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特別寄稿
ECEトレーニングの効能あれこれ!

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[ 月刊ボディビルディング 2014年8月号 ]
掲載日:2017.09.13
 ECEトレーニング法を発表して10年以上になる。自身の腕を太くしたいため、いろいろと考えている時に気付いたのがECE。その後、筑波大教授の武政徹先生がECEトレーニングを研究され、健康に良いと発表されたことが一番発案者の私としては嬉しい。そのことを裏付ける報告が他から舞い込んできた。

ECEトレーニングで血圧が正常に!

 小泉泰宏さんからの電話である。小泉さんは、現在、大宮のスポーツクラブで70~80人の高齢者を対象にウエイトトレーニングを指導されている。泰宏さんのお兄さんは以前、ミスター東京で3位になられた小泉忠男さん。残念ながら、去年お兄さんは病気で亡くなられた。3年前、病気のお見舞いに出かけたときに泰宏さんとお会いし、ECEトレーニングについて話したことがある。その後、彼はスポーツクラブのメンバーにECEトレーニング法を取り入れ指導してきた結果、血圧の高い人に改善がみられ、喜ばれているとの連絡である。また、以前は高血圧のため、トレーニングをやめる方もいたのに、今はそのような方は一人もいないとのこと。2~3日前にそのデーターが送られてきた(表1参照)。
表1

表1

なぜ、血圧が改善したのだろう?

 それは呼吸法にあると言える。ECEトレーニングは、単に筋肉の伸展(E)から収縮(C)そして伸展(E)で行うことだけでなく、動作中呼気で行うことが大事。小山裕史氏が発表した「初動負荷理論」。動作の初動に一番負荷がかかるというものだが、筋トレにおける初動は筋肉の伸展から収縮に移るときの初動であると理解している。また、呼気でゆっくり動くことで、初度負荷の刺激を十分に受けることが出来る。これもECEトレーニングの特徴でもあり、ターゲットとする筋肉を中心に他の筋肉はあまり関与しないため、マックスの2/3の重量で強い刺激を受けることになる。省エネのトレーニングでもある。しかも、呼気で行うことは体にとっても理にかなったものであり、(=筋肉は呼気か怒責で働く)、怒責で行うと心臓に負担をかけ血圧を高めてしまう。

補助トレーニングとして

 ECEトレーニング法は他のスポーツの補助トレーニングとしても非常に有効。 例えば、スクワットなど、ほとんどのスポーツのアスリートたちが取り入れている。しかし、昔からのスクワットが主流である。バーベルを担いで立った姿勢からしゃがみ、立ち上がる、収縮~伸展~収縮の形で行う。しかも、最近は、膝を痛めるからと、ハーフスクワットになっている。果たして、補助トレーニングの役目をなしているのだろうか? 私は、はなはだ疑問に思う。効率が悪いと思うのだ。

 先ほど行われたソチオリンピックとパラリンピック。パラリンピックの選手が金メダルをスピードスキーで3つ獲った。足に障害をもった方である。健常者のスピードスケートでは、優勝候補の二人の日本選手は5位、6位だった。健常者のオリンピックではオランダの選手が男女とも活躍し、メダルを独占という競技もあった(同じ、東洋人の韓国の選手も活躍している)。なにかが違うのだ。私は原因が補助トレーニング(スクワット)にあると思う。

 二人の日本選手の努力に関しては、世界でもトップグループであると思うし、また素質も優秀。なのに、負けた。それは、トレーニングのあり方に問題があるのではないかと思うのである。

スクワットはフルスクワットで

 何年か前、成増トレーニングセンターに総合格闘競技のプロの選手がトレーニングにきていたことがある。当時、ECEを発表して間もない時、谷野義弘選手がECEトレーニングを取り入れミスター日本で優勝した。特に脚の筋肉の発達は見事だった。そうしたこともあり、格闘家の彼にECEでフルスクワットを取り入れさせたことがある。1か月後、足のけり技がパワーアップし、大きな体重の相手がぶっ飛ぶようになったこと、さらに、当時30歳を超えたというのに、100m短距離走の記録が大きく伸びたとの報告を受けたのである。他にもアマレスの日本チャンピオンの方も同じことを言ってきたのだ。

 話は、少し、横道にそれるが、以前に、いろんなスポーツのトップアスリートを集め、垂直跳びを競ったところ、一番に跳んだのは、重量挙げの選手たちだったという話がある。高跳び、幅跳び、短距離走、レスリング、長距離などと思いつくのだが、重量挙げの選手とは驚いたものである。ロンドンオリンピックに出場した10代の女子重量挙げの選手が、テレビのインタビューで得意とするところは何かと聞かれ、「ジャンプ!」と答えていたのを見た方もいるのではないか思う(たしか、60~70㎝)。

 つまり、重量挙げの選手はフロントでフルスクワットを毎回行っている。ハーフスクワットではバネもスピードもパワーもたいして培われないのだ。凄い脚を持つ世界のトップビルダーたちもほとんどフルスクワットなのだ。
ECEトレーニングは筋肉が伸展した位置からスタートし、筋肉を収縮させ、そして伸展位置へ戻る

ECEトレーニングは筋肉が伸展した位置からスタートし、筋肉を収縮させ、そして伸展位置へ戻る

怪我をしないために動作は呼気で

 フルスクワットを呼気で動作を行うなら、膝を痛めることは起こらない。「筋肉は呼気または怒責でしか働かない」ことを、指導者はしっかり知る必要がある。ぎっくり腰も吸気とタイミングがあった時に起こる。剣道でも、打ち込んでいくとき「エイッ」と呼気で行う。息を吸いながら、人を殴れない。

 私は浅田真央選手の大のファンである。体が大きくなったからジャンプ力がどうのとよく言われるが、あまり筋肉をつけないで、ジャンプ力をつけるなら、フルのヒンズースクワットをECEで行うことを勧めたい。目に見えてジャンプ力は増す。余裕でジャンプは跳べるようになるだろう。素質のすべてが揃っている浅田真央選手、まだまだ活躍してほしいものである。

 勿論、他のスポーツの補助トレーニングでウエイトトレーニングを行う際、ECEで、特に、スクワットなどはフルスクワットで行って欲しいものだ。良い結果が出ることはまず、間違いない。

高齢者のトレーニングとして

 私も70歳。年は取りたくなくても年を取ってしまう。いつの間にか、プロテインよりもビールや酒の方が良いという年頃。しかし、若い時からのボディビルは忘れがたい。何も取り柄がない私も、昔は、周りの人よりもボディビルのお蔭でほんの少しだけ「良い身体」であったし、周りは認めなくても己だけのその優越感が忘れがたく、また、在りし日の肉体が恋しくて、未だにバーベルから離れられないでいる。尻もたれ、胸も垂れていても、鏡の実際の姿を認めたくないのが実情。そうした人は私だけであるまい。

 それだから、怪我しない、体に良いトレーニングが必要だ。手前味噌で申し訳ないが、その為には、指導者がしっかり、ECEトレーニングを理解してもらいたい、と願う。
著者略歴
重村尚(しげむら・ひさし)/1944年鹿児島生まれ/元ミスター大阪、ミスター関東、ミスター日本2位/元東京ボディビル連盟理事長/元成増トレーニングセンター会長/健康運動指導士・実践操体法指導者
[ 月刊ボディビルディング 2014年8月号 ]

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