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食事と栄養の最新トピックス(27) ~ ボディビルと健康管理 ~

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月刊ボディビルディング1983年5月号
掲載日:2020.10.19
健康体力研究所 野 沢 秀 雄

1.アメリカの最新の考え方

「すごい体になってるけれど何のスポーツやってますか?」と聞かれた時「ボディビルです」と胸を張って言える人は少ない。「お宅ではどんなトレーニングを指導しているのですか?」と経営する人たちに電話がかかってきた時、「ボディビルです」となかなか言えず、「ウェイトトレーニングです」と答える人が圧倒的に多いだろう。実際にジムの名称を「○○ボディビルセンター」から「○○トレーニングセンター」とか「○○トレーニングプラザ」というように、トレーニングを前面に打ち出した名称に変えるケースが多い。

 「バーベルやダンベルを使用した練習なので、どちらも同義語だ。トレーニングセンターとした方が範囲が広くて、誰でも入会しやすい」と、われわれは考えやすい。「日本ボディビル協会」という名称そのものを他の呼称に変えたらどうか、と論議されたこともあったほどだ。

 「ウェイトトレーニング」と呼ぶ方が抵抗感がないので、筆者もついこの呼び名を使いがちだったが、アメリカは逆で「ボディビルの方が高度で、ウエイトトレーニングは“単なるウェイ
トトレーニングにすぎない”というように、1ランク下に見られている」と最近の外国雑誌で知らされた。

 たとえば、成功した有名選手が体験談で「自分はラグビー選手で、もともと体力づくりの手段にウェイトトレーニングをしているにすぎなかった。ところが、筋肉発達の面白さのとりこになり、本格的にボディビルディングを志すようになった」と述べている。全身的にバランスよく鍛えあげ、食事法や日光浴など、細かく注意しつつ体を完成させる意義を高く評価しているわけだ。

2.健康とスポーツは一致しない

 いっぽう「スポーツが健康によい」「走れば健康になる」というように、スポーツをすることが健康への万能薬であるかの如く、人びとは考えがちである。実際に何も運動らしきことをやらない人が、思いたってスポーツを実行し、その結果「体調がひじょうに良くなった」というパターンは常識化している。

 「だが本当にそうですか?」と異論を挟んでいるのは、朝日新聞社でスポーツや健康面で健筆をふるっている中条一雄氏だ。「少し前、3人の元オリンピック選手が相次いで死亡した。東京、メキシコ両大会の陸上競技や体操で活躍した人で3人とも39才。勤務先で激務の重要ポストにあったとはいえ、同年令の死はちょっと不気味なくらいだった。死因は脳血栓、心筋こうそく、がんだった」と書き出している。

 「常識的には、筋肉モリモリのスポーツマンは健康だと信じられがちだ。だが本当のところは必ずしも健康ではないのである。100mで10秒を切ったり、42kmを2時間余りで走ったり、体操で3回宙返りすることは、健康とはほとんど関係ない。無理に無理を重ね、肉体をいじめ抜き、異常な状態に置くのだから、むしろ不健康といっていい。『肉体を損なうことを恐れてはならぬ』のがエリート・スポーツマンの宿命だが、大衆スポーツでも事情は変らない。どんなスポーツでも度を越せば体をこわし、変形する危険がある」と続く。

 「無理をしてはいけない。ノルマをかけ、体をガタガタにしてしまうな」というのが結論だ。

3.トレーニングする人の実態は?

 トレーニングジムで練習している人たちを大別すると、①コンテスト出場を目指すような、専門のボディビルダーで、全体の1割くらい。パワーリフティングの選手も含まれる。②運動不足による体力低下を補うために通ってくる人で、全体の2割以上を占めている。③野球・水泳・ラグビーなどの運動選手で、基礎体力づくりや筋力づくりを目的とする人。これは2割か3割程度を占める。④貧弱な体をなおし、がっちりと体重をふやしたい人、逆に太りすぎてシェイプアップを計りたい人。女性も含めて5割程度を占める。これがもっとも主流派といえる。⑤ごく僅かだが、病気やケガのリハビリテションとして利用する人--だいたい上記のような比率になるのではなかろうか?

 冒頭の定義に則していえば『ボディビル』特にスポーツとしてのボディビル選手、パワーリフティングの専門家は1割くらい、『ウェイトトレーニング』を実行する人が2割程度、シェイプアップや健康管理が目的の人が7割程度となるわけだ。

 もちろんジムの指導者の考え方やレベルにより、比率はちがうし、ウェイトトレーニングやシェイプアップを目的に通いはじめた人が、努力と素質で、ボディビルダーのレベルまで到達するケースも多い。

 とくに最近は、柔道や空手、アメフト、ラグビー、バレーボール、バスケットボールなど、あらゆるスポーツ選手の間で、ウェイトトレーニングが一般的になっている。体力的にもともと恵まれている選手が多いので「ボディビルダーに転向して成功した」という例が、アメリカやヨーロッパ、そして日本などにも数多く増え、喜ばしいことといえる。

 受け入れるジムの側でも、目的別に適したトレーニング法や、食事法、生活上のアドバイスを、ケース・バイ・ケースで指導することが必要になる。

4.選手養成のボディビル

 スポーツとしてのボディビルを実行している人がアメリカでは「ボディビルダー」と呼ばれ、高く評価され、また人びとに尊敬されている。その背景には、シュワルツェネガーはじめ
一流のプロ選手が、映画に出演したり、CMモデルになったり、またセミナーの講師として活躍したり、地位向上の努力をしたお陰である。アメリカの国民性が開放的で、「いい物はいい」と素直に表現するという特質も見逃せないだろう。

 トップビルダーは毎日のトレーニングが生活の大部分を占め、常に筋肉向上を意識する。トレーニングはモーレツをきわめ、毎日2時間以上、必ず前回より強い刺激を筋肉に負荷することになる。ハーハー息が激しく、血流も膨大になる。該当する筋肉細胞は部分的に常に破壊され、より強い細胞へと変化する。したがって、たんぱく質・ビタミン・ミネラルなど、栄養素はことのほか多く消費される。

 「ボディビルダーは、体重の変化がないとしたら、いくら激しくトレーニングしても、たんぱく質は普通人程度で構わない」という意見もあるが、本当は細胞が壊され、再生されるときに要求される量や、そのときのストレス回復分として、体重1kg当り2gを目標にたんぱく質をとることは理にかなっている。

 もちろん、いわゆるプロテインパウダーに頼るのでなく、広い範囲の食品からたんぱく源をあおぐことが正当である。プロティン類はあくまでも不足を補う手段と考えるのがよい。

 ボディビル選手でなく、他のスポーツ種目をおこなっている人の場合、筋肉を大きくし体重を増したいなら、上記とまったく同じ考え方が通用する。

 「体重1kg当り2gのたんぱく質および充分なビタミン・ミネラル」という方針をとっていれば、栄養面の心配はない。ごはん・パンなどの糖質もエネルギー消費に見合う程度は充分に食べておくほうが賢明だ。ビルダーに見習えば、必ずや体は一まわりも二まわりも大きくなるだろう。

 筋肉を大きくしたり、体重をふやす必要はあまりないが、持久力、スタミナをつけたい場合は、やや軽い重量で高回数、やや長時間の練習を実行するとよい。脚、胸、背中、腹筋など、ボリュウムの大きい部分を鍛えれば、同時に心肺機能も高まる。

 減量の必要があるときは、従来のボクサーやレスリング選手のように、飢餓をおこさせ、健康を害するような方法はやめよう。脂肪さえ除けば、戦力的にも申し分ない。ビルダーの方法を教わり、長期間にわたり、目標体重をコンスタントに維持してゆこう。日ごろ暴飲暴食しすぎないよう、ビルダーのように細心の注意をはらおう。

5.健康管理のボディビル

 「ボディビルダーほど本格的でないがある程度体型をよくしたい」とか「日ごろの運動不足を補うためにトレーニングを続ける」という人が実際には大部分であろう。筋肉をがっちり鍛えて大きくしたいという場合は、ボディビルダーと同じ方法でトレーニングし、食事法を実行してゆけばいい。

 体重を減らしたい場合や、ほぼ一定に保てばいい(現状維持)という場合は、トレーニングはそれほど過酷でなくてよいし、栄養のとり方も普通人とボディビルダーの中間を目指す程度でよい。減量時は食事制限と同時に、腹筋運動を中心に、高回数×低重量でやや長時間のトレーニングがよい。連日トレーニングしてもかまわない。

 現状維持もしくは、適度に筋肉を維持してゆく場合は、1日に30分~1時間でよく、週に3回もしくは4回の練習でよい。

 当然のことながら、新陳代謝が促進され、若さが保たれ、成人病などにかかる危険が少ない。「一流スポーツ選手」のような無理はしなくてよいが、自己に克ち、ある程度ずつは強度を高めたトレーニングが望ましい。

 ビタミンC、ビタミンE、プロテイン、カルシウムなど、ブームとまで達しているサプリメントフーズがどの程度必要なのだろうか?デパートなどで売れている状況を聞くと、使用するのはスポーツマンより、ごく一般の中高年の男性や女性、あるいはサラリーマンや学生だという。

 「健康管理のため」と買ってゆくが、本当はある程度のトレーニングや軽スポーツを実行したほうが、はるかに体のためにプラスであろう。

 栄養補助食品、つまりサプリメントフーズに頼るより、まず日常の食生活をバランスよく向上させる努力をしよう。食事は外食やインスタント製品ですませ、高い健康食品を買うのでは本末転倒である。野菜や海藻などを不足しないよう多目に食べよう。食事分折などをしてみて、なおかつ栄養素が不足する時に、サプリメントフーズを使えばよい。

 アメリカでは「健康な、ふつう程度の労働をおこなう人には、ビタミン剤の必要性はない」という意見が多い。

 一流スポーツ選手なら、連日の激しいトレーニングに比例して、栄養素が多く必要だが、健康管理の人や、疲労を少し感じるくらいの人であれば、普通食プラスアルファ程度でよい。

 カゼをひいたり、とくにストレスが多いとか、バテやすいときに、ビタミンCやビタミンEをとるのはいいとしても、連日何百ミリ、何百単位とるというのはゆき過ぎである。

 最後に一考を要する意見が日経新聞夕刊のコラム欄に載せられていた。

 「最近は健康ブームと言われるほど、人びとの関心が自分の健康に向けられている。だが自分の体さえ良ければいいという、個人主義ないしは自己主義の現われではないか?社会のためとか、公共・福祉・ボランティアといった、広い心で他人を思いやる視点の欠けた現象ではないか?」という指摘である。

 そう言われると、確かに健康とは個人の問題にすぎないが、健康な体で社会生活を送れることが生きる基本ではないかとも思う。また「スポーツ」なら、記録をつくること自体が個人のレベルの問題なので、自己向上のためにベストを尽くすことが至上になる。この場合は、社会的にどうかは二の次になる。

 ボディビルは自分の体をいたわり、育てる要素が強い。トレーニングすることにより、どれだけ社会に役立つかとなると、直接的な貢献は未知数である。欧米だけでなく、ソ連や東欧までボディビルディングが盛んになっている。ボディビルで健康な体をつくったあと、どう社会に活かし、バリバリ生産的に働ける人間になるか、われわれにとって試金石の時代である。一人一人が努力して、「さすが体が立派なのと同様に、精神も立派だ」といわれる社会的地位を築いてゆきたい。

☆一般食堂食品の栄養価(1人分)☆

(科学技術庁資源調査会・四訂日本食品標準成分表抜萃、可食部100g当り)

(科学技術庁資源調査会・四訂日本食品標準成分表抜萃、可食部100g当り)

月刊ボディビルディング1983年5月号

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