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巨大でピークがあり、くっきりとした
バイセップスをつくる、サイクル・トレーニング法

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月刊ボディビルディング1981年2月号
掲載日:2020.04.08
デニス・ティネリノ ★ミスター・アメリカ ★ミスター・ワールド ★ミスター・ユニバース
訳=松山令子 ★IFBB・JAPAN副会長 ★IFBB・JAPAN国際総局
 オリンピア・レベルのバイセップスをつくりたいというボディビルダーたちの希望を達成させるバイセップス・トレーニングとして、最も役に立つのは“ウイダー・サイクル・トレーニング”である。
 ナチュラル・チャンピオン(ステロイドを用いないで体をつくりあげたチャンピオンという意味)であるデニス・ティネリノは、彼が実行している"バイセップス・サイクル・トレーニング法”を、あなたがたのそれぞれの状態と能力に応じて用いる方法を、いま、あなたがたに語る。
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ワイド・グリップ・バーベル・カール“バーベル・カールをするとき、いろいろグリップの幅を変化させて行なうことによって、きみはバイセップスのいろいろ異なる場所を攻?して刺激を与えることが出来る。たとえば、ぼくはワイト・ウリツブ・カールでバイセップスの外側のヘッド(尖端)を攻めることが出来る”

ワイド・グリップ・バーベル・カール“バーベル・カールをするとき、いろいろグリップの幅を変化させて行なうことによって、きみはバイセップスのいろいろ異なる場所を攻?して刺激を与えることが出来る。たとえば、ぼくはワイト・ウリツブ・カールでバイセップスの外側のヘッド(尖端)を攻めることが出来る”

 さあ、ここで、ぼくたちボディビルダーが、トレーニングで1年中、汗を流し、そしてミスター〇〇になり、やがてはミスター・ユニバースになり、そしていつかはミスター・オリンピアにさえなりたいと願って努力しているボディビルディングにおける戦い――コンテストについて真正面から考えてみることにしようではないか。
 すべてのボディビルダーが、ただ正しいダイエットと、進歩的なトレーニングを実行することによって、ひとりでにトップ・ビルダーになれるなら、こんな結構なことはない。しかし実際はちがう。すべてのボディビルダーが、こんなバラ色の未来を持っているとは限らない。
 ボディビルダーの中には、非常に優れたボディビルダーになる可能性――潜在能力を持って生まれた人も何人かいる。しかし、何年も何年も苦しい努力をつづけながら、遂にトロフィーを手にしないままで終るビルダーは、もっと多い。
 ぼくは、このきみたちボディビルダーの中に潜在している、すべての能力を大きく変えることは出来ない。しかし、ぼくは、バイセップスの発達に関する限りでは、この潜在能力を最大限に発揮させる方法を、きみたちに教えることが出来る。
 そして、いまここで、ぼくがきみたちに語ろうとしているのは”サイクル・トレーニング法であって、これはすべてのトップ・レベルのボディビルダーたちが用いて大きな効果をあげつつあるもので、バイセッブスだけでなく、それ以外のいろいろの筋肉群に対しても応用して大きく発達させることの出来るトレーニング法である。
 優れたコンテスト・ビルダーは、1年を2つの周期に分けてトレーニングする。1つはビルディング・サイクルといって、筋肉をひたすら大きく発達させるためのトレーニングの時期であり、もう1つは、ピーキング・サイクルといって、体をコンテストに出る時に必要な最高の状態――最高のカットとデフィニッションと皮下脂肪を完全に落とした状態にするための準備操作を行なう時期である。
 年に1つのコンテストに出ることを目標とするチャンピオンたちは、普通、9カ月くらいのビルディング周期と、3ヵ月くらいのピーキング周期でトレーニングする。
 1回でなく、何回かのコンテストに出るチャンピオンは、このビルディング・サイクルとピーキング・サイクルの組合せを、その回数だけくり返すのである。(松山註:ケイシー・ヴィエタは、今年2月から5月にかけて、毎月連続して行なわれたグランプリに出るために、5ヵ月間ずっとピーキング・サイクルのみをつづけただが、これは生れてはじめての経験であった、と述べている)
 このような、ビルディング・サイクルとピーキング・サイクルを何年間にもわたり、くり返すことによりボディビルダーの体は、筋肉の最大限の発達と並行して、最高のカットとデフィニッション、それにデンシティー(筋肉の密度)を達成するのである。
ケーブル・スコット・カール“フローア・ブーリーとストレイト・バー・ハンドルを用いることによって、このスコット・カールで、ぼくのバイセッブスに緊張を持続させることか出来るのをぼくは知った。きみのトレーニンクでこのエクササイズを試してみたまえ”

ケーブル・スコット・カール“フローア・ブーリーとストレイト・バー・ハンドルを用いることによって、このスコット・カールで、ぼくのバイセッブスに緊張を持続させることか出来るのをぼくは知った。きみのトレーニンクでこのエクササイズを試してみたまえ”

 今年ぼくは、シュワルツネガー、ゼーン、コロンブにならって、年にただ1回、オリンピア・コンテストだけで戦うことに決めた。従って、ぼくは、年1回のビルディング・サイクルとピーキング・サイクルを持つことになった。
 オリンピアこそは、世界最高のプロフェッショナルの戦いであってそこでは、生命を持ち、動く美事な大理石の彫像がずらりとならぶ。
オリンピアこそは、世界最高のプロフェッショナルの戦いであってそこで・・・
年にいくつかあるプロフェッショナルのコンテストで優勝することはむつかしい,とはいっても、さほどのことはない。しかし、オリンピア・コンテストで優勝することは決して容易ではない。
 ミスター・オリンピアのタイトルこそは、名実共に世界一のチャンピオンであることの証明である。ミスター・オリンピアになるまでは、どんな優れたチャンピオンでもNo.2であり、梯子の上から二段目にいるのである。まだ、もう一段、のぼらねばならぬ段があるのだ。
 ぼくが、オリンピアだけで戦うと決めたので、ぼくには9カ月のビルディング・サイクルと3ヵ月のピーキング・サイクルが与えられることになった。目標とするコンテストの開催日から前の3ヵ月間がピーキング・サイクルの時期であり、それより前の9カ月間がビルディング・サイクルの時期である。
 このサイクルにしたがってトレーニングにはげんだぼくの体は、今年(1980年)5月のはじめには、もう充分にこのトレーニング法の効果があらわれた。ぼくの筋肉はかなり発達して大きくなり、体重は230ポンド(約104kg)になった。いままで発達の不足していた筋肉は、劇的といっていいくらいに発達した。
 ぼくは、ビルディング・サイクルの間、自分の弱点を修正するために
 最大のエネルギーを注ぎ、すでによく出来ている部分のトレーニングには比較的少ないエネルギーを注いだ。ここ最近の月々はトレーニングの回数を減らして、以前は週6回であったのを、いまは週4回にしている。
 ぼくは、各身体部分について、自分としての最大重量を用いて10~12セットのトレーニングをする。ときには、遅れている部分を15セットすることもある。そしてぼくは、それには、1セットにつきレップス数を5~6レップスよけいにする。
 ぼくの用いる重量とレップス数の関係はピラミッド形であって、1セットごとにウェイトをふやし、それにしたがってレップス数をへらしていく。
 またぼくは,バイセップス,トライセップス、カーフなどというような、個々の筋肉を単独で鍛えるエクササイズよりも、全身を鍛えるための基礎的エクササイズ(たとえば、ベンチ・プレス・スクワット、スタンディング・プレスなど)の方を大量にする。
オールタニット・ダンベル・カ--ル 起立してと、腰かけてと、両方の姿勢でなされるこのエクササイズは、バイセッブスの大きさを増し、形を整えるという両方の目的にぴったりの、ほくのお気に入りの種目てある。ぼくの最大手量として現在は80ポンド(36kg)のダンベルを用いる。

オールタニット・ダンベル・カ--ル 起立してと、腰かけてと、両方の姿勢でなされるこのエクササイズは、バイセッブスの大きさを増し、形を整えるという両方の目的にぴったりの、ほくのお気に入りの種目てある。ぼくの最大手量として現在は80ポンド(36kg)のダンベルを用いる。

バーベル・カール

バーベル・カール

スコット・カール“バイセップスの形の丸さと筋肉の充実、とくに筋肉の付着部位におけるそれを達成するためには、スコット・カールにまさるものはない。このエクササイズでは、バーを握る両手の間隔を、両脇につけた両肘の間隔よりも広くすることが絶対に必要である”

スコット・カール“バイセップスの形の丸さと筋肉の充実、とくに筋肉の付着部位におけるそれを達成するためには、スコット・カールにまさるものはない。このエクササイズでは、バーを握る両手の間隔を、両脇につけた両肘の間隔よりも広くすることが絶対に必要である”

 かなりトレーニング経験をつんで体のよく出来ているビルダーで、まだコンテストに出たことのない人はいつもオフ・シーズン・サイクルにいるわけで、ひたすら筋肉を発達させるトレーニングに打ち込むべきである。中習者であるボディビルダーは各身体部分につき、6~8セットのトレーニングをすることをぼくはすすめる。
 それよりももっと発達の進んだボディビルダーには、各身体部分につき8~10セットをすすめる。もし、各身体部分につき10~15セットした場合は、オーバー・トレーニング(過剰トレーニング)になり、筋肉の発達がとまって、足踏み状態となる。
 いまは、ぼくのオフ・シーズンなので、オフ・シーズンの例として、現在ぼくが行なっているバイセップス・トレーニングのルティンをお知らせすることにする。中習者はここに記述した量よりは2セット少なくし、習熟者は1セット少なくすればよい。以下は、ぼくが週2回行なっているルティンである。

①ヘビー・オールタニット・ダンベル・カール
 4セット、5~6レップス
 各片手に60~90ポンド(27~41kg)

②ブリーチャーズ・カール
 4セット、5~6レップス
 120~150ポンド(約54~78kg)

③スタンディング・バーベル・カール
 4セット、5~6レップス
 135~165ポンド(約61~75kg)

 ぼくのオフ・シーズン・ダイエットは、プレ・コンテスト・ダイエット(コンテスト前のダイエット)より、約30%だけ炭水化物を多くする。しかし、赤い牛肉はさけて、魚肉、鳥肉、七面鳥の肉のような自然食品から蛋白質をとる。新鮮な果物もよく食べる。
 もちろん野菜サラダは欠かさない。乳製品は時々とる。ぼくは注意して、つまらない間に合せの食物を食べないようにしている。しかし、時としてうっかりそういうものを食べてしまうこともある。やっぱりオフ・シーズンだものね。
 オリンピア・コンテストの約3カ月前になると、ぼくは毎日消費するカロリー数を徐々に減らし始める。ぼくは、鏡にうつる自身の体を日々観察して、ぼくのカロリー減少の速度が速すぎるか、遅すぎるかの判断をする。
 先ず、つまらない間に合せの食物をやめる。次に乳製品をやめる。さらに穀類をやめ、甘味の多い果物をやめる。それから澱粉質の多い野菜をやめる。そして最後に、毎日食べる緑色野菜のサラダ以外のすべての野菜をやめる。ただ、2切れか3切れの低カロリーの果物は食べる。
 多くのトップ・ビルダーと同じように、ぼくもまた、コンテスト直前の炭水化物ゼロというダイエットには反対である。このようなダイエットは健康上にも悪いし、不愉快である。筋肉のサイズは小さくなり、精神的にもひどい飢餓感がある。
 ぼくは、このダイエットでかなりのカットを出すことの出来た人を見てきた。しかし、もしきみが、低カロリーの果物を50~70グラムを食べることで必要な炭水化物を摂り、そしてきみのダイエットから脂肪が除かれているときは、さきにいったゼロ炭水化物ダイエットよりは、はるかに鋭いカットを出すことが出来る。
 ぼくは、去年(1979年)オリンピア・コンテストのために、この方法を用いたが、ぼくのいままでの人生における最高のマスキュラリティー(筋肉のたくましさ)を得た。
コンセントレイション・カール

コンセントレイション・カール

ピーク・コントラクション・カール

ピーク・コントラクション・カール

 オリンピア・コンテストの3ヵ月前になると、ぼくはトレーニングの方も強化する。1週6日のトレーニングをするように分割して、これで主要筋肉群がそれぞれ週に2回ずつトレーニングされるようにする。4週間たつと、各身体部分が週3回ずつトレーニングされるようにする。そして最後の4週間は全力を投入してダブル・スプリット法でする。
 ぼくは、徐々にレップス数をふやし、セット間の休息時間を短縮する。こうすれば、必然的に用いる重量が減っていく。しかしぼくは、出来るだけ重量を減らさない努力をする。こうすることで、筋肉は著しく大きくなり、密度が高くなるから。
 ぼくはまた、筋肉のたくましさを増す目的で“ウイダー・筋肉の緊張と収縮を持続させてピークを出す法則”を用いている。
 オリンピア・コンテストの約6~8週間前になると、スーパー・セットやトライ・セットをはじめる。これは、主としてトレーニングのスピド・アップをはかるためである。
 セット間の休息時間を徐々に短縮することは”ウイダー・クオリティー・トレーニング・プリンシプル”(ウイダー氏の筋肉の性質を知り、それを利用してトレーニングする法則)の中心点であって、要は、中程度の重量を用いて、トレーニングのスピードを増せば増すほど体内の脂肪が速く燃焼してなくなり、皮下脂肪が徐去される結果として、筋肉の形がありのままに外部に見えるようになることである。すなわちカットが出るということである。
 これはもちろん、筋肉が発達している場合に限ることであって、筋肉が発達していない場合は、いくら皮下脂肪を落としても、筋肉の形が外部へあらわれることはないので、カットは出ない。
 コンテスト前の3ヵ月は、その間中ずっと、オフ・シーズン・トレーニングのルティンである基本的エクササイズ種目の上に、個々の筋肉を鍛える特定のエクササイズを2~3種目つけ加える。これは、ぼくのバイセップス及びその他の筋肉グループに、2倍のセット数をするくらいの効果がある。
 ここに記すのは、このコンテスト前のバイセップス・トレーニング・プログラムの代表的なものである。(1週間に3回)

①オールタニット・ダンベル・カール・マシン
 4セット、10~12レップス

②ピーク・コントラクション(収縮)カール・マシン
 4セット、10~12レップス

③ブリーチャーズ・カール
 3~4セット、10~12レップス

④コンティニュアンス・テンション
 (緊張持続)ワイド・グリップ・バーベル・カール
 3~4セット、10~12レップス

⑤ダンベル・コンセントレーション・カール
 3セット、10~12レップス

⑥ケーブル・コンセントレーション・カール
 3セット、10~12レップス

 上記のルティンは、ぼくにとって非常に大きい効果がある。しかし、きみたちがこれを用いるときは、充分注意を払いながら、これをしてほしい。ぼくにしても、これを行なうのは、毎年、1年の間で僅か3~4週間のみである。
 これをもっと長期間つづけるときは、たとえぽくでもオーバー・トレーニングになるだろう。1つの筋肉グループあたり20~22セットのトレーニングをする場合は、その鍛えられた筋肉が発達するためには絶対に必要とするところの、充分な筋肉の疲労回復を、次のトレーニングが始まる前までに完全に行なうことは実にむつかしい。
 このルティンは、すでにコンテスト・ビルダーとなり、かなり体が出来ている人でさえ、多少は短縮して行なうことが必要である。
 ぼくが、このようなハイ・レップス(多レップス)のトレーニングに耐えて、筋肉を発達させるのに必要な充分な疲労回復をする能力をつくりあげることが出来るようになるには、実に15年もの確実で、むらのないハード・トレーニングの持続が必要であったのである。きみたちは、どんなに頑張っても、一夜のうちにこの疲労回復能力をつくりあげることは出来ない。
 疲労回復が充分でない場合は、このようなハイ・レップスで急速に筋肉を発達させようと努めても、それはかえって、いままで伸びつづけてきた発達をストップさせるだろう。このような絶望が、充分な未来への可能性を持っている有望なボディビルダーにトレーニングをあきらめさせることもある。

 ここに、ぼくが述べたこのプログラムを用いて、バイセップスの最大の発達を実現させようと思うなら、その秘訣は、このプログラムをそのまま行なうのではなく、ぼくのやり方をきみ自身の目標と、きみの体カに応じて変更し、きみにふさわしい方法で行なうことである。
 もし、きみが、年に3回か4回、コンテストに出るボディビルダーなら、きみは年に3回か4回、きみの体をピークに持っていかねばならないだろう。そういうボディビルダーには、それだけのビルディング周期とピーキング周期のトレーニングが必要なのである。
 もう1つの考え方としては、きみは、各筋肉群に対して6セットのトレーニングをシーズン・オフに、そして8~10セットのトレーニングがプレ・コンテストのために必要である。
 いま述べた2種類の方法は、どちらも、きみときみの体に適合するならば、実に偉大な効果をあげ得るものである。では、心からきみのトレーニングの成功を祈る。(了)
月刊ボディビルディング1981年2月号

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