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なんでもQ&Aお答えします 1986年8月号

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月刊ボディビルディング1986年8月号
掲載日:2022.01.06

練習しても筋肉が発達しないのは体質か

Q  ボディビルを始めて約1年、自宅で1人でトレーニングしています。開始時より現在まで、下記のスケジュールでトレーニングしていますが、あまり効果はあがりません。体位も思ったより増えず、体重もほとんど変化ありません。体質的にいって、僕の場合、ボディビルに向かない体質なのでしょうか。もしそうであればこのままボディビルを続けても無駄だと思うのですが、いかがでしようか。よいアドバイスがあったらお願いします。

《スケジュール》(週6日)
①スクワット 30~50kg 4セット
②ベンチ・プレス 20~30kg 4セット
③ベント・オーバー・ローイング 30~40kg 4セット
④フロント・プレス 10~15kg 4セット
⑤バーベル・カール 10~15kg 4セット
⑥シット・アップ 50回×4セット
〔註〕練習後の疲労感はかなり強い。

《体位》
身長177cm、体重56kg、胸囲81cm、上腕囲29cm、腹囲67cm

(東京都 Y・T 21歳 学生)
A  ウェイト・トレーニングなどで筋肉を発達させるには、正しい(適度な)トレーニングと、正しい栄養摂取、充分な休養の3つがそろわなくてはいけません。このうち、トレーニングに関しては有名なルーの3原則というものがあります。
すなわち、
①筋肉は使わなければおとろえてしまう。
②筋肉は使いすぎるとおとろえてしまう。
③筋肉は適度に使うと発達する(作業性肥大)。

 あなたの場合、トレーニング・スケジュールが週6日となっていますが、これではルーの3原則の②になってしまい、よくありません。筋肉はトレーニングした翌日は休ませてやらなければいけません。
 初心者の場合、週3回1日おきのトレーニングで充分です。また中・上級者で連日トレーニングを行なう場合でも、同じ部位のトレーニングは2日続けては行ないません(ただし、腹筋と前腕とカーフは例外)。
 また、あなたの体位を拝見すると、やせ型のようですので、トレーニングのやりすぎは特に禁物です。セット数も最初は3セット位で充分です。特にやせている人が、全く初めて行なう時は2セットでもかまいません。トレーニング後の疲労感がかなりあるようですが、あなたの場合は、トレーニング後に心地よい疲労感が残る程度のトレーニングが適切です。
 トレーニングの翌日は充分体を休ませて下さい。また、毎日睡眠も充分にとるようにして下さい。
 トレーニングをするばかりで、栄養のことを考えないのは片手落ちです。筋肉を発達させ、体重を増やしたいのであれば、各栄養素とも充分に摂りましょう。特にたんぱく質と炭水化物をたっぷりと摂る必要があります。1日3回の食事を充実させ、間食もうまく利用して下さい。
 では最後にトレーニング・スケジュール例を記します。

《トレーニング・スケジュール例》
(隔日的 週3日)
①ベンチ・プレス 3セット
②ベント・オーバー・ローイング 3セット
③フロント・プレス 3セット
④バーベル・カール 3セット
⑤スクワット 3セット
⑥シット・アップ 2セット

 使用する重量と回数については、正確なフォームで10~12回がやっと反復できるものを用いて下さい。また、1カ月ぐらい経過したら、ベンチ・プレス、ベント・オーバー・ローイング、スクワットの3種目は1セットずつ追加して下さい。

週2日制の場合の採用種目とセット数

Q  ボディビルを始めてまだ1カ月の高校2年生です。ジムに通ってトレーニングしていますが、いろいろな事情があるため現在は週に2日しかジムに行けません。少しでも早く筋肉をつけたいと思い、自宅にバーベル、ダンベルを購入したのですが、時間が充分にとれないため、あまり満足のいくトレーニングは出来ません。
 ジムでは下記のトレーニング種目を3~4セット行なっていますが、週2日しかトレーニングできないことを考えて、種目とセット数をもっと増やそうと思います。そこで、どんな種目を加えたらよいのか、セット数はどれくらいまで増やしたらよいのかをアドバイスしてください。
 また、タンパク質を摂る場合、1日のうちのどの時間帯に多く摂ればよいのでしょうか。御指導お願いします。

《現在の採用種目》(週2日)
〇ベント・オーバー・ローイング
〇バーベル・カール
〇バック・プレス
〇ベンチ・プレス
〇スクワット
〇シット・アップ
〇アップ・ライト・ロー

《体位》
身長169cm、体重56kg、胸囲82cm、上腕囲25cm(左右共)

(神戸市 網町孝治 17歳 高2)
A  「忙しくてジムに行けない」「トレーニングの時間が充分に取れない」これらは多くの人の悩みでしょう。しかし、あなたのように週2回でもトレーニングを行なおうとする気持が大切です。週1回のトレーニングでは現状維持程度ですが週2回行なえばある程度発達が望めます。頑張りましょう。
 さて、種目とセット数をもっと増やすことを望まれていますが、あなたはまだ高校2年生で、トレーニング歴も1ヵ月ということもあり、また体位を拝見すると多少やせ型でもあるようですので、最初から欲張ったトレーニングはかえってよくありません。徐々にトレーニング強度を強めていくようにしましょう。
 とりあえず、これからの2ヵ月程の間は、次のトレーニング・スケジュールで行なって下さい。

《トレーニング・スケジュール例》(週2日)
①ベンチ・プレス 4セット
②ベント・オーバーローイング 4セット
③バック・プレス 3セット
④バーベル・カール 3セット
⑤スクワット 4セット
⑥シット・アップ 2セット

 そして体力的にも余裕が出て来たら種目・セット数を増やした次のコースを参考にしてトレーニングを行なって下さい。

《トレーニング・スケジュール例》(週2日)
①ベンチ・プレス 5セット
②ラタラル・レイズ・ライイング 3セット
③ラットマシン・プル・ダウン 4セット
④ベント・オーバー・ローイング 4セット
⑤バック・プレス 3セット
⑥アップライト・ローイング 3セット
⑦バーベル・カール 3セット
⑧インクライン・ダンベル・カール 3セット
⑨ラットマシン・プレス・ダウン 3セット
⑩スクワット 5セット
⑪シット・アップ 3セット

 このスケジュールを続けていき、さらに体力的に余裕が出て来たなら、バック・プレス、バーベル・カール、ラットマシン・プレス・ダウンの3種目を1セットずつ追加して下さい。
 たんぱく質の摂取の時間についてはポポワというソ連の運動生理学者が行なった実験によれば、トレーニングの30分ぐらい前と、トレーニング直後に高たんぱく食を摂るのが最も効果的であることがわかっています(別表参照)、トレーニングの前後にプロテインなどの高たんぱく食を摂るのがよいですね。寝る前に摂るのも体重増加に効果的です。
記事画像1

上背中央部の筋肉群に有効なトレーニング法

Q  トレーニングを始めて3年になります。背中のトレーニングに関して質問したいことがあります。今までの背中のトレーニングは広げることに重点を置いて行なってきました。そのため背中の広がりについては満足しているのですが、上背中央部に起伏がなく貧弱に見えてしまいます。
 上背の中央部と上部には、菱形筋、肩甲挙筋、仙棘筋、僧帽筋があると聞いています。これらの筋肉群を鍛えれば、背中に起伏ができて逞しく見えると思います。
 そこで上記の筋肉群に有効なトレーニングを教えてください。現在のトレーニング・スケジュールと体位を下記しますのでよろしくお願いします。

《現在のスケジュール》(2分割法・週4日)
◎Aコース(月曜・木曜)
①スクワット 50~110kg 5セット
②レッグ・カール 40kg 5セット
③カーフ・レイズ 70kg 5セット
④フロント・プレス 25kg 3セット
⑤サイド・レイズ 7kg 3セット
⑥フレンチ・プレス 20kg 3セット
⑦プレス・ダウン 15kg 2セット
⑧インクライン・カール 10kg 3セット
⑨シット・アップ 20回×2セット

◎Bコース(火曜・金曜)
①チンニング 6セット
②ラット・マシン・プル・ダウン 30kg 5セット
③ラット・マシン・プル・ダウン・ビハインド・ネック 25kg 5セット
④ベンチ・プレス 40~70kg 5セット
⑤インクライン・ベンチ・プレス 40~50kg 4セット
⑥ダンベル・フライ 片方10kg 3セット
⑦シット・アップ 20回×2セット

《体位》
身長169cm、体重65kg、胸囲104cm、腹囲68㎝、上腕囲35cm、太腿囲56cm

(東京都 S・A 25歳)
A  上背部には、あなたの言われる通り多くの筋群(広背筋、大円筋、僧帽筋のほか、小円筋、棘下筋、肩甲挙筋、大菱形筋、仙棘筋上部等)がありますが、これらは僧帽筋、三角筋、広背筋のトレーニングでも発達します。
 しかし、あなたの現在のトレーニングでは、広背筋を広げるための種目だけで、ローイング系統の種目がなく、また僧帽筋のトレーニングも行なっていません。まず、これらの種目を加えると共に、上背の専門種目を行うとよいでしょう。
 ではつぎに、あなたのトレーニング・スケジュールの問題点を述べます。週4日の2分割法で、あなたの場合まず、肩・腕をトレーニングして、その翌日に背、胸を行なっていますが、これでは背・胸の時に補助筋として使う腕や肩を前日に行なってしまっているので、背・胸に充分に効かないだけでなく、腕などオーバー・ワークになりやすく、よくありません。Aコースに胸・肩・上腕三頭筋、Bコースに背・上腕二頭筋・脚というように充当するのが一般的な分割のしかたです。
 ただ、上背を重点的にトレーニングしようとすると、どうしても分割の方法に問題が生じてきます。というのは前述のように上背は僧帽筋、三角筋、広背筋と連動しますが、普通の分割法では肩と背は別々に行ないます。そこで、ここでは上背の発達をメインに考え、胸・背・肩をAコースに、そして残りの腕・脚をBコースに組む分割法を後述します
 さて、前置きが長くなりましたが、上背のトレーニング種目について説明します。

◎ハイ・クリーン及びクリーン・アンド・プレス
 上背部全体のバルクを増す。

◎ハイ・プルアップ
 両手の間隔を肩幅よりも狭くしてバーベルをオーバー・グリップで持ち、大腿部のあたりから頭上へ引きあげる運動。バーベルを頭上に引きあげたときに手首を返さないようにする。僧帽筋、上背の諸筋(大菱形筋・肩甲挙筋)、三角筋に有効。〔写真参照〕
ハイ・プルアップ

ハイ・プルアップ

◎ベント・オーバー・ダンベル・エクササイズ
 両手にそれぞれダンベルを持ち、ベント・オーバーの体勢で両腕を旋回させる種類の運動をいう。次に示すように多様なやり方がある。
ⓐ両腕を伸ばしたまま前方へ上げ、前から横、さらに後方へと左右のダンベルを平泳ぎのような動作で移動させ、臀部のあたりまで移動させたなら、いったん下におろし前方からの動作をくり返す。
ⓑⓐと同じ要領でダンベルを臀部のあたりまで移動させたら、下へおろさないで逆動作によって前へ戻す。〔写真参照〕
ベント・オーバー・ダンベル・エクササイズ

ベント・オーバー・ダンベル・エクササイズ

ⓒ水泳のバタフライのような動作を行う。
ⓓ水泳のフリー・スタイルのような動作を行う。・・・・・・etc
上背部全体の各筋群の隆起を促す。


 では次にトレーニング・スケジュール例を作成します。
◆Aコース(月曜・木曜)
①ベンチ・プレス 5セット
②インクライン・ベンチ・プレス 4セット
③ダンベル・フライ 3セット
④チンニング 5セット
⑤ベント・オーバー・ローイング 4セット
⑥ワン・ハンド・ローイング 3セット
⑦バック・プレス 4セット
⑧サイド・レイズ 3セット
⑨ハイ・プルアップ 3セット
⑩ベント・オーバー・タンベル・エクササイズ 3セット
⑪シット・アップ 2セット

◆Bコース(火曜・金曜)
①フレンチ・プレス 3セット
②プレス・ダウン 3セット
③バーベル・カール 3セット
④インクライン・カール 3セット
⑤スクワット 5セット
⑥レッグ・カール 5セット
⑦カーフ・レイズ 5セット
⑧ハイパー・バック・エクステンション 2セット
⑨レッグ・レイズ 2セット

分割法を採用したら効果がなくなってしまったが

Q  トレーニング歴は2年です。5カ月ほど前から分割法を採用し、下記の内容でトレーニングしています。
 ところが、分割法を採用して以来、トレーニングの翌日に残る疲労が大きくなり、筋肉の発達も止まってしまったように思います。自分では無理のないスケジュールを組んだつもりなのですが、やはり私には分割法は合わないのでしょうか。よいアドバイスがあったらお願いします。

《トレーニング・スケジュール》
◆Aコース(月曜、木曜)
①ベンチ・プレス 40~60kg 6セット
②ダンベル・ベンチ・プレス 10kg 4セット
③ダンベル・フライ 10kg 4セット
④プルオーバー 12.5kg 4セット
⑤フレンチ・プレス 15kg 4セット
⑥プレス・ダウン 20kg 4セット
⑦シット・アップ 50回 3セット

◆Bコース(火曜・金曜)
①ベント・オーバー・ローイング 40kg 6セット
②ワンハンド・ロー 12.5kg 5セット
③ラット・マシン・プルダウン 30kg 5セット
④バーベル・カール 20kg 4セット
⑤インクライン・カール 8kg 4セット
⑥オルターニット・ダンベル・カール 8kg 4セット
⑦レッグ・レイズ 50回 3セット

◆Cコース(水曜・土曜)
①スクワット 100kg 6セット
②レッグ・カール 30kg 6セット
③カーフ・レイズ 70kg 5セット
④フロント・プレス 20kg 5セット
⑤サイド・レイズ 5kg 5セット
⑥アップ・ライト・ロー 25kg 5セット
⑦シット・アップ 50回 3セット

(神奈川県 T・U 30歳 会社員)
A  普通、分割法を採用するのはトレーニングにより体力が向上し、種目数なども増え、1日で全身を行なうには負担が大きくなった場合などが多いのですが、あなたの場合、分割法にしたためにかえって疲労感が大きくなってしまったようですね。しかし、これは分割の方法がよくなかったためで、分割があなたに合わないということでは決っしてありません。多分、いきなり3分割法にしたために、休日が日曜日しかなく、このために疲労回復がスムーズにいっていないものと思われます。まずはA・Bの2分割法で、週4日のトレーニングをしてみてはいかがでしょうか?そして体力的にも余裕が出てきたらA・B・C3分割とか、A・B2分割で週6日にすればよいのです。
 では、A・B2分割法によるトレーニング・スケジュール例を作成してみますので参考にしてください。

《トレーニング・スケジュール例》
◆Aコース(月曜・木曜)
①ベンチ・プレス 5セット
②ダンベル・フライ 4セット
③インクライン・ベンチ・プレス 4セット
④ディップス 4セット
⑤フロント・プレス 4セット
⑥サイド・レイズ 4セット
⑦アップ・ライト・ロー 4セット
⑧フレンチ・プレス 4セット
⑨プレス・ダウン 4セット
⑩シット・アップ 3セット

◆Bコース(火曜・金曜)
①ラット・マシン・プルダウン 5セット
②ベント・オーバー・ローイング 4セット
③ワンハンド・ロー 4セット
④バーベル・カール 4セット
⑤インクライン・ダンベル・カール 4セット
⑥オルターニット・ダンベル・カール 6セット
⑦スクワット 6セット
⑧レッグ・カール 5セット
⑨カーフ・レイズ 4セット
⑩レッグ・レイズ 3セット


 あなたの現在の種目とは多少異なる点もあります。また、あなたのスケジュールでは、ダンベル・ベンチ・プレスとダンベル・フライがともに10kgとなっていますが、普通、この2種目ではダンベル・ベンチ・プレスの方が高重量が扱えます。もう一度両方のフォームなどを確認してみて下さい(ここに記したトレーニング・スケジュール例には、ダンベル・ベンチ・プレスは含まれていませんが・・・・・・)。
〔回答はトレーニング・プラザ代々木・野沢秀雄先生、工藤悦弘先生演技指導は平井トレーニング・センター会長・熊岡健夫先生〕
月刊ボディビルディング1986年8月号

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