1993 MR.& MS. TOKYO 9月12日/江戸川総合文化センター
谷野、東日本に続き2連勝!!
予想外の展開を見せた今大会だが、谷野の優勝に文句をつける者はいまい
左から有賀、谷野、横森のトップ3。相変わらず谷野のバックは凄い
終始余裕のある表情で優勝を果たした浜永
4位/石川祐子
4位/下地武光
5位/浅見由理香
5位/山本昌弘
6位/福田たまみ
6位/石崎秀二
左から内田、浜永、水間のトップ3
★ミスター東京
さて、今年のラインナップでは、特別飛び抜けた選手は見当たらないが、それぞれに良いコンディションで望んでおり、非常に平均点が高い。昨年は予選を通過した選手、クラス別大会で活躍した選手達の中にも、戦わずして敗れ去ってしまった者も多く見られた。全く東京のレベルは、天井を知らないようだ。
高い平均点を越え、勝ち残ったのは12名。誇らしげに並んだ彼らの第2ラウンドの戦いは、熾烈を極めた。
トップにコールされたメンバーは4人。エントリー順に横森真道、谷野義弘、有賀誠司、石崎秀二である。続くコールではそこから横森が抜け、下地武光が入る。何と言っても今回の優勝候補筆頭は有賀である。昨年はピーター・キマニに敗れ悔しい準優勝だっただけに、今年は捲土重来(けんどじゅうらい)、優勝しかない。しかし、である。明らかに甘いのだ。何か水を含んだようで細かいカット、ストリエージョンが死んでしまっている。優勝を狙って牙を磨いて来たライバル達に、大いに付け入る隙を与えてしまったようだ。
そうなると浮かび上がるのが東日本を制して参戦の谷野。東日本と比べ顕著にコンディションが良くなっている様には見えなかったが、隙は無い。リラックスのスケールはやや分が悪いが、ポーズを取ればその存在感はずば抜けている。そして横森だが、前のジャパン・オープンに比べれば格段に仕上がっているものの、下半身は絞り切れなかったという印象だ。しかし上体の厚み、全身の重量感はただ事ではない。身長、体重共に有賀の方が上回るのだろうが、有賀が軽く見えてしまう。
4人目がダークホース、石崎だ。とにかくカットが凄い。正に骨まで届く様なとはこの事だ。ただ、ギスギスした感は否めない。しかしフレームが大きく、あそこまで絞っても小さくなってしまったという感じはしない。
2回目の比較に絡んだ下地は沖縄出身のベテラン。昨年のミスター日本ではボーダーラインで惜しくも敗退した選手だ。東京に出場するとの噂は聞こえて来ていたが、流石にバッチリ仕上げて来た。腕の迫力は秀逸である。
今年の関東を制した山本昌弘は、3回目にやっとコールされた。実はピックアップでもコールされているのだが、その時は非常に体調が悪そうで、今にも倒れそうな状態。気力で持ちこたえたようだ。エントリーナンバーで谷野の隣に位置したが、流石ミスター関東、スケールでは決して引けは取らない。
結局比較審査は、入念に10回行われ、後はファイナルを待つだけとなった。
ファイナルに残った12名の内、仕上がりが最も甘かったのは12位の青柳武。タイプとしては同じジムの横森に似ているが、これといって欠点がないのが強みだ。高い将来性をもっている選手だ。
11位には常連の内藤格が入った。今シーズンは今一つピリッとしなかったが、今回は良いコンディションで臨んで来た。課題の上体も充実して来たようだ。
10位の小久保一美は、東日本では余り良いコンディションとは言えなかったが、今回は再び仕上げて来た。彼も青柳と同じコンテスト一年生。十分過ぎる成果といえるだろう。
9位にはなんと昨年の4位工藤郁夫である。関東でも2位を獲得しており、今年も調子は上向いて来たかと思われたが、プレジャッジで上位と思われる選手と比較されたのは山本唯一人。仕上がりも悪くはなく、フリーでも気合が入っていた様だが結果は出せなかった。
ジャパン・オープンでは不本意な結果に終わった宮野成夫だが、東京でも彼のピークは見る事ができず、8位に終わった。今回はパンプアップが上手く行ったのか、血管が太く浮き出て迫力があったが、上位陣を倒す武器にはならなかったようだ。
7位に入った並木敏之は、今年のクラス別75kg超級の覇者である。クラス別の時より水が抜けたようで、仕上がりは良い。かなりの重量感を持った選手だが、横森、有賀らに混じるとそれもインパクトが薄くなる。あとは表現力が課題だろう。
今シーズン、別人の様に顔が変わる程の厳しいコンディションを保って来た石崎は、大健闘の6位となった。大腿四頭筋のカットでは、谷野にも勝っただろう。あとは全体の厚みがもの足りず、細かい点で未完成な部分が見られる。今後に一層期待したい。
2位/横森真道
2位/水間詠子
3位/有賀誠司
3位/内田美紀子
7位/並木敏之
7位/阿部ゆい子
8位/宮野成夫
8位/関谷友加里
9位/工藤郁夫
9位/須藤麻里子
10位/小久保一美
10位/太田みつ子
そして3位は優勝するはずだった有賀。スケールはダントツで一番。上腕二頭筋もちょっと見た事がない大きさなのだが、重量感、迫力というとちょっと違う。ふくれたように見える分、軽く見え、脚や腕、腹、どこを見てもぼやけてしまっていた。微妙な調整のミスなのだろうが、そのつけは大きかった。
最後に残る2名は横森と谷野。十分に仕上がっていないのにも拘わらず、横森の評価は非常に高かった。1、2ラウンド共に1位票を2票ずつ獲得し谷野に迫ったが、仕上がりの差で2位に甘んじた。しかし充実したバルクは強み。以前から定評はあったが、いつの間にか人並み外れてしまっていた様だ。これで脚が仕上がっていたら、と残念でならない。
予想外の混戦を制したのはやはり谷野だった。東日本ではぶっちぎりだった彼も、流石に東京となるとそうは行かない。スケールでは谷野を上回る選手も何名かおり、楽な戦いでは無かったが、やはり谷野の研ぎ澄まされた体には誰もかなわなかった。下半身は100%ではなかったが、バックの切れ、ミッドセクションの完成度と他の選手には無いものを持っている。今年の優勝は彼の順番では無かったはずだが、どうやら彼本人は、そうは思っていなかったようである。
★ミズ東京
ミズは4回と簡潔なピックアップの後、10名が決勝に残った。レベルは低調どころか、昨年3位の浜永祐子や6位の福田たまみがピックアップにコールされる程、厳しい。
ミズの比較でトップにコールされたのは水間詠子、浜永祐子、内田美紀子、石川祐子の4名。
水間は今シーズン初エントリーで、初優勝を狙って来た様だ。初登場だった昨年は充実した下半身が目を引いたが、今年は上半身、特に三角筋が良くなり、リラックスが素晴らしい。反面、下半身がやや甘く物足りない。
浜永は、ジャパン・オープンではやや甘く、石川に敗れるという不安材料を抱えてのエントリーだが、その時よりも絞れている様だ。
その石川は、やはり今シーズンの厳しいコンディションを保って来た。この正念場の東京で、真価が問われるだろう。
ミズ関東の内田も、石川に負けずに厳しい。関東では石川を抑えているだけに、注目だ。
さて、決勝に滑り込み10位を獲得したのはベテラン太田みつ子。久し振りの出場にしては上半身は絞れていたが、下半身がかなり甘かった。9位に入った須藤麻里子は、今年活躍している選手。レベルの高い東京でも健闘を見せた。あと一回りバルクが欲しい。
マスターズ50歳以上の部
マスターズ40歳以上の部
左から有賀、下地、山本
左から水間、関谷、須藤
50歳以上の部優勝/荒川正雄
40歳以上の部優勝/岩崎清
ジュニアの部優勝/平林康之
左から工藤、青柳、小久保
福田は東日本より絞ってきた様で、下半身にもカットが出ていたが、上位に付け入る隙は無く、今年も昨年と同じ6位と足踏みだ。
福田に隙を与えなかった浅見由理香。我々の目には、先週の東日本より厳しく見えた。このメンバーでの5位は不満か納得か、難しいが、3位票も2票入っているだけに、混戦の煽りをくった形となった順位と言えよう。
石川は結局4位。この結果からも、今年のミズ東京が非常にタフなコンテストであった事が分かる。カットでは内田以外には勝ったと思うが、その内田にフリーポーズで逆転されているのが大きなポイントだろう。
カットでは抜群だったが、やや評価の割れた内田は、第2ラウンドまでの4位を、得意のフリーポーズで3位に引き上げた。やはり彼女は、見せる事に関して抜群に上手い。ハイレベルな戦いの中で、キャリアがものを言った結果だろう。
リラックスでは一番インパクトのあった水間。結果は浜永に敗れ2位となったが、その将来性は高い。ウェストは細いのだがしっかり腹筋も出ており、肩、胸が奇麗なVシェイプを作っている。上腕、バックもバルキーで、なにより自信満々の表情がいい。
ダブルバイをとるとやや肘が高すぎて、あのリー・ヘイニーを思い出させる、といったらオーバーだろうか。今回彼女に足りなかったのは下半身のカット。もう一つ、厳しさが欲しかった。
強敵、水間を破って会心の笑顔を見せた浜永。今回は終始笑顔を絶やさず、力みもなく柔らかな印象を受けた。そのせいか評価も安定し、激戦を制し優勝を果たした。
念願のミズ東京を見事手中にした彼女だが、これからは、昨年後塵を拝している白岩や橿棒らに借りを返さなくてはならない。近い将来、お釣りが来るぐらいきつい一発をお見舞いしてくれる事を期待しよう。
★ジュニア&マスターズ
マスターズ50歳以上の部は、バルクの豊富な神原健二と、厳しい仕上がりの荒川正雄の難しい対決となったが、僅差で荒川が優勝を果たした。3位には松島敏雄が入賞した。
高いレベルを誇るマスターズ40歳以上の部だが、今回も、優勝の岩崎清、2ポイント差で敗れた石沢孝を始め、バルク、仕上がり共に一般に劣らぬ激戦であった。岩崎には年齢を感じさせぬ若さが溢れ、石沢はベテランらしく、立ち方一つにもキャリアを感じさせられた。3位には脚が太く仕上がりも良かった竹原直樹、4位に内田敏、以下5位羽金義晴、6位に浜永金吾となった。
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