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  • 食事と栄養の最新トピックス(50) 食生活赤信号〈15〉 野菜・果物はだいじょうぶか?

食事と栄養の最新トピックス(50)
食生活赤信号〈15〉
野菜・果物はだいじょうぶか?

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月刊ボディビルディング1985年4月号
掲載日:2021.05.24
ヘルスインストラクター 野沢 秀雄

1.なぜ野菜や果物が必要か?

 私は良い食事法か、悪い食事法かを判定する時に、野菜や果物の量をーつの目安にしている。「肉や魚のようにタンパク質があるわけではない。バターやマーガリンのようにカロリーが多いわけではない。それなのになぜか?」と思う人がいるかも知れないので、野菜や果物の大切さをまず述べておきたい。

①ビタミンCやビタミンK、Pなど微量なビタミンや、カリウム・鉄などの微量なミネラルの供給源。

②マグネシウムを含み、血液成分と似ている葉緑素を含んでいる。

③食生活に不足しがちな繊維を含んでいる。便秘の予防やガンの予防になる。

④酸性に偏りがちな肉食中心の食生活を、アルカリ性に保つ効果。

⑤生野菜には酵素が生きていて、体調をよくする。

⑥水分が多く、少量で満腹感があるので、減量時にピッタリ。

⑦色が美しいので、食欲をおこし、おいしく食べられる。季節感を与えてくれる。

⑧香りの良い植物が多く、料理をひきたてる。

⑨種類が多く、味が微妙にちがうので健康にもいいし、食卓のレパートリーを増やせる。
――というわけで、本当は長所が多く、ビルダーの皆さんにすすめているが、「1日に300gはとりたい」という目標に達している人は少ない。果物を合わせて1日に3OO~5OOgとれば申しぶんないのだが……。

「自分は野菜にも気をつけている」という人も多いのだが、専門的な立場から見るとまだまだ心配な点がある。

2.葉・根・実のバランスをとる

 一口に野菜といっても種類は多く、食べる部分もちがっている。季節により入手できるものと、そうでないものがある。そこで便宜上、別表のように分類してみた。

 外食中心の生活をしている人は、レストランや食堂で食べる野菜として、レタス・キャベツ・きゅうり・トマト程度で、量も決して充分ではない。また自宅で食べている人や、自炊生活をする人は、「この表で見直すと、葉ばかりで、根や茎はあまり食べてない」と気付くだろう。

 実は中国で古くからの教えに「食べ物は全体を食べなさい」という一項が入っている。魚は皮・骨・頭・内臓までなるべく食べる。動物も同じ。だから中国や韓国料理にはモツが多い。

 野菜も同じである。人参や大根は葉ごと食べる。実がなければ実まで食べるようにする。そうすれば「青・黄・赤の3色をそろって食べられる」というわけだ。青じそも同じである。

 ところが八百屋では葉のついた人参や大根はなかなか手に入らない。理由は後述の通り、流通に問題があるためである。

 せめて可能なことは、1日のうちに葉と根・実のバランスを考えて、なるべく上・下あわせて食べることだ。たとえば「今日は野菜サラダを多く食べたので、イモやカボチャの煮物は食べずにおこう」と考えてはならない。

 別表の右欄に保存法をのせたので、バランスが悪い時は「少量のつけ物」「缶詰」などリリーフしよう。つけ物は季節や場所(遠隔地)のハンディをカバーする民族の知恵といえる。
〔別表〕野菜の食用部分と保存法

〔別表〕野菜の食用部分と保存法

3.野菜・果物はここが赤信号

 別表の分類からわかるように、果物は「実」であり、とくに糖分が多く含まれる。したがって「果物をとれば野菜の代わりになるので構わない」という説は、一部は当っているが、そうかといって「葉や茎・根の役割までカバーするものではない」と納得されるだろう。

 だが、肉食のあと「サッパリしたフルーツ、とくにミカンやオレンジの柑橘類を食べる」という習慣は悪いものではない。野菜不足のとき、せめて果物をたっぷり補うことはよい。

 さて、結構づくめの野菜や果物にも現代は泣き所が急増している。

①昔は季節ごとにシュンがあり、味が良かったが、現代は石油エネルギーによるビニール栽培が一般化し、季節差が少ない。味が淡白になっただけでなく、ビタミンCや鉄分が失なわれている。たとえば7月の自然のトマトはビタミンCが100g当り21mgなのに対し、1月のハウストマトは15mgに減少(7月に対して70%)。同様にレタスは8mgが4mgへと50%に、きゅうりは22mgが9mgと40%にダウンしている。

 これはデータの一例にすぎないが逆にピーマンやキャベツは20~30%増えていたり、カルシウムやマグネシウムが増えていたりするケースもある。

 だが全般にいえることは、自然の太陽の下でスクスク育った作物がいっせいに収穫される時期に、味も栄養素もピークに達する。不自然な方法によれば栄養素のアンバランスが起こりがちといえる。シュンの野菜や果物を安いうちにタップリ食べたいものだ。

③収穫してから、口に入るまでに、ビタミンCなどのロスが大きい。畑でとれてから、時間ごとに栄養素(成分)は減少している。タケノコやイチゴは朝にとってすぐ食べるのが最高といわれるが、他の野菜も同様である。果物も「完熟」といって、木で熟れるまで育った物がおいしい。

 現実には、畑でとって農協へ出荷し都会の市場へ運ばれてセリにかけられ、小売店やスーパーに並ぶまでに丸2日くらいすぐ経過する。その日に売切れたら良いが、残りは店で何日も置いたまま。さらに家で使った余りを冷蔵庫に入れておくと、結局1週間くらい後に食べる例は決して珍しくない。

 タマネギやジャガイモ等の根菜類は比較的いいが、キャベツなどになるとビタミンCの低下は著しい。2週間たつとビタミンCは最初の40%も失なわれる。ミカンは20%減る。
「安いから」と変色したキャベツや春菊、トマト、きゅうり等を買うことは結局は損であ る。

③調理方法のロスも大きい。よく水につけて野菜を放置している人がいるが、水中にドンドン成分が逃げてゆく。「おいしいサラダを食べたいなら、水で良く洗った直後、フキンに包んで振って水分を残すな」といわれる。こうしで冷蔵庫にすぐ入れておくのが適切である。なおレタスを包丁で切ると鉄分が損われるので、手でちぎるほうがよい。

 味噌汁に葉を入れて、グツグツ煮たりすると、成分が破壊される。加熱は短時間にすませよう。

④次に栽培上の問題点だが、化学肥料を使い、成長を早めるのが一般的である。その結果、土は荒れて害虫が付きやすく、農薬に頼ることになる。1シーズン当り何回も異なる殺虫剤を散布する。雨で流れないように特殊な展延剤という界面活性物質も多用される。家庭で水洗いしても農薬が落ちにくい傾向にある。健康上ゆゆしいことだ。

⑤果物の場合、ツヤをよくするためにワックスを塗ったり、カビを防ぐ物質をスプレーする場合が多い。

⑥ジャガイモは芽が出ると有毒で商品にならないため、紫外線を照射し、芽を殺している。家庭用には使われなくなったが、ポテトチップなど加工用に使われている。

⑦サトイモは消費者が便利なように、生産地で皮をむき、漂白液に浸して色を白くしている。こんな操作は有害無益である。

⑧ミカン缶詰は袋(さのう)がきれいに取れているが、カセイソーダと塩酸に浸してセルロースを溶かしている。私も実際におこなったことがあるが、化学薬品の威力に驚くと同時に、これでいいのだろうか?」と疑問を感じたものだ。

4.ではどう食べればいいか

 以上は私が考えついた数例にすぎず実際には赤信号はまだまだ多い。栽培上の問題点は次項に譲り、われわれは野菜や果物をどう食べればいいか、ヒントを述べてみよう。

①葉・根・実のバランスを考え、なるべく種類多く食べよう。そして、よくかんで食べよう。

②なるべく新しい野菜・果物を選ぼう。大根で葉が付いているのがあれば切らずに持ってかえり、バターで妙めたり、どはんに混ぜたり、塩漬けにしたり、味噌汁に加えたりして食べよう。

③古くならないうちに使いきろう。

④大根おろしは、おろしてすぐ食べたほうが栄養価が高い。そして、おろした汁のほうに栄養素がいっているので、液体も残らず食べよう。

⑤加熱するとビタミンCや酵素がこわれる。サッと短時間にすます。といって生でなく、煮たり、味噌汁の具にしたほうが量は多く食べられる。

⑥イモや人参・大根を煮るとき、味つけはなるべく薄く。砂糖や化学調味料はなるべく入れないこと。塩やしょうゆも最少限にとどめる。

⑦トマト・人参・きゅうりなどは輪切りにするより、縦に切ったほうが栄養素が逃げないと言われている。

⑧玉ねぎ・ねぎ・ニラ・にんにくは、いずれもスタミナがつく食品といわれる。ただし、生で多食すると逆効果になる。

⑨大根と人参はお互いビタミンを殺しあう。生で食べないように。きゅうりと青い葉も同様に相性がよくない。食べるなら別々に。

⑩大根おろしとチリメンジャコ(しらす干し)やカツオぶしの組合せは良好である。ほうれん草とカツオぶしも相性が良い。

⑪さやいんげん、枝豆、うずら豆、黒豆、小豆、ピーナッツなどの豆類はタンパク質が多く、すぐれた栄養食品である。もっともっと利用していただきたい。煮ても栄養素はこわれない。

⑫ピーマンやとうがらしは意外なほどビタミンCが多い。いちごやレモンに負けないほどだ。ビルダーで愛用している人も多い。

5.私自身の農業体験から

 最近の主婦は「虫のくった野菜や形の悪いキュウリ、トマトは買おうとしない」とよく言われる。だから生産者はイヤイヤながら農薬を使い、形をよく整える努力をする。

 実際に風が吹いている畑で、農薬をまくと、鼻や口から入りこんで、呼吸できないほど。手や顔は荒れる。誰だって好んで農薬を使うわけではない。

 最近ブームの自然食品店では、「無農薬の野菜」を並べているが、価格が何割も高い。収穫してからだいぶ日が経った品物も多い。おまけに本当にどの程度無農薬なのか心配である。

「よし自分で野菜を作ろう」と苗を買い、マンションのベランダでトマト、なすび、とうがらしを育てようとした。東京の都心(代々木)で地上12階にかかわらず、いつのまにか、害虫がはびこり、忙しさで2~3日放置していると葉が次々と枯れてしまい、結局、どれも実がならなかった。

「これではいけない。将来の食糧難に備えて、ある程度の自給自足を考えなくては」と気付き、真剣に自分の手で安全な野菜をつくろうと決意した。ほんの最近のことである。

 幸にも千葉県南房総の海に近い場所に、中古住宅が売りに出されており、この小さな庭を菜園に変えてみた。

 玉ねぎ・じゃがいも・スナックえんどう・大根・人参・いちご・春菊・小松菜・かぶら・ねぎ・さつまいも・とうもろこし・枝豆・しょうが・トマト・なすび・きゅうり・ピーマン・とうがらし・カボチャ・パセリ・レタス・キャベツ・いんげん豆・青じそ等、ローテーションを考えながら、狭い土地をフル回転させ、自分で耕やし、肥料(鶏ふんのみ)を与え、雑草を抜き、虫を手で除き……とトライした。

 東京の生活がメインで、片道3~4時間かかる農場へは、月に1~2回しかゆけない。丸1~2日かけて上記の作業をすますのは大変である。

 しかしながら、意外に作物はうまく育ち、東京のマンションのような無残な失敗は一例もない。恵まれた土と太陽のありがたさに感謝せずにはいられない。

 そこから得られた体験を述べると、

①一つの作物を生産する苦労は並大抵ではない。「除草」「水やり」「虫とり」を怠け、適当なときに収穫しないとムダになる。タイミングが大切。

②できる時は一斉にできる。このときが安くて、うまい時である。

③虫くいや形が少々悪くても味は変わらない。その部分だけ除けばよい。

④とりたての味は格別。香りもいい。

⑤肥料や殺虫剤を使わなくてもある程度はOK。ただし素人だからよいので、プロとして出荷する人には必要とも思われる。(消費者に対応して)

⑥レタスやキャベツなど淡色野菜より春菊のような色の濃い野菜はじょうぶで作りやすい。同じ食べるならグリーンの濃い物のほうがパワーがつく感じ。

⑦大根は抜いて日数がたつにつれて、外側の葉から枯れてくる。そのままにしておくと根から水分や栄養素を奪ってゆく。八百屋やスーパーで葉を切り落すのは鮮度を保つために一理ある。

⑧不思議なもので、手をかけて可愛がれば正直に応えてくれるが、旅行などで放置したままにすると、畑は荒れ、作物はまずくなる。

⑨たいてい種子を残しておけば、翌年ひとりでに芽を出してうまく育つ。だが同じ土地に連作しすぎても育ちは悪くなる。

⑩大雪や干ばつなど天候次第で大きな打撃を受けることがある。リスクが大きい。

――以上、ほんの短い期間だが、あらためて野菜のうまさや農業の有難さを肌で感じることができた。これ以来すっかり自然のすばらしさに病みつきになったが、もちろん都会に住む多忙な現代人に同じことはできない。自分自身、専業で生活するには能力も土地も不足である。だが、せめてマンションでつまみ菜を育てるくらい実行すれば、作物に対する愛着はちがってくる。パセリや春菊なら育ちそうな予感がする。

 現実に農作業をしている人は、奥さんやおばあさんが多い。男性、とくに若者は都会に出て、農業を軽視する風潮が強い。これで果して良いのだろうか?

 戦中・戦後の時代、食べ物に飢えて日本人は大変な苦労をした。いったん戦争になったら、他国に頼るわれわれはどうなるのだろう??
月刊ボディビルディング1985年4月号

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