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★ボディビルダーの道しるべシリーズ★
疲労回復の科学的研究<1>

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月刊ボディビルディング1981年7月号
掲載日:2020.06.09
筆者=ジョー・ウイダー(マッスル・フィットネス発行者)
訳者=松山令子
監修=後藤紀久(医学博士・国立予防衛生研究所主任研究官)

◇新しいシリーズの紹介◇

 エクササイズを行なうことと、栄養を摂取することは、あなたのトレーニングの3分の2を占める。残りの3分の1は疲労回復である。
 ただ、ひたすらに大量のセット数をこなし、長時間トレーニングをしさえすれば、必ず筋肉が発達して大きくなると信じているボディビルダーがなんと多いことか。
 毎日欠かさずジムに来て、真面目に何時間かをトレーニングに打ち込むボディビルダーで、眼をみはるほど急速に大きくなる人は皆無といっていい。その理由を解明するのがこのシリーズである。
(松山令子)

疲労回復についての序論

 適切有効なエクササイズの実行と、周到な配慮に富む栄養摂取の実践は、あなたの筋肉を正しく発達させるための、欠くべからざる二大要件である。そして、ボディビルディングの希望を達成するためには、もう1つの第三の大切な要件があることを、われわれは知らねばならない。第三の要件、それは完全な疲労回復を実践することである。
 あなたが、これからジムに行ってトレーニングしようとするときは、あなたの身も心もすっきりとしていて、心がはやり立っているという状態であるべきである。つまり、この前のトレーニングの疲労が完全に回復しているという状態である。
 こういうときは、その前のトレーニングが有効に行なわれたという証拠であり、これから行なおうとするトレーニングもまた有効に行なわれるだろうということが予測できる。
 けれども、もし、あなたが、これからトレーニングを始めようとするときに、やる気充分の状態にないときは、それは、あなたの疲労回復が完璧に行なわれておらず、疲労が肉体的にも精神的にも残存していることを意味している。それは、あなたの疲労回復能力が、トレーニング能力より劣っていることのあらわれである場合もある。

 ねむ気と無気力は、あなたを襲って臆病にさせ、トレーニングを怠ける理由を無理に考え出させようとする、巨大な人喰い鬼のような怪物である。長いボディビルディング生活の中では、こんなねむ気と無気力がしばしばあなたを襲うことは決してまれではないことを、あなたは経験から知っている。
 このように、トレーニングに気乗りしない時、あなたは無理に自分に鞭打ってトレーニングに打ち込ませる。そしてこのようなトレーニングのあとであなたは爽快感と満足感を味わう。
 しかし、こんな場合、あなたは、つねに一定量を維持する必要のあるエネルギーの貯蔵を、気付かないままで使いこんでいるのである。それに気付かず、今日は気が進まなかったにもかかわらず、やってみたらうまくトレーニングが出来たと思ってよろこぶようなことがくり返し長くつづくときは、やがてあなたはオーバー・トレーニング(過剰トレーニング)となり、完全に疲労してしまうので、改めて疲労回復のための手段と取り組まねばならなくなる。
 このようなトレーニング意欲の低下が、くり返して起きるときは、それは肉体的な破綻の起こる前ぶれである。こういう状態のとき、人間が怠惰になるのは決して引っ込み思案な性格のせいではなく、体が自衛手段を構じているのである。
 一般的にいえば、あなたの体は、トレーニングをした9時間後には、次のトレーニングが充分に出来るところまで完全に疲労が回復されているべきである。何故かといえば、トップ・ビルダーというものは、1日に2回、つまり午前中に1回と夜に1回のトレーニングをすることが可能でなければならないから。

 大きいコンテストが近づくと、彼らは、それに備えての体づくりで、午前中に1時間か2時間、そして夜にも同じようにトレーニングをするだけの体カを持っている。そして、彼らは、エクササイズに注ぎこむ執念と同じだけの執念を疲労回復についても持ち、これを実行している。
 彼らは、セット数を真剣に考えるように、疲労回復の方法についても真剣に考える。雰囲気や緊張感や心配が、どれだけボディビルダーを疲労させるかということを彼らは充分に知っている。その時その時の出来事と、それが体に及ぼした影響を、彼らは1つのこさず克明に把握して、将来への参考とする。
 チャンピオンになるための必要な素資を持っている平均的なボディビルダーは、週に4日、または5日のトレニングをし、1回のトレーニングに1時間半のスケジュールをこなし、やがては、ダブル・スプリット・システム(身体部分により、トレーニングを分割して行なう方法)によって、1日2回のトレーニングをして筋肉を発達させねばならない。
 しかし、ここで大切なことは、彼がどれほどトレーニングに励もうと努力しても、また、どれほど適切に栄養補給をしても、もし、完全な疲労回復の手段を学ばない限りは、彼の望む体を彼の計画する期間でつくりあげることは不可能である。
 もし、あなたが、疲労回復の方法をぼんやりとしか考えていないなら、あなたは必ず、いつか完全な休暇をとらざるを得なくなる。こうしない場合は奥歯をギリギリ噛みしめながらトレーニングをつづけるが、いっこうにトレーニングに身が入らず、時間と労力を空費して、結局、あなたのトレーニングは効果のない無駄な努力に終る。

 あなたの体は、自然な生理的法則にしたがう。ウイダーシステムは、多くのチャンピオン達や、専門家の経験の中から、自然の生理的法則に従っている部分をあつめて、それをあなたが実行することによって、自然に逆らわず、無理なく筋肉を速やかに発達させるのを助けることを目的としている。
 筋肉を発達させることを目的とする薬品を用いることは、一定期間を越える使用は効果がない。そのような薬品を使用することは、自然な疲労回復の経路を狂わせ、エネルギーの必要貯蔵量を使いこませる。そして究極的には神経疲労を起こさせる。
 だから、われわれは、あなたが最良のトレーニング法と栄養摂取の方法とを学んで身につけているように、ウィダー、インスティンクティヴ、プリンシブル(ウイダーの、人間の体の本能に準拠する法則)を信頼して、自然な疲労回復の経路を学んで身につけ、それを実行してボディビルディングの実を挙げてほしいと願っている。
[デニス・ティネリノにトレーニングのアドバイスをするこのシリーズの著者、ジョー・ウイダー氏]

[デニス・ティネリノにトレーニングのアドバイスをするこのシリーズの著者、ジョー・ウイダー氏]

 疲労というものを概念的に理解するのはむずかしいかも知れないが、それをしようとするならば、エクササイズや栄養を研究して学ぶのと同じように可能である。ただ、それをするには時間もかかり、また、何らかの特別な基礎知識を必要とするかも知れないけれども、たとえそれが中々はかどらないように思われるとしても、それを学ぶにつれて、あなたは、自分のトレーニングをより効果的に行なうことが出来るようになる。
 さらに、いつも小さい日記帳を持っていて、日々の疲労状態とその回復状況を時々刻々に記録していくことは、将来の参考となるデータをつくる意味では素晴らしいアイデアである。

 今回は、疲労回復の科学を学ぶシリーズの第1回目である。先ず疲労回復の役目を果たす上で、睡眠と休息がどのような働きをするかを学ぶべき時がきた。感情、雰囲気、心配、緊張などをとりあげて研究せねばならない。
 いいかえれば、あなたの体の働きについて、今までよりももっと広く深く観察して、正しく理解するべき時が、あなたにはきたということである。
 われわれは、あなた方に、トレーニングと栄養についての正しい知識を、あらゆる方法で与えてきた。そして、いま、われわれは、正しい最も効果的な疲労回復の方法をあなた方に習得させるためのプログラムを進水させようとしている。これこそ間違いなく、あなたのボディビル人生の中で、学びとり、実行せねばならぬ最も重要な課題である。
 ウイダー・リサーチ・クリニック(ウイダーの診療研究所)は、この主題についての最新の研究情報のすべてを、あなた方に提供する。この研究所のメンバーである多くのチャンピオン達の経験や発見を次々とこのシリーズの中で発表していくこととする。
 次号では、疲労回復のプロセスの中で、睡眠がどのような役目を果たすかをとりあげることとする。
月刊ボディビルディング1981年7月号

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