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スポーツと視覚 ~動体視力を鍛える~#1 一般社団法人日本スポーツビジョン協会代表 スポーツドクター 真下一策

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掲載日:2018.09.07
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日本最大級のスポーツ・健康産業総合展示会であるSPORTEC 2018内にて開催された、一般社団法人日本スポーツビジョン協会 代表 真下一策氏による「スポーツと視覚 ~動体視力を鍛える~」の講演をレポート!
今日はスポーツに必要な視覚、特に動体視力について少し詳しくお話致します。
私は日本体育協会、今は日本スポーツ協会でありますが、スポーツドクターの第一期生でございます。

スポーツでは周囲から情報を得ます。その情報を元に動作が決められて、動作の結果が競技力ということになります。情報の大半は視覚から得られますので、この視覚というのは選手の情報収集力と言うことができます。

しかし視覚の能力には大きな個人差がありまして、視覚、すなわち情報収集力に個人差があれば、結果として競技力に差が出てもおかしくありません。

ということで本日はスポーツに大切な視覚についてお話しますが、その中で特にスポーツに関係する視野と静止視力それから動体視力、視覚能力を客観的に測定するスポーツビジョン検査についてもお話を致します。

中心視野と周辺視野

まず視野でございますが、視線を動かさないで見える範囲を「視野」と申します。
人の視野は上下で130度、これは諸説ありますが大体こんなものです。左右は両目では180度。スポーツで大切なのはこういった解剖学的な視野ではなくて、今からお話する中心視野と周辺視野、それぞれの役目の使い分けが一番大切になります。
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これは新聞のテレビ欄の見え方の画像です。
このように、視線が向いている4文字か5文字、これしか読めません。人の視野はこのように文字が読めて色の識別ができるのは視線を中心としたたったの5度という非常に狭い範囲でございます。これを中心視野といいます。

それ以外の視野の殆どの領域となる広い範囲を周辺視野と申します。この2つの視野は、網膜にある錐体細胞と杆体細胞という二種類の感覚細胞の分布によります。

まず錐体細胞は明るい条件下で色や形を識別し、先に申し上げたように視線を中心とした5度を範囲とした中心視野を担います。

もう一つの桿体細胞は色や形は識別できませんが、物の動きや光に敏感でございます。桿体細胞の存在範囲は中心視野以外の網膜のほとんどの領域で、この広い範囲を周辺視野と申します。

このように、スポーツでは目標を正確に見極めるための中心視野と、動きを敏感に感じるための周辺視野、この両者の使い分けが非常に重要でございます。例えば「視野が広い」といいますが、これはこの視野の使い分けが上手ということを意味しています。

「視野が広い」とは

視野が広いと言っても解剖学的に目が飛び出ているとかそういったことではございません。意識的な使い方が上手いということでございます。

まず中心視野の例を挙げます。信号の色がわかって文字が読めるのは、中心視野の能力。我々が普段、見えるとか見えないというのはこの中心視野の役目でございますが、意識が中心視野にばかりとらわれてはいけません。

例えば車。いつもと違う道や慣れない道を走ったとします。前を一生懸命に見ようとすると、気持ちが中心視野にとらわれてしまって周辺視野には意識が配れなくなってしまいます。
そうすると、横から接近する車に気が付きません。いつ気が付くかと言うと、その車が中心視野に入った時、すなわち衝突する直前ということになります。

前を一生懸命見ようとしたのに、警察の調べでは「前方不注意」ということになります。
次に周辺視野の使い方でございます。
昔はサッカーのマラドーナの5人抜きが周辺視野の上手な使い方として挙げられましたが、日常生活でも周辺視野をうまく使うとこのような効果がございます。簡単に試せますので、特によく人にぶつかる人はぜひ試して頂きたいです。
遠くの一点を注視して、人混みの中を視線を動かさずに歩きます。但し、意識は視野全体に配りながら歩いていきます。
そうすると前から来る人の顔はわかりませんが、人の動きや流れが非常に良くわかるようになり、ぶつからないでスイスイと歩くことができます。
しかし中心視野を利用して意識的に美人にぶつかってはいけません。

周辺視野の背景の流れ「オプティカル・フロー」

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ここで、「オプティカル・フロー」の説明を致します。
周辺視野の背景全体の流れ、これをオプティカルフローと言います。オプティカル・フローを感じることで、自分の運動を自分で分析することができます。

例えば背景の流れが例①のように感じる時もあります。前を向いて前方へ走っているときのオプティカル・フローです。この矢印はすなわちフローの速さ、自分の速さでございます。

次に例②のように、オプティカル・フローがこう見える時は顔は左を向けて体は前方に進んでいるときか、あるいは頭の上からみて右回転で身体が回っている時でございます。
体操あるいはフィギュアスケートの選手は、回転中はこのオプティカル・フローを感じて自分の運動を分析しております。体操の内村航平選手も実際にそう仰っていました。
このオプティカル・フローによって、自分の速さや回転軸を分析致します。

内村航平選手に話を聞いたときに思ったのですが、彼のすごいところはこの分析結果を元にして運動の微調整ができると断言したところでございます。

また、このオプティカルフローを感じているときには目は回りません。フィギュアスケートの選手が目を回したという話は聞きません。彼らはオプティカル・フローを感じていますので、どこか一箇所を見るというわけではございません。したがって、目は回りません。

以上のように人の視野には中心の狭い中心視野と、その他の動きを感じる周辺視野があって、スポーツでは特にこの両視野の使い分けが重要となります。スポーツ以外では自動車の運転等でも大切でございます。

視力の限界

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次のテーマは静止視力でございます。
我々は静止視力と呼んでおりますが、一般に言われている視力のことでございます。簡単に説明しますと、メガネ等を使わないで遠くまではっきり見えるのが正視でございまして、近視や乱視などの屈折異常がありますと視力は低下致します。

人の視力の限界はいくつかと言いますと、網膜の感覚細胞や目に入った光の性質などから計算しますと視力が2.0~2.5の間というのが医学的な定説でございます。

以前、高い視力を持つことで知られるマサイ族の若者8名の視力検査を行ったことがございます。
彼らの正装は、派手な赤い布をまとい、腰には棍棒や刃物をぶら下げていて、頭にかぶっている黒いものはかつらというか帽子でございました。一番親しい人に編んでもらうんだそうです。

彼らの視力検査を行ったところ、2.0までは全て見えました。検査位置を後ろに下げて測定して計算すると、彼らの視力は2.2ありました。これは計算上の最高視力に相当します。

よくテレビ等で視力4とか5とか言うことがございますが、これは解剖学的、あるいは生理学的に解明しないと納得は得られません。

マサイ族に比べると、動体視力に関しては実は日本人のほうが優れておりました。
日本人は幼い頃から自動車などの早く動くものを見ております。そのために動体視力は日本人のほうがいいわけです。
マサイ族はジャンプをしている場面が有名でございます。マサイ族の運動能力は日本人の一般人と比べると確かにいいのですが、日本人アスリートと比べると日本人のほうが優れておりました。したがって、マサイ族を連れてきてアスリートに育てるのは少々厳しいのではないかと思います。

各スポーツにおいて理想的な視力

スポーツではどれだけの視力が必要かと申しますと、我が国では唯一、愛知工業大学の石垣氏の実験がございます。
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それによりますと、だいたい野球やサッカー、テニスなどの球技では最適矯正視力は両目で見て1.2~1.5とされております。これは覚えておいてください。
我々が実際に視力不足に人にアドバイスをする時にはこれを目安にしております。
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これは裸眼視力が1.0未満の者の視力分類でございます。少し古いデータではございますがその後も大きく変わっていないようです。
子どもの視力が低下してきておりまして、今は小学生の半数近くが視力1.0未満。さらに1/5が0.3以下の強めの近視でございます。

視力が低いとスポーツが上手くできません。それだけではなく、0.3以下ですと裸眼のままではスポーツ中の怪我が多くなるという調査の結果が出ております。