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トップ選手のトレーニング "卓球" 男子ナショナルチームS&Cコーチ 田中礼人 #2

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掲載日:2019.06.23
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近年、特に活躍著しい卓球日本代表。
技術はもちろんのこと、瞬発力と敏捷性、持久力に加えた反応や判断、集中力など多くの能力が要求される。それらを高めていくために日本代表選手はどのようなトレーニングをしているのか。

公益財団法人 日本卓球協会 男子ナショナルチーム専任ストレングス&コンディショニングコーチ田中礼人氏(NSCAジャパン認定検定員、NSCAジャパン南関東エリアディレクター、CSCS、NSCA-CPT、NSCAジャパン ストレングス&コンディショニングコーチ・オブ・ザ・イヤー2016)に「フィジカル×トレーニング」をテーマに話を伺った。

フィジカルが戦術や技術に干渉するか

それはあると思います。
今までできなかった技術の習得につながったり、届かなかったボールに届くようになったり、今まで以上の速さで打てるようになることで戦術や技術に干渉してくると思います。

できる動きを増やしたり、カバー範囲を増やしたり。
正しい姿勢を維持することでこそできてくる部分もあると思います。

また、上体を前傾させたパワーポジションを意識していてもだんだんと上体が起きて来てしまうこともあるので、それらを防ぐことにも貢献します。

自分が就任したきっかけでもありますが、10年も20年も前から、日本はフィジカル面が弱いという課題があったので、筋力やパワーをつけていきたいという要望はありました。

昔は長距離を走って体力や精神力をつけるというのが主流とされていた時期もありますが、近年では闇雲に長距離を走らせるよりもインターバルトレーニングを取り入れて、身体を大きくしていくという方向へ変わってきました。

トレーニングに関しても淡々と行うメニューもありますが、敏捷性やスピードの向上を狙うような種目では誰かと競わせながら行ったり、遊びの要素も広く取り入れつつ行うようにしています。
そのほうが自然に全力も出せますし、頭の体操や、個人競技ではありますがチームビルディングにもなるかと思います。

強豪国との差

卓球の強豪国である中国の選手は体格が非常にがっしりしてます。
特に足。ウェイトトレーニングを行っている風景を見たことがありますが、皆やはりすごく良いフォームでした。
中国選手は毎日いろんな選手が入れ替わりでトレーニングをしていて、非常に意識が高いと感じました。

あと、中国の選手はとにかくたくさん食べます。
日本の選手は滞在する国によっては現地の食事の匂いが合わなかったり、油が合わなかったり、水が合わなかったりすることもあるので、日本から食事を持っていくこともあります。
その点、中国の選手はどこの国に行っても現地のものをたくさん食べている印象があります。

自分が海外へ帯同するのは1年間で10~15カ国ほどなので、月に1カ国はどこか海外にいます。
時差は選手に大きく影響しますが、若い頃からそういう生活を送っているからなのか、皆適応は早いです。
現地では選手の試合時刻は個人個人で皆違いますので、自分でアップをしてコンディションをピークに持っていけるように自立を促す教育もしています。

本当は飛行機に乗ったときから現地時間に合わせて動いていくのが理想かと思います。
向こうが食事の時間ならば食事を摂って、就寝時間帯ならば寝ておく。
現地についてまず食事を摂れるように、胃腸から時差ボケを修正していく。
現地の時間と違うことをしないこともポイントです。

女子の場合はアジア圏の国が上位を占めますが、男子は中国を筆頭にドイツやフランスなどヨーロッパの選手も上位にいます。
体格が大きい、手足が長いことによるメリットもありますがデメリットも出てきます。

トレーニング計画

トレーニングの計画に関しては「トレーニングの原理・原則」に基づいて作成し、フィットネス-疲労理論も重視しています。
それにあたり、練習の合間の食事も重視しています。

昼の食事が終わって2時間後から、夜の19時~20時くらいまで練習を続けますので、練習の合間の補食も有効に活用します。エネルギーが枯渇した状態でプレーしないということも後々のリカバリーに関わってくると思います。
あとは睡眠をすることが一番の回復なので、トップアスリートであれば8時間は寝るように勧めています。

極度に疲労しているときにはアクティブレストとしてプールを使ったり、アイスバスや交代浴をしておくことも睡眠の質を上げることに貢献します。

最近だとなかなか難しいですが、寝る1時間前にスマートフォンを見ないことも大事です。
ブルーライトは睡眠に影響してきます。
しかし、過度にそれらを押し付けてしまっても返ってストレスになってしまうので、あくまで情報は提供しますがそこまで強くは言わず、最終的には選手に任せています。

これらが長期で積み重なってくると変化にも気づきやすいのではないかと思います。

自分自身も、選手が昼食後に休んでいる間にトレーニングをします。
やはり見本を見たほうが理解しやすいですので、指導者としてしっかりと動きの見本を見せられるように、技術を落とさないようにする意味でも継続して行っています。

トップチーム、プロスポーツに関わるために

一つは自分を信じることだと思います。
様々な壁によりこういった業界で働くことは難しいと言われたりもしますが、自分の決めたを突き進むために信念を持って研鑽することが大切だと思います。
トレーニングをすることも勉強をすることもそうです。

例えば、自分は専門学校に入ってからもっと勉強したくて大学に編入しました。
親との決めごとでは専門学校を卒業したら働くという約束でしたので、大学の学費は自分で働いて捻出しました。

自分でお金を出すことで絶対に授業の内容を無駄にしたくないという気にもなりますので、積極的に質問していきました。意識が大きく変わったと思います。

人と関わる職業ですので、いくら知識や技術が優れていても人間性やコミュニケーション能力も必要になってきます。
必要な事柄を広く深く勉強し続けることが大事だと思います。