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マイク・メンツァーの背中全体を爆発的に発達させる電撃作戦

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月刊ボディビルディング1981年3月号
掲載日:2020.04.27
マイク・メンツァー
ミスター・アメリカ
ミスター・ユニバース
訳=松山令子

◇トレーニング・ルティン◇

 われわれが行なっているルティンはノーチラス・マシンと、フリー・ウェイトでのウイダーの各種のプリンシプル(原則)をとり入れたスーパー・セット法と休息をうまく組合わせたものである。では次に、われわれの実際のエクササイズの内容を述べる。

<1>ビハインド・ネック・トルソー・マシンで

 この器具は、私の考えでは、広背筋だけを目的とするシングル・エクササイズに最適のものと思う。これを使っての体の動きは、普通のビハインド・ネック・プルダウンに近似しているが、ラット・プルダウンをする時には、在来のラット・マシンでする時に比べて、動作の範囲の角度が大きいという利点が附加されている。
 この装置でエクササイズするとラットのフル・イクステンション(完全な伸長))とフル・コントラクション(完全な収縮)まで、220度のレンジで腕が運動するが、在来のラット・マシンでは140度である。かつこの器具を用いると、バイセップスへストレスを与えずに、直接ラットを刺激することが出るのも大きい特徴である。
 レイとダニーと私は、この器具で普通の重いウェイトを用いるトレーニングをかわるがわる行なう。つまり、6レップスがやっとという重さを用いて6レップスし、そのあと2回のフォースト・レップス1回のネガティブをするが、これはレップスと休息を交互にとる方式である。
 実際の方法は、最大限のウェイトで1回行ない、それから10秒休んで第2回目を行ない、また10秒休むというようにして、4レップスか5レップスで完了する。この1回して1回休むという方法をとるときは、われわれは順々に交替に1セットずつする。他の人がしているときは、その人が終るまで休んで待つ。
 普通の方法である6レップスのトレーニング法をするときは、6レップスつづけて行ない、それから第2のエクササイズに入る。
 このビハインド・ネック・トルツー・マシンが手近にない人たちは、ラット・マシンでの頭上からのストレイト・アーム・プルダウンを、バイセップスを使わずにラットだけでするか、または、アクロス・ベンチのプルオーバーを腕をほんの少し曲げてするのがよい。この2つは、疲労しないうちにスーパー・セットとして用いると非常に有効である。

<2>ラット・マシン・プルダウン

 この背中のルティンでは、われわれはこの第2のエクササイズ、ラット・マシン・プルダウンをするよりさきに、第1のエクササイズであるビハインド・ネック・トルソーを各人が試技と休息を交互にとる方法で1セットしてから、このエクササイズに入る。
 普通われわれは、非常に重いウェイトを使ってネガティブ・スタイルで約6レップスを1セットとする。完全なネガティブ・スタイルで、レイとダニーは、私がポジティブ・スタイルでストリクト・フォームで6レップス引くよりは100ポンド(約45kg)重いウェイトを引いて、ピーク・コントラクション・ポジション(鍛える筋肉のピークの1点に圧力が全部集まるようなエクササイズのやり方)まで引く。ここで私が代わって、その持ちあげたウェイトを徐々にしておろして、粗のラットが極度に伸長するところまでおろす。このそれぞれのネガティブ・レップスは、1回が4~6秒かかる。
 完全なネガティブで1セット行なったのちに、われわれは普通のポジティブでの6レップスを1セットとするエクササイズを1セットする。そしてこれは、6レップスのあとで2レップスのフォースト・レプスと1レップスまたは2レップスのネガティブを行ない1セットとする。
 われわれは、プルダウンをクロース・グリップ(両手間隔を狭く)でアンダー・ハンド(手のひらが上向き)でパーを持つ。クロース・グリップは、ラットのより大きい伸長と収縮を可能にし、手のひらの上向きの握り方は、バイセップスが最も疲れない状態にさせる。それで、ラットだけが全力で働くので、ラットの力を最大限に使わせて疲労させることができる。
 われわれが、ビハインド・ネック・トルソーを普通のやり方で行なう日には、引きつづいてラット・プルダウンを疲労前のスーパー・セットの一部として、エクササイズ間の休息なしで行なう。この日には、われわれは、水平の握りのついたプルダウン・バーを用いて、プル・ビハインド・ネックをする。これは、第一のエクササイズであるビハインド・ネック・トルソーに非常によく似た動きであるので。

<3>ケーブル・ロウ

 背中はいろいろの筋肉で出来ているので、背中のトレーニングには、いろいろちがったエクササイズが必要であるという事実をふまえて、われわれは長いケーブルを使ってケーブル・ロウをする。
 ウエイトは、ストリクト・スタイルでポジティブ・レップスで最少限6~8レップス出来るウェイトを用い、私は極度にラットをのばした姿勢から、極度にラットを収縮した状態になるようにケーブルを引く。ケーブル・ロウは、6~8レップスを1セットとし、これを1また2セット行なう。

<4>デッド・リフト

 最初の3つのエクササイズは、もともとラットの扇形の部分を刺激するためのものであるが、第4のエクササイズであるデッド・リフトは、腰部と脊椎直立筋のあたりを刺激するために行なわれる。脊椎直立筋というのは、背骨の両側をそれぞれ上っている筋肉である。
 先ず軽いエクササイズで、充分ウォーミング・アップをしたのちに、直ちに500~550ポンド(約227~250kg)で4~8レップスのデッド・リフトの第1セットに入る。これは普通のデッド・リフトのスタイルであって、ヒップは、肩や曲げた膝よりも低くなる。
 第2セットは、やや軽い重量を使い445ポンド(約192kg)で、スティッフ・レグで(膝をピンとのばして)ゆっくりと行なう。ネガティブの方をよけいに神経を集中して行なう。このセットは8~12レップス。

<5>ハイパー・イクステンション

 これは脊椎直立筋のために非常に有効なもう1つのエクササイズである。いつでも、デッド・リフトの直後に行なう。100~150ポンド(約45~71kg)のウェイトを用いて、4~6ポジティブ・レップスで、つねにウェイトを上げる動作よりも下げる動作の方を運動の主眼点とする。
 デッド・リフトの2セットのあとで、このハイパー・イクステンションを1セットすると、脊椎直立筋はまるで背骨の両側をはい上がる2匹の大蛇のように感じられるほどにパンプ・アップして、ふくれあがる。

<6>ショルダー・シュラッグ

 背中のトレーニングの仕上げとして、われわれはショルダー・シュラッグを行なう。これは、もちろん、僧帽筋と上背部のためのトレーニングである。
 第1セットは、可能な限りの最大重量を用いる。6~8レップスがやっとという重量で、最後の2レップスは力をふりしぼってやらねばならない。どのレップスも数秒間静止してウェイトを支える。このあとで超強度のシュラッグを1セットする。これをすると、いつも数秒間眼から火が出る。そして私の僧帽筋は完全に疲労困憊しているので、もう首をまっすぐに立てていることさえ出来なくなる。
 そして、まだその上に、私は第2のエクササイズを、6~8レップス行なう。パートナーにウェイトを押さえさせて、圧力を倍加させ、死にもの狂いでもう3レップスする。

 私の完全な背中の発達を目標とする6種類のエクササイズは以上のとおりである。最も大切なことは、あなたが出し得る限りの最大の強度のトレーニングで、どのセットも力を出し切るまで打ち込んですることである。トレーニングが終った時には、一滴の余力ものこしていないところまでトレーニングに打ち込むべきである。
 あなたが、あなたの体にしみこんだステロイドを駆遂してしまおうと考えているのでない限り、また水分で体をぽんぽんにふくれあがらせようと思っているのでない限り、無制限に多いレップス数のトレーニングし、かつ、これで体が大きく強くなると思っているのだったら、まことに滑稽である。
 もし、ステロイドによって体を大きくしたいと思っている人があったら、そういうことで一度ふくれた体は、すぐにしぼんで小さくなることを知ってほしい。充実して、かたい永続する筋肉の発達は、ヘビー・トレーニングをストリクト・スタイルでする以外にはないのである。
(了)
月刊ボディビルディング1981年3月号

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