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タンパク質の摂取量 ~過ぎたるは及ばざるが如し~

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掲載日:2018.10.11
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トレーニングをして筋肉を増やしたい場合、筋肉の材料となるタンパク質を多めに摂取するというのは自然な考え方です。では、一日にどれくらいのタンパク質を摂取すればよいのでしょうか。

私たちの身体の細胞は、常に入れ替わっています。つまり破壊と建設が不断に行われています。これを「代謝回転」と呼びます。そして古い細胞を壊す作業を「異化(カタボリック)」、新しい細胞をつくる作業を「同化(アナボリック)」と呼びます。身体が大きくなる場合、同化が異化を上回っており、ダイエットしている場合は脂肪細胞の異化が同化を上回っているわけです。

なにもしない場合、同化と異化は同じ量となり、体重は維持されます。普通の成人男性の場合、筋肉と皮膚とで32g、肝臓で23g、血清で22g、ヘモグロビンで8gのタンパク質が同化&異化されます。他に骨や心臓、腎臓などでの同化&異化が合計165gにもなります。

つまり一日に250g近くのタンパク質が、体内で毎日分解されています。

体重あたりのタンパク質の維持必要量

血液や肝臓には、異化分解されてできたアミノ酸は同化のためにプールされており、これを「アミノ酸プール」と呼びます。これが同化のために再利用されます。どれくらいの割合で再利用されるかは文献によってバラバラなのですが、だいたい70~80%だとされています。

分解されたタンパク質の80%が再利用されると仮定すると、250gの80%として、200gは再利用されるということになり、残りの50gを補えば良いという計算になります。なお厚生労働省が良質タンパク質の窒素出納維持量を検討した17の研究を平均したところ、タンパク質の維持必要量は一日に体重1kgあたり、0.65gとなっています。

となると、再利用が上手くいっている限り、それほどタンパク質は大量に摂取しなくても良さそうです。
しかし、そううまくはいきません。「PART1炭水化物」で糖化について触れましたが、アミノカルボニル反応が起こるとき、アルギニンやリジンがカルボニル基と反応し、アミノ酸として使えなくなってしまうのです。こうなるとアミノ酸の量が減るだけでなく、プロテインスコアも低下してしまいます。
アミノカルボニル反応は主に加熱調理で起こりますが、体内でも普通に起こります。糖質を大量に摂取する場合、このリスクが生じます。
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糖質の摂取が少ない場合と十分な場合

逆に糖質の摂取を減らした場合はどうでしょうか。
これも「PART1炭水化物」で触れましたが、今度は「糖新生」が起こり、異化が亢進してしまって同化に追いつかなくなります。
これを防ぐためには十分な脂質を摂取してケトーシス(PART3脂肪酸とケトン体で詳述)にするか、異化を上回る量のタンパク質を摂取するしかありません。

ただし糖質を十分に摂取している場合、糖化によるアミノ酸変質の問題はありますが、タンパク質の量を節約することができます。(※3,※4,※5)これは主に糖新生の減少とインスリンの同化作用(後述)によるもので、「プロテインスペアリング」と呼びます。ですから身体を大きくしようとして大量に糖質を摂取している場合、むしろタンパク質は少なめでも構いません。逆に糖質を制限している場合、プロテインスペアリングが起こらないため、タンパク質の必要量は増加します。

運動強度やストレスに応じてタンパク質必要量は増加する

厚生労働省の指針としては、成人男性の一日のタンパク質推奨摂取量は60gとなっています。これは体重1kgあたりにして0.9g程度です。
しかし私たちは、ストレスに出会うとそれに対抗しようとしてエネルギーを作りだそうとします。このときには、身体のタンパク質が分解されてエネルギー源となってしまいます。もちろん運動もストレスとなり、運動強度が高くなるほどタンパク質必要量は増加します。(※6)

なお試合後のラグビー選手を調べたところ、筋肉を分解するホルモンであるコルチゾルが急激に増加していました。

数値にして試合終了12時間後に56%、36時間後に59%の増加。そして60時間後も34%増加したままでした。(※7)

これら数々の原因により、結局タンパク質の必要量が増えてしまいます。数多くの研究によって、ハードな運動をする場合は一般的な量の2倍以上のタンパク質が必要だとされています。(※8,※9,※10)
Butterfieldらによれば、非常にハードにトレーニングする場合は体重1kgあたり、2.2gが必要だとしています。(※11)

また「現在の推奨摂取量は古い技術に基づいて定められたもので、摂取量を見直す必要があり」、「食間に25~35gの高品質なタンパク質を摂取することが筋肉の健康を維持するために推奨される」とともに、「肥満者の場合はタンパク質の摂取比率を高める(25%程度)と良い」と結論づけた報告もあります。(※12)

過剰なタンパク質の摂取は無駄になるか

では逆に、どれ以上だとムダになるのでしょうか。一日に平均307gのタンパク質(体重1kgあたり4.4g)摂取して8週間に渡ってトレーニングしたところ、一日に平均138g(体重1kgあたり1.8g)摂取した群と比較して、体重や除脂肪体重、体脂肪率などの結果に差はなかったと報告されています。(※2)

また48名の男女を対象に、一日に体重1kgあたり3.4gのタンパク質を摂取して週5日に渡るハードなウェイトトレーニングを8週間に渡って行ったところ、一日に体重1kgあたり2.3gのタンパク摂取群と比較して、除脂肪体重の増加やエクササイズパフォーマンス改善において、ほとんど同等の効果でした。(※13)

面白いことに高タンパク群は体脂肪の減少が見られており、これはDITの増加によるものと思われます。
なお2.3g群は一日の炭水化物摂取量が196gなのに対し、3.4g群は234gで、トータルの摂取カロリーも3.4g群のほうが多くなっています。

これらの結果から、ハードにトレーニングする場合でも炭水化物を当通に摂取しているのならば、一日に体重1kgあたり、2.2~2.3gを目安に摂取しておけば問題ないものと思われます。

アミノ酸は利用度の高い栄養であるため、大量に摂取すると積極的に分解され、タンパク合成以外の目的に用いられてしまいます(※14)無駄な大量摂取は避けるべきでしょう。

※2:The effects of consuming a high protein diet(4.4g/kg/d)on body composition in resistance-trained individuals.
J Int Soc Sports Nutr. 2014 May 12;11:19.dol:10.1186/1550-2783-11-19.eCollection 2014.

※3:Carbohydrate and fat as factors in protein utilization and metabolism. Physiol Rev.1951 Oct;31(4):449-88.


※4:Quantitavate interrelationship between effects of nitrogen and energy intakes on egg protein utilization in young men.
Tokushima J Exp Med. 1983 Jun ;30(1-2):17-24.


※5:The effects of different levels of energy intake on protein metabolism and of different levels of protein intake on energy metabolism : A statistical evaluation from the published literature. In: Protein-energy interactions. UNU. 1992.

※6:Physical activity, protein metabolism and protein requirements. Proc Nutr Soc. 1994 Mar;53(1):223-40.

※7:Neuromuscular function, hormonal, and mood responses to a professional rugby union match. J Strength Cond Res. 2014 Jan;28(1):194-200. doi: 10.1519/JSC.0b013e318291b726.

※8:Evaluation of protein requirements for trained strength athletes. J Appl Physiol (1985). 1992 Nov;73(5):1986-95.

※9:Protein and amino acid needs of the strength athlete. Int J Sport Nutr. 1991 Jun;1(2):127-45.

※10:ISSN exercise & sport nutrition review: research & recommendations. J Int Soc Sports Nutr. 2010 Feb 2;7:7. doi: 10.1186/1550-2783-7-7.

※11 : Amino acids and high protein diets. In Lamb D, Williams M(editors), Perspectives in exercise science and sports medicine, Vol.4; Ergogenics, enhancement of performance in exercise and sport(pages87-122).

※12: Protein: A nutrient in focus Applied Physiology,Nutrition, and Metabolism, 2015, 40(8): 755-761, 10.1139/apnm-2014-0530

※13: A high protein diet (3.4g/kg/d) combined with a heavy resistance training program improves body composition in healthy trained men and women – a follow-up investigation J Int Soc Sports Nutr. 2015; 12: 39.

※14 : Nutritional regulation and tissue-specific expression of the serine dehydratase gene in rat. J Biol Chem. 1991 Oct 25;266(30):20412-7.
  • 山本 義徳(やまもと よしのり)
    1969年3月25日生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。
    ◆著書
    ・体脂肪を減らして筋肉をつけるトレーニング(永岡書店)
    ・「腹」を鍛えると(辰巳出版)
    ・サプリメント百科事典(辰巳出版)
    ・かっこいいカラダ(ベースボール出版)
    など30冊以上

    ◆指導実績
    ・鹿島建設(アメフトXリーグ日本一となる)
    ・五洋建設(アメフトXリーグ昇格)
    ・ニコラス・ペタス(極真空手世界大会5位)
    ・ディーン元気(やり投げ、オリンピック日本代表)
    ・清水隆行(野球、セリーグ最多安打タイ記録)
    その他ダルビッシュ有(野球)、松坂大輔(野球)、皆川賢太郎(アルペンスキー)、CIMA(プロレス)などを指導。

  • アスリートのための最新栄養学(上)
    2017年9月9日初発行
    著者:山本 義徳


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