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関節と筋肉の機能を考慮したウォーミングアップ (3/3)

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掲載日:2015.06.05

筋肉の機能向上① 〜冷やす? or 温める?〜


関節については温度がやや低い状況で機能がアップすることをお話ししましたが、筋肉においてはどうなのでしょうか?筋肉に関しては皆さんのイメージ通り、温まってくると機能向上することが知られています。しかし、筋肉の温度が上昇しすぎると機能低下することも知られています。

また、筋肉は骨に引っ付く手前(関節付近であることが多い)で徐々に腱に移行していきますが、この腱や靭帯など関節付近にある組織は低温状況下で機能向上することも知られています。筋肉には素早く伸び縮みするゴムのような性質が求められ、関節付近ではその力を可能な限り時間差なく関節に伝えるための硬いバネのような性質が求められるのです。「ゆるむ」事ばかりが良いことのように語られますが、場所によってはゆるんではいけないものもあるということです。これも理にかなった機能構造なのです。

そのパフォーマンスを最大限に発揮するためには筋温は適度に上昇させ、上昇しすぎれば適度に冷ますということが必要となります。筋温の上昇は筋肉内の血液量の増減にかかっています。ここで勘違いしてはいけないところが単なる「血流」の改善ではなく、筋肉内の「血液量」そのものの増加が必要です。皆さんがトレーニング時に感じる筋肉の張った感覚も筋内の血液量が増した状態であるので、実際のサイズも増大しているはずです。

しかし、トレーニングで追い込んだ時と同様に最後には力が全く入らない状態になってしまえば最高のパフォーマンスは発揮できません。ですので、ウォームアップにおける適度な筋温上昇は、疲労感を招かない、パンパンに張りすぎない状態を作ってあげるべきなのです。もちろんウォームアップの量には個人差がありますので、時間をかけて自分にあった適量を見つけていかなくてはならないことは言うまでもありません。


筋肉の機能向上② 〜ストレッチについて考える〜


ストレッチはウォーミングアップの代表格ですが、今一度見直してみましょう。

(左)関節を引き離すストレッチは可動域が広がることと引き換えに筋力低下を引き起こす
(中央)ストレッチは関節への荷重も意識して行うとパフォーマンスを落とさずに行うことが出来る
(右)四股スクワット:つま先を外へ向け、歩幅を大きく取り行う。太ももが地面との平行線より下げることが出来ればベスト。特に股関節の潤滑性を高めて可動域を広げ、周囲の筋肉内血液量を増やすことが出来る


どういった目的でストレッチを行うでしょうか?
①柔軟性を高めてケガ予防
②ストレッチすることで血流改善
③トレーニング後のクールダウンとして、また筋肉痛予防として

などが、皆さんがストレッチを行う目的ではないでしょうか?まず柔軟性を高めることについてですが、当然柔軟性はどんな競技にもある程度は求められます。しかし、例えば肉離れが筋肉の伸びる限界を越えた運動で起こっているでしょうか?極端な言い方をすれば多発するハムストリングス(太もも裏の筋肉)の肉離れは、足先が頭につくほど引き伸ばされた状態で起こるのでしょうか?

通常はNOです。スタートダッシュの瞬間や蹴りだしの瞬間など伸びた状態からの引き戻しの際などに多発します。特に脱力からの引き戻しもその一つでしょう。ウェイトトレーニングでいうチーティング時に起きるの故障もその一つかもしれません。つまり筋肉の伸びる限界手前でも起こり得るのですから、たとえ足先でおでこを蹴れるほどの柔軟性があったとしてもそれだけでは肉離れや腱の断裂を防げないことになります。

ここ十数年の間には、ストレッチがケガ予防に効果が薄いとする医学論文なども多数目にするようになりました。また筋肉痛予防効果を疑問視するものなど、その研究方法の精度はさておき神話的に行われてきたストレッチを今一度見直してみるのも一つかもしれませんね。

私の考えでは、ウォームアップの目的達成後に軽いストレッチで身体を馴染ませていく程度のストレッチ、そして終了後にはリラックス目的でストレッチを採用すれば良いと考えています。またウォームアップのテーマからは外れますが、ストレッチ(静的)は運動の第一条件である自動運動(自分で動かす運動)ではなく他動的に引き伸ばす行為であって決してエネルギーを消費出来る運動ではありません。ですので、トレーニーかどうかに関わらず、ストレッチだけをして運動した気になっているのはどうかと考えています。

ストレッチによる血流改善についてですが、筋肉を引き伸ばすことで内圧が高まり筋肉内の血液を押し出します。元へ戻した際には逆に血液が入ってきます。しかしストレッチには筋肉の収縮が伴わないので出入りの量はそれほど多くありません。さらに出入りを増やすには伸びる時、縮む時の両方に筋肉の収縮が加わり動きを伴ったものである必要があります。

既にお気づきの方も多いと思いますが、これはまさにウェイトトレーニングそのものであることが分かります。ウェイトトレーニングの基本はフルレンジ(全可動域)です。すべての位置において筋収縮を持続するものです。動かしている間、筋肉の収縮を緩めることはありません。ということは肉離れを起こすような伸びて緩んだ状態から急激な収縮などは皆無なのです。しかもフルレンジ(全可動域)で行いますから一部の方が主張するようにウェイトトレーニングによって筋肉の柔軟性が失われるようなことはまず考えられません。あるとすれば、肥大した筋肉で関節の動きを妨げてしまうことくらいで、筋肉自体の柔軟性が失われたわけではないのです。

また話がずれますが、筋肉をつけ過ぎて調子が悪くなった(と言われている)というアスリートの話をたまに耳にしますが、最高のパフォーマンスには筋力、体重や身長、道具、バランス、適度な柔軟性、素早い思考能力、技術、素質、時間的な制約、健康面、メンタル・・・まだまだ多くの要素が存在するにも関わらず、指導にあたる立場の人々が単純に「筋肉をつけるとダメ」などとまだ考えておられる方が多くおられるようですが、能力つまり筋力は必要不可欠です。

競技特性に合わせて鍛える部位を選定するなどの工夫は当然大切です。考え方をもっとフレキシブルにして競技者に関わっていただきたいものです。


関節機能と筋機能を考慮したウォーミングアップ&セルフケア


ここまでの話をまとめ、最適なウォーミングアップを提案しましょう。ただし、私がご提案したいのは方法論ではなく、「考え方」です。方法論は万とありますので、今回の内容を加味したうえでご自分にあった最適なやり方を見つけてくださいね。
①ウォーミングアップ期(練習前、試合前)
・ウォーキング&ジョグ
・プッシュ系種目(スクワット、プッシュアップetc)
・荷重をかけた状態でのストレッチ

②ハイパフォーマンス期(練習中、試合中)
・関節部のアイシング
・筋肉のダイナミックアイシング

③クールダウン期(練習後、試合後)
・関節部のアイシング
・筋肉のダイナミックアイシング
・荷重をかけた状態でのストレッチ

(左)スクワット:脚・膝・股・仙腸関節・背骨の潤滑性を高め、大筋群(腰、おしり、太もも)の血液量を増やすことが出来る
(中央)スクワットは四つん這いと同様、股関節に圧力がかかりソケット部分を再構築する
(右)スクワットは背骨のラインを崩さずに


(左)プッシュアップ(腕立て伏せ):肘・肩関節の潤滑を高め、上腕と肩周囲筋の血液量を増やすことが出来る。手首を痛めているときは拳立てで行うと手首のケアにもなる
(右)プッシュアップ(ワイド)


(左)手首足首ぶらぶらもやめよう。やるなら仰向けに寝て手足を天井に向けてやってみよう
(右)手を組み、つま先を地面につけておこなってみよう




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  • 中山 辰也(なかやま・たつや)
    中山予防医学研究所

  • MODEL: 好川 菜々(Nana Yoshikawa)
    生年月日 1978年6月25日
    出身地 大阪府
    血液型 AB型
    身長 164cm
    所属 雅ボクシングジム

    タイトル
    2005年 第3回全日本女子アマチュアボクシング選手権大会フライ級 準優勝
    2006年 第4回全日本女子アマチュアボクシング選手権大会フライ級 優勝
    2008年 第6回全日本女子アマチュアボクシング選手権大会ライトバンダム級 優勝(2階級制覇)
    2012年 第10回全日本女子アマチュアボクシング選手権大会フェザー級 優勝(3階級制覇)
    2012年 第7回AIBA世界女子ボクシング選手権フェザー級 ベスト16

    戦績
    アマチュア:77戦55勝、プロ:1戦1勝

フィットネス&ボディメイク情報誌
[ PHYSIQUE MAGAZINE 002 ]

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