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相川浩一考案、着るような感覚で扱う第三のフリーウェイト「スーツダンベル」 前編

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掲載日:2023.08.19
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独自の形状をした今までにないウェイトトレーニング器具「スーツダンベル」。
JBBF日本体重別選手権四連覇等の実績を持つボディビルダーでありストレングスコーチとしてトップアスリートへの指導経験も豊富な相川浩一氏が考案し、主に輸入トレーニング器具を取り扱う極楽トレーニング倶楽部との共同開発によって作られた。

コンテストビルダーやストレングスコーチとして第一線に身を置く30年以上のキャリアの中で、唯一無二のデザインと機能性を併せ持つスーツダンベルはどのように開発されたのか。相川浩一氏に話を伺った。
先にスーツダンベルを紹介しておこう。同じ重量のスーツダンベルの上面と底面。

先にスーツダンベルを紹介しておこう。同じ重量のスーツダンベルの上面と底面。

筒状になっており前腕部に袖のように通して使用する。ウェイトを握る負担を大幅に減らすことで従来のダンベルでは負荷をかける事が難しかった筋肉にダイレクトに刺激を与えることができる。

筒状になっており前腕部に袖のように通して使用する。ウェイトを握る負担を大幅に減らすことで従来のダンベルでは負荷をかける事が難しかった筋肉にダイレクトに刺激を与えることができる。

前腕との接触部はウレタンが取り付けてあり、動作時の隙間がなく一体感が得られる。取り外して洗うことも可能。

前腕との接触部はウレタンが取り付けてあり、動作時の隙間がなく一体感が得られる。取り外して洗うことも可能。

どういう経緯で考案に至ったのか

コロナ禍でジムに行けなくなり、家でトレーニングをしようにもダンベルが品薄になり手に入りにくくなる状況がありました。それを受けて何かダンベルの代用にならないかと考えたのが始まりです。

最初は具体的な完成形があったわけではなく「こういう形であれば作りやすいかも」と作りやすさから入って、その形に合わせて使ったときのイメージとしてレイズ系やフライ系が今までよりもやりやすくなるのではと思うようになりました。最初から機能を見据えていたわけではなく、まず形から入ってできることは後付けで見えてきた感じです。

およその方向性が決まってからは、スーツダンベルの由来でもある「着るような感覚で扱えること」をコンセプトに医師や他の運動指導者など知人の意見も聞きながら調節を進めました。

3次元的な動きと苦手部位へのアプローチ

肩周りのアップとして大きく回してクルクルする

肩周りのアップとして大きく回してクルクルする

肩は回旋したり大きく回すような動きがあるのにウェイトトレーニングにはあまりそれらの動きがなく、肩の実際の機能としての動きとトレーニングの動きには二次元と三次元のギャップがあるように感じています。

動きに関して少し細かくお話しすると、単純な二次元的な動きであれば体幹部や動きに関与する筋を固めれば固めるほど筋出力は上がります。しかし効きづらい部位に対するトレーニングでは固めすぎないほうが良いのです。

そこでスーツダンベルを使って、スティッキングポイントでクルクルと前腕を回旋させるようにすると協動筋が少し緩み、過剰な力みを取ることで本来狙いたい主働筋へ刺激が入りやすくなります。
アームカールからライイングエクステンション

アームカールからライイングエクステンション

得意部位はストレッチがかかっても刺激や感覚が弱まらないのですが、苦手部位はストレッチポジションで刺激や感覚が鈍りやすくなります。得意部位の感覚を苦手部位に付与するためにぜひ活用してほしいと思います。この感覚が伝われば嬉しいです。

高い力を出す上で神経系の促通が最初に起こるのですが、まずは自然に刺激が入る状態を作らないといけません。神経系の促通はスーツダンベル、筋線維の破壊はダンベルやバーベルが向いていると思います。

スーツダンベルを使っていて個人的に思うのは、1レップの中でも握る場面と緩める場面があること。ウェイトと一体化して筋肉と対話しながら刺激が入る感覚を探すイメージです。一言でいうと、効く状態を作るにはすごく良い。

他の種目と組み合わせるのも大事

大きく円を描くようなフライ

大きく円を描くようなフライ

種目はお互いに影響し合い、特に前の種目に影響を受けます。
スーツダンベルを回旋したりクルクルしてからやることで力みが取れて主働筋に入りやすい状態が作れるので、二セット目やそれ以降の種目もやりやすくなります。

スーツダンベルが活用できるのは主に上半身です。
私自身のトレーニングだと、時間がない時にはダンベルを離さず一部位を5分間やり続けることもあります。唯一の条件は5分間スーツダンベルを離さずに全力でやること。
ずっとアームカールだけだと疲れてしまうので、ライイングエクステンションやサイドレイズなども挟みながら行いますがそれだけでも十分な刺激になります。
通常のダンベルでは前腕や握力が疲労してしまいますが、これは最低限の握力で対象筋に刺激を入れることができるスーツダンベルならではのやり方だと思います。
3㎏、8㎏、12㎏、18㎏の四種類

3㎏、8㎏、12㎏、18㎏の四種類

スーツダンベルは3㎏、8㎏、12㎏、18㎏の四種類があります。軽い重量は腕や肩まわりに、重い重量はダンベルプレスやプルオーバーに向いています。支点の関係で軽く感じるかと思いきや、いざ使ってみると実際の重量よりも重く感じます。
バーベルとダンベルに次ぐ第三のフリーウェイトとして、ぜひ今までにない角度からアプローチしてみてください。

後編:実技編はこちら


取材・文:せきぐち
取材協力:男衾(おぶすま)ボディビルジム
相川浩一 プロフィール
競技ボディビルダー。JBBF日本体重別選手権四連覇他、優勝入賞多数。GNPCグアムインターナショナルインビテーショナル選手権優勝(80kg級&オーバーオール)、NPCゴールドコーストマッスルクラシック(ミドル級)優勝。

(フィジカルコーチ)男子ハンドボール日本代表 東京オリンピック2020、(ストレングスコーチ)男子ハンドボール日本代表 トヨタ自動車東日本レガロッソ。

パーソナルトレーナー/コーチ
新日本プロレス 肉体強化トレーニングコーチ歴任
学校部活動コーチ
作家(筋力トレーニング書籍、専門誌連載、著作小説)
講師(大学、消防学校。セミナー)
日本スポーツ歯科医学会正会員 歯科技工士 元消防士。