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東日本は谷野の独壇場 MR東京に王手をかける!! ミズの部は急成長の石川が制す

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月刊ボディビルディング1993年11月号
掲載日:2020.03.09

第5回東日本ボディビル選手権大会

9月5日/栃木会館小ホール
Photo/Ben.K

Photo/Ben.K

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 月も9月となり、コンテストシーンもいよいよ大詰めを迎えつつある。週末には台風が世間を騒がせたが、ここ栃木県宇都宮では、台風以上の熱風が吹き荒れた。

《ミスター東日本》

 本命がなかなか聞こえて来なかった今年の東日本だが、直前になり東京の谷野義弘の出場が噂となって耳に入った。谷野と言えば今年のMR東京の優勝候補の一人。その東京大会の一週間前に当たる今大会に殴り込みをかけて来ると言うのは、なるほど説得力がある。とりあえず我々は、谷野の仕上がりに注目する事にした。

 ステージに選手がラインナップすると、やはりそこにはバリバリの谷野がいた。他の選手とは明らかに異なる。スポットライトでも浴びているかのように目に飛び込んでくる。

 細部を見れば、下半身などは谷野にとってのベストというにはやや甘いが、バック、フロント共に上半身はほぼ仕上がっていると言えるだろう。これで体重が、昨年より3kg増えているというから恐ろしい。

 細いと言われていた彼だが、この大会ではバルクで彼を凌ぐ選手は、見当たらない。それよりも、彼の三角筋の作る肩幅は誰よりも広く、ウエストは誰よりも細く、見事なプロポーションを作り出しており、正直な所太刀打ち出来る選手は見当たらなかった。

 本人は『一年振りなので緊張した』との事だったが、ステージでは自信たっぷりと言う印象。フリーポーズでは、今までのルーティーンにレネル・ジャンビエールの得意な腎部、ハムストリングスを強調するバックポーズが新しく取り入れられていた。彼にとっての本番である東京大会では、最高のコンディションで、このポーズを披露してくれる事だろう。

 混戦を制し2位の座を掴んだのは山梨の内藤隆之だ。以前に見た記憶があり、確か千葉の選手では………と思ってパンフレットをみると所属は山梨。人違いかな?と調べてみると、やはり87年のミスター千葉の選手だった。その後はジャパンオープンなどに顔を出しているが、決勝進出は果たしていない。

 今回は仕上がりが厳しく、良く焼き込まれており、集団から一歩抜け出した形となった。やや体に癖があり、また幾分細さを感じる。しかし今後の動向が気になる選手だ。

 3位には東京クラス別70kg級の覇者、青柳武が入った。クラス別の時より状態は甘く、仕上がりは決して良い方では無かったが、持ち前のバルクが評価されたのだろう。上腕、脚の重量感、腹筋の厚さは魅力的である。

 4位には、ジャパンオープンで予選落ちと苦い社会人デビューを果たした萩原雄樹だ。正に大躍進だが、2つの大会の順位の差程、仕上がりに違いがあった様には思えない。ピックアップでもコールされ、厳しい戦いだったが、午後に向けての必死の水抜き(厚着の上にポンチョを羽織っていた)と、得意のフリーポーズが良かったのだろう。

 5位に入ったのは同じく東京クラス別70kg級の5位、北嶋利明だ。彼は青柳とは逆に仕上げて来たようである。脚が太く、上体のVシェイプも良い。全体的なバランスがもう少し整えば、もっと伸びるであろう。

 6位はもうベテランと呼んで差し支えないだろう、渋谷浩樹である。今回は仕上がりも良くチャンスかと思われたが、今一つ順位を伸ばせなかった。まず色が白く、そして何よりもおとなしい事が気になる。彼はこの辺りにいる選手では無いと思うのだが。

 7位にもクラス別組の一人、小久保一美が入った。60kg級優勝時よりかなり甘いが、彼の密度の高い脚は目を引く。谷野と比較される場面もあったが、甘さは致命的だった様だ。

 8位は昨年のミスター千葉、青島宗行だ。長身で、タイプとしては2位の内藤に似ている。仕上がりの良さで決勝進出を果たした。

 9位に入った鳥屋健吾は、全日本ジュニア、千葉とコンテストを重ねるごとに仕上がりが甘くなってきた。肌の色も落ちて来たのか、染料を焼き込む代わりに使っているので、尚更仕上がりが悪く見えた。とは言ってもジュニアで決勝進出は大したもの。今後の成長が楽しみだ。

 10位は今年のミスター千葉クラス別70kg超級優勝の寺沢等。長身でバランスの良い選手だ。2位の内藤を含めるとミスター千葉出身の決勝進出者が4名と、千葉大躍進であった。
2位/内藤隆之 中央の大会には久し振りの出場だと思うが、今回はコンディションも良く大健闘

2位/内藤隆之 中央の大会には久し振りの出場だと思うが、今回はコンディションも良く大健闘

3位/青柳武 この大会がわずか2度目であるのには驚きだ

3位/青柳武 この大会がわずか2度目であるのには驚きだ

左より渋谷、萩原、鳥屋

左より渋谷、萩原、鳥屋

左より青柳、内藤、谷野

左より青柳、内藤、谷野

4位/萩原雄樹

4位/萩原雄樹

5位/北島利明

5位/北島利明

6位/渋谷浩樹

6位/渋谷浩樹

《ミズ東日本》

 今年は正にサーキットのようにコンテストに出場し続けている、東京の石川祐子、浅見由理香の両選手。今大会にも、例にもれず出場してきた。勿論仕上がりは厳しい。

 そしてこの大会で今年初めて見る顔としては、山梨の樋口美香、東京の福田たまみが目についた。優勝はこのメンバーで争われるものと思われたが、その中で一歩抜け出たのは、石川だった。

 東京クラス別大会からの長い減量期間にも拘わらず、そのコンディションは一向に緩みを見せない。むしろ2週間前のジャパンオープンより良いのではないかと思われる程だ。

 上半身、特にバックの仕上がりは万全といえよう。結局、今シーズン2度目の表彰台最上段に上る事となった訳だが、こうなると彼女は、俄然ミズ東京の本命の一人として注目される。どこまでこのコンディションで突っ走れるかが注目だ。

 そして石川に敗れ2位となったのは樋口だ。彼女を見るのは昨年のミズ日本以来だが、特にバック、下半身など、かなり改善されているようだった。プロポーション的には一番良く、バランスも申し分ない。しかし今回は石川の鋭い仕上がりと、勢いに敗れ去った形となった。もう一絞りがあれば、充分逆転は可能だっただろう。

 3位には石川に負けず劣らず厳しいカットを維持している浅見が入った。彼女の評価は今一つ安定しないようだが、それにもめげず健闘している。石川とは身長が同じで、いつもエントリーナンバーが隣になるが、やはり浅見の方が一回り小さく感じる。パンフレットによると3キロの体重差があるようだが、この辺りが順位に現れて来るのだろう。またトライセップスなど、幾つか腰が入り過ぎるポーズが目についた。

 4位の福田も、樋口と同じく今シーズン初見参だが、仕上がりが甘い。石川、浅見の厳しさには到底ついて行けなかった。上半身の広がりは相変わらず目を引くが、弱点の脚が克服されていないようである。そう簡単に変化があるものではないだろうが、何か目新しさが欲しい。

 5位には、これも久しぶりの佐藤千枝子が入った。肩やバックは大分充実してきたようだ。ただ、ポーズによっては非常に安定性の悪い時があり、少々気になった。

 6位の須藤麻里子は初めて見る選手だが、最初の比較でコールされる大抜擢を受ける等、審査員の目についたようだ。しかし腹筋が出ないのを始め、まだまだ体ができていない。それに体に塗った染料がひどく斑で、印象を悪くしたのではないだろうか。

 7位の行はる美は、上腕、肩の筋量など良いものは持っているのだが、いつも仕上がりが甘い。今回も、クラス別と比較しても良くも悪くもないといった印象だ。

 8位は、スケールの大きい榎本みきである。太い脚など重量感はあるのだが、彼女も、とにかく絞った所を見てみたい。

 9位の加部章子、10位の山口美絵子は、共に昨年度、本年度のミズ神奈川である。加部は比較的絞れていたが、やはり上位選手と戦えるアピールポイントが欲しい。山口はフロントのダブルバイが良かったが、あと一絞りが欲しかった。
クラス別東京優勝、関東2位、ジャパンオープン2位、そしてこの東日本優勝と石川祐子の今年の活躍は本当に目ざましい

クラス別東京優勝、関東2位、ジャパンオープン2位、そしてこの東日本優勝と石川祐子の今年の活躍は本当に目ざましい

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左より樋口、浅見、石川

左より樋口、浅見、石川

2位/樋口美香 この一年間で非常にバックが充実してきた

2位/樋口美香 この一年間で非常にバックが充実してきた

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3位/浅見由理香 石川同様に今年多くの大会に出場し、かなり実力をつけてきた。来年が楽しみ

3位/浅見由理香 石川同様に今年多くの大会に出場し、かなり実力をつけてきた。来年が楽しみ

4位/福田たまみ

4位/福田たまみ

5位/佐藤千枝子

5位/佐藤千枝子

6位/須藤麻里子

6位/須藤麻里子

7位/小久保一美

7位/小久保一美

7位/行はる美

7位/行はる美

8位/青島宗行

8位/青島宗行

8位/榎本みき

8位/榎本みき

9位/鳥屋健吾

9位/鳥屋健吾

9位/加部章子

9位/加部章子

10位/寺沢 等

10位/寺沢 等

10位/山口美絵子

10位/山口美絵子



 今大会は同じ日にミスター東北が開催され、東北からの参加が僅か男女各一名となってしまったが、男子は千葉勢、女子は東京勢の活躍がその埋め合わせをしてくれたようだ。 短いシーズンの中で色々難しい事はあると思うが、今後は大会の日程も、多くの選手が参加し易くなるよう工夫を期待したい。
月刊ボディビルディング1993年11月号

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