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潜在能力を最大限に開花させる!筋量増加へのプロセスを明確にする方法

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掲載日:2016.08.03
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人間の可能性は、人類が想像、認識しているよりも遥かに大きいといえる。もしも、あなたが自分自身の能力に確信を持ち、努力を続ける事さえできるなら、自ら到達できるとイメージできる状態よりも、遥かに高いレベルに到達できるだろう。(マイク・メンツァー)

あなたのやる気を駆り立てる目標とは

前回に引き続き今回は、潜在能力を最大限に開花させるためのお話をしようと思う。それでは具体的にどのようにアプローチしていくかを解説していこう。

最近わかってきたことだが、人間の可能性は、僕らが想像、認識しているよりも遥かに大きいといえる。もしも、あなたが自分自身の能力に確信を持ち、努力を続ける事さえできれば、ほとんどの人達が自分自身で到達できるとイメージできる状態よりも、遥かに高いレベルに到達できるという事だ。しかし、この努力を続ける事が難しいんだよって声が聞こえてきそうだ。ある意味人間は、目標と結果によって行動しているとも言える。

僕はクライアントが初めてジムを訪れたときには、「目標は何ですか?」「どんなふうになりたいですか?」と必ず質問している。そんなクライアントの中にはとにかくデカイ身体になりたいとか、いつかはコンテストで優勝したいというような漠然と曖昧な目標を持っている人や、筋量を増やして、6パックの腹筋を手に入れて、マラソンにも挑戦したいっていうような沢山の目標を同時に持ってくる人もいる。

どちらの場合も目標に焦点が合わせづらく、結局は何も手付かずで行動を起こせないパターンに陥るケースが多いだろう。また初心者にも関わらず、いきなりミスター日本のファイナリストが目標だとか、プロビルダーとして活躍するというような目標を持つ場合も、適切な目標設定だとは言えないだろう。

大きな目標を持つ事は悪い事ではないが、リアルにイメージできない目標や、結果がほとんど期待できないような目標はあなたを本当にやる気にさせる事はない。大きな目標に挑む場合は段階的に目標設定をする必要があるという事を知って欲しい。そして何よりも、その目標は自分にとって魅力的なものでなければならない、あなたにとって魅力のない目標だったら、情熱を傾けて努力しようなんて思うことは無い。

あなたの脳に目標達成プログラムをインストールする

それでは筋量増加のための6つの問いに答えて欲しい。下記の質問をバカバカしいと思わないでちゃんと考えて書いて欲しい、この質問に答える事で、自らの能力に確信を持ち、努力を続ける事が可能になる目標達成プログラムがきっとあなたの脳に組み込まれるだろう。

Q1.筋量増加という目的をあなたは何パーセント達成できるイメージがあるのか?

目標達成イメージはとても重要だ。あまりに目標が高すぎて、達成イメージが低すぎる場合や、その反対に目標到達が容易すぎるような目標は、あなたのモチベーションを駆り立てる原動力にはなり得ないだろう。スポーツ心理学などの見解では、ちょうど良い目標レベルというのは、自分自身が達成可能なイメージが30%~50%であり、その目標というのはもっと具体的にいえば、努力すればなんとかなるぞ、という感覚が持てるような目標が望ましいと言えるだろう。

さぁあなたは何パーセントの達成可能イメージを持っている?

Q2.筋量増加という目的を達成する事はあなたにとってどのような意味があるのか?どれほど重要なのか?

これらを明確化することで、潜在意識にも、筋量増加はあなたにとって意味があり重要なイメージとして植え付けられ、行動、活動を促進させるだろう。そして脳は、あなたの夢を現実化するために、絶えず24時間休むことなくリサーチを続け、モチベーションの元になってくれるはずだ。

こんな経験はないだろうか?偶然会いたいと思っていた人に出会えたり、偶然探していた本を見つけたり。これらは一見偶然とも思えるけれど、あなた自身が、その人物と会いたいと思っていたことや、その本に興味を持っていたという事が前提にあるはずだ。

チャンスや出会いはいつでも目の前を通り過ぎている。あなたの目的があなたにとって重要であることが明確になればなるほど、あなたは目の前を通り過ぎようとするたくさんのチャンスに気づき、
巡り合う可能性が大きくなるだろう。人間の脳はとても高性能のコンピューターのようなもので、あなたが目標に到達できるよう自動的に稼働してくれるのだ。

Q3.筋量増加という目的を達成することができれば、あなたはどのように変わる?あなたの周りの反応は?そしてあなた自身の心境はどう変わるだろうか?

最近ではメンタルトレーニングやコーチングを受けるプロアスリートも増え、目標達成後のイメージワークをアスリートに行わせるケースも多くみられるようになってきたが、まだまだ普及しているとは言えない。しかし多くの成功したアスリートたちはこのようなプログラムを行ってきた事実から、間違いなく重要なプロセスであることはおわかり頂けるだろう。

目標達成後のイメージを描くことによって、どのような効果が期待できるのか考えてみよう。ここではコンテスト優勝を目標にするビルダーAさんを例に挙げてみよう。

彼はパーソナルトレーナーを職業としているが、優勝後のビジョンがとても明確で、優勝というキャリアを生かし、さらなる収益のアップを目標としている。彼には先輩のパーソナルトレーナーがいて、その先輩はコンテスト優勝という実績を生かして、既に以前よりもたくさんのクライアントを集めることに成功しているのだ。

このような成功実績のモデルケースを身近に持ち、コンテスト優勝が将来的なビジョンにプラスの影響を与える場合はあなたのやる気を促進させる原動力になることは間違いない。目標を達成したイメージが、あなたにとって有益であり、魅力的なものであれば、あなたのやる気を掻き立てる原動力となるだろう。

しかし、次の例はどうだろうか?同じようにコンテスト優勝を目標としているビルダーBさん。彼の場合家族があり、周囲からコンテスト出場を反対されている。職場でもトレーニングに理解のある人は皆無、トレーニングが理由で職場の飲み会なども断ってばかりで、深く付き合いのある同僚もいない。もし優勝できたとしても誰も祝福してくれない状況。夢を実現することが人生の最大の目標だったとしても、現実的には人間関係や、出世にも関係してくるかもしれない。

このような状況はあなたのやる気を徐々に奪っていく要因になりかねない。しかしBさんの場合でも、家族の理解を得られるように、トレーニング時間を合理的に短縮し、家族サービスにも努めることや、同僚の誘いにも、自分のできる限りの範囲でお付き合いをすることで、周囲の見方や関係性も大きく改善できるだろう。

もしもあなたが、そしてあなたの目標達成が周囲から好意的に認められるものであれば、より強固なパワーを持つこととなるだろう。
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Q4.筋量増加という目的は何キロ増加で達成したことになるのか?

Q4とQ5はとても具体的な目標設定の作業になる。でかくなる、とかトップビルダー並にという曖昧な目標ではなく、実際に何キロ増量という数値目標を設定することが必要だ。何度も言うようだが曖昧なイメージでは、脳は本気になって目標達成のためには稼働してくれない。

Cさんは筋量アップが目的で入会した現役ビルダーで、既にボディビル歴も10年以上、ここ数年はコンテストに出場するも、同じ階級で同じような結果が続いている。僕がCさんに最初にした質問は、「来年のコンテストで(コンテスト終了直後に来た)何キロで出場したいですか?」という質問だった。Cさんは少し考えた後、「できればもう一階級上で出たいんですけど…」という答えだった。僕はCさんに、曖昧な目標ではなく、何キロ増量か目標をはっきり決めましょうと提案した。目標数値がはっきりすることで、やるべきことが明確化されるからだ。

2kgの筋肉量の増加を話し合いの結果目標値とし、まず今まで増量できなかった原因だと考えられる栄養面の改善(管理栄養士による食事指導や改善アドバイスを行った。Cさんの場合基本的に摂取エネルギーが少なすぎた)。トレーニングの全体的な見直し、使用重量の目標値、トレーニング頻度、休養やその他を見直す具体的な行動をスタートさせた。

このようにただ漠然とバルクアップするのが目標というのではなく、2kgの筋肉を増量するという目標を設定することで、やるべきことはどんどん決まっていき、実行することで確かな結果を生み出していくのである。

Q5.筋量増加という目的をあなたはいつまでに達成したいのか?

目標設定をしていくうえで、期限設定もとても重要だ。いつかこうなりたいとか、頑張ってればいつかは…だろうのような曖昧な目標では、いつまでたっても目標到達のための具体的なアクションを起こすことは困難だろう。上記の目標数値設定と連動させて、期限設定を行えば、やるべきことが、いつまでに何をという感じで、より具体的になってくる。

ビルダーCさんに再び登場してもらおう。Cさんの場合翌年6月のコンテストに向けて、原料期間を考えると最大9ヶ月間が増量期に充てることができたので、2kgの筋量増加は現実的な数字だと思われた。更に各月の数値目標なども設定し、ひとつずつ小さな成功体験を積み重ねることで、目標達成が可能であるというイメージも定着させることに成功した(毎月目標設定の達成度合いの検討を行い、その都度目標設定を上方修正、下方修正を行ってきた)。

期間設定をする場合、何月何日までにという期限設定は必須であり、同時に期限が長い場合には、細かな目標(1ヶ月単位など)を立てることが望ましいだろう。

筋量増加という目的をあなたから阻むものは何か?

もしも、あなたの目的を阻むものがあるとするなら、ここではっきりさせたほうが良い。それは現実的に考えて仕方のないことかもしれないし、あなたの思い込みかもしれないからだ(僕の知っている限り、思い込みのほうがかなり多いと思うのだが)。

筋量増加を阻む要因を書き出して、それについての反証を書き、その結果どのように思考が適応したか見ていこう。

例1:トレーニング時間が確保できないと悩むビルダーDさん
○要因とそれに伴う感情
トレーニングする時間がなく、こんな状態ならトレーニングを行っても無駄なのではないかと思う。とても憂鬱。

○反証
確かに自由な時間は少ないが、30分なら時間を作ることができる。短時間で、どのように効果的にトレーニングを行うか考えていたら、いろいろアイデアが浮かび楽しみになってきた。そして、スケジュールを上手くやりくりしたり、交通機関を見直すことで、さらに時間は作ることができそうだ。


例2:筋肉が付き難い体質だと悩むビルダーEさん

○要因とそれに伴う感情
筋肉が付き難い体質だ、こんな僕が頑張ったとしても良い結果は望めない気がする。
そう思うとやる気なんて起こらない。

○反証
誰と比べてそう言えるのか?
100%の努力の結果なのか?
同じような環境や条件で検証された結果なのか?

○適当的思考
トップビルダーやジムで急成長の選手を見てそう思っていたことに気づく。彼らと比べて自分の方が努力しているかといえば、そうだとはいえないし、少なくとも同じレベルの努力をした上で彼らと比較するべきだ。環境やトレーニングの条件も様々だし、自分のできる範囲の中で頑張るだけだ。それに自分よりも発達の遅いビルダーもたくさんいるようだし、自分は筋肉が付き難い方でもないようだ。やる気もなんだか出てきた感じ。


それでは6の質問まで答えた後で、もう一度、目標達成のイメージは何パーセントになったか確認してほしい。ほんの数分の簡単なエクササイズで大きく変わったんじゃないだろうか?何度も言うが、目標と結果によって人は行動を起こすのだ。目標達成イメージが大幅に改善された後では、あなたのやる気はかなり上がっているはずだ。

筋肉を発達させるためには、自己のイメージが重要だということが少しわかって頂けただろうか?最後に伝えたい、もうひとつの重要な部分をマイクの言葉を借りて紹介しよう。

「私がコンテストにチャレンジする中で最も楽しんでいることは、優勝に関わるスリルよりも、準備に費やした月日や、肉体のみならず知的、感情、精神といった全ての面において自分自身の能力に磨きをかけるプロセスだった。実際のコンテストはひとつの通過点に過ぎず、人生の目立ったピークに過ぎないこと。そしてそれは、ピークからピークへの旅であり、ゴール達成への内なるプロセスなのだ。そのプロセスは、あなたが楽しみを見出せるものでなくてはならない。そしてそれは人生を、もっと生きる価値のあるものへと変えてくれるものなのだ」

目標を設定した以上、結果を望むのは当然のことだ。しかしマイクのメッセージから、何かを成し遂げる上で最も大切な部分を僕たちは忘れていることに気づかされる。確かに結果も大切だけれど目標に向かうプロセスこそが重要であり、そして何よりもそれは楽しくなくてはならないのである。

  • 肉体と精神究極のトレーニングバイブル ヘビーデューティーマインド
    2013年8月30日初版発行
    著者:小川淳
    監修:日本ハイインテンシティトレーニング協会(JHITA)
    発行人:橋本雄一
    発行所:(株)体育とスポーツ出版社
    編集:株式会社M.B.B.