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工夫で取り組むハードコア・ボディビル #3 脚への応用

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掲載日:2023.06.23
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前回の#2でお伝えしたように、あらゆる種目を秒速5センチメートルほどの非常にゆっくりした動作で行うことで個人的には大きな成果が得られた。
もちろん脚も例外ではない。
ボディビル競技に取り組む上で欠かせない足のカットを出すには筋量があること、絞れている事、マッスルコントロールができている事が不可欠だ。
それらのどの条件も満たしていない私の足にカットが出るわけもなく、トレーニングと並行してポージング練習を行うことで積極的にカットの表出を狙った。

その過程で二つのやり方がある程度の成果に繋がったので以下に共有する。
しつこいようだがあくまで個人的に、である。
約8か月の変化。筋量とマッスルコントロールが向上した

約8か月の変化。筋量とマッスルコントロールが向上した

①ナローでスローなスクワット

せめてフロントポーズだけでも様にしたかったため取り急ぎ最も目立つ大腿前面の筋量とカットを確保すべく先述の極端にスローなスクワットを数か月ほど行ったところ、ポージング練習の効果も相まってか、わずかな隆起程度のカット(仮)が出せるようにはなった。

極端にゆっくりと動作を行うことで独特の刺激が入り、筋肥大に伴いマッスルコントロールも徐々に向上している手応えはあったが、肝心のカットはぼんやりとした線が入る程度で縫工筋に至ってはその片鱗すら出てこなかった。本当に縫工筋は実在するのだろうか。足のカット出すの難しすぎんか?
そこでグーグル先生を頼ったところ、国内外の大会で多くの実績を残す廣田俊彦氏の興味深い動画を見つけた。

②カットを出した状態でのスクワット

トップでもボトムでもカットを出したままスクワットをする

トップでもボトムでもカットを出したままスクワットをする

遡ること20年前、2003年の日本クラス別選手権大会で田代誠選手と優勝を争っていた頃に撮影されたドキュメンタリー番組内で、若い頃に腰を痛めて以降高重量を扱うことが出来なくなったが代わりの武器としてカットを出すために考案したという手法を紹介していた。

その手法が、スクワット時にトップでもボトムでも全動作範囲を通じてずっと腿前のカットを出しながら収縮を抜かずに行う方法だった。目から鱗だった。うまくすればカットを出す練習と筋肥大が同時に行えるかもしれない。

早速自分のトレーニングに取り入れたところ、最初は多少の練習が必要だったがある程度感覚を掴んでからは今までにない刺激が入り非常に有用だった。トレーニングをしながら同時にポージング練習をしている不思議な感覚ではあったが、重量に過度に依存せず対象筋に強烈な刺激を入れる点では方向性を同じくして自身に合っていると感じた。

さらにレッグプレスやシシースクワットでも同じようにできることが分かったため、シンプルに垂直に地面を押す方法とカットを出しながら行う方法でバリエーションを分けてみている。
シッシ―スクワットでも同様にできた。スタート時に腿前のカットを出しておく

シッシ―スクワットでも同様にできた。スタート時に腿前のカットを出しておく

収縮が抜けないようにしゃがみ、反動をつけず戻る

収縮が抜けないようにしゃがみ、反動をつけず戻る

四頭だけでなく尻とハムも同じようにできた(効果検証中)

それからしばらくして、腿前にばかり注力して尻とハムを疎かにしている事に気付いた。
せっかくなのでこの手法を参考にしてバックポーズをとるように尻とハム(近位)、内転筋にも収縮をかけた状態でワイドスクワットを行ってみたところ、腿前と同様にこちらもうまく刺激を入れることができた。なおレッグプレスでも同じようにできた。バックポーズの練習にもなって一石二鳥である。
理論上はデッドリフトでもいい気がするが感覚的にこちらにほうが気に入っている。効果のほどは検証中だ。

誰しも、トレーニングをしてはいれども弱点になっている部位や伸びない部位はあるだろう。
しかしそのままただ同じことをやり続けるだけで明確に弱点が克服できるはずもなく、自分に合った別のアプローチを試してみることも必要に感じる。

次回に続く。
せきぐち:フィジークオンライン編集、男衾ボディビルジムマネージャー。柔道整復師、NSCA-CPT、JATI-ATI、JBBF公認二級指導員。