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第7回MR&MS東京クラス別ボディビル選手権
7月11日/江戸川文化センター

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月刊ボディビルディング1993年9月号
掲載日:2020.03.02
Photo/Ben.K&YasuMizuguchi

国内のボディビルシーズン開幕を告げる

 東京クラス別大会も今年で第6回を数え、今までに日本のトップクラスへ羽ばたく選手を、男女数多く生み出して来た。今年の参加人数は丁度200名。この中から今年も、どんな選手がトップへと飛び出して行くのであろうか。

■60kg級

60kg級1位●小久保一美

60kg級1位●小久保一美

60kg級2位●小宮克己

60kg級2位●小宮克己

60kg級3位●坂内一賀

60kg級3位●坂内一賀

60kg級4位●渡部一博

60kg級4位●渡部一博

60kg級5位●菊池昭博

60kg級5位●菊池昭博

60kg級6位●石渡正弘

60kg級6位●石渡正弘

記事画像7
 今年の優勝候補は一昨年、昨年と2位で涙を呑んだ小宮克己。上体の仕上がりは安定したものがあり、今回も、胸にはストリエーションが走る、上々の出来であった。しかし彼のウィークポイントである下半身には今一つ鋭さが感じられない。そこに登場したのが初出場の小久保一美。身長も1cmしか変わらず、ゼッケンで小宮の隣に位置した彼は、非常に脚が太く、仕上がりも厳しいものだった。上体も肩、腕が充実し、バルクに富むが、やや上体の広がりに欠けるので、広がりが売りの小宮との比較は興味深いものがあった。結果は脚、腕、肩のバルクに長けた小久保が小宮を破り優勝を果たした。小宮の悔しさを隠し切れぬ表情が今回に賭けた意気込みを物語っていた。

 3位には90年5位の坂内一賀が入った。バランスが良く、きれいな体の坂内だが、身長で上位の2名より10cm近く高く、薄い印象を受ける。思い切って1クラス上げてみると面白いのではないだろうか。

■65kg級

65kg級1位●津田 宏

65kg級1位●津田 宏

65kg級2位●石井徳久

65kg級2位●石井徳久

65kg級3位●薩川通春

65kg級3位●薩川通春

65kg級4位●大宮新次郎

65kg級4位●大宮新次郎

65kg級5位●谷口 拓

65kg級5位●谷口 拓

65kg級6位●竜崎 隆

65kg級6位●竜崎 隆

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 出場者57名と最も多く、競争率の高い階級となったが、優勝は簡単に決まってしまった。一昨年に60kg級で優勝している津田宏。昨年のクラス別は出場せず、今年は65kg級に上げて帰って来た。元々バランスの良い体を一回り大きくして来たようだ。仕上がりは上々だが、彼としては90%程度。どうやら来週の選抜大会を頭に入れているようだ。それでも津田に太刀打ちできる選手は見当たらず、余裕の優勝を決めた。

 2位には石井徳久が入った。悪い所が無く全体にバランス良く発達しており、仕上がりも厳しかった。ただ今回は相手が悪かったようだ。3位の薩川通春は昨年の2位。今回も仕上がりが厳しく、全身に迫力のあるキレが走っていたが、脚の弱さなどバランスで石井に引けをとったようだ。

 このクラスに出場した学生出身の富田太は、上腕に走る太い血管と、リラックスでの上体の広がりで会場の注目を集めたが、仕上がりが不十分で優勝争いには絡めなかった。

■70kg級

 パンフレットを見る限り、本命不在と思われた70kg級。いざ蓋を開けてみても、飛び抜けた選手は見当たらなかった。そんな中、抜け出て来たのが初出場の青柳武。脚、腕が太く、非常に重量感がある。腹筋も大きく見栄えがする。下半身にやや甘さを残したが、迫力で押し切って優勝した。ただ、折角のバルクをポージングで表現仕切れていない感があり、今後はポーズの研究が必要だろう。

 2位に入ったのは、65kg級から上げて来た野池澄男。クラスを上げたにも関わらず仕上がっていたようだ。脚が太く安定感があり、リラックスが大きい。今回は体の厚みで青柳に一歩譲った形となった。3位の泉健次は一昨年6位、昨年4位と確実に順位を上げて来ている。腕の形が良く、フロントの上体は迫力があるが、バックがやや物足りない。あとは下半身の弱さを克服したいところだろう。
70kg級1位●青柳 武

70kg級1位●青柳 武

70kg級2位●野池澄男

70kg級2位●野池澄男

70kg級3位●泉 建次

70kg級3位●泉 建次

70kg級4位●岩崎 清

70kg級4位●岩崎 清

70kg級5位●北嶋利明

70kg級5位●北嶋利明

70kg級6位●内藤 格

70kg級6位●内藤 格

■75kg級

75kg級1位●佐々木孝二

75kg級1位●佐々木孝二

75kg級2位●武藤昌宏

75kg級2位●武藤昌宏

75kg級3位●高橋欣弥

75kg級3位●高橋欣弥

75kg級4位●岡 義明

75kg級4位●岡 義明

75kg級5位●大嶋靖久

75kg級5位●大嶋靖久

75kg級6位●武田知通

75kg級6位●武田知通

 厳しいといえる仕上がりでは無かったが、昨年の75kg級3位で、数多くのコンテストで活躍した佐々木孝二が念願の初優勝を果たした。今回は敵がいない独走だったようだ。ポーズダウンもいつもながら気合が入り、表彰台に昇る時には、さすがに感無量といった面持ちであった。

 2位の武藤昌宏は肩幅が広く、手足が長いので上半身のスケールが大きく見える。仕上がりは佐々木よりも良かったが肌が白かったのが残念だ。ポーズも折角のスケールの大きさを生かせていないように思えた。これからが楽しみな選手だ。

 3位に入った高橋欣弥は全体にバランスは良いのだが、やや仕上がりが甘く、また75kg級としては細く感じた。終始、佐々木に果敢に挑戦して行く姿勢には好感がもてた。

■75kg超級

75kg超級1位●並木敏之

75kg超級1位●並木敏之

75kg超級2位●新井功一

75kg超級2位●新井功一

75kg超級3位●白井新一

75kg超級3位●白井新一

75kg超級4位●上野克彦

75kg超級4位●上野克彦

75kg超級5位●植村 明

75kg超級5位●植村 明

75kg超級6位●三和達平

75kg超級6位●三和達平

 昨年繰り上げで優勝した並木敏之が今年は納得の行く優勝を味わいに来たようだ。重量感、筋量においてダントツで、流石75kg超級といった貫録をもっていた。ただ、脂肪は乗っていないのだが、やや水を含んだような感じでバリッとしない印象があった。また昨年も目についたリラックスポーズの悪さが、今年もまだ改善されていないようだった。バルクはかなりのレベルにあるだけに、これからメジャー大会で戦う為には、研究が必要だろう。

 2位には昨年の順序が繰り上がった形で、新井功一が入った。今年はしっかりと仕上げており、厳しいカットをアピールしていた。体に広がりはあるのだが、厚みに欠けるのが彼の課題だろう。ポージングも落ち着いていて、正に若きベテランといった印象であった。

 3位の白井新一は、脚が形良く発達し、安定感がある。上体のフロントはやや薄い印象を受けるが、仕上がりも良く、常連出場者の中に割って入った形となった。今回はやや地味に見えたので、もっと積極的なアピールを期待したい。

■女子48kg級

女子48kg級1位●石川祐子

女子48kg級1位●石川祐子

女子48kg級2位●浅見由理香

女子48kg級2位●浅見由理香

女子48kg級3位●中島美香

女子48kg級3位●中島美香

女子48kg級4位●新垣敏枝

女子48kg級4位●新垣敏枝

女子48kg級5位●関谷友加里

女子48kg級5位●関谷友加里

女子48kg級6位●坂見広美

女子48kg級6位●坂見広美

 ラインナップの時点で、ゼッケン9番の石川祐子と、その隣10番の浅見由理香が飛び出した。なんといっても、仕上がりが厳しい。石川は毎回厳しい仕上がりで大会に臨む事で定評があるが、今回も例にもれず皮一枚と言った印象だ。研ぎ澄まされた迫力があるが、やや体にアクセントが乏しい。浅見は昨年橿棒に敗れ2位だっただけに、今年は優勝を狙って来ているようだ。仕上がりは石川に一歩譲るが体にめりはりがあり、どちらに軍配が上がるか注目された。結果昨年の5位から一気にステップアップした石川が優勝を飾った。優勝の瞬間は自らも信じられないといった感激の表情で、泣きじゃくっていた。あそこまで仕上げるのは並大抵の事ではないだろう。浅見は昨年に続き無念の2位に終わった。

 3位には昨年4位の中島美香が入った。彼女も石川に頭上を追い越されてしまう形となった。上位3名の中では最もバランスが良く、脚もバルキーで安定感がある。今回は仕上がりで差をつけられてしまったようだ。

■女子48kg超級

女子48kg超級1位●鹿間由利子

女子48kg超級1位●鹿間由利子

女子48kg超級2位●松岡真由美

女子48kg超級2位●松岡真由美

女子48kg超級3位●行はる美

女子48kg超級3位●行はる美

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 昨年の上位5名までが今年は出場せず、ややさみしい階級となってしまった。

 優勝した鹿間由利子は仕上がりは厳しいとまでは行かないが、脚が太く、全体にプロポーション豊かで、印象の強い選手だ。今回は敵のいない優勝であったが、今後の動向に注目したい。

 2位の松岡真由美はリラックスでは腹筋が見えるのだが、ポーズをとるとぼやけてしまうのが気に掛かった。長身で見栄えがするが、まだ細く、ボディビルダーとしてのプロポーションが出来上がっていない。3位の行はる美は、昨年の6位。昨年より仕上がっていたようだが、それでも甘さが目立ってしまったようだ。

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 女子の参加人数が少なかったようで、少々さみしく感じた。吉田由香、山本奈美子、橿棒幸子など、日本のトップレベルの選手を輩出して来たクラス別大会だけに、来年は参加選手の増加と、より一層のレベルアップを期待したい。
月刊ボディビルディング1993年9月号

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