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一般運動指導 ~運動指導のリテラシー~#2 新潟大学名誉教授 NSCAジャパン理事長 篠田邦彦

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掲載日:2018.12.10
記事画像1
2018年10月13日に作新学院大学にて行われた、特定非営利活動法人NSCAジャパン 北関東・東北地域S&Cシンポジウムにおける新潟大学名誉教授 NSCAジャパン理事長 篠田邦彦氏(PhD ACSM/EP-C CSCS,*D)の講演をレポート!
運動制限や腰痛、膝痛が不活動(運動不足)の原因であることが少なくありません。
アライメントとチェックとともに、中高齢者に多い運動制限、腰痛や膝痛のチェックを行うことが大事です。

アライメントチェック①
背中側で肘を伸ばして手を合わせる。
(体感上部の筋の前後バランスチェック)

A.肘を伸ばして掌をぴったり合わせることができる
B.肘を曲げ、指を少し絡ませてから伸ばすとできる
C.Bのようにしてもできない

アライメントチェック②
肩の左右差チェック
背中側からみてどちらかの肩が上がっているか?左右の肩峰を結ぶ線が水平か?

アライメントチェック③
お顔ゴシゴシ(広背筋下部の伸張性拘縮の有無と胸郭の可動性チェック)

胸の前で左右の肘と手首を合わせたまま上へ挙げていき、正面から見える顔の部分を見る。

A.鼻まで見える
B.口が見える
C.顎が見えない

アライメントチェック④
目を閉じて30歩その場歩き(歩行時の体全体のバランスチェック)

膝痛の原因として肥満やO脚、姿勢の悪さ、成長期の過度のスポーツ、加齢・老化などが挙げられます。
それらによる膝の痛みや関節痛の予防として、椅子を用いた生活や身体を冷やさない事、長時間立ち続けない事などが挙げられ、肥満の解消、適度な運動習慣、膝を強化する体操などの根本的な要因の解決も並行して行うようにすることが理想的です。

膝痛予防のためになぜこれらのチェックをするのか

アライメント
歪みの連続とアライメントが悪い箇所から始まる破損の連鎖の徴候を見つける。

身体機能
構造的な安定性を促進するためには安定化トレーニングが必要。

動作法
筋バランスと動作の改善を図る。

生活習慣
効果を最大限に引き出すには、生活習慣や生体リズムを改善する必要がある。

膝痛が起こるのは膝にだけ問題があるのではない

チェックポイントとして、膝を取り巻く上下2関節、膝周囲の主要な筋バランス、膝関節が関与する運動、ボディ・コアの安定性等が挙げられる。

大腿骨骨頭頸部の頸体角の経年変化

骨の病変で頸体角は約90°にまで減少するケースもある。頸体角は大腿骨を安定させる作用があり、この角度が小さくなればなるほど大腿骨頭骨折の危険性は大きくなる。老人の大腿骨頸骨折は、骨組織の弾性の喪失と、頸体角の減少が主な原因となる。

脛骨の引き出し現象

大腿骨に対して脛骨が前方に引き出されてしまう「脛骨の引き出し現象」は、前十字靭帯断裂の時にのみ起こるものではありません。

ハムストリングスにおける女性に特異的な現象として、ハムストリングスの発揮筋力が体格に対して相対的に低く、脛骨が前方に移動し始めた時、男子選手は膝を安定させるためにハムストリングスを動員する傾向にあるのに対して女子選手は大腿四頭筋を動員する傾向があるという報告があります。
つまり大腿四頭筋の筋力に対してハムストリングスの筋力が低いことは膝関節に何らかの障害をもたらす可能性を示唆します。

そして潜在的に前十字靭帯損傷のリスクを高める可能性のある要因として、
競技動作中の関節ポジションと可動域、コアスタビリティ、神経筋疲労などが挙げられます。

筋コンディショニング
それらのリスクを低下させるためにも、大腿四頭筋とハムストリングス、腸腰筋と大殿筋のように前後や左右の拮抗筋のバランスを取る事が大事です。

安全に運動を行うための留意点

①つま先と膝の向く方向を同じにする。
Qアングル(上前腸骨棘と膝蓋骨中央、膝蓋骨中央と脛骨粗面を結ぶ線の延長が交わる角度)を考慮して膝関節の様々な靭帯や健に無理な負担をかけないようにする。

②荷重をしたまま膝を90°以上深く曲げない
膝関節の半月板、靭帯、健に過剰な負荷がかかる。

③高血圧に関する注意
怒責、長時間の上肢挙上や反復動作、アイソメトリックによる筋トレは特に上肢において血圧が上昇するため非常に危険であり、急に頭を下げる動きなどにも注意が必要。

また、服用している薬の作用にも十分に注意が必要で、降圧剤を服用している場合には運動をしても心拍数が上がりにくいものもあるため客観的な数値の把握が難しく、RPE(自覚的運動強度)表の利用が望ましい。利尿剤を服用している場合には脱水の危険性がある。

④首の運動:後方へは浅く、前方へは深く
首の前面には大きな筋はなく、後方には複数の大きな筋が存在する。首への負荷を考えると、後方へは浅く、前方へは深く動かすよう心がける。

⑤怒責しやすく、効果の出にくい運動を避ける
立ったままの前後屈、座った姿勢で腕を挙上して体幹を左右に振る等。座った状態での運動は高齢者施設で多く用いられているが、動作によっては注意が必要である。

⑥上肢の挙上を連続させないように配慮する
インピンジメント症候群を起こさないため、血圧上昇を避けるため

⑦静的ストレッチは体温が上がってから
起床直後など体温が上がらない状態での静的ストレッチは筋を痛める可能性がある。

⑧休息と水分補給
熱中症は冬でも起こる。特に高齢者は何もしなくても水分が不足する。運動により水分は汗と尿にとられていくため、適度なトイレ休憩と水分補給を行うこと。また、中高齢者はまじめに、律儀に処方を実行しようとするため、オーバートレーニングによる過労状態になる可能性を考慮に入れておく。特に健康意識が強い人ほど顕著であり、休憩やトレーニングを休む日を的確に実行し、体調が思わしくなければ休む判断をする勇気が必要。

⑨感染症予防
高齢者は免疫力が低下している。そのため、使用用具の消毒、対象者のうがい、手洗い等を奨励する。抹消部位の血行促進、フットケア。特に糖尿病患者には注意が必要である。

冒頭で申し上げた通り、まずは楽しんでもらうことが優先。
低い活動性、狭い活動範囲、低い運動強度の日常生活の水準を上げ、エビデンスに基づいた知識と技術でライフスタイルの見直しや現状の心身の改善を支援していくことが大切です。

これからの指導のあり方
監視型運動から非監視型運動へ、施設型・地域型運動から家庭型運動へ、混合型運動から神経筋協応能(認知運動系)へ、そして指導者依存型から自立継続+支援型へと推移していく事が予想されます。

まとめ

・クライアントに最善の環境を提供する活動
・クライアントの健康、社会的発展と倫理の保護
・クライアントを支援する全ての関係者の連携及び連絡調整
・クライアントとその家族を支援する全ての関係者の教育・研修
など、広く働きかけて行く必要がある。

運動を指導するということは、他者の人生に介入してライフスタイルを帰るよう働きかけること。これからも、市民やアスリートの健康づくり、パフォーマンス向上などの活動にお力をお貸しください。