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プラトー(力が伸びなくなる状態)を打破する

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掲載日:2016.07.29
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プラトーを打破する誤った考え

普通、初心者やトレーニング歴が3年以下の中級者は、徐々にトレーニングの方法を二つあるうちのどちらか一つに変えていきます。どういうことか説明してみましょう。

さらに筋肉をつけるために必要なのは、徐々にウェイトを重くしていくことです。言い換えれば、筋肉をコンスタントに発達させるためには、負荷をコンスタントに高めていくことが必要なのです。何年も同じ重さのウェイトを使っていたのでは、筋量を増やすことなど不可能です。ですから、徐々に力を強くしていこうと努力することが大切なのです。

あなたがトレーニングを始めたときには、多分日に日に(とは言わないまでも、一か月ごとに)力が強くなっていくように感じたことでしょう。これが、あなたが最初の3年によく発達した理由なのです。ところが、自然と訪れるストレングスプラトー(力が伸びなくなる状態)に達してしまったとき、あなたはこれ以上力を伸ばすのが困難だと感じ、多分セット数を増やすことにしたのだと思います。これが、多くの人が犯す間違いなのです。セット数を増やすことは、伸びのストップを意味するからです。

セット数を増やせば、ワークアウト時間が伸び、体からはエネルギーが失われます。そして、体が低エネルギー状態にあるときには、二つの恐ろしいことが起こるのです。

まず、回復力が被害を被ります。回復力が低い場合、いかに食事や睡眠を取ろうとも、筋発達はストップしてしまいます。それに、エネルギーが低い場合、ジムで全力を出すこと、前回のワークアウトよりも重いウェイトを扱うことは不可能になります。たった一つの種目においてですら1レップも伸ばせず、2.5kgも増やすことができないならば、新たな筋発達に十分なだけの刺激を体に与えることなど到底できないでしょう。

筋肉には、強度/刺激の閾値とでもいうようなものがあります。この閾値というのは、ある種目を行う際に6~10レップスしかできない、あなたにとってのマックス・ウェイトのことです。

仮にあなたがベンチプレスを100kgで8レップス行っているとしたら、今以上に筋肉をつけるためには、もっと重いウェイトで同じレップス(いや6レップスでもかまいません)を行うか、100kgで9レップス行わなければなりません。100kg、というのが、この場合の閾値なのです。

筋肉は意外に賢いものです。閾値以下のウェイトを使っても、それは発達を促すに十分なだけの刺激にはならないのです。ですから、80kgで8レップス行ったとしても、筋肉は反応しないのです。さらに筋肉をつけるには、この閾値を超えなければならないのです。それゆえ、私はセット数を減らすことをお勧めします。そうすることによって、回復力が高まることでしょう。

十分に回復した筋肉は、強く、大きくなります。セットを多く行い過ぎて十分に回復できない筋肉は、弱く、小さいままです。トレーニングを行っている人のほとんどが自分で計画を立てていることと思いますが、セット数を多めに設定しすぎて、それぞれのセットで力を100%出し切れていないのが現状です。仮にそれぞれのセットで全力を尽くしているというなら、ワークアウトを最後まで続けられないことでしょう。

僕は、これとは反対のアプローチを取ることをお勧めします。それは、セット数を半分にすることです。そうすれば、より重いウェイトを使って、もっとハードにトレーニングすることができます。それに、セット数を減らすことにより、ヘトヘトになるまで疲れることがなくなるので、回復と発達が可能になるのです。

ヘビーワークアウト(次第にウェイトを増していくようなワークアウト)は、筋肉の分解を促します。その結果、アナボリック状態が作り出され、ダメージを受けた筋肉を再生する方向に働き、それがさらなる筋発達へとつながるのです。このようなオールアウト・トレーニングを行っている限り、オーバートレーニングに陥ることはまずないでしょう。というのは、それは筋肉の再生を促すものですし、ワークアウト時間が短めになるのでエネルギーや回復力を失いにくくなるからです。

プラトーを破るトレーニングテクニック

上級者にとって、継続的に発達を続けていくのは難しいことです。というのも、上級者は普通、力の強さに関しては自分の限界に達していて、それ以上ウェイトを上げるのは、非常に難しいか、不可能だからです。以下にプラトーを打破するためのトレーニングテクニックを紹介しておきます。

◎アングルに変化をつける
基本種目を、ヘビーウェイトを使い、アングル(角度)に変化を持たせるようにして行ってみましょう。そうすれば、少し異なるストレスを筋肉に与えることができ、さらなる筋発達に役立つかもしれません。とにかく、すべてに変化をつけてみることです。

たとえば、デッドリフトを床から行うかわりに、ブロックやパワーラックから行ってみます。また、胸だったら、ベンチプラスからダンベルプレスに変えてみるとか、インクライン種目のアングルを、自分がいつも行っている角度よりも、ずっと小さくしてみます。それに、シーテッド・ショルダープレスのかわりにスタンディングプレスをすれば、背中の上部の筋肉をもっと使うことになるでしょう。なぜなら、背中の上部の筋肉は、状態を支えるのに必要だからです。

このように、上級者にとっては、バラエティー(変化)が、さらなる発達の鍵になるかもしれません。しかし、初心者、中級車には、やはりヘビーウェイトを使った基本種目が一番だと思います。


◎リバース・ストリップ・セット
上級者に効果のある別のテクニックは、“リバース・ストリップ・セット”と僕が呼んでいるものです。このテクニックは特に、脚、背中、胸に効果的です。では、その行い方を紹介しましょう。

ベンチプレスを例にとると、まず10レップスを余裕をもってできる重量を選びます。10レップス行ったら、休みを取らずにウェイトを足し、さらに2~4レップス行います。ですから、最後のレップは、やり遂げるのが非常に困難ですが、不可能というわけではありません。

次に、さらにウェイトを足します。すると、1レップは自分一人でもできますが、もう1レップやるとなると、パートナーの助けが必要になるでしょう。

……と、このように行うわけですが、このタイプのトレーニングは、速筋のIIaファイバーを疲れさせます。IIaファイバーが疲れてくると、速筋のIIbファイバーが動きに関わってきます。このIIbファイバーが、筋肉の発達ということになると、すごい潜在能力を持っているのです。ウェイトを増すことによって、これらIIbファイバーに、超過負荷をかけることができるのです。
こういったタイプのトレーニングを、すべての種目で行う必要はありません。

一部位につき一つの種目で十分です。やり過ぎると、オーバートレーニングになることもありますから。また、トレーニング一回おきに行うこともできます。“リバース・ストリップ・セット”でワークアウトしたら、次のワークアウトは、通常のトレーニング方法や、自分の好きなトレーニング方法で行ってみてはどうでしょう。


◎1RM
あなたが、あるエクササイズで6~10レップスの重量が伸びなくなったのだとしたら、シングルを行ってみることをお勧めします。僕の場合、ベンチプレスで180kgを6レップスで、これ以上伸びなくなったとします。

そうしたら、次のワークアウトでは、200kgを1レップにトライするでしょう。これを、一回のワークアウトで2回行います。また、1レップ・マックス(1RM)を伸ばすために、あまりにも多くのレップ数をこなすようなことは避けます。それは力の無駄遣いになるからです。

このマックスを終えた後は、インクライン・ベンチプレスをヘビーウェイトを使って6~10レップスで2~3セット行います。これでトレーニングは終わりです。

次の週にベンチプレスを行うときには、180kgに戻し、7レップスに挑戦します。大抵の場合、このテクニックは効果があると思います。なぜなら、あなたの体(ストレングス)が、180kgを再び握ったときに、200kgよりも軽いと感じるからです。


◎パーシャル
もう一つ僕の好きなテクニックを教えましょう。それは、スポッター(補助者)をつけてパーシャルを行うことです。

180kgを使うのですが、ウェイトは、いつものようにしっかり下ろすのではなく、ほんの6~10cmしか下ろしません。これにはどんな意味があるかというと、スティッキング・ポイントにおけるストレングスを増そうとしているわけです。このテクニックは、ショルダープレスやベントロー、そしてスクワットにも同じようによく効きます。


◎レストポーズ
6から12レップスの間で、あなたが目標とするレップ数を決めます。但し、そのレップ数は、1度にできてはいけません。

もし、あなたが8レップスを目標と決めたとしましょう。しかし、あなたは8レップス完遂できず、6レップスでつぶれたら、バーベルをラックに戻し数秒休憩します(最大で20秒)。
そして再びバーベルを握り、残りの2レップスを行います。

このように、自分の目標とするレップスをわずかの休息を挟んで完遂させる方法がレストポーズ法です。


◎フォースド・レップス
1セットを8回行うと決めた場合、6回ギリギリできるウェイトを扱って行い、残りの2レップスを補助者に手伝って上げる方法です。このテクニックを使うと、すでに刺激を受けている筋肉をさらに追い込むことができます。但し、このテクニックを用いたセットをあまり多く行うと、オーバートレーニングに陥りやすいので注意してください。

通常はその種目の最後の1~2セットに用います。


◎ピークコントラクション/ネガティブ
このテクニックは、エクササイズのフィニッシュポジションで筋肉を意識的に収縮させるものです。このテクニックはレッグエクステンションやレッグカール、上腕二頭筋、三頭筋などで使うことができます。

やり方としては、例えばレッグエクステンションでの1セットのレップスを10と決めたら、自分自身で6回ギリギリ上げることのできるウェイトを扱い、残りの4レップスをパートナーに助けてもらいます。この4レップスでは、フィニッシュのポジションでできるだけ強く筋肉を2秒間ほど収縮させます。そして、出来る限りゆっくりとウェイトを降ろしていくのです。また、パートナーにこのネガティブムーブメントで負荷をかけてもらうこともできます。


◎ストリップ・セット・トゥ・10
筋肉に刺激を当たるよい方法は、10レップスギリギリできるヘビーウェイトを扱うことです。しかし、例えば40kgのダンベルでダンベルプレスを行おうとした場合、5レップスしかできないとします。
そこでダンベルを置かずにすぐに少し軽いダンベルに持ち替えてさらに3レップス行います。さらに軽いダンベルに素早く持ち替えて2レップス行い、これで10レップス行ったことになります。

このテクニックでの注意点は、一番初めに行うレップスよりも次に行うレップスのほうが多くなってはいけません。ですから、トータルで10レップス行うにしても、初めのウェイトが1レップしかできないものではだめな訳です。また初めのセットが5レップスできたとしても、次のウェイトが軽すぎて5レップス以上できてしまってもだめです。

重量の選択が難しいテクニックです。


◎モディファイド・スーパーセット
スーパーセットとは、一つの筋肉部位に対し2つのエクササイズを出来る限り休息を挟まずに続けて行うトレーニングテクニックですが、このテクニックは時にハイレップスになり、筋肥大を促すトレーニングとしては適していないと言えます。しかし、トータルで12レップスを超えないスーパーセット法は、僕は好きです。

例えば、始めに6レップスギリギリできるウェイトでレッグエクステンションを行い、続けて6レップスギリギリできるスミスマシンスクワットを行う、という様にです。


もし今紹介したテクニックが効かないとしたら、ただ単に体が休息を必要としているということが考えられます。
あなたが強化したいと思っている部位に関しては、軽めのウェイトを使ったトレーニングを続けて2回ほど行ってみてください。



  • ■究極の筋肉を作り上げるためのボディビルハンドブック
    2013年6月20日第6版発行
    著者:クリス・アセート
    発行者:橋本雄一
    発行所:(株)体育とスポーツ出版社

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