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食事と栄臺の最新トピックス<28> 体を悪くするメニュー

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月刊ボディビルディング1983年6月号
掲載日:2020.10.27
健康体力研究所 野 沢 秀 雄

1.その食べ方は逆効果!

 「健康な体をつくろうとして、教えられた食物を食べているが、実は食べ方が悪くて逆効果になっていたとしたら……?」--こんな不安を感じさせる情報があふれている。

 たとえば、毎月発行される「壮快」「わたしの健康」「健康時代」などの健康雑誌。毎号毎号よく続くものだと感心するくらい「ビタミンの食べあわせ」「野菜や海藻も摂り方が悪いと逆効果」「血管を早く老化させる食事法」といった記事が特集されている。

 そういえば、ベストセラーになった「ビタミンバイブル」にも「1本のタバコが25mgのビタミンCを破壊する」「毎日1杯のカクテルはビタミンB1・B6・葉酸を消耗する」「高タンパク食をとっている場合はビタミンB6を多くとる必要がある」など、「オヤ?これは知らなかった」という知識が羅列されている。

 また最近、青春出版社から発売された「体を悪くするメニュー」も食べ合わせ次第で、効果をあげたり、減らしたりする栄養知識を述べた本だ。

 「情報公害」といわれるほど、学説が次々と発表され、聞きかじりの断片知識で右往左往する人たちが少なくない。「昨日まで正しいと信じて実行していたことが、今日は否定される」ということさえ珍しくない。

 原稿を書いたり、講演したりする先生に二つのタイプがある。一つは自らコツコツと実験室内で化学試験をし、動物実験や、人体試験をおこなってデータを発表する先生。もう一つは山積する情報を系統的に整理し、まとめてわかりやすく解説する先生だ。いわば翻訳して、かみくだいて、興味が湧くように教える先生だ。前者は一つの説をつくるのに2~3年もデータ集積の努力を要するし、後者は勉強をたえずして、正しい見識が要求される。どちらが立派かは比較できないだろう。

2.今の若者は長生きできない?

 女性週刊誌や健康雑誌の記者、編集長を経て、最新栄養学のレポーター、評論家として活躍している丸元淑生氏は、もちろん後者の先生の一人だが、自ら築地の市場へ買出しにゆき、料理をつくり、「システム料理学」を発表したことで有名だ。

 丸元氏がよく警告している言葉に、「今の若者、とくに昭和30年代に生れた者は長生きできない。50才になるまでに死んでしまう率が多い」という無気味な予測がある。

 昭和20年代の終りから昭和40年代前半にかけて、日本経済は空前の急成長時代をむかえ、食品工業界も例外ではなかった。人工甘味料、合成着色料、合成香料、合成保存料、漂白料、糊料、消泡剤、品質改良剤、殺菌剤など、食品添加物の生産量が年間40万トンにも達し、赤ちゃんから老人まで国民1人当り、1年間に約4キロの添加物を食べさせられたことになる。

 40年代になって、世論が高まり、最盛期に400近く許可されていた添加物が、今では300余りに減っている。禁止された有名な例に、とうふに入っていたAF2がある。「金魚バチにわずか入れただけで急死する」というテレビの実験を覚えている人もいるにちがいない。

 昭和30年代に生れ、育った人は、添加物入りの食品をもっとも多く食べさせられており、大規模な生体実験がなされたのと同じである。これら添加物は「催奇性」といって、人体細胞のDNAに作用し、突然変異で、ガンなどの恐ろしい芽をつくることが考えられる。今は元気でも、中年以後にバランスが崩れて、急に発病することを誰も否定できない。

 今からでも決して遅くはない。筆者は加工食品をなるべく少なくし、買う場合にも表示を必ず確かめている。物や、菓子、さきいかなどのおつまみ、みそ、しょうゆに至るまで、「合成保存料使用」「着色料、香料使用」と書かれている製品は買わないように心がけている。

3.身近にある危ない食品と食べ方

 インスタント食品には今でも添加物が多い。ラーメンに付いている粉末スープや液体スープも用心がいる。ハムやソーセージに使われる亜硝酸やリン酸も心配だ。

 子供時代によく飲んだ「粉末インスタントジュース」のような添加物の固まりのような食品こそ見られなくなったが、今でも添加物は多いし、業者によっては使用していながら表示しないことがあるので、よほど信頼できるメーカーでないと安心できない。

 「そんなに神経質になっていると何も食べられない。かえって気を使いすぎてビョウキになりそう」と思う人も多いだろう。この意見ももっともである。
そこで、せめて「こう選んで、こう食べれば少しは安心」という私の実行例を以下に列記しよう。身近なことばかりなので、このくらいなら読者の皆さんも実行できるだろう。

①焼き鳥、焼き魚、ろばた焼などの、焼き物料理は避ける。直火で焼くとどうしても焼けこげができ、消化が悪いだけでなく、ベンツピレンという発ガン物質が生じる。車の排気ガス中にも含まれ社会問題になったことがあるが(今でも規制値があるとはいえ、排気ガスの多い所に住むのは考え物である)、それほど強力な発ガン物質だ。

②古くなった干物を食べない。アジやさんま、かます等、干物もおいしいが、日数がたつと、太陽光線で日やけしすぎて、プーンと異臭を発するようになる。「過酸化脂質」という発ガン物質がつくられているので、店で買うときに観察をしっかりすること。

 また車がひっきりなしに通る道路に干されている場合があるので、産地で買うときには環境にも注意しよう。

③古い油は使わない。同じく油が酸化して、過酸化脂質をつくりやすい。外食でトンカツ、メンチカツ、ハンバーグ、天ぷらなどを食べる際、一流店でも油が古いケースが多い。胸やけや下痢をするときは、油あたりのケースが多い。こんなときビタミンEを多く含むジャームオイルを一粒飲んでおくとかなり救われる。

④しょう油、ソース、塩、こしょう等をやたら使わない。私が知っている人は、どんな料理にもパラパラ塩を振り、ごはんにも振りかけないと箸をつけない。塩分の多用は単に高血圧になりやすいだけでなく、水が欲しくなり、汗が出やすくなる。その結果、体に多大な負担をかけている。気もイライラして短くなる。習慣になっているのでアドバイスしても直らない。こんな人は「あとでバチが当るぞ」と見守るしかない。

⑤着色のケバケバしい「紅しょうが」「たくわん」「つくだ煮」「飲料」「アイスクリーム」「たらこ」などを食べない。牛どんのチェーン店やカレーライス店では、ごはんに載せただけで赤く染まる「紅しょうが」がついているが、まったく閉口する。

⑥コーラ、ソーダ、缶入りジュース、和菓子、洋菓子、クリームパン、あんぱん等はなるべく食べない。砂糖は少量ならいいが、食べすぎると、脂肪太りになるだけでなく、胃壁や腸壁を強く刺激する。空腹時にはとくに注意。

⑦古くなった牛乳や料理を決して食べない。下痢や腹痛をおこすケースを調べると、冷蔵庫に2~3日保管していた牛乳をプロティンなどとまぜて飲んでいた例が多い。冷蔵庫中でも菌は増殖しているので、くれぐれも注意が大切だ。

⑧缶詰が残ってしまったときは、必ず別の容器に移しておく。そのまま入れて翌日食べると、缶の内部からスズや鉛が溶出して中毒をおこしやすい。

⑨野菜はなるべく種類と量を多くとりぐつぐつ煮すぎないで食べる。

⑩牛肉や豚肉の油身はなるべく食べない。魚の内臓は食べてもいいが、量は多くならないように注意する。やはり近海魚はヘドロ中に含まれるPCBが食物連鎖で濃縮されていることが気になるからである。

4.効果をあげる食べ方はこれだ!

 「あれもダメ、これはイケナイ」とマイナス面を強調しすぎたようだ。19世紀までは、人間が食べる食物は伝統的に、「これは食べられる」と保証されたものばかりだったが、20世紀になると、全く新しいタイプの食品が急増してきた。化学技術が進歩して、成分ごとに濃縮した食品(プロティンやビタミンC、Eなど)や、成分を組合せた加工食品が、自然そのままの食品を上廻る勢いで伸びている。

 では現状を認識した上で、どのような食品を選び、どう食べれば「体力づくり」「健康づくり」に効果をあげることができるだろうか?

①たんぱく質は必要最適量を、多くの食品源からとる。毎号述べているように、筋肉発達時には、体重1kg当り2gを目標に「タンパク質」(プロティン)をとる。いわゆるプロティンパウダーやダブレットは補助的なもので、ふつうの肉・魚・卵・チーズ・牛乳など動物性たんぱく食品から60%、納豆・とうふ・枝豆・ピーナッツ・プロティンパウダー・など植物性食品から40%の比率でとれば、アミノ酸バランス上から最適といわれている。

 もっとも技術の進んだプロティン製品なら、動物性食品と同様に、アミノ酸組成のバランスを強化しているので、これを用いれば、肉や魚・ハム・ソーセージ・チーズなどを減らしても構わない。

②たとえ減量時でも、必ず一定量の糖質をとる。具体的には、ごはん・パン・うどん・そばなどを、茶わんに軽く1杯でいいから食べること。

 極端な人は果物はもちろん、野菜までカットしてしまうがこれはナンセンス。少しくらいの炭水化物はトレーニング中にエネルギー源となって消耗してしまう。逆に「たんぱく質ならいいだろう」と肉や魚・卵・プロティンなどを食べすぎると、過剰な分はかえって脂肪になってしまう。

③脂肪のうち、植物性脂肪をしっかり食べる。とくにサフラワーオイルや小麦胚芽油・米油・大豆油は適当量食べよう。マーガリンも良い食品である。

④ビタミンC、ビタミンEなどの栄養補助食品をとることはよいが、決められている規定量を守り、タイミングよく食べよう。ビタミンCは肉体疲労時、もしくは食後に飲むとよい。ビタミンEは1日なら朝、トレーニングする人ならトレーニング前1時間くらいに飲んでおくとよい。

⑤野菜には葉や茎を食べるもの、根を食べるもの(大根・にんじん・いも類)両方ある。緑色の濃い物、薄い物の区別がある。バラエティ豊かに、多い目に食べること。ステーキやとんかつ、さしみについているツマも必ず食べよう。

⑥同じ食べるなら、よくかんでゆっくり食べよう。同じ栄養価でも、吸収される率に意外なほど差が大きい。

◇ガンを促進する要素と抑制する要素◇

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 最後に一心病院副院長の天林常雄氏が発表している一覧表(上)を示し、本項の締めくくりとしたい。危険が予測される食事をなるべく避けて、安心と思われる食品や食べ方を積極的に採用してゆくことが望ましい。
月刊ボディビルディング1983年6月号

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