビハインド・ネック[写真参照]
●プレス・ビハインド・ネック

●プレス・ビハインド・ネック

<かまえ>バーベルをオーバー・グリップで持ち、写真のようにクビの後ろにかまえる。この場合の左右のグリップの間隔は、肩幅よりも左右それぞれ2~3こぶしほど広くするくらいがよい。
<動作>バーベルを上方へプレスする
<呼吸>バーベルをプレスしながら息きを吐き、おろしながら吸う。
<要点>バーベルを頭の後方でプレスするようにする。挙上動作を横から見た場合、両肘を結ぶ線が肩よりも前にこないように留意する。肩より前にくるように行うのならば、いっそのことフロント・プレスを行うほうがよい。
 また、左右のグリップの間隔が狭すぎると、上述の動作がやりにくくなるので、その点に留意する。そして、三角筋に十分な負荷を与えるには、できるだけグリップの力を抜いて運動を行うのがよい。
 
◎ツー・ハンズ・スロー・カール
<かまえ>バーベルをアンダー・グリップで持ち立った姿勢で、両ももの前にかまえる。この場合のスタンダードなグリップの間隔は、左右の大腿部の外側に双方のグリップの内側が触れるくらいの間隔である。
<動作>肢を支点にし、前腕を前方へ屈曲させてバーベルを巻きあげる。
<呼吸>バーベルをあげながら息を吐き、おろしながら吸う。
<要点>バーベルを巻きあげるときに肘が体側の中心よりも後ろへ行かないように留意する。肘が体側の中心よりも後ろへ行くと、動作がバーベルを巻きあげるというよりは、引きあげる感じになるので、上腕二頭筋に負荷が的確にかからなくなる。
 バーベルを巻きあげるときに、肩で引きあげないようにする。また、からだを前後にゆさぶるなどの反動を使わないようにする。カール運動の基本として、まず、反動を使わずに正確な動作で行う習慣を身につける必要がある。
 バーベルを巻きあげるときは、スナップを利用しないようにする。スナップを利かせてバーベルを巻きあげると、上腕二頭筋に負荷が的確にかからなくなるので注意。
 バーベルをおろすときに、両肘が体側の中心より後ろへ行かないように留意する。肘が体側の中心よりも後ろに行くと、上腕二頭筋に与える負荷が弱められる。

 以上、4種目の運動について、その運動法と要点を述べましたが、それらを実行するに当っては、場合によっては、使用重量の大幅な軽減を強いられることになるかもしれません。
 しかし、そのような必要性が生じた場合には、今までのことは考えないで思いきって使用重量を減らすのが得策であるといえます。重量を減らすことを渋って不正確な動作で運動を行うよりは、いさぎよく重量を減らすことにより、的確な動作で運動を行うほうがはるかに良い結果が得られます。
 なお、他の運動に関しても、使用重量について、それなりに検討を加えてみる必要があると思います。
[回答は1959年度ミスター日本、NE協会指導部長・竹内威先生演技指導は平井トレーニング・センター会長・熊岡健夫先生]
月刊ボディビルディング1983年4月号

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