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第4回全日本ベンチプレス大会

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月刊ボディビルディング1993年6月号
掲載日:2020.02.26
レポート/岩崎輝雄
 去る2月21日、第4回全日本ベンチプレス選手権大会が、ブリジストン東京工場体育館にて開催された。今回は、私、岩崎輝雄が出場選手の目から見たレポートをお届けします。


 まず女子からレポートさせて頂くと、44kg級では浅見由里香選手が、センター補助となかなか息が合わず苦労していたが、55kgに成功し優勝した。坂内留美選手、佐川玲子選手は同記録の50kgであったが体重差で2位に坂内選手、3位に佐川選手となった。

 48kg級は、昨年の台湾での世界ベンチプレス選手権の金メダリスト、渡辺通子選手が75kgで軽く優勝した。しかし、肘痛と寒さの為か調子が今一つの様に思えた(ちなみに私は通ちゃんの大ファンです)。山本明美選手は体重オーバーの為に52kg級のオープン参加になってしまった。2位には渡辺友子選手が42.5kgで入った。

 52kg級はスタート時間を間違えてしまい、アップをあまり出来なかったにもかかわらず、山田弘美選手が85kgで優勝。2位の清結花選手は昨年のミズ日本5位の選手。試合前「65kgを目指してがんばります」と元気だったが記録は残念ながら60kgであった。3位には55kgで右田小百合選手、4位には地元福島県から応援団の駆けつけていた吉田孝子選手が入った。オープン参加の山本明美選手の記録は72.5kg。高重量になると少しバランスが崩れる癖があったがほとんど直っていたようだ。

 56kg級では「寒い、寒い」と連発していた石川和子選手が80kgで今年も軽く優勝。石川選手はベンチTシャツを着ないでの試技だった。2位に62.5kgで相澤美代子選手、3位は57.5kgで福田かおり選手となった。

 続く60kg級には昨年度の全日本女子パワーリフティングチャンピオンの姫野恵利子選手が出場、今大会女子最高の95kgで優勝した。2位にはいつも元気ハツラツの木野田滋美選手で記録は80kg、少しずつ記録を伸ばしつつあるようである。3位には65kgで吉野広美選手が入った。

 67.5kg級は100kgベンチプレッサーの山崎選手と國弘選手が欠場。優勝は62.5kgを挙げた佐藤真由美選手、2位の熊谷静香選手の記録は52.5kgであった。

 75kg級はスタート重量で順位が決まってしまった。優勝した尾崎ハツエ選手は第一試技で90kgを挙げ、第2、第3試技では92.5kgを軽く挙げるのだが脚が少し動いてしまって失敗となってしまった。私の教え子岡田美佐選手も第一試技で85kgに成功、第2、第3試技で90.5kgの日本記録に挑戦したがいずれも失敗。早く90kg台に乗せてほしいものだ。3位には77.5kgでスタートした小林みどり選手が85kgで入った。このクラス、来年度は90kg台の戦いになりそうな予感がする。

■同記録続出、男子は大混戦

 男子の結果に移ると、52kg級では門倉雄選手が117.5kgで優勝、2位には112.5kgで大城新順選手が入り、3位に徳島県の村岡健選手が107.5kgで入賞した。

 56kg級は大阪の大坪誠選手が137.5kgで優勝した。2位には片瀬勝一選手が同記録で入った。片瀬選手は第3試技で142.5kgに挑戦したがあえなく失敗、今後この2人は良きライバルになることだろう。2人共、52kg級から60kg級での活躍が期待できる選手である。3位には高松から参加の藤田和俊選手が115kgの記録で入った。

 ベンチTシャツを初めて着て試技に入った60kg級は白川猛士選手。第一試技は軽すぎて早く上げ過ぎて失敗し「今日は記録より優勝を狙うわ」と言った後145kgを軽々挙げて優勝を決めた。世界チャンピオン強し、と言ったところか。2位には137.5kgで宮代真平選手が、3位には135.5kgで木下修一選手が入った。

 私がお手本としている67.5kg級の富永義信選手。162.5kgを軽く挙げて優勝した。2位にはI57.5kgで宮崎県から参加の矢野秀幸選手、3位には1本目このクラス最高の155kgからスタートした加藤勇次選手が見事にこれを成功して入賞した。4位、5位には共に150kgを挙げた西原広志選手、黒岩剛選手が入った。5位の黒岩選手は3本目に160kgに挑戦、良く止めて挙げ切ったが、お尻が少し浮いて失格となってしまった。矢野、加藤、黒岩の3選手は、来年の大会では富永選手の強敵となることだろう。

 75kg級の大谷進選手は、2本目の180kgは足が浮いてしまって失敗、3本目に私の靴を履いて成功し優勝を決めた。これからは世界大会で活躍してほしい。2位、3位は同記録の170kgで嘉陽義明選手、長屋正臣選手の順となった。嘉陽選手は挙げ方を研究すればさらに記録が伸びるだろう。150kg以上の重量をあげた選手がなんと10人という、充ロ実したクラスだった。

 82.5kg級では井本全保選手と酒井郁夫選手がこれまた共に180kgを挙げ、体重差で井本選手がうれしい初優勝を遂げた。世界べンチプレス大会に一緒に参加した仲間なので、実は私も密かに応援していた。3位には175kgで池秀員選手が、80年、86年ミスター日本の朝生照雄選手は167.5kgで6位に入賞した。82.5kg級も75kg級に負けず劣らず、160kg以上を挙げた選手が10人と素晴らしくハイレベルなクラスであった。

 90kg級は、2本目に197.5kgの日本新記録を決めた名城均選手が優勝、3本目には205kgにチャレンジしたが惜しくも失敗した。2位には少しずつ記録を伸ばして来ている仲山実選手が180kgで入賞、3位に黒澤昌史選手が170の記録で入った。

 100kg級では、石川成道選手が3本共きれいに決めて優勝した。記録は185kg。そして50歳を越えてますますお元気な内田長良選手が2位、3位には京都から参加の西村隆雄選手が入賞し、初のメダル獲得となった。

 いよいよ私の出番の110kg級である。しかし大会10日前に風邪をひき、熱がおさまらない。さらに久々の減量と寒さで、試合前には両足のふくらはぎが痙攣している状態だった。私の場合、足の力を凄く利用するので、情けない試技になってしまった。一本目の187.5kgをとった私が1位、2位には同記録で三土手大介選手がはいった。3位、4位、5位もなんと同記録の180kgで、順に妹尾昌和選手、藤田博彰選手、中村仁選手という結果となった。

 125kg級は大阪の吉田善明選手が195kgで1位。2位にはベンチTシャツをうまく着こなして190kgを挙げた向井英司選手が入った。3位には氏家一郎選手が165kgを挙げ入賞した。愛知の怪物、鈴木選手は今年も欠場。肘を痛めているのだろうか。

 そして最後は125kg超級であるが、柔道5段の下村隆選手、本大会前に柔道の試合があり、3週間ほどウェイトトレーニングを休んだとのことであったが、今大会ただ一人の200kgベンチプレッサーとなり、優勝を決めた。因みに下村選手は、パワーリフティングでもトータル802.5kgと、昨年度の日本最高記録をマークしている。この階級にエントリーしていた我が弟子、西川選手だが、昨年は試合に出場した疲れが残っていたため、欠場となってしまった。調子の良い悪いに関わらず、今後は毎年出場して欲しい。
110kg(左)と67.5kgの表彰、私のお手本とする富永選手は、若い力を抑え67.5kg級で優勝を決めた

110kg(左)と67.5kgの表彰、私のお手本とする富永選手は、若い力を抑え67.5kg級で優勝を決めた

ベンチプレスTシャツを着ての私の試技、今回は風邪の為、情けない試技になってしまった

ベンチプレスTシャツを着ての私の試技、今回は風邪の為、情けない試技になってしまった

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 ベンチTシャツが認可されて初めての大会とあって、当日初めて着る者もあれば、着慣れた者もいた。また今回は女子56kg級の石川選手のように、ベンチTシャツを着ないで優勝した選手もいた。これからは、うまく着こなしたものが勝ち、パワーリフティングのスーパースーツの様に、日本全国の選手が着ることになるだろう。

 今回は、関東地方でも冷え込みのきつい日にあたり、体育館の中は、まるで冷蔵庫の中にいるようだった。100kg以上のグループは午後2時30分が試技の開始となったが、その頃には選手達の体も冷えきってしまっており、ほとんどの選手がスタートの重量を下げていた。今後はもう少し暖かい時期の大会開催を、大会関係者の方々にお願いしたい。

 そしてこの場をお借りして、今大会でお世話になった、パワーハウスの吉田ご夫妻、関東の審判・役員の皆様、愛知の前田さん、高松の中尾さん、神奈川の浅間さん、以上の方々にお礼を申し上げたいと思います。寒さの中、ありがとうございました。

 最後に今大会の最優秀選手を発表させていただくと、男子は、大阪の56kg級大坪誠選手、女子は同じく大阪の52kg級山田弘美選手が選ばれた。これからも大阪の選手はがんばりまっせ!それでは選手の皆さん、また来年お会いいたしましょう。最後に私から一言、
「一生青春、一生現役を目指す」
月刊ボディビルディング1993年6月号

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