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関節と筋肉の機能を考慮したウォーミングアップ (2/3)

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掲載日:2015.06.05

膝に水が溜まるのはどうして?




関節内に熱が溜まり続ければ骨が変形していきます。それを防ぐには熱を冷ますこと。

車にはラジエターというものがあります。水を循環させたり、空気の流れを調整することで熱を冷ましエンジンが焼け付く(オーバーヒート)のを防止しています。それと同じくを熱を運び去り関節のオーバーヒートを防いでいるのが関節内の潤滑油や血液などです(前回参照)。しかし、その働きを上回る過剰な熱が溜まったり、あるいはラジエター機能(循環障害など)に不備があったりすると上手く熱を運び去ることが出来ません。車ならオーバーヒートを起こしてエンジンが焼け付く事態です。人体では骨が変形してしまう緊急事態です。となれば緊急防御策として関節内の液体を増やして熱を吸収するしかないのです。

それが、いわゆる「水が溜まる」現象なのです。

面白いことに、熱を吸収した水(潤滑油)は注射器で抜くと通常のものよりサラサラになっていることが分かります。理にかなっていますね。ということは、この溜まった水はとても大切なものだということが分かります。それを何度となく抜き続ければ、骨の変形を防ぐどころか加速させてしまう結果になることは容易に想像がつきます。なので関節に溜まった水は観察のために1〜2度抜くのは仕方がないとしても繰り返し行うべきではないと思いませんか?

対策としては、前回ご紹介した氷を使用したアイシング(生理的局所冷却)を1〜2時間行い、しっかり関節内の水を冷やすことに努めてください。早ければ3週間で自然に水が引いていくことでしょう。

ここでのテーマ、ウォームアップにおいては関節内の温度が上昇するところまではいかないと考えられますが、特に長時間行う競技や高レップ、セット法などで長時間トレーニングをされる方にとっては温度の上昇で関節を破壊してしまう可能性があります。ですので競技・トレーニング途中や終了後に関節局所の冷却を行うことが必要不可欠となってきます。

関節の機能向上② 〜引っ張る? or 押す?〜


先ほどは関節内の水(潤滑油)は温度によって性質を変化させその働きに影響することについて考えてみました。ここでは圧力が関節に与える影響について考えてみます。

ここでは関節を吸盤に例えて考えてみましょう。吸盤同士の間に潤滑油を塗って引っ付けたものを思い浮かべてください。吸盤は引っ張れば動き難くなります。しかし互いの吸盤を押し付けながら少しスライドすれば簡単に動くことは誰でも知っています(経験のない方はやってみてください)。

つまりそれを関節に当てはめると、関節面にも互いに近づく力(圧力)が働くとスムーズに動かすことが可能なのです。その他の例を挙げると、バナナの皮も踏んで体重がかかって初めて滑りますし、スキーが雪面上を滑走するのも体重がかかり板に接した雪面が融け、そこに圧力がかかり滑り始めるのです。地球上で生活する以上、重力がかかっていますから、自分の体重が関節面にかかっていた方が摩擦なくスムーズに潤滑することを示しています。私たちの身体は地球にある重力のもと最も効率よく動かせるような仕組みになっているのです。

おそらく皆さんの頭の中では、骨同士を擦り付けたら当然摩擦が多くなるものと考えるのではないでしょうか?しかし、それは関節内に潤滑油の無い状態で骨同士が擦れるイメージであって、そこに潤滑油があるときにその現象は逆転します。適当な圧力がかかるほど関節面はさらにツルツルに滑り始めるのです。

つまり、関節は引っ張るのではなく荷重がうまくかかることで機能向上するのです。ウォームアップ時も荷重をうまくかけて関節面の潤滑性を最大限発揮した状態にもっていくことが大切になります。ツルツルにスムーズに動く関節を準備出来れば、それを動かしてくれる筋肉の無駄な負担を避けることが出来るのです。これもケガを防ぎ、パフォーマンスを最大限に引き出すための大切な工夫です。

(左)肩の関節を引き離すように引っ張ると・・・
(中央)力が抜けてしまいます
(右)関節は引き離すと神経伝達の道筋が長くなり筋力が発揮できない


試してみてください。はじめに腕を水平に上げてそのまま保ち、上から押さえてもらい筋力を測定しておきます。次に力を抜いて腕を約10秒間心地よい程度に引っ張ってもらいます。再度はじめと同じ方法で筋力を測定してください。力が入りにくくなります。


(左)今度は肩の関節を近付けるように押し付けると・・・
(中央)しっかりと力が入ります
(右)関節を近付けるように圧力がかかると、神経伝達が早くなり筋力の発揮がスムーズに


今度は力を抜いて肩に向かって関節を押し付けるように約10秒間行ってください。その後は筋力がアップします。

関節の働きが高まれば筋力が最大限に発揮されるという簡単な実験です。骨と関節は筋力を伝える大切なものなのです。よくみられる手首や足首をぶらぶら振るよりも関節への荷重が抜けない状態で行った方が、パフォーマンスを落とさないかもしれません。


(左)四つん這いはソケット部分の後ろ側部分を再構築する。故障がある場合はここからはじめてみよう
(右)立った状態ではソケットの上側部分が強化される


また圧力は関節の滑らかさや筋力に関係するだけではなく骨の強化や形成そのものに関わります。関節のソケット部分や骨の中にある梁(支柱)の構造を見ても、まさに圧力に適応して出来たことが良くわかります。つまり引っ張られた部分ではなく圧力を受けた部分の骨は分厚く強靭な構造をしているのです。股関節のソケット部分を見てみると、赤ちゃんハイハイから立ちあがって歩くというプロセスによってどこの部分が強化されてきたかが、あたかも木の年輪のように見て取ることが出来ます(ソケットの後ろ側と上側が厚く深くなっている:青色部分)。

四つん這い:直立二足歩行に必要な箇所での故障(股関節・骨盤周辺・肩関節etc)は、赤ちゃんや四足動物の移動様式からやり直すのが基本


余談になりますが、股関節を傷めてしまったとしましょう。直立二足(人間)での機能に問題が出たのであれば、一つ前の時期、つまり赤ちゃん(四足獣)に戻って四つん這いから機能回復を目指していけば良いと思います。スクワットやマシンレッグプレスなどはそれらに近い圧力が関節部にかかりますから、筋力向上とともに関節機能の回復・向上に一役買ってくれることでしょう。

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  • 中山 辰也(なかやま・たつや)
    中山予防医学研究所

  • MODEL: 好川 菜々(Nana Yoshikawa)
    生年月日 1978年6月25日
    出身地 大阪府
    血液型 AB型
    身長 164cm
    所属 雅ボクシングジム

    タイトル
    2005年 第3回全日本女子アマチュアボクシング選手権大会フライ級 準優勝
    2006年 第4回全日本女子アマチュアボクシング選手権大会フライ級 優勝
    2008年 第6回全日本女子アマチュアボクシング選手権大会ライトバンダム級 優勝(2階級制覇)
    2012年 第10回全日本女子アマチュアボクシング選手権大会フェザー級 優勝(3階級制覇)
    2012年 第7回AIBA世界女子ボクシング選手権フェザー級 ベスト16

    戦績
    アマチュア:77戦55勝、プロ:1戦1勝

フィットネス&ボディメイク情報誌
[ PHYSIQUE MAGAZINE 002 ]

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