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第4回東日本ボディビルチャンピオンシップ

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月刊ボディビルディング1992年10月号
掲載日:2020.02.06
3月9日/川口市産業会館
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◎ミズの部

 2週間前の選抜大会では80%前後の仕上がりで出場していた朝生記子が、タイトルを取りに来たな、という仕上がりでステージに登場した。今回のメンバーの中にバルクで朝生に対抗できる者は見当たらず、その上朝生のコンディションが良いときているので、彼女の勝利はほぼラインナップで決ったと言っても良いだろう。

 前から述べている事だが、朝生のサイドチェストポーズは正に逸品であり、スキが窺えない。まだバリバリに絞れているわけでもないのに、うっすらと大胸筋にストリエージョンが見えるのは、やはり筋肉の密度が濃いからなのだろう。

 上半身と下半身のバランスが今一つと言われていたが、年々その差も縮めている。ポージングもうまくなったのであろうが、ダブルバイセプスでの背中の広がり等には成長の跡が窺えた。

 予選では全員の1位票を得て、決勝でも1人を除いて1位票をもらい圧勝した。彼女としては88年のミズ埼玉以来の優勝であり、初のビッグタイトル奪取であろう。

 2位には、仙台の中村泰子が入った。彼女は非常に均整のとれた身体をしており、プロポーションの良さで目を引く。しかし、筋量が豊富かといえば朝生程バルキーではなく、仕上がりが良いかといえば厳しいと言えるほどでもない。だが、全体的に見ると非常にまとまっていて、見栄えがするのだ。ポージングが旨いというのもプラスになっているのだろう。ポージングでも、どちらかと言うとフリーの方が映えるのではないか。決勝審査では一人彼女に1位をつけている。

 中村と同じジムの佐藤敦子が3位となった。彼女は上体は絞れているのだが、下半身にどうも甘さが残るようだ。バックや腹筋にはよいカットが見られるのに、殿部や大腿部には厳しさが見当らない。上体の厚みももう少し欲しいところだろう。

 4位の坂場裕子は、去年のミズ埼玉で優勝した選手だ。下半身のバルクが非常に富んでいて、朝生と似たタイプである(ジムも一緒である)。このまま上体にバルクが付けば東日本のタイトルも夢ではない、と思える程将来有望な選手である。しかし、何しろ今回は仕上がりが甘かった。昨年ミズ埼玉を獲った時の方がコンディションは良いだろう。特に下半身は後一絞りも二絞りもできそうであった。まあ、将来のために今回は甘くしといたのかもしれない。

 5位の難波ちずるは、少々インパクトに欠けていたようだ。マッスルにしろ、プロポーション、仕上がりにしろまだ発展途上であると思われる。

 今回の東日本大会のミズの部は出場者5名であり、淋しさは隠せなかったようだ。これは全体的に女子の選手が減りつつあるのかも知れないが、この規模の大会ならば2桁は欲しいところだろう。今回の出場選手の出身を見ると宮城、埼玉、栃木の3県だけであり、これでは東日本大会と呼べないのではないか。最低でも各県1人は出場する、もしくは県から送り込むといった積極性が欲しいと思われる。

 大会を盛り上げるにはレベルの高い戦いが一番なのだが、それも選手が少なすぎてはどうにもならないと思う。
1位/朝生記子◉日本の女子ボディビル界ではトップクラスのバルクの持ち主。調整もまずまずで、余裕の優勝を果たした

1位/朝生記子◉日本の女子ボディビル界ではトップクラスのバルクの持ち主。調整もまずまずで、余裕の優勝を果たした

2位/中村慶子◉プロポーションはピカー

2位/中村慶子◉プロポーションはピカー

3位/佐藤敦子◉もう少しインパクトが欲しい

3位/佐藤敦子◉もう少しインパクトが欲しい

左より朝生、佐藤、中村。やはりバルクの差は歴然としている

左より朝生、佐藤、中村。やはりバルクの差は歴然としている

◎ミスターの部

 毎年、この東日本大会から有望な選手が輩出されているが、今年もそれに値する選手が存在した。東京の佐々木孝二である。

 彼は今年のクラス別東京大会75kg級3位、関東大会4位と成績からするとあまり良いとは言えないが、毎回ガッツ溢れる闘いぶりで存在は気になっていた。もちろん今回も、闘志が満ち満ちた闘いっぷりで、会場を盛り上げてくれた。

 元々バルクは備えている選手なだけに、調整がうまくいけばいくらでも上位にくい込める才能はもっている。今回はどうやら、今年のベストシェイプで臨んでいるようだ。

 ただ、優勝争いに加われるかと言うと、まだ荒削りな部分が多いようだ。特に背中の広がりがもっと欲しい所だ。胸が厚く、腕も太いだけに上体の広がりの無さが気になる。大腿四頭筋もバルクはあるのだが、カット・セパレーションに乏しい。これは力の入れ方が悪いのかもしれないが…。バックの中央部、下背部の厚みも、これから先ビッグタイトルを狙うためには、克服しなくてはならない課題である。

 しかし、未完成であるが故に今後非常に楽しみな選手でもある。とりあえず今回は大健闘の3位に入賞を果たした。
1位/須賀幸男◉上体の迫力、特に広がりは群を抜いていた。昨年の6位からいっきに優勝をつかみとった

1位/須賀幸男◉上体の迫力、特に広がりは群を抜いていた。昨年の6位からいっきに優勝をつかみとった

3位/佐々木孝二◉今大会を熱くしてくれた期待の選手

3位/佐々木孝二◉今大会を熱くしてくれた期待の選手

4位/小島良司◉バルクもあるしバランスも良い。しかし、もう一つ何かが欲しい

4位/小島良司◉バルクもあるしバランスも良い。しかし、もう一つ何かが欲しい

 さて、優勝争いはというと、東京の須賀幸男、仙台の箱崎一俊の2人の争いになりそうだということが、ラインナップの段階で予想がついた。

 須賀は昨年のこの大会では少々甘さを残して6位に終っているが、今回はその鬱憤を晴らすかのごとく厳しい仕上がりで登場した。上体のバルクも何か一回り大きくなったような感じがする。ウエストから脇にかけて形よく広がる広背筋は、バック・フロント共に群を抜いて目立っていたようだ。

 弱点と言われていた下半身はどうだろう。数年前と比べれば外側のふくらみもついてきたし、進歩はしているようだ。しかし、それでも上体と比較すると物足りなく思えてしまう。サイドを向いた時の大腿二頭筋の盛り上がりや、バックポーズでの大殿筋や二頭筋のカットも上体ほどの迫力は見られない。まあそれも、上体のバルクがスゴすぎるからなのかもしれないが。
 
 下半身に弱点を持つと言えば、もう一人の優勝候補箱崎にも言えることである。特に胸肩、腕の迫力が日本のトップクラスであると言えるだけに、下半身の細さは目につくところだ。四頭筋に力を入れるとセパレーションは出るのでバルクはあると思うのだが、外側のふくらみがないために細く見せているのかもしれない。

 仕上がり状態も須賀と同様に箱崎もかなり厳しい。上体のバルクも両者甲乙付け難い。広がりの面でやや須賀有利か。

 この二人の戦いは最後まで目の離せぬ展開となり、結局トータルわずか4ポイント差で須賀が優勝を手にする事となった。
左より箱崎、佐々木、須賀。佐々木はポーズがかなり良くなったが、まだ堅いようだ

左より箱崎、佐々木、須賀。佐々木はポーズがかなり良くなったが、まだ堅いようだ

5位・藤島伸一(右)と6位・三浦藤一。藤島のマスキュラーはド迫力

5位・藤島伸一(右)と6位・三浦藤一。藤島のマスキュラーはド迫力

7位・六本木昇(右)と8位・横森真道。二人共、調整が今一つだった

7位・六本木昇(右)と8位・横森真道。二人共、調整が今一つだった

2位/箱崎一俊◉"東北の雄"から"日本の雄"へと期待も高まる

2位/箱崎一俊◉"東北の雄"から"日本の雄"へと期待も高まる

9位・登坂勉(右)、10位・内藤格

9位・登坂勉(右)、10位・内藤格

4位・坂場裕子(右)、5位・難波ちずる

4位・坂場裕子(右)、5位・難波ちずる

 4位には昨年5位の小島良司が入った。全体的に地味な印象を受けるが、仕上がりはまずまず。ラットスプレッドで見せる胸部のストリエージョンは迫力ものだ。

 5位に入ったのは、同時に開催されたMR埼玉を制しその勢いをかって東日本に挑んで来た藤島伸一である。肩幅が広く、非常にスケールの大きい選手で、マスキュラーポーズでは観客を驚嘆させるほどの筋密度の高さを見せている。僧帽、肩、腕、胸と筋肉がうねりまくり、上下にバックリとセパレートする大胸筋は特筆すべきものがある。彼も又、2、3年後が非常に楽しみな選手である。

 腕の太いことで定評のある三浦厳一は、少々甘さを残し6位に終った。元々筋肉が大きいのでシェイプは浮きでるのだが、細かなカット、セパレーションには乏しかったようだ。

 7位の六本木昇、8位の横森真道にも同様のことが言える。やはりこれ位のレベルの大会ともなるとバルクではそう差をつけることは難しく、調整の良し悪しで順位に差がつくのだろう。

 9位の登坂勉も彼本来のバリッとした感じが見られなかった。彼は仕上がりの良さで勝負するタイプなので、甘い仕上がりだと厳しいだろう。
 
 10位の内藤格は仕上がりはまずまずといったところ。全体的に細かいカットもよく出ていた。後は何しろバルクアップであろう。
ジャッジ表

ジャッジ表

月刊ボディビルディング1992年10月号

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