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第一回 大阪オープン フィジーク選手権 優勝者対談 有馬康泰×齋藤真人 (1/2)

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掲載日:2015.06.05

有馬 康泰(173㎝以下級・オーバーオール優勝) 齋藤 真人(173㎝超級優勝)

 
  • 有馬 康泰(ありま みちひろ)
    身長:173cm
    体重:オン66kg,、オフ70.5kg
    職業:Body Work Space EVOLVE.代表

  • 齋藤 真人(さいとう・まさと)
    身長:181cm
    体重:オン81kg、オフ88kg
    職業:Body Design Space Stayle S(スタイルエス)代表

  • 聞き手: PHYSIQUE MAGAZINE編集人・中島康晴

世界基準の審査を


— お二人は5月の大阪オープンフィジーク大会のオーバーオールで鎬を削り合うなど、これから日本のフィジーク界を牽引していかれる選手です。今大会のこと、普段心がけていること、今後についてなどを語り合ってもらいたいと思います。はじめに今大会出場するまでの経緯について。まず有馬さん。

有馬 まだこの大会が決まっていない時、アイアンマンの取材を受け、「体を評価していただけるフィジークコンテストのようなものが開催されるのであれば出たい」と答えました。その後開催が決まりましたが、ジムのオープンなんやらで環境の変化が著しく迷った。しかし最終的には迷っているなら出ようと決断しました。

— それからのトレーニングは。
有馬 2月中は週一回、逆にそれで疲労がうまく抜けたようで、3月からは本格に再開したら調子よかったですね。

— 不安はあったでしょうが、集中力でカバーしたということでしょうか。
有馬 そうですね。食事のほうはある程度調整できる自信はありました。

— 齋藤さんのエントリー申込は直前だったとお聞きしていますが、やはり迷っていたのですか。
齋藤 いえ、実は当初出場する予定はなく、清水康志さん(173cm超級・4位)と友人を含めた3人で観戦に行くことにしていました。

— では、どうして。
齋藤 エントリー締切の2日前、清水さんと別件で会った際、東京から173cm超級に2人エントリーしたからと。誰ですか、私と斎藤さんって聞いてびっくり。そして申込書を渡され「体の仕上がりがうまくいけば出る、納得いかなければ出ないという2つの選択肢を持っていてもいいんじゃない」と提案された。まあ、それもいいかなと思いました。ところがその裏で清水さんはエントリーチケットを手にしたとたん、私に一言の断りもなく観戦チケットを転売していたんです。(一同笑)つまり私にはひとつの道しかなかった。どうやら一緒に観戦に行く予定だった友人が都合で行けなくなって、清水さんの気持ちが変わったようです。



— 締切はいつでしたか。
齋藤 4月25日だったと思います。エントリーの申込書を郵送したのは23日の夜中で、現金書留なら受け取ってくれるだろうという考えでした。

— 急遽出場することになった時点で斎藤さんの体の状態はどんな感じでしたか。
齋藤 今ぐらいの感じで体重は88キロ前後だったと思います。

— そうすると3週間ぐらいで調整。1年中それなりに体を維持していますからね。
齋藤 みなさんもそうだったかも知れませんが、まだ大会の性格がよくわからなかったので、絞るのか、バルクでいくのか悩みました。

— 当日の仕上がりは自己評価すると何点ですか。
齋藤 80点から85点。

— 高いですね。
齋藤 絞るべきか、バルクを残すべきかと迷った分だけ減点。普段は77キロから78キロがベストですが、今回は調整期間が短かったこともあり81キロから82キロの間で出ようと。

— 絞れていないという印象はなく、それだけ筋量がアップしたのでしょうか。
齋藤 たぶんそれはありません。
有馬 絞れていましたよ。
齋藤 昨年の極端な減量を今年取り返そうと思い、まず足から、見えないところから作り直そうとしましたが、まだ戻っていません。

— いったいどこまで戻るんですか。最終的に有馬さんと斎藤さんがオーバーオールで戦ったのは、いろんな意味で今後のフィジークの指針ということを考えると非常に意義があり、おもしろかったと思います。
有馬 前日新幹線の中で斎藤さんは絞れていないような話をされていたのに、大阪に着きサンキンさん(サンキン・サチ選手)の家で生で身体を見て大ダメージ。あのときは心底脱ぎたくなかった。

コンテスト前日、関東から乗り込んだ3選手はたまたま宿泊ホテル近くに住む、サンキン・サチ選手のご自宅でプレコンテストを実施していたのであった。


— でも大会では有馬さんが勝ちましたが。
有馬 クラス別で優勝できたことがとても嬉しくて、オーバーオールの時はスイッチが切れていてよく覚えていません。本当に斎藤さんは筋量は申し分ないし、ラインはしっかり出ているし、バランスもよく弱点はないと思うので、今でも勝った気持ちはありません。ただひとつ思うのは、ルール上に「過度な筋量は適さない」と書いてあることが影響したのではないでしょうか。

齋藤 経験不足もあり、あのときは正直オーバーオールの価値がよくわからず有馬さんと一緒のステージに立てたこと、応援者の前で優勝者の一人として立てたことが嬉しかった。今はその価値が分かりました。なので、あそこに飾ってあるカップは持ち帰らせていただきます(笑)。

有馬 それはちょっと、ちょっと(笑)。すごく気に入っているので。

齋藤 有馬さんは6パックの代名詞みたいな人ですし、とにかく体がきれいでカッコイイ。評価するのは審査員ですし、有馬さんの優れている点、私の良かった点もそれぞれあったと思う。結果には納得しているので、それが今後エントリーされる方々の指標というか判断材料の一つになればいいことだと思います。

— 第1回ということもあり、どういう方向性を示すかまでいっていないのが現状ではないかと。審査員も迷うところがあり、これから段々に見えてくると思います。
有馬 世界につながる、世界基準での審査が大事であり、我々選手もそれを意識していかなければならないと思います。もし8月の全日本で代表選手が選抜されるのではあれば、世界で戦える人を選んでもらいたいです。
 

本気の戦いがドラマを生む


— 先にオーバーオールの話が出ましたが、クラス別のときの話を伺いたいと思います。有馬さんは先ほどとても嬉しかったとおっしゃいましたが、激戦でしたからね。
有馬 比較審査の最後のほうで堂野さんだけ残ったので、堂野さんが1位で、2位以下で比較されていると思いながらポーズをとっていました。だから審査が終了した後、斎藤さんに「優勝は無理だと思います」と言いました。



齋藤 確かにあのシーンだけを切り取ったら、そう思うのは当然かと。今回はバルクか、絞りのどちらできたのかよくわからなかったけれど、絞りのような・・・。有馬さんは絞りできていると思ったし、バルクもありキレもあったので、僭越ながら励ますような言葉をかけたと思います。まさか私が有馬さんの背中を叩く役をするとは思いませんでした

— 舞台裏でそんなやりとりがあったのですか。斎藤選手はご自分のことより有馬さんのことを考えていたのですね。
齋藤 普段は他の競技者のことは気にならないのですが、今回はどんな感じで審査されるのか舞台の袖で見ていたこともあり、客観的に見られました。
有馬 私もボディビル連盟が行なう大会だからバルクも見られると考え、ラインをしっかり出したうえにバルクも付けなければと考えていましたが、斎藤さんが出場することが分かり、余計にそう思いました。前日の体調はまあまあよかったのですが、当日は神経質になりすぎて、体調がよくなく足が攣ったりして。体重も65キロと目標値よりも3キロも少なく、ステージに上がった時はミイラ化している状態でした(笑)。

— 原因は塩ですか。
有馬 そうですね、塩が不足していたようでこれまで攣ったことのない広背筋まで。舞台裏で伸ばしたりしていたら、他の選手に「攣っているんですか」と訊かれ、大丈夫と答えたものの本音はとても痛かった。攣るという感覚は、今までよく理解できなかったけれど、今回実感しました。

齋藤 傍から見て鬼気迫るものを感じましたが、あまりにもアップの時間が長くないかと。

有馬 動いていないと不安が解消できず、第三者から見ればそう思いますよね。
齋藤 とても暑くて水を多く飲まなければならなかったですから。

— そうした自分自身との戦いもあれば、無言の戦いもある。今回は堂野選手(173c級・2位)と隣同士でしたね。
有馬 フェイスブック上で堂野さんはどのクラスですかと訊ねたら、たぶん有馬さんとは違うと思います。ところが蓋を開けたら同じで、しかも本番は隣で。

— あのクラスは身長の申請を小刻みに刻んでいた。
有馬 隣になりたくて刻んだのでは(笑)。
齋藤 見応えがありました。

— いろいろなものが複雑に絡み合って面白かった、内面的にも外面的にも。
齋藤 結果が出て控室に戻って来た時、大阪の選手だと思いますが、「黒船最強だ」という声が聞こえました。東京勢にタイトルを持って行かれた悔しさがにじみ出ていた言葉だと感じました。

— 本気の戦いができたからそういう感情も生まれるし、熱いドラマもある。JBBFではきちんと比較審査もありますから。 

有馬 本当にちゃんと審査されている感じがあり、その感覚は初めてでした。
 
  • 有馬 康泰(ありま みちひろ)
    身長:173cm
    体重:オン66kg,、オフ70.5kg
    職業:Body Work Space EVOLVE..代表
    趣味:海水浴、ガーデニング、アクティブレスト
    1974年8月16日生まれ
    埼玉県出身

  • 齋藤 真人(さいとう・まさと)
    身長:181cm
    体重:オン81kg、オフ88kg
    職業:Body Design Space Stayle S(スタイルエス)代表
    趣味:ネコと遊ぶこと
    1972年1月3日生まれ
    茨城県出身

聞き手 :
PHYSIQUE MAGAZINE編集人・中島康晴
取材協力 :
Body Work Space EVOLVE.
フィットネス&ボディメイク情報誌
[ PHYSIQUE MAGAZINE 002 ]

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