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JAPAN OPEN BODYBUILDING CHAMPIONSHIPS

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月刊ボディビルディング1993年10月号
掲載日:2020.03.03
8月22日/仙台市市民会館  Photo/BenKamata

キマニ(ミスター)、清(ミズ) 共に敵は無く圧勝

ミスターの部優勝☆ピーター・キマニ(東京)

ミスターの部優勝☆ピーター・キマニ(東京)

ミスターの部2位☆小役丸弘(福岡)

ミスターの部2位☆小役丸弘(福岡)

ミスターの部3位☆六本木昇(秋田)

ミスターの部3位☆六本木昇(秋田)

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ミズの部優勝☆清 結花(静岡)

ミズの部優勝☆清 結花(静岡)

ミズの部2位☆石川祐子(東京)

ミズの部2位☆石川祐子(東京)

ミズの部3位☆浜永祐子(東京)

ミズの部3位☆浜永祐子(東京)

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左より宮野、六本木、小役丸

左より宮野、六本木、小役丸

左より六本木、山田、石川

左より六本木、山田、石川

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選抜大会で一皮むけた身体を披露した小役丸。このジャパンオープンでも好調さを維持しての登場だった

選抜大会で一皮むけた身体を披露した小役丸。このジャパンオープンでも好調さを維持しての登場だった

見事な筋量のキマニのバック。特に肩と腕が凄い

見事な筋量のキマニのバック。特に肩と腕が凄い

昨年の学生チャンプ萩原は、惜しくも決勝進出を果たせなかった

昨年の学生チャンプ萩原は、惜しくも決勝進出を果たせなかった

カットで目を引いたのは静岡の山田頼一だった

カットで目を引いたのは静岡の山田頼一だった

 ジャパンオープン選手権の出場規定は、『過去のミスター&ミズ日本優勝者及びジャパンオープンの優勝者以外は、誰でもエントリー出来る』という幅広いものだ。

 特にミスターの場合、過去3回の大会にお いて、この出場規定のお蔭で『ミスター日本上位陣』VS『新勢力』という対決の図式が、自然にできあがって来た。

 第一回大会は岡本、大河原に野上健が挑み、第2回大会は廣田が急成長の上沢、若い須江を抑えた。そして記憶に新しい昨年の第3回大会では、トップへ駆け上がろうとする水島、谷野を、新井が振り切って王者の座に着いた。

 それでは今年はどうだったかというと、杜の都仙台では、今までとは少々違った風が吹いたようだ。

MR R1『ピックアップ』

 ラインナップに並んだのは32名。昨年の27名に比べ若干多く、東北からの出場選手が目につく。

 その中で、まず我々の目に飛び込んで来たのは、小役丸弘だ。見事に焼き込まれた肌、ただならぬ重量感。正に褐色の重戦車といった迫力である。そして列が入れ替わると、一番背の高い選手が目に入る。兼ねてから出場の噂のあったピーター・キマニである。この2人が優勝に絡む事は間違いないだろう。

 今までは『新勢力』の前に立ちはだかる壁は『ミスター日本上位陣』だったが、今回その役目をキマニが引き受ける形となった様だ。

 さて、まずはピックアップ。32名の選手が13名に絞られた。

 ここで苦戦を強いられたのが、東京の宮野成夫だ。彼は我々も注目していた選手だが、いきなり最初のコールで呼ばれてしまった。また、4年連続出場の野上智章も大苦戦。前年度7位の野上だが、今回は厳しそうだ。

MR RU『比較審査』

 ここで残った13名が、さらに10名に絞られる。残念ながら落とされた3名は、前述の野上、愛知の小林正人、そして昨年の学生王者、萩原雄樹だった。

 野上は比較では結局一度も呼ばれず、何の為に13名に残ったのか分からない。小林は、年々良くなっているのだが、なかなか決勝には残れないようだ。そして注目の萩原だが、結局2名の選手と比較されただけに終わった。プロポーションで目立っていただけに、多くの選手と戦わせてみたかった。学生チャンピオンといえども、準全日本レベルの壁は厚かったようだ。

 そして最終的に10名のワクに入ったのは、キマニ、小役丸を筆頭に、地元宮城からの石川栄一、千坂成也、高橋重信、前年度5位の山田頼一、東京の横森真道、秋田のベテラン六本木昇、一昨年の8位の長谷川強、そして苦戦してきた宮野というメンバーだった。

 比較審査では、まず注目の最初のコールのメンバーが、我々の意表をついた。その3名とは、小役丸、六本木、そして宮野だった。ボーダーラインを抜けて来た選手が、優勝候補と比較される意外な展開だ。

 実際宮野の評価は、4位から11位とかなり割れている。また、同じくボーダーラインと思われた千坂も、上位と見られる山田、石川らと比較されている。これで我々は、全く順位の予想ができなくなった。

 ちなみにキマニがコールされたのは一度だけ。メンバーはキマニ、山田、六本木、そして小役丸であった。ここでその位置が注目されるのは六本木だ。仕上がりは甘いが、若手には無いサイズを誇るだけに、どこへ食い込んでくるのか不気味である。

MR R3『決勝』

 混戦のまま、フリーポーズが行われ、いよいよ我々の前に難問の答案が公開された。

 まず10位には、応援では優勝だった地元の高橋。体のバランスを整えないと、これ以上上に行くのは難しいだろう。そして千坂は9位に落ち着いた。ピックアップ、比較を通じて最も多く呼ばれ、ジャッジを悩ませたようだ。仕上がりは甘く、特にバックでは顕著だった。しかしバランスは良く、しっかり調整出来れば面白い選手だ。

 8位には同じくジャッジを悩ませた宮野。数年前に比べ、上腕などの筋量は確実に充実してきているが、弱点である胸、腹が薄く見え、脚もはっきりストリエーションが出ない。バックも今一つアピールするものがなかった。この順位には明らかに落胆している様子だったが、今後の巻き返しに期待したい。

 7位には横森が入った。彼の照準はミスター東京に合わせてあるのだろうか、今回は明らかに甘かった。絞るポーズでは、得意の胸のストリエーションも出ていたが、彼のもう一つの武器である脚が甘いのは、ごまかしようがなかったようだ。

 長谷川は6位に入り、前回から順位を2つ上げたが、一昨年に比べやや甘く、もう一絞りあれば、と感じた。ただ、以前より胴体の間延びした感じが無くなり、プロポーションが改善されてきている。今回は宮城勢に押され、あまりアピールできなかったのが残念だ。

 5位の石川はジャパンオープンでその名を売った選手。地元での開催に、気合も入っていた事だろう。仕上がりは厳しく、同じく良い状態で臨んだ山田との争いとなった。バックでは勝っていたが、フロントで、今一つインパクトに欠けたようだ。

 石川に競り勝った山田は4位。惜しくも表彰台には届かなかった。ストリエーションが細かく、迫力がある。ただ、まだ細さは隠せず、特に体の端に向かって細くなる。また、バックポーズがフロントに比べ見劣りがした。この辺りが今後の課題だろう。

 さて注目の3位を獲得したのは、バルクで若手を押しのけた六本木だった。仕上がりは甘かったが、上腕を始め上体の迫力は流石だ。カットを武器にする選手の多い中で、異色の存在として目立っていた。

 そして残るはキマニと小役丸の二人。身長で20cm、体重で20kgの差がある両者の対決は、まるで大相撲の舞の海と曙の対戦を見るようだ。結果は、曜キマニが健闘する舞の海小役丸を、豪快に寄り切って優勝を決めた。

 今シーズン評価を上げている小役丸は、今大会も期待に違わず、素晴らしいコンディションで臨んで来た。その充実したバルクは、目を見張るものがある。

 今回は、キマニにスケールの大きさで敗れたが、この敗戦は決して彼の評価を下げるものではない。むしろ、果敢に挑戦したチャレンジ精神が、高く評価される事だろう。

 今後は、全日本クラスへの挑戦が楽しみだ。すでに選抜大会では、ミスター日本3位の廣田を相手に、1位票をもぎ取る健闘を見せている。あとは太い脚に、大阪の末永並のカットを備える事ができれば、今年のミスター日本を面白くしてくれる存在になりそうだ。

 今回のキマニは、東京を制した時に比べやや甘かった様だが、優勝を決めるのには十分だったようだ。

 残念ながらキマニの場合、これ以上(ジャパンオープン以上)上のコンテストは出場できない。そうなると、自然に目は世界に向く訳だが、世界に挑むには、流石のキマニにも課題がある。

 例えば、彼の長所である背中も、縦に走る筋肉、僧帽筋、脊柱起立筋等にやや弱さを感じる。また身長が高いだけに、まだ体に隙間が目立つ。しかし、あの巨大な上腕を始め、世界に通ずる選手に成長する可能性は、十分もっている。今回は圧倒的勝利に終わったが、その中から何を学べたかが、今後の彼の成長の鍵になるのではないだろうか。
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地元から出場の高橋重信は、10位ぎりぎりにすべり込んだ

地元から出場の高橋重信は、10位ぎりぎりにすべり込んだ

我々の期待を大きく裏切ってくれたのは、宮野をおいて他にはいないだろう。前評判が高かっただけに、非常に残念だ

我々の期待を大きく裏切ってくれたのは、宮野をおいて他にはいないだろう。前評判が高かっただけに、非常に残念だ

左より長谷川、横森、山田

左より長谷川、横森、山田

"根性"という言葉がいかにも似合いそうな横森真道。甘めで出場したのは、MR東京に向けての作戦なのか…

"根性"という言葉がいかにも似合いそうな横森真道。甘めで出場したのは、MR東京に向けての作戦なのか…

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バランスに長けている千坂成也も地元仙台から出場。もう一絞りできればさらにステップアップできるだろう

バランスに長けている千坂成也も地元仙台から出場。もう一絞りできればさらにステップアップできるだろう

日本人の中ではトップを奪ったことになる小役丸弘。今年のMR日本に出場してくれば、おもしろい存在になるだろう

日本人の中ではトップを奪ったことになる小役丸弘。今年のMR日本に出場してくれば、おもしろい存在になるだろう

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左より六本木、高橋、長谷川

左より六本木、高橋、長谷川

5位の石川はカットでは申し分なかったが、やや細さが目についた

5位の石川はカットでは申し分なかったが、やや細さが目についた

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ベテランの六本木昇は3位に入る大健闘をみせた

ベテランの六本木昇は3位に入る大健闘をみせた

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山田頼ーは全身ストリエーションのオンパレードだ。線は細かったが、インパクトは強烈だった

山田頼ーは全身ストリエーションのオンパレードだ。線は細かったが、インパクトは強烈だった

記事画像31
他の選手を寄せつけぬ程のバルクで優勝を飾ったピーター・キマニ。日本のトップ陣と是非戦わせてみたい

他の選手を寄せつけぬ程のバルクで優勝を飾ったピーター・キマニ。日本のトップ陣と是非戦わせてみたい

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左よりキマニ、山田、六本木、小役丸

左よりキマニ、山田、六本木、小役丸

長谷川は年々良くなっている。来年辺りは、もう一絞りして優勝争いに絡んでもらいたい

長谷川は年々良くなっている。来年辺りは、もう一絞りして優勝争いに絡んでもらいたい

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M-SS R1 R2

 今年の女子は、10名のエントリーに2名の欠場で、出場選手は8名。過去最低の人数になってしまった。また欠場した選手の一人が関東大会優勝の内田美紀子との事で、これも非常に残念である。

 気を取り直してコンテストに目を向けると、まず今回は、8名の選手で比較審査を行い、6名が決勝へと進むことになる。

 まず目につくのは昨年度今大会2位、そして、前の選抜大会チャンピオンの清結花。

 続いて、今年精力的に出場している、東京の石川祐子と浅見由里香。さらに昨年の東京の3位の浜永祐子、ミズ日本決勝進出の肩書をもつ高橋洋子、岡本久子らが目についた。

 比較では清は2回だけ呼ばれ、あとは全選手が平均的に比較されている。この時点では、清が一歩抜け、その清と唯一2回比較された浜永が後を追う展開のように見えた。

 しかし、フリーポーズの後に面白い事がおきた。なんと3名同点の再審査である。メンバーは石川、浜永、高橋だ。

 石川はこれまでのコンテストのコンディションを保ち、良く絞れている。浜永は絞りは今一つ甘いが、上体のバランス、筋量は3名中一番充実している。高橋は上体はまあまあ絞れているのだが、下半身は明らかに甘い。

 後になってこの比較が2位争いであった事が分かるのだが、3名の選手にとっては、正に運命の別れ道といえる再審査だった。

M-SS R3『決勝』

選抜大会に続き、このジャパンオープンでも圧勝した清結花。この勢いでいけば、全日本のタイトルを手にするのも夢ではなさそうだ

選抜大会に続き、このジャパンオープンでも圧勝した清結花。この勢いでいけば、全日本のタイトルを手にするのも夢ではなさそうだ

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左より高橋、浜永、岡本、石川、浅見、清

左より高橋、浜永、岡本、石川、浅見、清

石川祐子の今年の活躍には目ざましいものがある。今年はこの勢いで、どこまで突っ走るのであろうか

石川祐子の今年の活躍には目ざましいものがある。今年はこの勢いで、どこまで突っ走るのであろうか

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今一つ良い評価が得られなかった浜永祐子。今後の巻き返しに期待したい

今一つ良い評価が得られなかった浜永祐子。今後の巻き返しに期待したい

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左より高橋、浜永、浅見

左より高橋、浜永、浅見

下半身が甘かったものの4位に入る健闘を見せた高橋洋子

下半身が甘かったものの4位に入る健闘を見せた高橋洋子

ベテランの岡本久子は6位に終わる

ベテランの岡本久子は6位に終わる

石川と共に意欲的に大会へ出場している浅見由理香。彼女も確実にのびてきている

石川と共に意欲的に大会へ出場している浅見由理香。彼女も確実にのびてきている

左より浜永、浅見、清

左より浜永、浅見、清

 決勝に残った6名の内、最初に名前を呼ばれたのは、岡本久子だった。仕上がりは一言で甘い。ミズ日本を睨んでいるのかもしれないが、それにしても覇気が感じられなかった。

 5位には浅見が入った。石川同様厳しいコンディションを保って来ている。細いながらもVシェイプが出来つつあるようだが、ウェストが細い分、腹筋が小さいのが目につく。

 4位は前の再審査の結果、高橋に決まったようだ。彼女は肩が印象的な選手だが、三角筋だけが発達し、その周辺の僧帽筋や大胸筋が追いついていないようだ。また、背中などは絞れているのだが、下半身があまりにも甘いので、今後の課題として残るだろう。

 そして3位には浜永である。仕上がりがやや甘く、今回は大胸筋のストリエーションも鳴りを潜めてしまった。フリーポーズはドラマチックで良かったが、規定ポーズに改良の余地があるようだ。リラックスにも共通するが、脚が、ただ立ってしまっている。フロントでも、バックでも脚の置き方に工夫が見られない。その点、清は軽く膝を曲げ、なるべくセパレーションが出るように注意を払っているのが分かる。折角のスケールの大きい体を生かすポージングを研究して欲しい。

 今シーズン大活躍の石川は、関東大会に続き準優勝を飾った。今年これだけ良い評価を得ていると言う事は、昨年の仕上がりのままに、筋量アップに成功したと言えるだろう。これはなかなか実行出来る事ではない。しかし、まだ筋量不足の感はいなめない。特に、絞れているのに腹筋が出ていない。また、ポージングが堅く、体まで堅い印象を受ける。膝が常に伸びてしまってしなやかさに欠けるし、常に肘を張って歩いていて、非常に不自然だ。体の緊張を抜かない、という気持ちは分かるのだが、ステージでは、力を抜かずに美しく見せる工夫が必要なのでは無かろうか。
 
 そして優勝を手にしたのは、エントリーナンバー「1」。一番小さな、清である。昨年のこの大会で一躍注目を浴びた彼女だが、一年の間に、ミズ日本5位、選抜大会優勝と、堂々たる成績を引っ提げて来た。

 今年はリラックスでうっすらと大腿前面にセパレーションが出るようになり、一層完成度を増した。昨年より幾分甘かった様だが、それでも2位以下を寄せ付ける際はなかった。

 特にバックでは、他の選手との間に歴然とした差がある。しかしそのバックも、下半身となるとまだ物足りない。ハムストリングス及び腎部の充実が、これからの課題であろう。

 今年はまだアジア、ミズ日本、世界選手権とエントリーの予定との事なので、彼女がこれからどれだけの活躍を見せてくれるのか、非常に楽しみである。
社団法人日本ボディビル連盟 1993.8.22

社団法人日本ボディビル連盟 1993.8.22

【男子の部】

【男子の部】

【女子の部】

【女子の部】

月刊ボディビルディング1993年10月号

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