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森谷敏夫 #3「肥満・糖尿病・認知症って筋肉と関係があるの?」NSCA国際カンファレンス

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掲載日:2017.04.18
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森谷先生の講座シリーズ最終回をお届けします。#1#2と通して老若男女を問わず、いかに筋肉がロコモを予防する大切な臓器であるのかということを学びました。

最終回では、肥満、糖尿病、認知症を筋肉が予防改善することができるのか?ということをテーマにレポートしていきたいと思います!

筋肉は肥満やメタボを予防してくれる臓器?

オフィスワークが多い人はどうしても座っている時間が長く運動不足になりがちです。またバリアフリーになったり登ったり降りたりという動きが少なくなったばかりでなく、便利さを追求し人々は動くことが少なくなりました。そのような生活を送る中で、肥満やメタボが気になっているという人も多いと思いのではないでしょうか。

では筋肉が肥満やメタボを予防してくれるものなのでしょうか。
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「近年、世界中でも肥満が蔓延してきて疫病ではないかとさえ言われています。アメリカやイギリスでの肥満が問題になっていますが、ここ日本でも、厚生労働省が日本人の内臓脂肪を是正すべくメタボ検診保健指導を行っています。高齢になるにつれてお腹が出てくるということは、認知症のリスクもガンのリスクも高くなるということが分かってきています。

なぜ肥満がいけないのかと言うと、内臓脂肪が溜まることにより、高血圧を引き起こす生理活性物質が出てくるということが医学的な情報から分かっています。

また、内臓脂肪から、血糖コントロールを悪くして糖尿病に追いやる物質が出てきたり、動脈硬化を引き起こしたり、血栓形成をするような生理活性物質が出てきます。血栓ができ脳の血管が詰まると脳梗塞になります。また、心臓の血管が詰まると心筋梗塞になります。
このような生理活性物質は内臓脂肪から分泌されることが分かっています。


なぜ人は太るのか、、、


Bray教授が国際肥満学会で唱えている学説が一般的に受け入れられています。彼によると、『運動不足が背景にあり、運動不足により交感神経をほとんど使わないので、交感神経の活動が低下してしまい、エネルギーが消費できなくなって太っていく』ということです。

肥満が遺伝子で起こることは余りありません。日本肥満学会では、肥満は生活習慣病で、環境要因や遺伝要因よりも後天的な因子の方が圧倒的に大きいと言っています。そのうちの一つが運動不足です。

人は自分の体脂肪を自律神経で調整しています。更年期で自律神経が弱くなる女性が太くなりやすい理由は、この調整メカニズムに破綻が生じるからです。太ってくると血液中のレプチンが脳に「痩せろ」と信号を送ります。これが満腹中枢を刺激するので、本来なら、太っている人ほど少し食べただけで満腹感がくるように人の体はできています。

また、満腹中枢が刺激されるので、摂食中枢が抑制され太ってきたら自動的に満腹感ができ、翌日以降の食事が減るように調整されていたのです。20歳の自律神経があって、しっかり運動している若者は自動的にこれらを調整することができています。

しかし、若者に限らず、高齢者でもしっかりと運動していれば交感神経をしっかり維持することができ、体脂肪が増えることなく、変わらない体型を維持することができるのです。運動で交感神経のレベルをしっかり上げておけば、肥満の予防に効果的なのです。

運動をするということは、食事を変えなくてもエネルギーを調節することができたり、体温調節も楽に行うことができたりと素晴らしい効果があるとネイチャーで発表されました。

最近では、ほとんど運動をしないという人が増えています。いわゆる『座り過ぎ』な人たちです。最近では、座り過ぎが死亡リスクを高めていると言われています。
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カナダで1万7千人の座っている時間と実際に亡くなった状況を比べてみるという調査が行われました。その中で、1,800人の方が亡くなられたのですが、その調査の中で分かったことは、座っている時間が長いと死亡リスクが高まるということです。

ほとんど立って過ごしている人の死亡リスクを1とすると、1日の半分を座って過す人の死亡リスクは1.4倍、1日中ほとんど座って過している人は、なんと1.5倍も死亡率が高いのです。日本人は座り過ぎている傾向があります。

運動不足で太ってしまうと筋肉の脂肪を燃やす能力がなくなってきます。
100kgの体重がある人が50kgの減量に成功しました。その方を被験者にして、筋肉にどのくらい脂肪を燃やす能力があるのかを調べました。その人の筋肉のサンプルを取り、試験管の中に入れてパルチミン酸という脂肪酸を筋肉にふりかけました。

その結果、減量しても、筋肉が脂肪を消費する能力は変わりませんでした。

また、肥満である時期が長く続いた人は、脂肪を燃やす能力が、そうでない人に比べると半分しかないということも分かりました。一度太った人にとって、なかなか脂肪を落とすのは大変なことなのです。

太っている人と、平均的な体型をしている人に10日間毎日60%強度の有酸素運動をやってもらいました。10日後に50kg減量された方も、平均的な体型の方も一律に脂肪を燃焼する能力が上がることが分かりました。

運動をすることによって筋肉の脂肪を燃焼する能力が高くなるということが分かりました。

筋肉がなくなっていくと代謝も悪くなって太りやすくなっていく。まさに筋肉は肥満やメタボを予防する臓器であると言えます。

筋肉は糖尿病を予防や改善する臓器?

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糖尿病が遺伝で起こるという医者がいますが、それは全くの嘘です。日本において糖尿病の診断基準ができたのは昭和30年頃。

昭和30年頃までには日本において糖尿病の人はほぼ居ませんでした。

それがなんと!平成15年で31倍に。平成19年で約40倍近く増え、ここ1〜2年あたりで日本は糖尿病保有国として世界第6位になり、一千万人を越えているのです。昭和30年頃と比べたら45倍近くなっています。

もし遺伝とするなら、45倍の数字になるためには、糖尿病のお母さんが45人の子どもを産まなければこの数字になりません。更には、ご主人が糖尿病でなければ、母親が一人で90人の子どもを産まなければ、この45倍という数字にはならないわけです。

宮沢賢治は1日4合の玄米を食べていたそうです。この頃の日本人には糖尿病はいませんでした。始め、神様は人が動くために筋肉をお与えになったのに、人は動かなくなってきました。筋肉は糖の70%を消費するような臓器なのです。また脳のエネルギーは100%糖質で、1日の2割のエネルギーを消費します。つまり脳と筋肉で私たちが摂る炭水化物の90%は消費されるように神様はお創りになったということです。

筋肉を使わなければ、糖質が当然のごとく余ってきます。余って来ると膵臓を酷使してインスリンを出して代謝をしようとします。運動不足が長くなればなるほどに、糖代謝が悪くなり膵臓が酷使されて糖尿病になります。ということは、糖尿病は筋肉の代謝疾患であると言えます。

血液やブドウ糖は細胞の中に入ることができません。私たちの筋肉の中に、ブドウ糖を運ぶ特別な運搬車であるタンパク質を持っています。それは、血糖値が上がりインスリンを出してインスリンの刺激によって動く経路、また筋肉で運動すると確実にエネルギーがなくなるので、インスリンとは別の経路でブドウ糖を運ぶ信号を送るものがあります。

このふたつのメカニズムはそれぞれ独立しています。インスリンで血糖は下がるのですが、全くインスリンなしで、糖尿病の1型でも2型でも、心臓病の患者さんでも、ガンの患者さんでも筋肉を使って運動し、エネルギーが少なくなってくると自動的に、私たちの体は筋肉にブドウ糖が入るような経路を自分たちの体の中に持っています。逆に、運動をしない人は、全ての糖代謝をインスリン依存でやらなければならないので、膵臓が酷使され、運動不足の人に糖尿病が起こるのです。

ということで、筋肉は糖尿病を予防改善する臓器だと言えるのです。

筋トレをしていたら頭が良くなる?認知症にならないってホント?

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もし、筋トレをして将来認知症にならないとすれば、今やっている筋トレにも力が入りそうです。最終章は、筋肉と認知症の関係について迫っていきたいと思います!

「朝に運動をすると成績が上がる、運動をすると頭が良くなると言われています。脳と筋肉の関係をみていきましょう。

インスリン様成長因子IGF-1というものがありますが、認知症を改善する物質だと言われています。高齢者の認知機能が低下するとIGF-1は低下します。筋トレをすると、IGF-1が増えれば増えるほど、アルツハイマーを引き起こす要素が減っていくので、生理学の中でも筋トレが見直されています。

また、トレーニング強度を50%で行っても、80%で行っても同じように認知症の予防になることが分かりました。

70歳くらいの高齢者の方々に有酸素運動をしてもらうと、脳の機能が改善されるのかというと、答えはYESです。脳の中の海馬は1年に1%か2%は萎縮します。

そこで、70歳の120名の方々に運動をしていただき、脳の萎縮を予防できるのかを実験しました。60名の方々はストレッチのみ。残りの60名は週5日の40分〜50分の速歩、つまりウォーキングをしてもらいました。

そうするとウォーキングをしていた人達の海馬が有酸素運動によって大きくなりました。

運動トレーニングによって、2%減っていくはずの海馬が2%増えたのです。それに対してストレッチだけのグループは2%減っていきました。新しく物を覚えたり、学習したりする海馬は運動で肥大することが分かりました。

運動は何のためにするのでしょうか。まさに認知症の予防と改善です。

神経細胞が死んでいってしまうような場合でも、一生懸命に筋トレとウォーキングをすれば新しく細胞が増えていく可能性があるのです。最近ではアルツハイマー病の患者さんにも様々なプログラムでしっかりと筋トレをしてもらっています。結果は有意差が出ています。

つまり、高齢者に限らず、すでにアルツハイマー病にかかっている方でも運動をすることによって、知的機能の低下がかなり抑制でき、退化を少しずつでも抑えることができると言われています。その中でも、最低12週間程度のトレーニングは必要だと言われています。また、この時に有酸素運動だけではなく、必ず負荷のかかる筋力トレーニングを取れ入れることにより総合的に効果があると言われています。
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筋力トレーニング、有酸素運動をするということには、持久力アップや、筋力アップなど様々な目的がありますが、脳の機能改善、認知機能低下の予防のためにも必要であることだと私は考えます。

まさしく、筋肉は脳萎縮、またそれを予防改善する臓器であると言えるのです。

私たちの使命は、アスリートのための素晴らしいトレーニング方法を進化させていくという役割もありますが、一般の方々や、また運動があまりできない運動弱者の方々の運動や筋トレをサポートしていくことも大切です。

全世界的な問題でもある高齢化社会に向けて、世界の人々に運動の素晴らしさを伝えていくことができればと思います。」

最後に

いかがでしたか、3回のシリーズで書かせていただいた森谷先生の講座でした。

その講座を通して、運動をする意義を改めて知ることができました。フィジークオンラインの読者の皆様はきっとなんらかのトレーニングをされている方も多いことと思います。美しいボディづくりのために、ダイエットのためになどを目的としてやっていた筋トレかもしれませんが、それが気づかぬうちに自身の健康な体や、認知症にならない脳を作っていることに気づかれたのではないでしょうか。

若い人たちにとっては、今は関係がないと思っている高齢期は、いずれやってくるものです。その時に備えて、今から運動する習慣を身につけておくことは大切なことです。

また、トレーナーの仕事をされている皆さんにとっては、とても意義のある講座だと思います。ぜひ参考にしてNSCAで学んでみてはいかがでしょうか。これからの時代、ますます高齢期を迎える方々が増えてきます。その方々の健康を支えていくのは、トレーナーさん達の大きな役割だと思います。ぜひ、そのような意義を持って取り組んでいただけたら嬉しいなと思いました。


文:カナ



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■森谷 敏夫(モリタニ トシオ)
NSCAジャパン理事長
京都大学 名誉教授
中京大学 客員教授



■特定非営利活動法人NSCAジャパン(全米ストレングス&コンディショニング協会・日本支部)
HP:www.nsca-japan.or.jp
Blog:オフィシャルブログ

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