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第35回MR、第11回MS NIPPON BODYBUILDING CHAMPIONSHIPS
10月11日/中野サンプラザ

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月刊ボディビルディング1993年12月号
掲載日:2020.03.11
Photo/M.Tokue、Ben.K、Y.Mizuguchi
今年も小沼は負けなかった今年の6月に大円筋を切るという大ケガを負った小沼。今年の出場は無理と思われたが、わずか数カ月で見事に復活を遂げた。仕上がりは甘めであったが、それでも王者の座は誰にも譲らなかった

今年も小沼は負けなかった今年の6月に大円筋を切るという大ケガを負った小沼。今年の出場は無理と思われたが、わずか数カ月で見事に復活を遂げた。仕上がりは甘めであったが、それでも王者の座は誰にも譲らなかった

記事画像2
3年連続3位の廣田俊彦。仕上がりは決して100%ではなかったようだが…

3年連続3位の廣田俊彦。仕上がりは決して100%ではなかったようだが…

4位はベテランの朝生

4位はベテランの朝生

今回の高西の気迫は、もの凄かった。わずか6ポイント差で涙をのむことになったが、初の表彰台である

今回の高西の気迫は、もの凄かった。わずか6ポイント差で涙をのむことになったが、初の表彰台である

廣田 大河原 須江

廣田 大河原 須江

小沼 高西 、朝生 新井

小沼 高西 、朝生 新井

女王の貫録、大垣純子V32年ぶりの出場であった大垣純子は一回りサイズアップしたようだ。2位に10点以上もの差をつけて、王者に返り咲いた

女王の貫録、大垣純子V32年ぶりの出場であった大垣純子は一回りサイズアップしたようだ。2位に10点以上もの差をつけて、王者に返り咲いた

今年も絞り込んできた神田だが、結果は昨年より一つ順位を落とした

今年も絞り込んできた神田だが、結果は昨年より一つ順位を落とした

昨年の覇者松本俊子は、4位に後退。今年のレベルの高さが窺える

昨年の覇者松本俊子は、4位に後退。今年のレベルの高さが窺える

今年大活躍の清結花は、この全日本でも2位に入った。タイトルはもう目の前だ

今年大活躍の清結花は、この全日本でも2位に入った。タイトルはもう目の前だ

荒川 水間

荒川 水間

記事画像13

ミスターの部

 小沼敏雄選手負傷のニュースは、6月下旬に、突然編集部に飛び込んで来た。その時は怪我の程度もはっきりせず、今年のミスター日本の出場どころか、小沼選手の選手生命自体も危ぶまれる事態であった。ミスター日本6連覇、V7と、史上類を見ない強さを誇るチャンピオンにも、ついに影が射したかに思われた。そして今年のミスター日本が、新たな時代の幕開けとなるのか、大きく注目を集める事となった。
1 小沼敏雄(東京)

1 小沼敏雄(東京)

2 高西文利(長崎)

2 高西文利(長崎)

3 廣田俊彦(愛知)

3 廣田俊彦(愛知)

4 朝生照雄(埼玉)

4 朝生照雄(埼玉)

5 新井弘道(群馬)

5 新井弘道(群馬)

王者の挑戦

 そして大会当日、小沼はステージに現れた。怪我の回復は順調だったらしく、大会前には、体調が整い、満足の行く仕上がりが作れれば出場するとの事であったが、やはり不安を抱えての出場であろう。すでに輝かしい実績を残している王者小沼にとって、今年の出場は一つの挑戦である。

 小沼のアクシデントは、全国の打倒小沼を目論む選手たちの耳にも届いていた事だろう。過去4年間準優勝に甘んじている朝生照雄、昨年、一昨年と3位の廣田俊彦など、ミスター日本トップクラスの面々も、『今年は』と言う意気込みを持って参加してきた事と思う。

 日本の頂点を目指し、比較審査に望むメンバーは15名。その中でトップにコールされたのは、朝生、小沼、高西文利、新井弘道の4名であった。注目の小沼は、ここ数年に比べれば今一つ厳しくは無い。しかしそれは彼自身にとってそうなのであって、他の選手に比べ甘いという事ではない。朝生は、8月の全日本マスターズに比べかなり仕上がっているが、この中に入っては厳しいとは言えない。しかし彼特有の並外れた重量感は十分だ。高西は、今年のワールドゲームス6位と言う好成績を引っ提げての登場。上体はまずまず仕上がっているが、下半身にやや甘さを残したか。新井は一昨年以来のミスター日本だが、非常に厳しく仕上げて来た。まずこのメンバーでは一番だろう。勿論、彼も小沼の首を狙っているに違いない。

 2回目のコールにして呼ばれたのが廣田。小沼、高西と3人での比較だ。廣田の仕上がりは彼のベストの状態に比べると、やや精彩を欠いた様に見える。そう毎年ベストコンディションで臨めるものではないだろうが、今年は廣田にとっても大きなチャンスであると思っていただけに、残念である。
例年の小沼と比べれば確かに甘いかもしれないが、逆にケガからの立ち直りでよくぞここまで仕上げたとも言えるだろう

例年の小沼と比べれば確かに甘いかもしれないが、逆にケガからの立ち直りでよくぞここまで仕上げたとも言えるだろう

榎本(左)と、岡本

榎本(左)と、岡本

左より渡辺、廣田、新井、朝生。新井のカットは過去最高

左より渡辺、廣田、新井、朝生。新井のカットは過去最高

須江がスプレッドをとったとたん、会場からはザワめきがおこった。須江の上体の迫力にはベテラン勢もド肝を抜かれたろう

須江がスプレッドをとったとたん、会場からはザワめきがおこった。須江の上体の迫力にはベテラン勢もド肝を抜かれたろう

ポーズダウンでの死闘。今年は本当に最後の最後までどちらが勝つか分からなかった

ポーズダウンでの死闘。今年は本当に最後の最後までどちらが勝つか分からなかった

左より六本木、末永、石川

左より六本木、末永、石川

左より小沼、高西、廣田。甘いとは言いながらも、他と比べればやはり小沼のカットは目を引く

左より小沼、高西、廣田。甘いとは言いながらも、他と比べればやはり小沼のカットは目を引く

注目度NO・1 その名は須江正尋

 続くコールは一年ぶりの出場、須江正尋と、大河原久典、そして廣田だ。

 須江はラインナップからやる気満々。執拗に、そして大胆なアピールを繰り返す。コンディションも厳しく、今までの彼では無い。大河原は今年本誌でも取り上げたように、一味違った一年間を過ごして来たようだ。須江の、全てが体のラインからはみ出した様な迫力に対し、大河原は全てのラインが繋がった均整美、バランスの良さが売りである。

 しかしトップ6常連の廣田、大河原をまるで食ってしまったのは須江。彼のバック、フロントのバイセップス、スプレッドには、いつもの如く感嘆の声がもれ、あまりのバルクに呆れ、笑い声さえ聞こえてくる。意地悪く言うなら、あの上体の凄さで、彼に下半身という弱点がある事すら忘れてしまいそうだ。勿論下半身も選抜大会に続きいつに無く絞れてはいる。しかし相手は日本のトップクラス。隙を見せて勝てる相手では無いのだ。
6 大河原久典(東京)

6 大河原久典(東京)

7 須江正尋(東京)

7 須江正尋(東京)

8 渡辺茂(東京)

8 渡辺茂(東京)

9 吉田真人(神奈川)

9 吉田真人(神奈川)

左より小沼、大河原、高西

左より小沼、大河原、高西

須江(左)と小役丸。今年急成長の小役丸も、須江の迫力にやや押され気味だ

須江(左)と小役丸。今年急成長の小役丸も、須江の迫力にやや押され気味だ

記事画像32
左より廣田、大河原、須江

左より廣田、大河原、須江

新井は過去最高と思わせるほどの仕上がりだった

新井は過去最高と思わせるほどの仕上がりだった

凄いバルクの末永の大腿部

凄いバルクの末永の大腿部

粟井(左)と吉田

粟井(左)と吉田

頂上を目ざして、最後の戦いだ。ポーズダウン!!

頂上を目ざして、最後の戦いだ。ポーズダウン!!

左より新井、須江、小役丸

左より新井、須江、小役丸

10 小役丸弘(福岡)

10 小役丸弘(福岡)

11 有賀誠司(東京)

11 有賀誠司(東京)

12 末永和政(大阪)

12 末永和政(大阪)

左より岡本、末永、小役丸

左より岡本、末永、小役丸

左より有賀、吉田、谷野。期待の吉田は少々甘さを残した

左より有賀、吉田、谷野。期待の吉田は少々甘さを残した

ゲスト アンドレ・シャレット

ゲスト アンドレ・シャレット

山は動かず

 昨年は大きく躍進した選手が多く、7位以下が大きく入れ変わった本大会だったが、今年もさらにレベルは上昇しており、決勝に残るのは至難の技だ。

 昨年復活を遂げ、ファンを喜ばせた粟井直樹。今年はさらにバルクを戻して来たが、決勝進出は惜しくもならなかった。昨年、そして今年とそのカットで旋風を起こした谷野義弘も、僅か2ポイント差で決勝を逃した。そして昨年6位の岡本正信だが、往年の迫力が見られず、残念ながら予選敗退となった。

 昨年は一躍9位に食い込んだ末永和政だが今年は今一つ迫力に欠け、12位となった。ポーズをとればあのバスキュラリティーは凄いのだが、それが十分アピールできなかった様だ。肌が白いのも不利であっただろう。

 前のミスター東京を取り損ねた有賀誠司だが、今回はしっかり調整してきた。予選では9位に付けているのだが、決勝で12位と奮わず末永を1ポイント差でなんとか抑え11位。昨年から一つ順位を下げた。スケールが大きいだけに完成する時が楽しみだ。

 選抜、ジャパンオープンと、タイトルこそ取っていないが大活躍の小役丸弘は、見事10位に入る健闘を見せた。全身の充実度は評価が高く、7位、8位票も獲得している。隣の須江が強烈だっただけに損をしたかと思われたが、充分実力を発揮したようだ。

 昨年我々の度肝を抜いた吉田真人。今年にかかる期待は大きかったが、充分調整できなかった様で9位に終わった。しかしそのスケールの大きさは、トップ6をも凌駕している。元々バランスが良かった所へ強烈なバルクをつけて来ており、大きな欠点も無い。しかし今回、予選の順位は最下位。決勝で持ち直したものの評価は厳しい。この屈辱をバネにできたなら、来年の彼は怖いだろう。

 8位は一年振りに出場の渡辺茂。彼にとっての最高位タイだが、8位はこれで3回目。どうもここから上に手が届かない。バックポーズは迫力を増し、今年は期待したが、やはりまだ改善すべき点が多いとの評価であろう。

 今大会を一番面白くしてくれたのは彼、須江に間違いあるまい。闘志溢れる表情、華麗かつ力強いポージング、そして思わずニヤリとさせられる傍若無人な態度。ポーズダウンでも真っ先に飛び出したのは彼だった。一昨年の彼なら、若造が張り切っているで済んだかもしれない。しかし今年は上位陣も彼を無視する事はできまい。妙に落ち着いた上位陣を尻目に伸び伸びと戦う姿が印象的だった。

 上半身にあれだけの迫力を見せながら、なぜ7位なのか、と思うかもしれない。しかし彼をトップ6と比べたなら、明らかにアンバランスだ。仮に脚が素晴らしく美しく、迫力があり、最高のシェイプを持った選手がいたなとしよう。しかしその選手の上半身が、脚に見合う迫力を持っていなかったとしたら……。

 ボディビルはバランスである。あの上半身に見合う下半身が欲しい。しかし、須江がその条件を満たした時を想像すると、空恐ろしいばかりである。今回も前回の出場に続き、鳥肌もののポージングでベストポーザーを獲得。天は彼に二物を与えたようだ。

 再び6位に戻ってしまった大河原。5位の新井と同点だったが、ポイント差で6位に甘んじた。しかし極限まで絞ったとか、これ以上調整できないといった悲愴感が無いのが不気味。勿論、余力を残している訳では無いだろうが、何かまだ切り札を持っている様な気がする。より安定し着実に進歩している様だが、来年はどんな冒険をしてくれるかが楽しみだ。

 大河原と同点ながら5位を勝ち取った新井。今大会では一番の仕上がりだっただけに、表彰台に上りたかった事だろう。全身隙無くカットが走り、相変わらず上腕は太い。プロポーション的にやや損をしている感は否めないが、完成度では上位4名に劣らない。後は表現力などの細かい要素が必要。今回の順位は来るべき時への産みの苦しみであると理解しよう。

 あくなき小沼への挑戦を続けて来た朝生だが、今回はやや息が切れたか、4位へと順位を落としてしまった。仕上がりに甘さを見せた所に、今まで抑えていた高西、廣田に付かれ、引き降ろされる結果となった。そのバルクはいまだ強烈な迫力を持つだけに悔しい4位である。

 やや精彩を欠いたにもかかわらず朝生を破って3位を死守したのが廣田である。打倒朝生を果たした今、後は打倒小沼のみと言いたい所だが、今回は最近分の良かった高西に!一歩先を行かれてしまった。次回はベストコンディションでの再チャレンジを期待したい。

 最後に小沼と共に残ったのは、高西であった。そのスケールの大きさは小沼も警戒する所であろうが、今回小沼がやや厳しさに欠けたとはいっても、やはり下半身のカット、特にバックでは差があった様だ。2人のポーズダウンは白熱し、あれほど生き生きした高西、そして危機感の窺えた小沼を見るのは初めてだった。小沼を追い詰めたのは昨年の選抜に続いて2度目。今回も6ポイント差と、肉薄している。さて3度目の正直といくだろうか。

 今年も最後を締めくくったのは小沼だった。彼自身ほっとした事だろう。アクシデントもあり、昨年程の仕上がりでは無かったが、やはり地力が違う。臀部、ハムストリングスにいつもの冴えは見られなかったが、彼には誰にも負けない自然体の良さがある。それは彼がチャンピオンとなった時から変わらない。

 今年も小沼か、と言うなかれ。全国の精鋭達が寄ってたかってかかっても、今年も誰ひとり彼を負かす事はできなかったのである。とうとう7連破、V8。俺が小沼を倒してやる!と言う君。そんな君の出現を、ミスター日本は待っている。

   *   
 今回は、久し振りに出場の75年ミスター日本、榎本正司を始め、6人の表彰台経験者が顔を揃えた豪華な大会でもあった。大会を終え、年々上がるレベルの高さに、益々日本のボディビルが発展しつつある事を強く感じた。

ミズの部

 昨年は『本命不在』と言われたミズ日本。結果的には、2年ぶりに登場した松本俊子が自らの最高順位である6位から大きくステップアップし、優勝の栄光に輝いた。

 その松本が6位となった89年、表彰台の最上段にいたのが2度目の優勝の大垣純子であった。大垣はその後91年に出場、高橋明美との女王対決に敗れ準優勝となっている。そして今年はその大垣が、3度女王の座に君臨する為に、ミズ日本に帰って来ると言うのだ。

女王健在

1 大垣純子(栃木)

1 大垣純子(栃木)

2 清結花(静岡)

2 清結花(静岡)

3 神田美栄子(福岡)

3 神田美栄子(福岡)

4 松本俊子(東京)

4 松本俊子(東京)

5 廣田ゆみ(愛知)

5 廣田ゆみ(愛知)

2年振りの登場、大垣純子。スケールの大きさと重量感で他を圧倒していたようだ

2年振りの登場、大垣純子。スケールの大きさと重量感で他を圧倒していたようだ

左より神田、大垣、松本、清

左より神田、大垣、松本、清

今年も絞り込んて来た神田。確かに上背部のディフィニションは素晴らしい

今年も絞り込んて来た神田。確かに上背部のディフィニションは素晴らしい

左より廣田、松本、水間、荒川

左より廣田、松本、水間、荒川

身長は低いが、決して小さくは見えない清。三頭筋も仲々バルキーだ

身長は低いが、決して小さくは見えない清。三頭筋も仲々バルキーだ

石川(左)と山本

石川(左)と山本

 毎年、安定した実力を誇るベテラン選手が上位を占めるミスターとは異なり、ミズ日本の特徴は順位の変動が激しい所にある。それがミズ日本の面白さであり、反面物足りなさであるとも言える。

 今年もラインナップを見た限りでは、大垣が一歩抜け出している他は、実力が拮抗しており混戦が予想される。一年振りに見る大垣は、上体、特に胸、肩の充実度、厚みが抜きん出ている。身長も162cmと高い方に位置する為、非常に重量感がある。過去2回の優勝の実績は伊達ではない。

 勿論、他にもコンディションの良い選手は目につくが、大垣の迫力に対抗すると言うと、幾分物足りないようだ。

 今回決勝に残った12名の中には、初の決勝進出者が約半数の5名含まれる。今年もそれだけの入れ替わりがあったという事である。

 一昨年の3位から、昨年は6位と順位を落としてしまった山本奈美子だが、今年は決勝に駒を進める事が出来なかった。良かった時の『張り』が感じられず、アピール性に欠けた。昨年惜しい所で決勝進出を逃した岡本久子も今年も決勝へあと一歩及ばなかった様だ。新しい顔では、今年の第1回女子新人選手権で準優勝をしている藤森ゆかりが、並み居る強豪を押しのけ健闘したが決勝には届かなかった。次回に期待したい。

新勢力大躍進

 比較審査で最初に呼ばれたのは、やはり大垣。そしてジャパンオープン優勝の清結花、昨年のミズ日本の覇者松本、準優勝の神田美栄子であった。清は小柄ながら、バック、大腿の充実度はピカ一。昨年は初出場の為インパクトが弱く5位という順位におちついたが、今年は自信も身につけて来たようだ。

 松本は昨年に比べやや甘いか。バランスの良さは昨年のままだが、大垣を迎え撃つには少々物足りないコンディションだ。一方神田は昨年の厳しいコンディションそのまま。どうやら絞る『こつ』を掴んだようだ。

 2度目の比較は神田、松本、廣田ゆみ。そして再び廣田、荒川純子、水間詠子、松本と言うメンバーが続いた。

 この中の廣田、荒川、水間の3名は皆初の決勝進出者。しかし廣田は今年のアジアチャンピオン、荒川は昨年のアジア2位と十分過ぎる実績を持ち、そして水間もミズ日本初出場というには余りにバルキーな選手。ミズの新勢力の勢いは目覚ましいものがある。

激動のトップ10

 一年振りに決勝に返り咲いたのは高橋洋子。ジャパンオープンで4位に入賞するなど、今年は良い状態をキープした。結果は一昨年と同じ12位だが、十分健闘したと言えよう。

 11位は、今シーズン、大活躍を見せた石川祐子。仕上がりの厳しさを武器に戦って来たが、ここに来て少し疲れが出たか、今回は余り目立てなかったと言うのが正直な印象だ。しかし一年間で目覚ましい進歩を見せた彼女であるだけに、今後にかかる期待は大きい。

 混戦の東京大会を制した浜永祐子は10位に入り、日本のトップ10入りを果たした。東京大会より一層焼き込んで、赤いポージングスツが良く映えていた。これから上位に食い込むにはもう一つアピールポイントが必要だろう。
6 松野三重子(大阪)

6 松野三重子(大阪)

7 水間詠子(東京)

7 水間詠子(東京)

8 荒川純子(栃木)

8 荒川純子(栃木)

9 橿棒幸子(東京)

9 橿棒幸子(東京)

10 浜永祐子(東京)

10 浜永祐子(東京)

松本(左)と神田昨年の1位と2位だが、今回は神田の方に勢いがある

松本(左)と神田昨年の1位と2位だが、今回は神田の方に勢いがある

これだけ、威風堂々とした女性ビルダーがいただろうか。スケールの大きさから言えば長谷川尚子に匹敵する

これだけ、威風堂々とした女性ビルダーがいただろうか。スケールの大きさから言えば長谷川尚子に匹敵する

水間(左)と荒川

水間(左)と荒川

毎年厳しく仕上げてくる松野だが、何かもう一つアピールポイントがほしい

毎年厳しく仕上げてくる松野だが、何かもう一つアピールポイントがほしい

浜永の胸のキレは結構凄いぞ

浜永の胸のキレは結構凄いぞ

左より松永、橿棒、石川、山本

左より松永、橿棒、石川、山本

 昨年は見事表彰台に上がった橿棒幸子だが、今年は9位と不本意な成績に終わった。コンディションも悪くなく、上体は充実して来ている様に見えたが、今回の激戦の中では彼女の三角筋も突破口にはならなかったようだ。

 多くの選手がスコアにばらつきを見せる中、橿棒の評価は8~11位と落ち着いている。これは評価が安定しているとも言えるが『この選手はこの位」と評価を固めてしまう危険もはらんでいる。小さくまとまってしまう前に一発奮起してもらいたい。

 8位の荒川は、昨年の選抜、アジア大会と素晴らしい仕上がりで旋風を起こした選手。今年はミズ日本に見参だ。昨年程の厳しさは無いものの、上体、腹筋、大腿前部の切れ味は鋭いものを持っている。かえって昨年よりギスギスした感じが無くなり良かったかもしれない。あのカットのまま一回り大きくなってくれたら、表彰台も遠くはないだろう。

 昨年の東京大会の覇者橿棒、今年の覇者浜永と一気に破って7位に位置したのは、今年の東京大会の準優勝者、水間である。過去に東京大会しか出場していない為、初めて見る者にはインパクトを与えたに違いない。そのリラックスのスケールは稀に見るものが有り、胸、三角筋、バックの作るシルエットは非常に力強く安定感がある。コンディションもまずまず。腹筋が厚く、カーフも大きいと、大きな欠点が見当たらない。後は一層のバルクアップを果たし、近い将来最高のコンディションを作って見せて欲しいものだ。

 88年5位、89年7位、90年4位、91年6位。そして昨年は再び4位と、順位の変動の激しいミズにおいて、常に安定した実力を誇る松野三重子。今年は6位に入賞した。しかし彼女の評価も、変に落ち着きつつあるのが気になる。今回も、5~8位と高い位置で安定しているのだが、昨年のように1位票を獲得する事は出来なかった。表彰台を狙うには、今までを打ち破る何かが欲しい。

 今年の選抜大会で、鮮烈なメジャーデビューを果たした廣田。ご存じミスターの廣田選手の夫人である。エントリー中一番の長身だが、その割に細さを感じさせないのが強みだ。上体が充実しており、胸、バックはカットも良かった。後は下半身が充実すれば、手強い存在になるだろう。

 昨年の覇者松本は、ほんの少しの甘さが命取りとなり、4位と順位を落とした。顕著に甘かった訳ではないが、昨年抑えた神田が今年も非常に厳しく仕上げて来ているのに比べ、分が悪かった事は否めない。しかし昨年優勝していながら、今年も出場し大垣と戦うという姿勢を見せてくれた事は、大会を非常に盛り上げ、レベルの高いものとしてくれた。ここ数年で見違える程充実してきている彼女。一度頂点に立った事に満足せず、更に成長したチャンピオン像を目指して欲しい。

 昨年の正にバリバリの仕上がりを今年も見せてくれた神田は、昨年より順位こそ一つ落としたものの、3位と好成績を上げた。彼女のアピールポイントは何と言ってもあの大きな腹筋。腹筋の小さな人と比べたら2倍位はありそうだ。上半身の仕上がりは厳しいのだが、何と言っても下半身が絞り切れない。これは女性選手共通の課題でもあるが、ミズ日本の表彰台に上がるものとして、是非克服して欲しい。

 昨年のミズ日本では初出場で5位と好成績をあげた清。今年は昨年程の鋭さはないものの、全身が充実し、特に腰から曲線を描いて広がる大腿前部は一際目立つ。この充実度と昨年培った自信を武器に、今シーズンは選抜、ジャパンオープンと優勝し、このまま一気に日本の頂点に、という勢いはあったが、大垣の壁は厚かった。2位と言う成績に非常に悔しそうな表情を見せていたのが印象的で、彼女が『勝つ』気で今大会に臨んで来た事が窺える。僅か2年にして日本の頂点の目前までたどり着いた実力、秘めた可能性は計り知れぬものがある。今回はベテランの底力に屈したが、焦らず、満足の行く形でトップに立つ日を目指して欲しい。

 そして優勝は、3度目のタイトル獲得となる大垣純子。今回は2位以下を寄せ付けず、ほぼ完勝といえる戦いぶりであった。ミズ日本のタイトルを2度以上獲得した選手は、過去に大垣以外にはいない。浮き沈みの激しいミズにあってのV3という実績は、彼女がいかに長く高いパフォーマンスを保っているかを証明していると言えるだろう。今回も、彼女の上体の厚み、重量感は他の選手とは明らかに一線を画した。

 しかしそんな彼女にも、いくつか課題は残されている。今回はバリバリとは言わずとも上体は良く仕上がっていたのに比べ、下半身が物足りない。バックでは特に隙が目についた。また、腹筋も一つ一つは大きそうなのだが、今一つしっかり見えて来ない。ボディビル歴12年と、出場選手中最長を誇る大垣だが、まだ、より向上できる要素を秘めている。この優勝を機に、もう一度気持ちを入れ替えて、是非『世界』を狙って欲しいものである。

   *   
 新陳代謝が激しいミズでは、多くの選手にチャンスがあり、努力次第では大きくステップアップする事も可能だ。しかしその反面、生き残る事も容易ではないという厳しい側面も持っている。時には自分に与えられた評価に戸惑う事もあるだろう。しかし今回の大垣の優勝は、そんなミズの中にあっても、確かな実力さえ持っていれば安定した評価を得られる事を証明してくれた。現在活躍している多くの選手たちも、順位だけに振り回される事なく、確実に自らの進歩を目指して欲しい。
11 石川祐子(東京)

11 石川祐子(東京)

12 高橋洋子(新潟)

12 高橋洋子(新潟)

大垣

大垣

橿棒

橿棒

荒川

荒川

新鋭の清とベテラン神田の闘い

新鋭の清とベテラン神田の闘い

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ゲスト/須藤孝三

ゲスト/須藤孝三

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月刊ボディビルディング1993年12月号

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