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カゼインの問題点

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掲載日:2018.12.20
記事画像1
トレーニング雑誌などには、こう書いてあります。
「カゼインはゆっくり吸収されるため、就寝前などに飲むと良い」。

確かに下のグラフを見ると、カゼインは7時間にもわたって血中アミノ酸レベルを高く保つことができています。(※47)

しかし後述しますが、このグラフには、あるトリックがあるのです。
記事画像2
まずはアミノ酸バランスについて調べてみましょう。ホエイと比較すると、次のようになります。(※48)
記事画像3
この表で目立つのが、カゼインにはシステインが少ないことです。
システインが多いとグルタチオンが増えるため、システインを多く含むホエイを飲むと免疫が高まるという話を前にしました。
そのためカゼインには免疫向上のメリットが少ないのです。

システイン摂取によるグルタチオン産生量増加は、窒素バランスを改善して筋肉量を増やすことにつながります。(※49,※50)この面からもホエイはカゼインに勝っていると言えます。
なお、カゼインにはカゾモルフィン(casomorphin)というペプチドが含まれ、これは自閉症や統合失調症と関連しているという主張も観られます。

しかし実際にcasomorphinにそうした作用があるとする信頼できる文献は現時点で存在しないため、この点については心配する必要はないでしょう。
ただしカゼイン由来のオピオイドにシステイン取り込みの阻害作用があり、それが広範囲にDNAメチル化を引き起こしてエピジェネティックな変化を引き起こすという可能性はあるようです。(※51)

またカゼインが免疫を低下させる可能性(※52)や、トリプシンを働かせたカゼインは逆に経口免疫寛容に良好な結果をもたらすという報告(※53)もあります。

ともあれ、カゼインを摂取するメリットとしては「長時間作用する」ことですが、それは本当なのでしょうか。

次のグラフをご覧ください。
20g強のホエイあるいはカゼイン、ソイを摂取してからの血中必須アミノ酸、血中ロイシンのレベルです。(※54)
記事画像4

グラフに隠されたトリック

先ほどのグラフだと7時間後もカゼインは血中アミノ酸レベル(ロイシン)が高かったのですが、だいぶ違う結果になっています。それはなぜでしょうか。

実は先ほどのグラフ(※47)では、ロイシンの量をホエイとカゼインで揃えるため、ホエイは30gなのに対し、カゼインは43gを摂取していたのです!

多く摂取していれば、それだけ長くとどまるのは当然です。また同じ(※47)の研究において、摂取5時間後のロイシンはカゼインが61%、ホエイは29%、ベースラインより高いままとなっています(これもカゼイン43g、ホエイ30gでの話)。
しかしグリシンやアラニンは、カゼインであっても5時間後はベースライン以下のレベルになっています。

(※54)のグラフ(ホエイとカゼインは同量摂取)では、3時間後の血中必須アミノ酸レベルはホエイもカゼインも同等となっています。
またこの研究では筋タンパク合成率においてホエイはカゼインよりも93%高かった、ソイよりも18%高かったとしています。
トレーニング後に摂取した場合、ホエイの筋タンパク合成率はカゼインよりも122%高く、ソイよりも31%高かったということです。

なおこれらのグラフからわかることですが、血中アミノ酸レベルの上昇カーブはホエイが圧倒的に急になっています。筋肉に大量のアミノ酸を「注入」するためには、ホエイが有利だということは否めないでしょう。

ちなみに昔のボディビルダーは、スキムミルクを良く飲んだものです。
スキムミルクは別名を脱脂粉乳、つまり牛乳から乳脂肪を取り除いたものですが、このタンパク質は殆どがカゼインです。
どうしてもカインプロテインを飲みたい方は、スキムミルクを飲むというテもあります。ただしスキムミルクには、かなり乳糖とナトリウムが含まれますが。

なお某国産牛乳メーカーがプロテインを販売しており、そこは「ミルクプロテイン」を推しています。ミルクプロテインは当然「ホエイ+カゼイン」なのですが、メーカーの実験ではミルクプロテインはホエイやカゼイン、ソイ単独それぞれよりも効果があるとのこと。まあ・・・
これについてはノーコメントとさせていただきます。

ホエイや大豆、PEA、カゼインの他にエッグプロテインやヘンププロテイン、ビーフプロテインなどもありますが、商品数としては少ないため、本書では触れません。

47:Slow and fast dietary proteins differently modulate postprandial protein accretion. Proc Natl Acad Sci US A. 1997 Dec 23;94(26):14930-5.

48:Casein and whey exert different effects on plasma amino acid profiles, gastrointestinal hormone secretion and appetite. Br J Nutr. 2003 Feb;89(2):239-48.

49:Abnormal glutathione and sulfate levels after interleukin 6 treatment and in tumor-induced cachexia. FASEB J. 1996 Aug;10(10):1219-26.

50:Effect of supplementation with a cysteine donor on muscular performance. J Appl Physiol (1985). 1999 Oct;87(4):1381-5.

51:Food-derived opioid peptides inhibit cysteine uptake with redox and epigenetic consequences The Journal of Nutritional Biochemistry Volume 25, Issue 10, October 2014, Pages 1011-1018

52:乳汁 k-カゼインの免疫抑制作用に関する研究 Immunosuppresive action of milk k-casein and its digests Research Project Number:08660328

53:Suppression of the Systemic Immune Response to Casein by Oral Administration of a Tryptic Digest of Casein Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry Vol. 57, Iss. 10, 1993

54:Ingestion of whey hydrolysate, casein, or soy protein isolate: effects on mixed muscle protein synthesis at rest and following resistance exercise in young men Journal of Applied Physiology Published 1 September 2009 Vol. 107 no. 3, 987-992 DOI: 10.1152/japplphysiol.00076.2009
  • 山本 義徳(やまもと よしのり)
    1969年3月25日生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。
    ◆著書
    ・体脂肪を減らして筋肉をつけるトレーニング(永岡書店)
    ・「腹」を鍛えると(辰巳出版)
    ・サプリメント百科事典(辰巳出版)
    ・かっこいいカラダ(ベースボール出版)
    など30冊以上

    ◆指導実績
    ・鹿島建設(アメフトXリーグ日本一となる)
    ・五洋建設(アメフトXリーグ昇格)
    ・ニコラス・ペタス(極真空手世界大会5位)
    ・ディーン元気(やり投げ、オリンピック日本代表)
    ・清水隆行(野球、セリーグ最多安打タイ記録)
    その他ダルビッシュ有(野球)、松坂大輔(野球)、皆川賢太郎(アルペンスキー)、CIMA(プロレス)などを指導。

  • アスリートのための最新栄養学(上)
    2017年9月9日初発行
    著者:山本 義徳


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