ボディビルダーのバイブル(聖書)
部厚くて、くっきりとした大胸筋のすばらしさ
訳=松山令子
左からクリス・ディカソン、松山令子、末光健一、菊地正幸、石村勝己
そして、その素晴らしい体とポージングに、あらためて心から感嘆した。去年のオリンピアで2位といういい成績をあげたにもかかわらず、少しもおごることなく、誰に対しても卒直でとても感じのいい応待ぷりであった。
体の進歩と共に人間性もまた進歩しているこんなボディビルダーを見ることは、ほんとうに誰にとってもうれしいことである。このスナップは、私達の宿舎に当てられたパシフィック・ビーチ・ホテルのレストランで彼をかこんで食事をし、いろいろ話をしたときの記念のスナップである。
その時、わたしは、トレーニングの途中でブチッという変な音を聞いた。そしてその直後に、わたしの大胸筋の三角筋への連結部分が切断したことを体で感じた。
怪我は非常に重かった。それで、わたしが、コンテストに備えるための大胸筋のヘビー・トレーニングが出来るようにまで回復するのには、まる18ヵ月かかった。
その怪我のあと、わたしの痛めた部分をトレーニング出来るようになるために、わたしは自分のトレーニングのプログラムを、どれだけ細心の注意で組立てねばならなかったか。
それは口ではいいつくせないほどのものであった。わたしは、最近まで、ベンチ・プレスを避けてきた。また、わたしの好きなエクササイズのひとつであるパラレル・パー・デイップスからも遠ざかっていた。それらのエクササイズが、わたしの痛めた部分に直粧カをかけるからである。
わたしの大胸筋トレーニング・ルティンは、4種類のエクササイズから成っている。第1はペック・デッキ・フライである。このエクササイズは、まだ怪我の影響が残っているわたしの大胸筋を、苦痛なしに、最大限に引き伸ばすことが出来るからである。
このペッグ・デッキ・フライは、あとで行なう、もっと重いウェイトでのエクササイズのために、胸全体のウォーミング・アップの役目を果たす。わたしは、これを総計5セットするが、第1セットは20レップスで、第2セットはそれより20ポンド(約9kg)ウエイトをふやし、そのあとの3セットは、各セットごとに10ポンド(約4.5kg)ずつふやす。
だから、わたしの最後のセットは最初のセットよりも50ポンド多いウエイトを用いることになる。第2セットから第5セットまでのわたしのレップスは平均12レップスである。
第2のエクササイズは、わたしが“フライ・プレス”と呼ぶところのインクライン・フライとインクライン・ダンベル・プレスのコンビネーション・エクササイズある。12レップスからスタートして、そのあと各セットごとに、1つのダンベルにつき5ポンド(約2.5kg)ずつ増量していきながら、レップス数は12、11、10、9、8と減らしていく。
第3のエクササイズは、フラット・ベンチでのわたし特有のダンベル・ベンチ・プレスである。このエクササイズでは、わたしはバーベルよりはダンベルをえらぶ。
その理由は、ダンベルを用いる方が、バーベルを用いるよりは、肘を体側に保つことができ、このことによって、わたしの古い怪我の箇所に過大なストレスをかけずに、大胸筋を烈しくトレーニングすることが来るからである。
このエクササイズの間、ダンベルを上方にプレスするとき、わたしの掌は内側に向いている。このエクササイズもまた、5セットで、8レップスからスタートして、ウェイトを増すにつれて、レップス数は6レップスまで減少する。
“わたしは胸のトレーニング・ルティンのウォーミング・アップ運動として、ペック・デッキ・フライをする。これは大胸筋の内側の縁をくっきりさせるのに役立つ。”
“ケーブル・クロスオーバーは、チャンピオン・ボディビルダーの大胸筋には絶対に必要な、細かい指状のストリエイション(条溝)を刻みつける”
この目的に応じて、わたしはかなり軽いウェイトを用いる。このエクササイズには、わたしは特に心を集中する努力をし、セットの終り頃には大胸筋にバーンズ(灼熱感)を感じることが出来るように、エクササイズのやり方を工夫する。コンテストで戦うことに真剣に努力しているボディビルダーにとっては、この、“感じる”ことの方がウェイトの量よりもはるかに重要である。
わたしは、トレーニング中は、ペース(速度)を一定に保つことを好む。セット間の休息は最大限60秒で時としては40秒である。このようにしていても、なお、わたしは速いペースでトレーニングするという点では、決して優秀ではない。
わたしは、トレーニング中でも、誰かの質問に答えたり、知った仲間が“ヤァ”というためにトレーニングの手をとめることさえあるが、多くのトップ・ビルダーたちの中には彼らのトレーニングを中断させようとする人は、誰であろうとも殺してやりたいくらいに思う人もある。しかし、わたしは、このようなささやかな気分転換は、元気回復のためによいと考えている。
わたしは、しばしば、わたしのオフ・シーズンのトレーニングは、プレ・コンテスト・サイクル(コンテスト前のトレーニングの周期)と、どのようにちがうかと尋ねられる。
いま、わたしはここで正直に答えよう。わたしのオフ・シーズン・トレーニングは、いまここで述べたエクササイズを基本的に行ない、変わっているのは、スピードをゆるやかにし、より重いウェイトを用いることである。
オフ・シーズンでリラックスしているときのわたしのダイエットは、わたしに烈しいヘビー・トレーニングを容易にさせる(オフ・シーズンは炭水化物を禁じないので、カロリーが多くとり入れられ、それによって烈しいヘビー・トレーニングが楽に出来るという意味)。
わたしがいままでにしてきたような、絶えず次々とコンテストで(グランプリは5ヵ月にわたり、毎月コンテストが行なわれる)ときのトレーニングは、まさに骨をけずり精魂をすりへらすほどのものである。
このフラット・ベンチでのフライは、大胸筋を発達させるのにはまことによいエクササイズである。しかし、それはまた同時に、大胸筋にストレッチ・マーク(急激にバルクが増すとき、皮膚にひびわれのようなすじが入る)をつくり易いという面がある。
わたし自身は、インクライン・ベンチでのフライの方がずっと優れていると考えている。何故かといえば30度か40度くらいの傾斜のあるベンチでするフライの方が、はるかに的確に大胸筋を働かせるからである。
初歩のボディビルダーは、スクワットと、アクロス・ベンチ(ベンチに背をのせて十文字に交差して仰臥しての)のプル・オーバーをスーパ・セットとし、正しい呼吸法で行なうことによって、胸郭の奥行きと幅を大きくせねばならなぃ。
このようなスーパー・セットを2セットか3セット、胸のトレーニングのために実行することは、初心者にとって大きい価値がある。何故なら、立派な胸とは、単に大胸筋が発達しているだけでなく、大胸筋の土台となる胸郭が大きく発達していない限りは、決して立派な胸をつくることは出来ないから。
初心者の胸のトレーニング・ルテインは、極めて基本的でなければならない。わたしは、先ず、バーベルベンチ・プレスの8レップスから10レップスでの4セットからスタートすることをおすすめしたい。
第2番目のエクササイズとしてはインクライン・ダンベル・プレスを8~10レップスの4セットをすすめたい。これによって、あなたの胸にかなりの筋量を増すことが出来る。
このようにして、あなたは先ず胸の形を望むとおりにまでつくりあげ、その後に、デフィニッションをつけることにすればよい。ともかく、初心者にしても中習者にしても、基本トレーニングによって、先ず筋量を増すことが第一である。
“1本のバーベル、または2個のダンベルを用いてするインクライン・プレスは、どちらも大胸筋上部の発達を得るためには欠くべからざるエクササイズである”
たいていの熟達したボディビルダーたちは、コンテストを目指していないときのルティンとして、ここにわたしが述べた中習者のルテインを用いるのがよい。そして、コンテスト前のトレーニングとしては、わたしのルテインを用いるのがよい。
コンテストの前には、わたしは終日、わたしの大胸筋を緊張させつづけることを実行する。ウイダー・アイソ・テンション・プリンシプル(ある筋肉を他の筋肉と切り離して、その筋肉だけを緊張させる法則)にしたがって。この方法によって、わたしの大胸筋は著しくカットを増し、無数のストリエイションを持つことが出来る。
わたしは、時に応じて、大胸筋のトレーニングにスーパー・セット法をとり入れてきた。わたしは、コンテストの直前1週間に、急速に烈しい仕上げのトレーニングを欲するときに、スーパー・セット法を用いてきた。
わたしの場合、スーパー・セットは、わたしの力を消耗させる。どんな場合でも、わたしは、つねに自分の大胸筋を重いウェイトを用いて苦しめることにしている。スーパー・セットをするときは、わたしは第2セットで所期のウェイトをこなしたいという気持になる。
こういうわけで、わたしは、ほんとうにコンテストが目前にあるという場合以外は、大胸筋のトレーニングにはスーパー・セット法を用いないことにしている。
大きい望みに燃えるボディビルダーたちが試みることの出来るひとつのテクニックは、インクライン・フライのような爛筋だけを他から切り離して鍛えることの出来るエクササイズと、インクライン・ベンチ・プレスのような基本的なエクササイズとをスーパー・セットにする方法である。こうすることによって、ウイダー・プレ・エキゾーション・プリンシプル(ある特定の筋肉を、トレーニングにより前もって疲労させておく法則)の効果をあげることが出来る。
すなわち、インクライン・フライで大胸筋だけをさきに疲労させておき、そのあとで、ベンチ・プレスをすると、大胸筋は極限まで働くことになる。
一般的には、ベンチ・プレスでは腕がさきに疲れた時点で、運動が出来なくなるので、大胸筋は充分疲労するまでに至らない。しかし、このプレ・エキゾーション・プリンシブルを用いると、大胸筋を前もって疲労させておくので、ベンチ・プレスで充分疲労し、したがって大胸筋の発達が促されるというわけである。
あなたが、コンテストで優勝したいという大望を抱いているなら、数セットの各終りでのフォースト・レップスをするのが当然とみとめねばならない。しかし、このフォースト・レップスを過度に行なうときは、過剰トレーニングにおちいりやすいから、適度に用いるべきである。
わたしがすすめたい方法は、各セットの終りに、パートナーに助けてもらって、1回か2回かのフォースト・レップスを行なうことである。
わたしが、あなたがたにすすめたい最後のテクニックは、ウイダー・マッスル・プライオリティー・トレーニング・プリンシプル(ある特定の筋肉を他より優先的にトレーニングする法則)である。もし、あなたの胸の発達が他の筋肉より遅れているなら、あなたは大胸筋のトレーニングを、トレーニングの冒頭で行なわねぱならない。
あなたがトレーニングを始める時には、あなたの肉体的、精神的エネルギーは、たっぷりある。そのような状態のとき、大胸筋のトレーニングをすると、充分なエネルギーを利用できるので、効果的なトレーニングが出来る。トレーニングの後半であなたがエネルギーを消粍したときにするのとでは雲泥の差である。
この意味で、このプライオリティ・プリンシプルは、発達の遅れている筋肉のトレーニング法としては最も賢明な方法である。
“わたしはまたフライ・プレスという半分はフライで半分はプレスであるエクササイズを大胸筋の上部の発達のために行う”
“デクライン・プレスは、わたしの大胸筋の外側とした側の鋭い輪郭を刻み出す”
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