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トップチームのトレーニング "ラグビー" 日本代表 サンウルブズ アシスタントS&Cコーチ 太田千尋 後編

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掲載日:2018.06.18
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激しいコンタクトに耐える屈強な身体と、チャンスを逃さない俊敏性、そしてそれを試合中継続して行う持久力と集中力。ラグビー日本代表チームにおいてそれらをどう捉え、どう高めているのか。

ラグビー日本代表サンウルブズ アシスタントS&Cコーチ、慶應義塾體育會蹴球部S&Cディレクターの太田千尋氏に「ラグビー×フィジカルトレーニング」をテーマに話を伺った。

練習時間外のアドバイス

やはり休養、特に睡眠をしっかりとるように伝えています。
特に大学の選手は日常の生活を自分でコントロールできないことが多いこともあり、最低でも8時間以上寝ることを意識してほしいと思います。

睡眠時間に関する研究で、8時間以上寝ることにより、8時間以下に比べて怪我の発生率が抑えられるという報告もあります。高い負荷がかかれば、その回復のためには睡眠が必要で、それが不足するということは回復しきれないということ。この状態では、疲労が回復しないのにまた負荷をかけてしまうことになります。
それと同時に、脳が疲れていることで集中力が低下するために怪我が起こりやすくなるという事も考えられますので、色々な観点から見てもやはり睡眠が非常に重要です。

もちろん、睡眠時間だけでなく寝方やその質に関しても大事で、最初の90分、成長ホルモンが一番多く出るタイミングの質をどう上げるかということが課題です。
寝る前にお酒を飲んでしまったり、大量に食べ物を食べてしまってたりすると睡眠の質が低下します。
自分はお酒があまり強くないのですが、睡眠計をつけて自分で試してみた結果、ビール2杯で睡眠の質がガクンと低下しました。そういうちょっとしたデータを取りながら選手にアドバイスをするようにしています。
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睡眠の質とは

睡眠計では脈拍と体温を計測します。アルコールを飲むと、心拍数が上がります。通常の心拍数が60回/分くらいだとすると、アルコールが入ると70~80/分に上がります。

通常の睡眠においては、60/分から寝入り後に50~40/分くらいにまで下がりますが、アルコールを飲むと通常の心拍数に戻るまでに時間がかかる。その間は、脳は休んでいるのに身体は休めていない状態となっているため、そのまま寝ると成長ホルモンが出る最初の寝入り90分も心拍数が高く、休めないままになってしまいます。
なので、そういった意味でただ寝るのではなく、睡眠の質を上げる事が大事です。

また、寝る時間と起きる時間が大きく変わると時差みたいに体内時計が変化してしまうので、寝る時間と起きる時間はなるべく一定にしたほうがいいと思います。

超回復理論とフィットネス&疲労理論

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最近ではトレーニング理論に関して新たな見解が得られていることもありますが、極端にどれか一つを過信しているわけではなく、うまく両方の理論のバランスを取りながら組み込んでいます。

前者は負荷をかけて回復した後にパフォーマンスが高くなる、後者はある程度の負荷をかけたほうがパフォーマンスが高くなるという考え方。これは両方あると思います。

日常の練習で負荷をかけていたほうが試合のパフォーマンスが良くて、ピーキングしようと思って強度を下げてしまうと試合の週にあまり動けない。
なので、ピークの週は1週間で見ると結構な負荷がかかっていますが、試合の2日前くらいからリカバリーを入れ始めて、前日にスピード系のトレーニングを入れてスイッチを入れた状態にします。

こういった理論は、時期や選手、環境、トレーニングの過程などのデータが取られた背景によっても違ってきます。なので、一つの理論を絶対的なものとして捉えるのではなく、常にモニタリングして変化を観察する必要があると思います。その上で最善な方法を探して行くことが望ましいと思います。理論ありきではなく現場ありき。まず自分たちの現場ではどういう反応が出るかを探していく。

選手につけたGPSで、特に自分達が見ているのは加速回数です。試合中に何回急ダッシュをかけたか。
最大速度はポジションによって大きく変わってきます。例えば、フォワードの選手はなかなか最大速度を出す機会が少ない。
他の競技でも同様ですが、最高速度は30~50m走らないと出せませんので、ピンチやチャンスですぐに動き出すための加速が重要なのです。なので、トレーニングも最初はデカくするメニューから入って、最終的には水平方向のジャンプやスレッド等を用いて加速に繋げられるようにしています。

技術コーチからの指示に関しても、シンプルに、求めている位置に選手が居てほしいという内容が多いです。持久力不足等でなかなか立ち上がらずに本来いるべきポジションに付くのが遅れたり、ポジションには来ているがバテていて他の選手よりも遅くなってしまったりとか。
ラグビーは求められる要素がすごく多いので、ポジションにより多少の差はありますが、いずれも最初の方にも述べた、筋肉で体重を増やして行くこと、速さ、持久力などにおいていずれもハイレベルなものが求められます。

できない理由を探すよりできる理由をさがす

選手にも常々言っていることなのですが、なにかうまくいかないとき、できないことばかり考えてしまいがちですが、そんな時間があるのならばどうすればできるのかを考えた方がいい。できない理由が見えてくることもあるかと思いますが、できる理由が尽きることもありません。

学生の頃、ラグビーや柔道、アイスホッケーなど色々な現場にいさせてもらって、上の人がやっていることを見ているだけではなく、自分の考えを踏まえた上でインプットする。その上で自分の考えとともにアウトプットをしていくことを繰り返していたら非常に力がついたと実感しました。

勉強でも運動でも、基礎が大事だと思います。
情報が多い時代ですので、言われたことや書いてあることをそのまま鵜呑みにしないで、自分自身や仲間とまず試してみること。その上で初めて分かることも多くありますし、誰かに説明するときも自分の言葉で説明できるようになります。

先にも述べましたが、文献はその選手、その状況、そのタイミングで試した結果です。それがそのまま自分の現場に転用できるか、まして良い結果をもたらせるかは分からない。あくまでそれらを参考にして、自分の現場でどうやったら結果が出るかを考えていくことが大事です。

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