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心肺機能向上へのアプローチ

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[ 月刊ボディビルディング 1973年4月号 ]
掲載日:2017.10.19
ブルース・ペイジ
高山勝一郎訳

◆食事とジョッギング◆

 心肺機能の向上が健康に不可欠の要素であることが,現在あらためて見なおされているようである。
 しかし,この問題に無関心な人もまだまだ多い。不適正な食事のとり方,いたずらな肥満,そして日常の運動不足が,どのように恐ろしいものであるかにまだ気がついていない。
 とはいえ,心臓病の恐さに思い至って,その対策に一生懸命になる人も欧米では著しく増加している。
 脂肪のとり過ぎをひかえ,糖分や粉製食品を遠ざけ,動物油を植物油に切り替える等の食生活の改善がいま盛んに行われているのである。
 これに加えて,ジョッギングの形で日常生活に運動をとり入れることも流行している。歩行に走行を加味させたこのジョッギングは,町々の路上でよく見かけられ,健康の増進には効果的で手軽な方法と見られてきているようである。
 ところが,現代の公害社会においてこのジョッギングすら疑問視されるような事態も発生してきているのだ。
 車と人の激しく往きかう街路,さなきだに煙と排気ガスに汚れてきている大気,これでは都会を遠く離れた地方以外では,ジョッギングすら安心して行えないではないか。

◆スクワットの効用◆

 ビルダーの中には,トレーニングに体力を使い切って,ジョッギングを特別に行うなど考えてもいないものが多い。それでは心肺の機能増進面がビルダーに不足してしまう。
 ここにおいて,心肺の面から見なおされてきたのが,おなじみのスクワットである。これなら,毎日のトレーニング・ルーティンに組み入れておけば何の抵抗もなく行える。
 スクワットは今まで脚部を太くしまたは副効果として胸を厚くするという効果面でしか知られていなかったのであるが,近頃,ジョッギング以上に心肺機能の向上に効果のあることが認められるようになってきた。
ジョッギングやランニングがそうであるように,心肺機能を高めるには下半身を運動にできるだけ多く参加させることが大切である。
 スクワットによって大腿部に刺激が与えられ,この部分を発達させることは間違いないが,さらにこの運動によって,心臓と肺臓がその動きを活発にし,この運動を助けるために働きを強めるのである。
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◆心肺用スクワットの方法◆

 心肺機能の向上を目的とする場合,スクワットに動作の早さと,回数の多さが要求される。これは,ジョッギングやランニングの場合をふつうのウオーキング(歩行)と比較しても自明の理であろう。
 ウェイトは適度なもの,むしろ軽目の方がよい。
 レペティションはふつうで20回,慣れるに従って25~30回,さらに40回ぐらいまで増やしてゆくとよい。
 大切なことは,レペティションの早さをふつうの大腿筋強化の目的でやるスクワットの時より早くすることである。通常,1.5倍から2倍の早さに修正して行うとよい。
 セット数も3セットから徐々に増やし,8~10セットまでもっていけるようにする。
 この時注意しなければならないのはジョッギングは誰でも行えるが,スクワットはトレーニング技術を要し,今までスクワットを行なっていなかった者が,急に上記のペースでやっては危険だということである。最初は少セット少レペティションで正しいフォームを身につけてからにしてもらいたい。
 以上のやり方で行なうスクワットには,さらに別の副効果が得られる。肺臓が拡充し,胸部を押しひろげることによって胸部の発達が促進される。
 であるから,ジョッギングに適切な場所と時間を見い出せないビルダーには,このようなスクワットをおすすめしたいのである。
 心肺機能と筋発達の一石二鳥をねらうビルダーたちにとっても福音になると思い,この一項を提する次第である。
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[ 月刊ボディビルディング 1973年4月号 ]

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