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自宅でボディビルダーを目指そう!! 0円から始めるホームボディビル 第5回 ダンベルを使ったホーム・トレーニング〈その2〉

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[ 月刊ボディビルディング 2013年1月号 ]
掲載日:2017.07.28
一人でトレーニングを続けていると、大なり小なりさまざまな疑問が湧いてくると思います。そこで、各章の種目に即しながら少しずつリサーチしていきましょう。今回は主にフライ系に関連してのお話です。ホーム・ジムでは器具が限られ、種目数は少なくなりがちですが、幸いダンベルは動きのバリエーションが多く、多彩な動きが可能になります。これらのメリットを100%有効に活かしながらトレーニングしていきましょう。
筆者紹介 川島英博(かわしま・ひでひろ)
1948年8月2日生まれ/O型/(株)ヘルスプロデューサー代表
/トレーナー・鍼灸・整体師・通訳/「からだ工房」でスポーツ故
障者の治療をする傍ら大手スポーツクラブで治療とパーソナルト
レナーの両方で活躍している。著書に『ザ・ウエイトトレーニング』
『筋力トレーニング』『ボディビル百科事典(弊社より近日発刊予
定)』がある。
記事画像1

ダンベル・フライ(大胸筋、三角筋)

記事画像2
●アッパー・ペック(大胸筋上部)
 大胸筋上部(鎖骨部)をターゲットにしたフォームです。ダンベルを上下する位置を肩より少し頭部に近いラインで行います。ダンベルを下ろした時には手が少し内側に(内旋)向いた状態になります。インクライン・ベンチがない場合はこの方法で大胸筋上部の発達を狙います。

●ロウアー・ペック(大胸筋下部)
 大胸筋下部はダンベルを肩のラインより下よりにとって動作を行います。フィニッシュのトップ・ポジションでは手を平行よりやや外側に(外旋)向けて大胸筋下部を意識的に収縮させるようにします。デクライン・ベンチがない場合にこの方法で大胸筋下部の発達を図ります。

(参考)ダンベル・フライ・オン・ザ・フロアー(ベンチがない場合)
 ベンチがない場合は床上に寝ておこないますが、ベンチ上よりもストレッチ・ポジションが取れない分可動域が小さくなりますが切り返し反動を利用できないので大胸筋の収縮域での反復トレーニングに適します。終わったあとにはよく大胸筋のストレッチをしておきましょう。

アラウンド・ザ・ワールド(大胸筋、小胸筋、三角筋、大円筋、広背筋、前鋸筋等)

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 肩関節の内・外転、屈曲・伸展などの可動域変化を多く含んだ総合的な大胸筋を中心とした胸部のエクササイズです。胸上に肘を伸ばして押し上げたダンベルを頭上に下ろし肘を少し曲げた状態のまま体側から腰の方へ回して行き、その位置から胸を収縮させながら上腕を持ち上げて元の肩の高さのスタート・ポジションに戻り1動作とします。肩甲骨が固定されずに肘の動きに従って移動する為に他の種目では得られない刺激を大胸筋に受ける事ができます。比較的軽量で行い、大胸筋のエクササイズの最後に調整種目として行われる事が多いです。手を下げている時に息を吸い、上げる時に吐きます。
 
※フィニッシュからスタートへの逆回しも可能ですが、ポジティブとネガティブが入れ換わり大胸筋への刺激は弱くなる傾向にあります。

<回数・セット数>10~15回×1~2セット

クロス・ベンチ・プルオーバー

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 経験者向きのプルオーバーといえます。ダンベルのプレートの内側を肘を伸ばして両手で持ち、ベンチに体がクロスするように直角に肩をベンチに乗せて仰臥し、そのままダンベルを頭上方向へ息を吸って下ろし、最下点に達したら息を吐きながらもとの胸上に戻します。足を床につけているが頭部と腰部がフリーとなっているので、どちらか一方ずつを深く下ろす事で胸部(体幹)の伸展度を強くする事が可能です。ストレッチ刺激がかなり強いので、いきなり深く下ろさず、コントロールしながら浅目の動きからスタートして少しずつ慣らして行きます。

<回数・セット数>1 0~1 5 回×1~2セット

(追い込み法)
・最終レップス近くで肘を少し曲げて、両肘を少し左右に広げるようにして行うと、まだ数レップスの延長が可能になります。

※これはレバー・アーム(テコ作用)が短くなるだけでなく、上腕が外転・内旋し(肩関節がロックされ)、肩甲骨の(上下運動の他に)回旋運動が加わるために広背筋の関与が増加し、また僧帽筋、前鋸筋、菱形筋等も更に動きに加わるためと考えられますが、ストレッチ度は少し制限されます。経験者では重いウエイトで第1レップからこのフォームで行うことがあります。

・ボトム・ポジションで上下運動の切り返しで反動をつける方法があります。この方法は軽量であればいいのですが、重量を扱った場合は肩関節周囲の組織を傷める事があるので慎重に行う必要があります。特に脱臼の心配のある場合は気を付けましょう。

ダンベル・プルオーバー(ヘッド・オン・ザ・ベンチ)(大円筋、広背筋、大胸筋)

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 ベンチ上に仰臥して肘を伸ばしてダンベルのプレートの内側を両手の親指を交差して持ち、そのまま出来るだけ深く頭上に下ろして息を吸い、上げながら息を吐きます。大胸筋の縦方向の伸展・収縮運動になり、大胸筋下部のストレッチ度も高くなりこの部分のカット形成にも効果があります。また胸郭も大きくストレッチされこの部分の発達を大きく促します。肩関節が慣れるまで最初の内は浅目に下ろし、様子をみながら徐々に深く下ろしていくようにします。また足をベンチにのせた方が初心者には楽に行えるでしょう。強度を増すには最終的に頭をベンチから出して行います。複数セットを行う場合は手の交差をセットごとに左右入れかえてバランス良く筋肉に刺激を与えましょう。
 
<回数・セット数>10~15回×2セット

クロス・ベンチ・プルオーバー・ポジションのセットアップ

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ベンチの高さにもよりますが、ダンベルを仰臥の状態から床から取る事が出来ない場合やまた動作終了後に床に下ろす事ができなく落下させなければならないケースではエクササイズその物が危険になります。このような場合一人でダンベルをセッティングできる方法を前もって練習しておきましょう。予めベンチ上に縦に置いたダンベルを横向きに寝ながら利き手を下にして両手でシャフトを握り、利き手の肘を支点にして胸上に持ち上げて仰向けになり、プレートの内側に両手を当てて交差させるグリップに持ちかえます。動作終了後はこの逆のコースをたどり元に戻します。

ダンベル・オーバーヘッド・プレス(三角筋、僧帽筋、上腕三頭筋)

記事画像7
●オーバー・グリップ・プレス
肩幅くらいのスタンスで立ち、床上にあるダンベルを肩までクリ-ンし、両手の平が前方を向くオーバー・グリップで構えてスタート・ポジションとする。その位置から肘が外に開いた状態を保ちながら両方のダンベルを頭上に押し上げ、三角筋の収縮が最大に感じた時点を最上点とし、ダンベルの重さを感じながらゆっくりと元の肩の位置に戻す。

 三角筋の発達だけが目的である場合は、上腕が垂直に持ち上がる少し手前で三角筋の主な収縮が終わるので、基本的に上腕が垂直になるまで上げる必要はない。三角筋の側部(肩峰部)を中心に前部(鎖骨部)にも効果が及ぶ。

 基本的にはダンベルを垂直に上下させるが、コントロールしやすい中程度以下のウェイトを用いてやや弧を描くように軌道を設定したり、フィニッシュで体側よりやや後ろ側へ上げて三角筋側部の収縮を強くしたりする等のバリエーションを加えてみよう。

※バーベルでのプレスではシャフトが頭にかかるため、基本動作がフロントかバックいずれかのプレスになるが、ダンベル・プレスでは左右の手が離れていて空間があるために自由に動けるので、頭の真横からのプレスが可能である。また中央から前寄りに上げれば三角筋前部、後ろ寄りに上げれば側部により多く刺激が得られるなど、目的に沿って変化をつけやすいメリットがある。効かせ方に慣れてきたら、ダンベルを片方ずつ交互に上げる方法も行なってみよう(オルタネイト・ダンベル・プレス)。片方の1動作が終わってから他方に移り、これを交互に繰り返す。

<回数・セット数>8~10回×3セット

(追い込み法)
・レップスの最後にトップ・ポジションであまり肘を曲げない小さい範囲でのパーシャルレップスを数回繰り返す。
・スタート・ポジションで膝の曲げ伸ばしの反動を使って押し上げ、数レップス続ける(プッシュ・プレス)。下ろす時にネガティブを感じるようにゆっくりとウェイトを肩(三角筋)で受けながら行なうと、さらに強度が増す。

ダンベル・トレーニングを始めたいのですが、利き手の方が強くて左右のバランスが悪いです。これでも大丈夫でしょうか?

 我々の身体には、多かれ少なかれ左右の差は存在します。筋力トレーニングにおいては、それをいかに是正しながら進め、シンメトリーのある身体を作っていくかが大事な目的のひとつになります。特にダンベルの場合は、バーベルと比較して左右別々に動かせるので、その違いの感覚は大きく出るかもしれません。従って左右不対称にトレーニングを続け、その結果筋肉の発達が左右不揃いになってしまうことのないように気をつけなければなりません。また身体のアライメントの変化によって、動作の安定が悪く、思わぬケガにつながることもあります。

 ホーム・トレーニーは一人で行なうケースが多く、フォームを他の人に見てもらう機会がほとんどありません。従ってまずは自己チェックをする必要があるので、その方法を工夫してみましょう。

①まずは身体が見える大きめの鏡を用意しましょう。フォームが正確にできているか自分でチェックしながら、できるだけ左右対称に動けるように練習します。左右違っている場合は、同じ軌道を同じスピードで動けるように鏡を見ながら修正していきます。

②利き腕側だけに効果が片寄らないように、収縮努力においても反対側の筋肉にも利き腕側と同じように力が入るように強い意識を持ちながら動作をしていきます。眠っていた運動神経等も覚醒し、収縮力が増してきます。

※このように適切なウェイトを使い左右対称に動かす努力をしてトレーニングを進め、徐々に筋力が向上するにつれて自然に左右差が減少されると、均等な動きができるようになるのが通常の経過です。これはツー・ハンズ(シマルテニアス)種目においては最大レップ数が強い方で決まるのではなく、弱い方の限界に合わせて終了することになり、弱い方に過負荷が強く表れて発達が促進され、反対にスローに進んでいる強い方に追い付くという、身体の動きに対する順応性のひとつと思われます(ワン・ハンドで行なう場合には弱い方から始め、強い方のレップス終了を弱い方のレップス数に合わせると同じような現象が起こります)。

※弱い方だけを強化するプログラムを別に加えることも考えられますが、初心者の場合はオーバー・トレーニングになる可能性があります。

ベンチに寝て行なうダンベル・フライなどの種目では、鏡を見ることができません。どうしたら良いでしょうか?

 これは少し難しい問題ですね。ジムによっては天井に鏡が貼ってある所がありますが、ホーム・トレーニングではそういう訳にもいきません。しかし自分の手の動きのクセ(傾向)を知りたい場合は、次の方法で簡単にチェックすることが可能です。

 抵抗の少ない、弱いチューブを用意して、中央によく判るような印をつけます。このチューブを中央から左右両手への長さが同じ幅になるよう正確に持ち、ベンチに寝てダンベル・フライと同じ動きをします。この時中央の印が左右にぶれなく垂直に胸の真ん中(胸骨上)を上下すればまずOKで、右または左へ逸れるようだと、そちらの方へ手を深くまたは遠くに下ろしているクセがあるということが判ります。また、チューブがベンチに対して直角のクロスでなく少しでも斜めになる場合は、両手の位置が一直線上にないということになります。この徴候があった場合は、両手が左右・上下の正確な軌道を描くようにチューブで何度も確認をし、実際のダンベル・フライに活かしましょう。副次的にはチューブを下ろした胸の位置によって、ダンベル・フライで自分が大胸筋の何処に効かせられているかも判断できます。

 ダンベル・フライ等のように軌道が大きく動作の全貌が自分で見えない種目では、動作に誤差が生じやすいので、フォームに注意が必要です。

ダンベルのシャフトは短いけれど、握り幅の余裕が大きいダンベルの場合はどこを握るのがいちばん良いの?

 基本的には「真ん中を握れば良い」ということになるのですが、種目やフォームによってはグリップ位置で使い心地や効果が多少違ってくる場合があります。経験者では(全てではありませんが)ダンベル・プレス等では親指側のプレートの近く、ワンハンド・フレンチ・プレスでは小指側へとグリップ位置が自然と寄って来ることが多いのではないでしょうか。これは決まった法則がある訳ではありませんが、ダンベル・エクササイズでは、ポジティブで上げる軌道の進行方向(トップ・ポジション)側のプレートにグリップ(指)を近づけて握った方が、ダンベルのウェイト(重心)が目的とする筋肉に直接乗りやすいためと思われます。また、距離的に主働筋に近い方のプレート側に持つ傾向が多いともいえるようです(もっとも、超アドバンスのトレーニーの場合は、変化をつけて抵抗負荷を増すために、わざとグリップを難しい方向に変えることがあります)。

 つまり、目的とする筋肉(主働筋)に刺激が集中しやすく、また手首に負担が多くかからない持ち方をすることが理想です。従ってベーシックな持ち方を基本にし、少しずつ変化させながら自分のグリップを見つけることが大切です。エクササイズの動作に慣れてしまい、種目はそのままで筋肉への刺激に変化をつけたい時には、これらを参考にしてグリップ位置をバリエーションとして微妙に変えてみましょう。※グリップの方法には、他にも親指をシャフトに巻きつけるサム・アラウンド・グリップと、親指を巻かず他の四指と揃えて握るサムレス・グリップがありますが、ダンベルの持ち方としては、指から離れて落下するなどの危険を避けるためにもサム・アラウンド・グリップを用いることをお勧めします。ただし手首を常に上へ向けて動作ができるカールやリスト・カールの場合は、サムレス・グリップにして変化をつけることもあります。

ダンベルでは運動範囲を大きく取れるメリットがあるということですが、〝大きい〟といっても、実際にはどれくらいの範囲までやればいいのでしょうか?

 個人差はありますが、人間の各関節にはそれぞれに固有の可動域があります。例えばダンベル・フライのように、上腕(肩関節)を真横(水平)に伸ばした状態から後ろへ回す(水平伸展)場合は30度、水平に前から胸の方に回す(水平屈曲)場合は135度までと、機能解剖的には決められています。しかしこれは一つの(単)関節の場合であって、他の関節と複合した実際の動きとなると、その範囲は広がり、また個人差も多くなります。

 また、関節の可動域の他にも、筋肉をストレッチした場合の柔軟性については大きく2つ考えられます。ひとつは身体を自分の努力で自然に動かした最大可動域と、もうひとつは自分の努力に加えて他からの力を借りて(強制的に)伸ばされたり収縮させられたりし場合の最大可動域です。もちろん後者の方が可動域の範囲は大きくなりますね。

 普段の生活の動きでは、自分の動かせる範囲内での無理のない可動域で納まっているのですが、トレーニングとなるとそれよりも動きが著しく上回る部分が出て来るのは否めません。今回のダンベル・フライでは、ウェイトの重さによっては(自分の意図ではあるものの)半ば強制的に後ろへ下げられるので、肩関節の最大域近くまで大胸筋等を伸ばすことができます。これは大きい範囲で筋肉運動(フル・レンジ・モーション)ができるというメリットはありますが、大きな負荷が肩関節や大胸筋等にかかるために組織を傷める要素を増大させるデメリットがあるともいえます。「それでは、どの辺まで下ろせば良いのか?」ということになりますが、初心者はダンベルを持たずに自分が自然に下ろせる範囲を見極め、これを最下点として、これより浅めからトレーニングを始め、筋力がついて動作にも慣れてきたら、必要に応じて徐々に深くする方法を取ると良いでしょう。一般的には、関節の可動域いっぱいにストレッチした時点で強い筋肉の収縮を試みた場合に、組織の損傷事故が多発する傾向にあります。伸びのある筋肉を作る目的で、あえてストレッチ・ポジションで刺激を受けたい場合は、通常のセットの最後に軽量で行なうと効果が期待できるでしょう。このことは他の種目においててもほぼ共通します。


 今回はダンベル・フライにちなんだ、主にストレッチ・ポジションとトレーニング効果の関係についての説明でした。筋発達のための重いウェイトではなく、2~3kgの軽いウェイトでストレッチ系のエクササイズをゆっくりと行なうと、硬直した筋肉を緩めて身体をリラックスさせる効果もあります。これに呼吸の調整も加えるとさらに効果的です!

 心身ともにリフレッシュでき、頭もスッキリしますよ。また仕事に疲れた時やストレスを感じた時等には、癒し系の音楽等を流して軽くダンベル・ストレッチングを楽しみながら帰宅後の冬の夜の一時をゆったりと過ごすのもたまには良いのではないでしょうか。ホーム・ジムではいつでもこんなことができる環境にあるのが嬉しいですね。

 次回は肩のプレス系種目についてのお話です。ご期待下さい。KEEP LIFTING !!


(Model =穴沢基樹)
[ 月刊ボディビルディング 2013年1月号 ]

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