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☆ビギナーのためのやさしい栄養講座☆
“体重をふやす食事法”

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月刊ボディビルディング1985年4月号
掲載日:2020.05.24

◇キミの標準体重は?

「身長から100を引き、それに0.9をかけた数字が標準体重」と一般にいわれている。170cmの人なら63kg、175cmの人なら67.5㎏が健康的なバランスがとれているというわけだ。

「オレは標準体重と同じだからいい」と満足するのは待ってほしい。私が多くのスポーツマンを調査した結果ではボクシング選手を除いて、ボディビルダーはもちろん、野球、柔道、サッカーなど、一流選手ほど標準体重を上まわっている。

 この項はコンテストで上位入賞するような選手を対象としているのではなく、ビギナー・ビルダー、あるいは一般の人を対象として話を進めているのだが、できたら「身長から100を引いた数字」の体重が望ましいのだ。170cmの人なら70㎏、175cmの人なら75kgという計算になる。

 ただし、いくら体重があっても脂肪ぶとりでブヨブヨしていたのではなんにもならない。腹囲は75cm以下、皮下脂肪の厚さは10ミリ以下であることが望ましい。

◇太れない理由はいくつかある

「自分はどんなに食べても思うように体重がふえてくれない」といった相談をよく受ける。そして、いろいろ聞いてみると、太れない原因として次のようなタイプに分けることができる。

①体質――両親・兄弟とも体が細く、生れつき太れないタイプ。

②胃腸障害――いつも胃腸が重く、胸やけがしたり、よく下痢をする人。

③歯の悪い人――よくかんでゆっくり食べればいいが、歯が悪いので、ついかまずに流し こんでしまう人。

④偏食――好き嫌いが多く、いつも好きなものばかり食べている人。

⑤食事内容の悪い人――インスタントラーメン、菓子パン、コーラ、炭酸飲料などをよく 食べる人。逆にタンパク質が不足しているタイプの人。

⑥不適切な間食――食事の前に菓子、果物、飲料などを食べる人。

⑦運動不足――日ごろほとんど運動をせず、食欲が起こらないタイプ。

⑧睡眠不足――夜ふかしをして、いつも睡眠不足ぎみの人。

⑨ストレス――精神的な悩みが多かったり、神経質でくよくよ悩むタイプの人。

 以上のような原因が考えられる。そして、これらが複合して該当する場合が多いが、たいていは⑤⑥⑦の食事法を改善することにより、大きな成果が期待できる。

◇食事内容にご注意

「ボクの食事は、朝食がパンとコーヒー、昼は学生食堂ですませ、夜はごはん2~3杯とみそ汁、肉または魚、それにおしんこ。間食に菓子パンかカップラーメンとコーラです」

 とある大学生は報告しているが、この内容ではカロリーもタンパク質も相当に不足している。激しいトレーニングをして筋肉を増加させる人のメニューとしては「失格」である。

 次に記す基本点をよく理解し、すぐに実行していただきたい。

①卵、チーズ、牛乳、スキムミルク、魚、肉、とうふ、納豆、ハム、ソーセージなど、タンパク質を含む食品を必ず毎食ごとに最低2つは食べるようにする。さばやまぐろの缶詰やヘルスフードとしてプロティンを用いるのもよい。
  ②朝・昼・夜の3食以外に食事回数をふやす。午後4時ごろに1回、就寝前に1回、それぞれ牛乳、チーズ、プロティンなどのタンパク食品をとる。果物を加えてもよい。また、激しい練習の前後に、少し時間をおいてから(約15~20分)タンパク質を多く含む食品をとれば有効である。


③同じ材料でも、植物油やマーガリンを使うとカロリーが増えて体重増加によい。
 たとえば卵なら、生卵やゆで卵より、目玉焼やハムエッグにするとよい。ごはんならチ ャーハンやチキンライス、ピラフに。野菜は油でいためたり、そばやラーメンよりも焼 そばにして食べる、といったように油料理をふやすわけである。天ぷらやトンカツなど のフライ料理も体重増加によい。
  ④逆に、コーラ、ソーダ、インスタントラーメン、菓子類はあまり食べない。とくに和菓 子のアンコは胃腸に負担をかけ、食欲を失わせる。

⑤食事はゆっくりと、よくかんで食べる。

⑥好き嫌いなく何でも食べる。

⑦なるべく薄味にして食べる。塩分が多いとやたら水やお茶がほしくなり満腹してしまう。

⑧悩みごとはなるべく持たず、いつもサッパリした気分でいるように。

⑨睡眠はなるべく多くとる。

⑩ウェイト・トレーニングでは、まず大きい筋肉部位のトレーニングを優先して実施する。

 ――以上のような方法を3ヵ月くらい実施すれば4~5kg体重をふやすことは可能だ。182cmで58㎏だった人が2~3年で80㎏まで増えた例を私は知っている。「遺伝だから」「体質だから」とあきらめてはいけない。やせている原因は、生活の仕方や食事のとり方によることが多いのだ。

 私たちの体は刻々と変化しているのだから、良い食事内容と適切なトレーニングで体格は必ず改善される。要は「実行するのみ」である。

(野沢秀雄)
月刊ボディビルディング1985年4月号

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