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特別座談会☆92MRユニバースを振り返って
今後の日本選手の課題はバルクアップと共にポーズの研究である

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月刊ボディビルディング1993年4月号
掲載日:2020.02.20
出席者●玉利斉JBBF会長、前島忠氏、
   増渕聖司氏、佐藤義昭氏、宮川俊彦氏、小沼敏雄選手、鷹田俊彦選手
記事画像1

各国の選手を見て

――では日本選手の課題についてはこの位にして、世界の選手について感想はありませんでしょうか。
増渕 やっはりミドル級のレベルの高さ。あれはもう、ちょっとどうしようもないという感じでした。そして選手のコンディションについてなんですが、例えばアズマン・アブドウラなんですが、彼はプレジャッジの時はあまり良くなかった。ところがファイナルの時にはもの凄く良かった。これはピーキングの問題で、検量をパスする為に一度しぼんだ状態になるわけですよね、それが翌日のプレジャッジでは少しもどって60%位、そしてファィナルは凄く良い状態というわけです。他にもいましたけど、うまくピークに持って来ているなあと痛感しました。廣田さんはどう思いますか。

廣田 ええ、そうですね、逆にプレジャッジが良い選手もいましたし、調整は難しいです。

宮川 あとオーストラリアのマイク・ショーンティー、日本にも来ましたけど、彼はかわいそうでしたね。優勝すると思っていましたが。6位でした。凄いブーイングでしたね。

前島 私はショーンティーに駆け寄って話しをしたんですが、彼は泣いてましたよ。オーストラリアのスタッフもみんなで慰めてました。本人も優勝だと思ってたでしょうね。

佐藤 ライトヘビーはショーンティーが良かったですが、ミドルの優勝は文句無いですね。凄くきれいな選手でした。

前島 海外の選手を見て感じるのは、日本の選丁に比べ、リラックスしていると言うか、神経が疲労していないんですね。そういった所の研究がすすんでいるんじゃないでしょうか。又、個人個人のコントロールが上手で、無意識のうちに会得している感じもします。
玉利 でも、そう言った意昧じゃ今回の日本選手団はそんなに緊張感は強くなかったですね。
ミドル級比較、中央が高西。高西は臀部にまでストリエーションを見せるほどの仕上がりだったが、予選通過ならず

ミドル級比較、中央が高西。高西は臀部にまでストリエーションを見せるほどの仕上がりだったが、予選通過ならず

小沼も過去最高の仕上がりだったが、あまりにもレベルが高すぎ、9位に終わる

小沼も過去最高の仕上がりだったが、あまりにもレベルが高すぎ、9位に終わる

――それではみなさんにこれからの対策についてうかがいたいんですが。
廣田 選手自身のことなんですが、まず調整法で、急にカロリーを落してしまう事が多いようですが、だから、大きくならないと言って、2~3年コンテストを休んでバルクアップすると言う人がいますよね。でもそれでバルクアップした人はまずいません。大会数をこなす程筋肉は発達します。場数を踏んで、トレーニングを積んで、これが本当の意味でのバルクアップだと私は思っています。

増渕 バルクアップと言って単に脂肪をつけて終ってしまう人がほとんどですからね日頃から管理しないと。

廣田 小沼選手も、日頃から、他の選手のシーズン中以上に、食事に気をつかっているとうかがっています。沢山食べれば大きくなるものではない。大きくする為に必要なカロリーというのが、あると思います。難しいとは思いますが。

 あとはある程度発達した人がさらに発達させようとするのはかなり困難です。だからこれからは見せ方、人間の目の錯覚を利用した見せ方を研究するべきだと思います。

小沼 私は、日本選手も、ただバルク不足というのではなく、このポーズではこの部分が弱いなどと、ポーズごとに研究し、対策を立ててトレーニングする事が大切だと考えます。ダブルバイセプスで言えば、フロントでは胸の厚み、バックでは憎帽筋の厚みですとか腕にしても、私の腕はよく弱点とのご指摘を受けますが、実際、太くはないですが、ピークやセパレーションでは負けていないと思っています。

 例えばアズマン選手も、あまり腕は太くありません。もっと上位の選手で太い人は沢山いますが、彼が上にいったのは、セパレーションとピークですね。ただ太いだけでは勝てません。そして具体的にチャンスがあるのは、やはり軽量級だと思います。重いクラスはどうしようもないです。

 あとはやっぱりポージングですね。ポーズの取り方で全然ちがう。特にバックポーズは研究が必要です。

玉利 ボディビルには、スポーツ性、体育性以外に、芸術性が大きな要素としてあると言えます。芸術性においては、やはり西洋人は表現が上手ですね。日本人は、少しおとなしい。でも別に外国入と同じ事をする必要はない。日本人の特性を出す事が大切でしょう。
増渕 ポージングで言えば、これからはチームポージングにも日本的な特性を出して力を人れて行けるといいと思います。まだまだ開拓の余地が十分にありますね。
ライト級の比較、左から2人目が廣田。ユニバース初参加の廣田はカットでは目を引くが、やはりもう一回りの厚みが欲しい

ライト級の比較、左から2人目が廣田。ユニバース初参加の廣田はカットでは目を引くが、やはりもう一回りの厚みが欲しい

韓国の選手、左よりバン、ハン、キム。バンはバンタム級2位に入った

韓国の選手、左よりバン、ハン、キム。バンはバンタム級2位に入った

――大会の運営についてはいかがでしよう。
前島 アジアに比べてて良く言えば合理的だと感じました。少々、接待などは配慮に欠けるものを感じましたが。

玉利 ドイツの連盟の会長が、IFBBヨーロッパの副会長として、非常に気をつかっておられ、オーストリアの連盟をカバーしておられた事が印象的でした。

これからの日本ボディビル

前島 話は戻りますが、これから日本が国際的に伸びてゆく為のポイントとして、私はいくつかの方法を考えています。まずはボディビル自体の社会的認知の向上の為に、JOCや体協への加盟、またスーパースター選手の育成などが考えられます。

 そして連盟の活動の充実としては、食事やトレーニングをさらに研究し、よりよいボディビルを探究する事、選手が活動し易くなる為の様々な整備。そしてもう一つは社団法人化に伴う、良い意味での加盟クラブの促進と、各クラブオーナー単位で努力しての底辺からの向上を目指したいですね。
来年のユニバースは韓国で開催される。日本もフルエントリーで臨み、6位以内入賞を果たしたい

来年のユニバースは韓国で開催される。日本もフルエントリーで臨み、6位以内入賞を果たしたい

宮川 また、ボディビルの社会的貢献や、イメージの向上も考えなければいけない問題ですね。連盟としての貢献や、個人レベルでもそうですし、やはり、社会と協調していかなければならないと思います。

増渕 連盟としても、選手をボディビルだけの人間にしてはいけないと思います。例えば韓国の様に、仕事やトレーニングの一切を管理してしまう事は、現役の間は良いですが、引退したらどうなるのか、という事にもなりますよね。社会から外れてしまってはいけないと思います。

前島 まったく同感です。やはり、選手が社会に認められ、貢献出来るようになる為にも、一役員としてもできるだけ協力させて頂きたいですね。

玉利 今回は、世界選手権大会を振り返る座談会であったわけですが、みなさんから、ただ今のようなご意見が出て、非常にうれしく思います。筋肉を鍛えるという事は、一体どういう事なのかと言えば、トップの選手も、健康管理の為のトレーニングをする方も、本質は同じです。やはり、人間の生命の素晴らしさの追求であると思うんです。

 ボディビルにおいて、例えトップの選手にはなれなくとも、それに向って努力する事は、素晴らしい人格形成にもつながるし、競技からは退く時が来るわけですが、その後の人生も前向きに豊かにしてくれるはずです。ボディビルの表面の形だけにとらわれる事なく、心を豊かにするボディビルを、それぞれの分野で信頼される人材を育成し、社会へ送り出す事が我々の使命であると感じます。そんなボディビルの姿に向って、がんばっていけたなら、我々の理想に近づいていけるのではないでしょうか。
月刊ボディビルディング1993年4月号

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