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国際女子アマチュアボディビルディング招待選手権大会 主催 国際スポーツフェア 主賓 日本ボディビル連盟

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月刊ボディビルディング1988年7月号
掲載日:2020.11.05

THE FANTASTIC BODY'S FESTIVAL

単にコンテストに留まらず、ショウとしても第一級のステージが用意され、その華やかさは春の祭典と呼ぶにふさわしい。もちろんレベル的にも粒選りの選手が集まり、見応えある戦いが繰り広げられた・そして、その大舞台の上で、飯島ゆりえが日本女性の中では過去最高の身体で登場し、ライト級で見事優勝を勝ち取った。
LIGHT WEIGHT
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1st.YURIE IIJIMA(JPN)過去の日本女性で最高の身体を披露。世界に通じる女性ビルダーの出現だ。自信に溢れたポージングにも健在

1st.YURIE IIJIMA(JPN)過去の日本女性で最高の身体を披露。世界に通じる女性ビルダーの出現だ。自信に溢れたポージングにも健在

ルイスと飯島の比較。両者の甲乙は付け難いが、全体から見た迫力では飯島が一歩抜き出ている

ルイスと飯島の比較。両者の甲乙は付け難いが、全体から見た迫力では飯島が一歩抜き出ている

記事画像4
2nd.SHARON ANITA LEWIS(USA)87NPCナショナル大会ライト級2位。調整も良く、安定感のあるポージングは見事。飯島と最後まで接戦を展開し2位となったが、かなりの実力の選手

2nd.SHARON ANITA LEWIS(USA)87NPCナショナル大会ライト級2位。調整も良く、安定感のあるポージングは見事。飯島と最後まで接戦を展開し2位となったが、かなりの実力の選手

MIDDLE WEIGHT
1st.KATHY COLE(USA)87NPCナショナル大会ミドル級2位。カット及びデフィニションの素晴らしさは大会選手中随一、ややスレンダーだが一層鋭さを強調した

1st.KATHY COLE(USA)87NPCナショナル大会ミドル級2位。カット及びデフィニションの素晴らしさは大会選手中随一、ややスレンダーだが一層鋭さを強調した

コールとダフィー。共にアメリカンの選手で昨年度のNPCナショナルではコールがミドル級2位、ダフィーがライト級4位であった。アウトラインの豊かさではダフィーが上だが、コールには細かなカットとデフィニションから醸し出す鋭さがある

コールとダフィー。共にアメリカンの選手で昨年度のNPCナショナルではコールがミドル級2位、ダフィーがライト級4位であった。アウトラインの豊かさではダフィーが上だが、コールには細かなカットとデフィニションから醸し出す鋭さがある

2st.MARIANNE DUFFY(USA)プロポーションが豊かで、全身のバランスも良いが、コールの鋭いカットに匹敵するものがなかったことが敗因か。87NPCナショナル大会ライト級では4位

2st.MARIANNE DUFFY(USA)プロポーションが豊かで、全身のバランスも良いが、コールの鋭いカットに匹敵するものがなかったことが敗因か。87NPCナショナル大会ライト級では4位

左からキャシー・コール、マリアン・ダフィー、カレン・フェジュファー、アナ・ローザ・エステバ、シェリー・マッケンジー、レイチェル・ウィリアムス

左からキャシー・コール、マリアン・ダフィー、カレン・フェジュファー、アナ・ローザ・エステバ、シェリー・マッケンジー、レイチェル・ウィリアムス

HEAVY WEIGHT
1st.AUDREY LOUISE HARRIS(USA)広い広背と細いウェスト。そして長い脚に至るプロポーションは比類なく魅力的である。ポージングも自分の長所を最大限に表現し確かなものにしている。素晴らしいビルダーだ

1st.AUDREY LOUISE HARRIS(USA)広い広背と細いウェスト。そして長い脚に至るプロポーションは比類なく魅力的である。ポージングも自分の長所を最大限に表現し確かなものにしている。素晴らしいビルダーだ

バルクでは他の追随を許さないエイケン。しかし、果たして彼女が最高の状態であっても、優勝はできただろうか。ボディビルが単に筋量の嵩を争うスポーツならば文句はないだろうが、そうではない。ハリスの身体はエイケンに比べれば遥かに筋量は劣るだろうが、それを差し引いても余りある魅力を持っている

バルクでは他の追随を許さないエイケン。しかし、果たして彼女が最高の状態であっても、優勝はできただろうか。ボディビルが単に筋量の嵩を争うスポーツならば文句はないだろうが、そうではない。ハリスの身体はエイケンに比べれば遥かに筋量は劣るだろうが、それを差し引いても余りある魅力を持っている

2nd.LENY TOPS(HLD)筋量が豊富で、特に背部は素晴しい。アピールポイントは少ないが、全身のバランスが良く、常に安定した実力を発揮する選手のようだ。87ミス・ユニバース4位

2nd.LENY TOPS(HLD)筋量が豊富で、特に背部は素晴しい。アピールポイントは少ないが、全身のバランスが良く、常に安定した実力を発揮する選手のようだ。87ミス・ユニバース4位

3rd.HANNY VAN AKEN(HLD)87ミスユニバース2位。男性並みのバルクだが、ポーズをとると女性的なラインを出す。もっと絞り込んだ、ベストの状態を是非見てみたい選手。

3rd.HANNY VAN AKEN(HLD)87ミスユニバース2位。男性並みのバルクだが、ポーズをとると女性的なラインを出す。もっと絞り込んだ、ベストの状態を是非見てみたい選手。

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 6日の国内代表選抜大会に出場した選手は総勢20名。時期的な要因もあり参加者を集めるのにも苦労したようである。全体的には必ずしもレベルが高いとは言えないようだ。
 
 その中であってひと際目を引いたのが飯島ゆりえである。以前からマッスルには定評のある同選手ではあるが、今回は85ミス日本時に比べてふたまわりは成長しただろう。飯島は昨年にも本大会に出場していたが、昨年と今年とでも全く比べものにならないほどの調整ぶりである。やや小柄であるが、身体のサイズ、厚味などは申し分なく、他の選手から群を抜いていた。85ミス日本の安藤、87ミス日本の遠藤は超えているだろう。

 一方、昨年のミス日本入賞者としては4位の須藤ゆき、5位の中尾和子、6位の松本俊子、9位の西尾慶子、10位の荒木真弓が出場した。しかし、須藤は全体的にバルクアップし、特に中上背部の充実ぶりは印象深かったが、全体的にカット不足。また、中尾や西尾、荒木も本調子ではなかった。今年の3月に行われたミス・アジアのライト級で2位を獲得して期待された松本もカットが不足し、持ち味をうまく出し切れなかった。

 むしろ、太田みつ子、中村泰子横田喜代美等の選手達がなかなか印象深かった。太田はバルキーな身体であり、ポーズをとるとよく筋肉が伸びて冴えを見せた。中村は小柄なため比較では不利である点は否めないが、バランス良く発達した身体は昨年のミス日本時に比べて数段よく見えた。横田は今後注目したい選手である。筋量的には物足りないがプロポーションが良い。

 選抜方式は各選手がリラックス・ポーズをとった後、フリーポーズ、抽出比較が行なわれ、その結果、ライト級は松本俊子、太田みつ子、横田喜伐美、中村泰子、飯島ゆりえ、西尾慶子、荒木真弓、谷本相子が、またミドル級では元吉京子、中尾和子、須藤ゆきが選出された。

 翌5月7日には外国人選手を招待して、プレジャッジ及び公式大会が行なわれた。

 昨年は公式大会も前日の国内選抜大会が行なわれた屋外中央ステージであったが、今年は第2体育館内である。

 主催が国際スポーツフェア実行委員会ということもあり、色とりどりのパック、明るく華やかな照明、音響、コンテストの進行や企画などにも、お祭り的に様々な意匠を凝らしてあった。端的に言えばコンテストとショウをミックスさせた形である。純粋なコンテストとして見た場合、華やかすぎると思われる向きもあるだろうが、出場選手や観客の声を拾うと評判は上々であった。大会は大成功を収めたといえよう。

 このコンテストが、ただ単に華やかさばかりの大会ではない証拠に諸外国の出場選手のレベルの高さが挙げられる。ライト級のシャロン・A・ルイスは、NPCナショナル大会で2位を獲得した実績を持つ選手であり、ミドル級のキャシーコールもNPCナショナル大会でミドル級で2位、ヘビー級では87ユニバースで2位となったハニー・V・エイケン、同4位のレニー・トップスが出場していた。

 これほど実績のある選手達が一同に会することはいまだ登展途上にあ我が国の女子ボディビル界に強い刺激を与えてくれると同時に、世間一般へアピールするためにも大きな存在意義があるといえる。

 時期的には恵まれてはいないが、名実ともにこの大会が世界の女性ビルダーにとって光栄ある大会になりつつあると言っても過言ではない。
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ライト級
1位☆飯島ゆりえ(日本)

1位☆飯島ゆりえ(日本)

2位☆シャロン・アニタ・ルイス(アメリカ)

2位☆シャロン・アニタ・ルイス(アメリカ)

4位☆コルネリア・ギューラ(西ドイツ)

4位☆コルネリア・ギューラ(西ドイツ)

左からダイアン・ギャリティー、コルネリア・ギューラ、飯島ゆりえ

左からダイアン・ギャリティー、コルネリア・ギューラ、飯島ゆりえ

5位☆キャリー・ジョーンズ(イギリス)

5位☆キャリー・ジョーンズ(イギリス)

審査員評

ジャッジ/増渕聖司

 最初に、大会を観戦される方や、出場選手、あるいはこれから国際大会を目指す選手のために、I.F.B.B.の国際大会に於ける審査方法と手順について簡単に触れておこう。

 大会前、全審査員を招集して、I.F.B.B.審査委員長ジャック・プロマート氏を中小にしてジャッジズ・ ミーティングが開かれ、大会のプレ ジャッジ及び本選についての詳細な打合わせが行われる。大会は7名のジャッジによって審査され、スコア・シートには各ジャッジ自らの手で選手のゼッケン番号と、その横に順位が記入される。(審査委員長は、選手とジャッジに指示を与え、審査には加わらない)。ジャッジの席はNo1からNo7まで、あらかじめ決められており、コンテスト中は審査委員長及び、その補佐役以外との会話は一切禁止されている。無論、隣のジャッジと話ことも、写真撮影も許されない。筆記用具は鉛筆だと容易に消すことが出来るので、他人が加筆出来ないようにそして順位等を修正した個所には、必ず自分の名前をサインしなければならない。
 
 これら大会進行は、 全て英語によってなされるのでジャッジは勿論、出場選手も、ある程度の英語理解力が必要とされる。 (今回も「脚を後ろに引いて」という英語での指示がわからず、立往生していた選手がいたね比較審査はジャッジが比較したい選手3名を各々ビック・アップし、そのゼッケン番号を記入した用紙を提出してNo1からNo7のジャッジまで順に行なっていく。比較選手が同じ場合はパスされるので、ジャッジは比較の進行をよくチェックしながら臨機応変にリクエストする能力も要求される。集計では、各選手の最高、最低点がカットされ、5名のジャッジのスコアが加算されて、各選手のポイントになる。
 
 このような手順で、プレ・ジャッジ、本選と審査が進められていく訳だが、I.F. B. B.では、各ジャッジの審査結果を点数で評価し能力が問われるという、厳しいシステムになっているので、審査する方も相当にハードな仕事であることを選手並びに観戦される方々も認識しておいていただきたい。

 さて、2回目を迎えた今大会は、出場選手のレベルが昨年より一段とアップし、見ごたえのある大会となった。まず、ライト級に出場した日本選手の中では、飯島ゆりえが断然トップ。他に松本俊子、太田みつ子、中村泰子といった選手にも仕上りの良さが見られたが、飯島選手を除くと、外国選手に比して見劣りがした。飯島選手がバルク・ブロポーション共に良く、これといった欠点はない。私が見る限り過去最高の仕上り。このクラスは、各選手共に一長一短があり、比較評価が難しく、採点が割れるのではないかと感じた。

 結果は予期した通り、1位から3位まで大接戦となり、全くの僅差で飯島選手の優勝が決まった。飯島選手は全体のバランスが良い。しいて言えば、広背筋の広がりは良いが背中の厚みと、カット、デフィニッションの点で、ややアメリカ勢に引けを取るかと見たが、フリー・ポージングでは、野性味のある曲をよくこなし、出色の出来栄え。個性的で強烈な印象を与えた。この様な野性味と強烈な個性を前面に押し出すと、女性の場合、一つ間違えば大変見苦しくなるものだが、この点もよくこなしており、特に足の運びの上手さは飯島選手ならではのものである。

 2位のシャロン・レイス選手は、背中の厚み、筋量、カット共に抜群で、腹直筋、前鋸筋の良さも際立っていたが、脚に比べ、肩を除いた上体がややスキニーで、特に広背筋下部の筋量が少なく、ウエストの細さと相まって、逆にトルソーの中間部が弱く感じられ、私は辛い採点をした。ポージングはゆったりと一つ一つ丁寧にアピールさせる所に自信の程を窺わせていた。

 3位のダイアン ギャリティーは筋量はさほどではないが、全体のバランスが良く、背中の鋭いカット、デフィニッションは抜群、惜しむらくは、もう少し広背筋の広がりが欲しい。彼女自身で作詞・作曲をして唄っているテーブを持ち込んでのフリー・ポージングは、女らしく、音楽に乗りながらもメリハリがあり、マキシマム表現も十分で、私はもう少し高い評価をした。

 4位のコリネリア・ギューラはプロポーションも良く、総合的には決して悪くないが腹直筋の腱画が小さいため、脂肪はよくカットされているのに腹筋のメリハリが今ひとつ。背中もやや甘かった。ポージングも右に左にと意味なく歩き過ぎ、流し過ぎて一つ一つの決めを欠き、折角の体を生かしきれずにかえって悪く見せてしまった。

 5位のキャリー・ジョーンズは上、下のバランスが良く、腹直筋、脚のカットの良さが目についた。特に大腿二頭筋のカットは女性には珍しく、眼をみはるものがあった。唯、背中がややフラットで甘い。ポージングは決める所は決めながらも女性らしさが表現されており、私はずっと高い評価をした。

 ミドル級は、キャシー・コールとマリアン・ダフーの2選手が他を大きくリードして優勝争いを演じた。コールは広背の広がりも、カット・デフィ二ッションも研ぎ澄まされたように鋭く、さらに大腿四頭筋のカットの見事さは、全参加選手中No1であった。対するダフィーは、小柄ながらも、筋肉の付き具合プロポーションはコールを凌ぎ、上腕三頭筋がやや小さい位で、形よく張りのあるヒップ・ライン、さらに肩から胸、脚と、どこを取っても欠点がない。ボージングもゆったりと、しっかり見せて好感が持てた。結果はカットで上回るコールが優勝したが、ダフィーに、少しカットがあれば逆の順位になったであろう。

 3位のシェリー・マッケンジーは、バルク、カットもあるが、ウエストが太い。さらに猫背で姿勢が悪い上に、体の線が男性的であった。ポージングでこれらはある程度カバー出来るのだが、逆に動きが硬く、その術を持たなかったため、益々男っぽさを強調してしまった。この選手を見て、普段の姿勢と、ボディビルに於ける表現力の大切さを痛感された方も多いと思う。

 4位のアナ・ローザ・エステパもマツケンジーと似た体つきをしていたが、女らしさがあった。しかし全体にカットが甘く、特に腹筋の甘さが目立った。ことに、フリー・ポージングは完全に失敗だった。音楽は、そのほんどがシャカ、シャカという単調なリズムだけ。そして本人は体をくねらせているばかりで、マキシマムの表現はおろか、ポーズの決めもなく、流れ過ぎていた。もし彼女がキッチリとフリー・ポーズを決めていたら、3位と4位が入れ替っていたかも知れない。

 5位のカレン・フェジュファーは、体はやや薄いものの、よくシュイプ・アップされており、三角筋、腹筋のカットが目立った。しかし、いかんせん少々上半身のバルクが不足、ポージングも悪くないのだが、自分の長所、短所をしっかり把握してフリー・ポージングを組み立てていれば、もう少し良く見せられたであろう。
ライト級
 このクラスで抜き出ていたのは飯島ゆりえとシャロン・A・ルイスである。

 飯島は前日行われた国内選抜大会でも過去の日本女性ビルダーの中で最高であることに間違いなかった。そして外国人選手を混じえてのプレジャッジでもバランス良く充実したマッスルは一際冴えて、他の選手と比較しても迫力では一歩抜き出ていた。部分的には肩、胸、背などの上体の発達がとりわけ素晴らしく、大きさ、厚味ともかなりのもの。フリーポーズで飯島らしいしなやかな女性らしさを残しながらも独創的かつ自信に溢れるもので、とくにマスキュラーポーズ時に胸のストリエイションを鋭く出したときの迫力は印象的だった。

 一方のルイスは87NPCナショナル大会で2位を獲得し、個性的な中にも魅力に溢れた選手。カットがシャープで、マッスルもバランス良く発達していた。部分的に腹直筋が際立っていたが他の筋肉も大きく、またセパレーションもいい。ポージングは柔らかく女性的で、自分のポージングを確立しているといった安定感あった。しかし、飯島と比べた場合、やや細く見え、迫力の点で欠けていたことは否めない。

 飯島、ルイスに続くのはダイアン・ギャリティー(アメリカ)である。プロポーションが良く、自作、自演のBGMに乗ったポージングは表現力も豊かで人気も高かった。しかし飯島やルイスに肩を並べるにはもうひとまわり筋量が欲しい。

 コルネリア・ギューラ(西ドイツ)はバックは充実していたがアピール・ポイントが欲しいところ。ただし将来的には楽しみな選手である・キャリー・ジョーンズもやはり上位陣に比べカットが欲しかった。

 このライト級が6位入賞した松本俊子だが、今回はあまり冴えがなかった。松本の持ち味である鋭いカットが出ていれば、筋量的には劣るだろうが、単に6位という位置には収まらなかったのではないだろうか。
3位☆ダイアン・ギャリティー(アメリカ)

3位☆ダイアン・ギャリティー(アメリカ)

左からコルネリア・ギューラ、ダイアン・ギャリティー、キャリー・ジョーンズ

左からコルネリア・ギューラ、ダイアン・ギャリティー、キャリー・ジョーンズ

左から松本俊子、太田みつ子、中村泰子

左から松本俊子、太田みつ子、中村泰子

6位☆松本俊子(日本)

6位☆松本俊子(日本)

ミドル級
1位☆キャシー・コール(アメリカ)

1位☆キャシー・コール(アメリカ)

2位☆マリアン・ダフィー(アメリカ)

2位☆マリアン・ダフィー(アメリカ)

3位☆シェリー・マッケンジー(カナダ)

3位☆シェリー・マッケンジー(カナダ)

4位☆アナ・ローザ・エステバ(スペイン)

4位☆アナ・ローザ・エステバ(スペイン)

コールとダフィー、ダフィーはアウトラインが豊かだ。しかしカット、デフィニションではコールが数段勝っている

コールとダフィー、ダフィーはアウトラインが豊かだ。しかしカット、デフィニションではコールが数段勝っている

 最後のヘビー級は、上位5名が全く違ったタイプで、各ジャッジを悩ませた。

 1位のオードリー・ルイーズ・ハリスは、デフィニッションはやや不足気味だが、ウェストが細く、肩、広背、大胸、腕、脚と実にバランスよく発達。プロポーションの良さでは、全選手中、最高の感がある。黒人ながら、カーフも良く発達しており。加えて個性的なフリー・ポージングも良い出来で、特に捻りを上手く使って、少し甘い腹筋カバーする所など憎いばかりであった。

 さて、問題は2位争い。オランダのレニー・トップスと、ハニー・パン・エイケン、トップスは、よくシェイプアップされており、肩・背中のカットに加えて、上腕二頭筋と脚のカット、前鋸筋の良さが目についた。オーソドックスだがポージングも工夫されていた。対するエイケンは、超弩級のバルクを誇り、その筋量の豊かさは、まさに重戦車の感があった。しかしながら非常に女らしい線を持ってり、ポージングら手なれたもの。昨年度世界選手権2位の貫禄が見られたが、いかんせん絞り込みがなく、カット不足。しかし、これだけのバルクをもってすれば 評価はさておき、それだけで観客を楽しませて余りあるものがある。結果はトップス2位、エイケン3位となったが、エイケンに対する私の採点はもっと辛かった。彼女の実力からして、トップ・シェイプで臨めば楽勝で知たと思うが、今回は、どうもコンテストそのものを楽しんでいる風であった。

 4位のマリオン・ウルマーは筋肉のカットと発達度のみで言えば、おそらく全出場選手中No1であろう。特に肩と背中の広がりと厚み、深く刻まれた腹直筋と前鋸筋には驚かされた。しかし、その体は女性と言うより、男性のコピーに近かった。エイケンがあれだけのバルクを持ちながら、女性らしさがあるのに対して、何と言う違いなのか。ミス・オリンピアを始め、世界のトップ・クラスのコンテストに於いては、いくら筋肉をつけようが、あくまでも女性らしい筋肉の発達でなければ通用しない。顔とブラジャーの部分を覆ってて、男か女か解らないような体では、女性ビルダーとして、高い評価はなされない。

 5位のジル・マックフィーニはプロポーションが良く、大腿部の形良い発達が目についたが、意味のない動きが再三見られた。また、広背の広がりに、やや物足りなさを感じたのと、バランス的に腕の細さとカット不足が気になった。これらの点は今後の課題となろうが、私はもう少し高く評価した。

 全体を通じ、大会が年々レベル・アップされ、来年が楽しみである。I.F.B.B.本部でも、この大会を重要な大会とみなし、力を入れていれている。招待選手権という性格からして、主催者側は大変であるが、ボディビル普及のためには、テレビを始め、マスメディアにも乗り、さらには単一のコンテストとは異なって、スポーツ・フェアという観客動員の大きなエリアの中で催されるこの大会は大変意義がある。益々本大会が発展し、国際大会として確固たる位置づけがなされることを願って止まない。

ジャッジ/後藤紀久

新緑の候にふさわしい晴天に恵まれ、88年第2回国際女子アマチュアボディビル招待選手権大会が開催された。今年はライト級4名、ミドル級7名、ヘビー級8名の外国勢と前日の国内選抜大会(19名出場)で選ばれた10名に1名の選手を加えた日本勢との合計30名出場という大規模な大会となった。震災はJ・ブロマート審査委員長(ベルギー)の指揮の下に、国内5名と外国人2名の計7名の国際公認審査員によって行われた。私は73年にクアラルンプールで国際ジャッジのライセンスを取得して以来6回目の審査である。試合開始前に度々話した。隣りの席のアメリカ人女性、サンディー・ラナリィさんは、今回がライセンスを取ってから初めての国際審査で心細いと言っていた。職業は看護婦である。外国招待選手はいずれも各国のナショナルチャンピオンまたは上位入賞者であり、その中には世界的レベルでも優秀な成績をおさめた選手も出場している。

 ライト級は4名の外国選手と日本の飯島ゆりえとの戦いという試合様相となった。中でもシャロン・アニタ・ルイス(USA)は、ややスリムであるが、仕上がりもよく、特にバックのデフィニションが美しい。ダイアン・ギャリティ (USA)はルイスと類似した体型で、大腿二頭筋やバックにも遜色はなかった。この2人と異なったタイプの飯島との戦いは興味があった。飯島はライト級とは信じれないバルクの中に、デフィニションとパスキュラリティを伴う密度の高い超迫力ボディで登場した。選手としての彼女を見るのは昨年の本大会以未久しぶりであるが、この間の発達にはただ驚くばかりであった。マスキュラーポーズをとらず、軽く流れるように演じたので、その強烈さが柔らぎすくわれた。ルイスはよう小柄の為、迫力で飯島に譲っていたが、その分、とても美しい魅力が現われいた。コルネリア・ギューラ(西独)は大腿部のカット不足が否めない。キャリー・ジョーンズ(英国)は筋肉に訴える点がなく、種々の面で一歩見劣りして感じられた。松本俊子もよく頑張っていたが、5位のジョーンズとの点差も大きく、残念ながら上位5名との戦いではなく 、日本人選手間での競合の中に居た。このクラスの審査はとても容易であったと思う。

 ミドル級には7名もの外国人選手が出場し、日本選手達が入賞するには厳しいクラスとなった。その中にはNPCナショナルの2位と4位、そしてカナダ2位などの強豪も出場していた。特にキャシー・コール (USA)とマリアン・ダフィー(USA)は甲乙つけがたい状態であり、この2人の優位評価には悩み迷った。どのジャッジも苦労したらしい。ダフィーは背が低く、プロポーション的に損をしていたし、コールの方が幾分カットに勝り、ポージンダ面でもやや上であったようだ。USAの2人に比べて一歩も二歩も劣るが第2グループのシェリー・マッケンジー(カナダ)とアナ・ローザ・エステバ(スペイン)の比較も難しい部分を含んでいた。マッケンジーは男性的で、一方のエステバは女性らしいポーズで競ったが、腰をクネクネ動かしすぎるのが気になった。カレン・フェジュファー(カナダ)とレイチェル・アイリーン・ウィリアムス(シンガポール在住の白人)の2人は、大柄で本来はヘビー級に出場する体と感じた。ウィリアムスは今年も脚部に脂肪が残り、フェジュファーは未完成であった。日本選手は、須藤ゆきがロビン・ブーン(オーストラリア)と競ったのが最高という結果に終った。この級で日本選手が戦うのには一層のバルクアップを必要とする。

 ヘビー級は男性選手顔負けの圧倒的なバルクのハニー・パン・エイケン (オランダ87世界2位)の評価をいかにするかによって順位が動くという他は、審査が比較旳簡単であったオードリー・ルイーズ・ハリス (USA)は見事に 細くしまったウエストと広大なラッツをもち、逆三角形そのものを誇っていた。ポーズもとても自然でしなやかであったし、プロポーションも抜群であった。大腿部のカットは特に際立っていた。レニー・トップス('87世界4位)は、バックはよいが、腹筋が甘かった。私が役員として参加した一昨年の世界選手権でエイケンを初めて見たが、その時に比べて、あまりに 沢山の脂肪をつけていた。その分、一層の丸みのあるバルクを感じた。たとえ絞って出場していたとしても、身長と筋量とのつり合いからみて、過剰発達の域に達しており、優勝という栄冠は与えられない気がした。マリオン・ウルマー(西独)は最も男性的であり、肩、胸、腹を中心として、上体に鎧の樣な筋肉の凄味が目立った。エイケンと同様に順位づけが難しく、多くの選手間で比較された。ジル・マックフィニー(カナダ)は腹筋の充実が弱い体で魅力に乏しかったし、アン・ジョーンズ・キンバリー(英国)は厚みが無く、ポーズも定まらない。

 ……以上が私に感想である。正式順位と自分の採点とがほとんど一致し、今、安堵している(敬称略)
ミドル級
 ライト級では飯島とルイス、ヘビー級ではハリスとエイケンなどの登場で印象深かったのに対し、このミドル級はそれに比較してインパクト面では物足りなかったかもしれない。しかし個々の選手を見た場合、上位に入った選手はやはり筋量及びカットを充実し、レベル的にも相当なものだった。

 このクラスの注目の的はキャシー・コール(アメリカ)。コールは87NPCナショナル大会ミドル級2位の選手で、過去にもNPCで上位入賞を幾つか重ねている。コールの身体の特徴はスレンダーでありながらも、細部にわたって鋭いキレが担っていること。特に上背部から肩、腕にかけてのカットと大臀筋からカーフにかけてのカットはシャープだった。また筋肉がよく伸び、ポーズをとるとひと際迫力を増した。仕上がりという点ではこのクラスのみならず、大会選手中抜群であり、従ってコールの優勝は当然ともいえるだろう。

 コールが直線的な身体であるのに対し、マリアン・ダフィーも87NPCナショナル大会に出場しライト級で4位という成績を挙げている。全身のバランスも良く、相当な力量を持つ選手なのだが、コールの鋭さに匹敵するセールス・ポイントがなかった。

 シェリー・マッケンジー(カナダ)は身体だけでなくポーズも男性的な選手である。非常に張りのあるマッスルなのだが、他の外国選手が観客の注意の引き方がうまかったのに対して、マッケンジーのポージングは堅く、やや単調であり、加えて姿勢も気になる。上位2選手に負けない内容を持ちながらも今ひとつ冴えなかったのはこの点が大きかったといえよう。

 アナ・ローザ・エステバ(スペイン)はスペインのチャンピオン。またウエストから広背にかけてのラインの広がりに欠けていたのが惜しまれる。ポージングは少々品格に欠け、マキシマムも不十分。

 カレン・フェジュファー(カナダ)は身体もポージングもこれからの選手だろう。レイチェル・アイリーン・ウィリアムス(シンガポール)はアジア女子選手権の常連で、プロポーションに優れ、舞台ではひと際大きく見える選手であるが、筋量はまだまだ欲しい。
5位☆カレン・フェジュファー(カナダ)

5位☆カレン・フェジュファー(カナダ)

6位☆レイチェル・アイリーン・ウィリアムス(シンガポール)

6位☆レイチェル・アイリーン・ウィリアムス(シンガポール)

マッケンジーとエステバ。マッケンジーのポーズは堅すぎるのだが、対照にエステバはむしろ妙に柔かすぎた。

マッケンジーとエステバ。マッケンジーのポーズは堅すぎるのだが、対照にエステバはむしろ妙に柔かすぎた。

ヘビー級
1位☆オードリー・ルイーズ・ハリス(アメリカ)

1位☆オードリー・ルイーズ・ハリス(アメリカ)

2位☆レニー・トップス(オランダ)

2位☆レニー・トップス(オランダ)

3位☆ハニー・バン・エイケン(オランダ)

3位☆ハニー・バン・エイケン(オランダ)

4位☆マリオン・ウルマー(西ドイツ)

4位☆マリオン・ウルマー(西ドイツ)

5位☆ジル・マックフィニー(カナダ)

5位☆ジル・マックフィニー(カナダ)

6位☆アン・ジョーンズ・キンバリー(イギリス)

6位☆アン・ジョーンズ・キンバリー(イギリス)

ジャッジ/中尾尚志

 I.F.B.B.準公式大会として世界9カ国から招待された外国人選手に、国内予選を勝ちぬいて来た日本人選手がどこまで善載するかが今大会の最大の感心事だった。しかし、終ってしまえば3クラスを通じて6位入賞をはたしたのが2名だけと言うさびしい結果になってしまった。この季節、日本国内ではコンテストシーズンには、少し早く、そのためか十分な調整もしないまま大会に臨んだ選手がかなりいたようだ。それはそれで仕方がないことで、選手一人一人がしっかり自分のターゲットを決めている現れなのだろう。

 しかし出るからには最善をつくすと うことでは、外国人選手と日本人選手の間には歴然とした差があったのではないか。この中にあってライトクラスで優勝した飯島選手が過去最高の状態で大会に臨んだ姿勢には感心させられるものがあった。2位のルイス選手との差はたぶん僅差であったと思われるが、やっと世界に通じる日本人選手が現われたと言うほど素晴しい出来であった。

 昨年もそうであったが、大会前のウェルカムパーティから私の目はジャッジとして選手達をみて来た。昨年外国人選手を初めてみた印象は、有名無名選手を問わず、なんと色々な感じの女性達が集ったものだと感心させられた。とにかく美人が多かったことも印象に残っている。全体的に華やかな感じでやはり招待コンテストとはこんなものなのかなと感じたものである。さて、今年はと言うと、華やかさには欠けるものの、かなり、調整して来たと一目でわかる選手が何人もいたのには驚かされた。どうやら今年の大会は、昨年よりはもっときびしいものになるであろうしいう予感があった。

 さて、コンテストに入ってみると案の定外国人選手の数名はこのコンテストに賭けて来たと言う気迫が感じとられた。最初のプレジャッジて感じたのは、ライトとミドルに関して上位選手の選抜にはあまり問題はなかった。しかしヘビーにいたってはハリス選手の1位は動かないとして、2位以下の選手の基準をどこに置くかが一番問題となった。

 では、プレジャッジ、ファイナルを通じて各クラスの選手に対する私なりの意見を述べてみたい。まずライトクラス。これは最初から飯島選手とルイス選手の勝負になるのは見えていた。全体にバランスのとれた筋量の飯島選手に対して、ルイス選手のキメ細かな上半身のカットが目をひいた。3位のギャリティーはチャーミングな感じで、きびきびしたポージングは好感が持てたが体型的に胸が太く思われた。それにくらべて4位のギューラ選手はV字型のボディーラインはビルダーらしいが今一つ鍛え込みが足りなかったようだ。

 ミドルクラスは、1位のコール選手は見事にカットアップされてはいたが、少し減量しすぎの感もあった。クラシックバレエのターンの動作を入れたフリーポーズなどはエレガントにも思えたが、全体には少し固さが目についた。2位のダフィー選手は今大会の外人選手の中で私が特に高い評価をつけた一人である。ポーズのマキシマム時における表現力は素晴ちしく、サイドチェストなどにそれがよく出ていた。この2名以外はあまり印象に残っていない。

 最後にヘビークラスだが、ハリス選手の1位は当然だと思う。すごい体だがそれでいて女性らしく、嫌味のないものであった。あの大変な背中の広がりはウェルカムパーティの時からドレスを通してわかっていた。さて順位に戻るが、2位になったトップス選手は全体にまとまってはいたがミドルセクションのあまさは私としては納得がいかない。3位のエイケン選手は圧倒的なバルクにものを言わせてギャラリーを沸かせたが、やはりカット不足は否めない。並の男性ビルダーよりもバルクを感じさせるあの体ではあるが、女性を忘れさせないものももっていた。4位のウルマー選手はどう評価してよいのやら一番悩まされた選手である。あの三角筋の感じからして、これで女性ビルダーなのかなぁと思わされた。しかし懸命に女性らしさを表現しようとしていたのが、かえって不憫に映った。ヘビークラスで、一人だけ印象に残った選手がいた。スペインのセラーノ選手である。脂肪のベールに包まれてはいたが、バランスからみて、今後の努力次第で素晴らしいビルダーになる可能性を持っていると感じた。

 華やかな中にも、きびしいものを感じさせられた2回大会も無事終了し、来年の3回大会を待つだけです。来年も飯島選手のように欧米選手に勝るとも劣らない日本人選手がー人でも多く出現してくれることを期待して、私なりの後評をしめくくりたいと思います。

ジャッジ/温井国昭

 1988年度「第2回国際女子アマチュアボディビル招待選手権大会」が5月17日代々木第2体育館で開催された。

 ギリシャ風のステージ上で世界9カ国から集まった20名の外国選手と10名の日本選手との肉体美の競演である。

 前年度は屋外ステージという関係から照明等の不備も有り、行き届かなかった点もあったが、今回は屋内ステージということであり、選手も審査員も最高のコンディションのもとに開催できたと思う。

 ライト級1位の飯島選手は今大会出場選手中、最高のバルク、デフィニションであったが、女性らしさと優雅さに欠けていた。彼女には今回の大会を機に他の大会にも是非出場して頑張って貰いたい。
 ヘビー級1位オードリー・L・ハリス選手は黒人特有の柔軟な体とバツグンのプロポーションとキレをともなった素晴しい選手である。

 また、ヘビー級3位のハニー・V・エイケン選手は男性ビルダー顔負けのバルクはあったが、残念なことにデフィニションに欠けていた。しかし、人気は大変なものだった。

 外国選手が全員粒揃いで素晴しい出来てあったのに対し、日本の選手は2~3名を除いて、あまりにも調整不良が目立ち、見るに耐えなかった。各自理由は有るにしろ、5月に大会があり、出場すると決めたからには、自分のベストに持ち込むということが、観客の皆様に対するエチケットではなかろうか。次回からは十分に気を付けて欲しいと切に希望する。

 ゲストポーズでは前回優勝のサンディ・バームリー、ゲイル・バームリーの双子の姉妹の美しく、スピーディなポージングは満員の観客を夢の世界へと誘い、魅了した。これぞまさしく女性のボディビルである。審査員として良い思い出ができた。
ヘビー級
ハリスとエイケン。エイケンは昨年度のユニバース・ヘビー級2位、一方のはハリスはコースタルアメリカ選手権で1位。筋量では比較にならないが、ハリスのプロポーション、知的で洗練されたアピールはエイケンでも及ばない。

ハリスとエイケン。エイケンは昨年度のユニバース・ヘビー級2位、一方のはハリスはコースタルアメリカ選手権で1位。筋量では比較にならないが、ハリスのプロポーション、知的で洗練されたアピールはエイケンでも及ばない。

大変に印象深くもあるが、評価も非常に難しいクラスであった。87IFBBユニバース・ヘビー級2位のハニー・V・エイケン、同4位のレニー・トップスらが出場し、会場が終始興奮の歓声に包まれて止まらなかったのもこのクラスである。

 しかし、このクラスで優勝したのはエイケンでもトップスでもなかった。日本では全く無名と言って良いオードリー・L・ハリス(アメリカ)である。ボルディング歴は6年、87女子ナショナルズで3位、同年コースタールアメリカ選手権では優勝している。婦人警官という職業柄のために、多くの大会に出る機械が無かったのだろうか。だが、ラインナップの時点で彼女が優勝するのは確実と思われた。プロポーションではこの上ない素質を持っており、筋量も豊富。ポージングでは身体の柔らかさを見事に表現し、魅力を十二分に発揮していた。総合優勝と言うべき”国際スポーツフェア大賞”を受賞したのも十分に納得できる内容を持った選手である。

 ところで、昨年この大会で驚かされたのはオランダの選手である。ライト級2位だったイチ・ロプリサ、ミドル級3位だったティナ・ウッドレイ・ロプリサはその後IFBBユニバースでライト級2位となり、ウッドレイはミドル級で2位と大活躍している。「女性らしさ」にかけている指摘があった両選手ではあるが、筋量では非の打ちどころがなかった。

 そして今年もまたオランダの選手は観客から大きな声援を浴びた。ハニー・V・エイケンは人気では大会全選手中最高だった。バルクは超一級であり、筋肉の伸びも素晴らしい。ただし、82kgという体重が示すように調整としてはかなり甘い。また、レニー・トップスはバルクではエイケンに及ばないものの、やはりかなりの筋量を備えていた。

 1位はハリスとして間違いないが、エイケンとトップスの2位争いは興味があった。調整ではトップスに分があるが、エイケンのバルクにも大変な迫力がある。ポージングによる表現ではトップスがオーソドックスにうまくまとめた一方、エイケンは女性らしさを出しながらもやや品格の面で落ちていたのではないだろうか。

 さて、4位のマリオン・ウルマー(西ドイツ)もまた問題の多い選手である。いかにも筋肉質という感じで、筋肉の発達では上位陣に決してひけはとらない。ただし、その身体つきは男性に近い。ウエストが太いために女性らしい柔和なラインに欠け、見劣りしたのは否めない。確かに大変な選手であるが、審査の対象となると損な選手である。

 ジル・マックフィニー(カナダ)はプロポーションが良くポージングも無難にこなしていたが、今ひとつアピールが弱く、キンバリ・A・ジョーンズ(イギリス)も上位に比較するには筋量及びカットが欲しい。しかし、両選手ともやはりかなりの実力を持った選手であることには間違いない。
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月刊ボディビルディング1988年7月号

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