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三大栄養素と食物繊維の重要性 / ダイエットコーチに学ぶスポーツ栄養学 (1/2)

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掲載日:2015.06.05


重要度ピラミッドの二段目は三大栄養素。もちろん「たんぱく質・炭水化物・脂肪」のことです。ものすごくシンプルに言うとカロリー収支で体重の増減が決まり、三大栄養素で筋肉と脂肪の増え方・減り方が決まるとも言えます。実際にはもうちょっと奥が深いものですが、三大栄養素を押さえると目標の体形により近道になります。

増量・減量とカロリー収支の設定や、個人差に合わせて、各栄養素の量の決め方について解説します。さらにこのページでは、食物繊維とアルコールについても触れていきます。


▼LBM=除脂肪体重
この数字は、研究結果に加えて、英語圏の他のコーチ達の影響(主にマーティン・バークハン、アラン・アラゴン、ライル・マクドナルド、エリック・ヘルムス)、そして自身のクライアント指導での経験を基にしています。




たんぱく質(Protein)はなぜ大切なのか?


たんぱく質はトレーニング後の回復に役立つ他、減量時には筋肉量を維持して、増量時には筋肉の成長を促すのに使われます。さらに三大栄養素の中で最も腹持ちが良いのも特徴です。

たんぱく質をしっかり摂るのはとても大切なのですが、多ければ多いほど良いというワケでもありません。肉などのたんぱく源の食品は他と比べると値が張るので、無闇にたんぱく質を増やそうとすると、ムダに食費が膨らんでしまいます。さらに、たんぱく質ばかりからカロリーを摂ると、炭水化物や脂肪の入る余地が無くなり、選べる食品の幅が極端に狭まってしまいます。

こういう問題の出ない範囲で、たんぱく質を摂る利点はしっかり確保できる量を考えるということになります。
摂取量の目安は? (LBM=除脂肪体重)
減量 → 2.2〜2.8g/kg LBM  増量 → 1.8〜2.2g/kg LBM
たんぱく質の量は除脂肪体重を基に計算します。除脂肪体重が大きい人ほど、たくさんのたんぱく質が必要になります。自分の体重から体脂肪分を引いて計算してみましょう。

たんぱく質の量は、よく「体重1kgあたりたんぱく質2g」と言われますが、体脂肪の量は人によって大きく変わるので、体脂肪の多い人には数字が大きくなり過ぎたり、体脂肪の少ない人には少なく出過ぎたりするリスクがあります。ちなみにこの摂取量は、RDA(Recommended Dietary Allowance)と言って政府系の機関から発表される推奨量とは違います。

RDAは大抵とても低い設定になっていて、いまある研究結果を踏まえると引き上げられるべきだと個人的には思っています。去年イギリスに帰省したとき、母親が医者から高額な栄養剤を処方されていたんですが、そのたんぱく質の含有量があまりに少なくて怒りを覚えました。RDAの問題や、政治的にRDAが改められない背景・・・なんて話は別にいいですよね。ちなみに日本では厚生省の出している数字で、成人男性の推奨量が1日60g、推定必要量が50gということになっているようです。


減量と増量での違いは?
減量時には、カロリー収支がマイナスの中でも筋肉が分解されるのを防ぐため、たんぱく質の摂取量は高めに設定します。増量中に、上記の数字よりも多くたんぱく質を摂っても、食費が高くつく以外におそらく大きな害はありませんが、特に目立ったメリットも無いでしょう。筋たんぱく質の合成(筋肉の成長)はすでに最大化されています。しかし、薬物が絡んでくると話は変わります。オリンピアに出場するようなボディビルダーが、1日600g近いたんぱく質を摂っているような話が出てくるのは、薬物ですべてが変わっているからです。

摂取量の設定に幅があるのはなぜ?
除脂肪体重を基に計算した後、個人の条件に合わせてたんぱく質量を調整していきます。つまり各個人の条件によって摂取量には幅ができます。ここでは、全体のカロリー収支、体脂肪率、トレーニング経験などを考慮します。減量時には、カロリー収支のマイナス幅が大きくなるほど、筋肉を維持するのにたんぱく質の重要性は高まります。減量ペースがゆっくりなほど、たんぱく質量は減らす事ができます。体脂肪の多い人は、カロリー収支のマイナス幅を大きくして減量ペースを上げることができますが、低カロリーということは、それだけ空腹感と戦うことになります。ここでたんぱく質の腹持ちの良さは強い味方になります。

たんぱく質についておまけ
基本的には普通の食べ物が一番ですが、プロテインパウダーはとにかく便利です。金銭的にも、外食で十分たんぱく質を摂りにくいときにも、上手に使って1日の必要量を摂るようにしましょう。ただ、普通の食べ物の方が空腹には強いこともお忘れなく。

英語ですが、ココでたんぱく質の摂取量に関する実験結果に関する話がザッと見られます。たんぱく質の量が決まったら、カロリー摂取量の残りをどうやって摂るかを考えていきましょう。


たんぱく質にまつわる迷信に注意




たんぱく質の最適な摂取量や摂り方というテーマはよく語られます。その分イイ加減な情報も多くて、サイト内の他の記事でもいくつか迷信を紹介しています。もし、最近ダイエットやウェイトトレーニングに興味を持って、これからたんぱく質の量を増やしてみようと思って読んでいる人がいれば、この先経験するかも知れない筋書きをひとつ紹介します。

① 肉や魚で必要なたんぱく質を確保するのは高くつくので、プロテインを買うことにする。
② お母さん、姉や妹、彼女なんかにプロテインの容器が見付かって笑われる。
③ ちょっとネット検索してみた彼女が「高たんぱく食や、プロテインパウダーは腎不全の原因になる」という記事を見つけて心配し始める。
④ 言われてみると気になりプロテインを飲んでいいのか分からなくなる。

ハッキリ、スッキリさせておきましょう。高たんぱく食は腎不全を起こしません。アラン・アラゴンの説明を紹介したいと思います。
1983年に初めて、たんぱく質の摂取量が増えると糸球体濾過量(GFR)が高まることが分かりました。糸球体濾過量は、腎臓が1分あたりに濾過する血液の量と考えてください。この発見から、多くの研究者は糸球体濾過量が高くなれば、腎臓に掛かる負担も大きくなると考えたのです。科学的に見てどうかと言うと、20年近く前にオランダ人研究者が、たんぱく質を多く含む食事はたしかに糸球体濾過量を高めるものの、腎機能に悪影響を及ぼすことはないとしています。事実、これまでに発表された研究結果では、最大で体重1kgあたり2.8gのたんぱく質を摂ったものまで含めて、健康な腎臓に害を及ぼしたものはありません。

Alan Aragon from Men’s Health
※ 除脂肪体重ではなく体重1kgあたり2.8gというのは、非常に高いたんぱく質摂取量です。
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  • アンディ・モーガン
    イギリス出身のダイエットコーチ兼パーソナルトレーナー。日本在住で滞在歴は7年。フィットネス業界にはいい加減な情報やデタラメが多く、特に日本では本当に使える情報源が少ない現状を少しでも変えたいと、ウェブサイトを立ち上げて日本語・英語両方で情報を発信している。ボディビルダー、格闘家、一般トレーニーなどのダイエット指導を行う一方、その指導経験をガイドにまとめてウェブサイトで公開中。

フィットネス&ボディメイク情報誌
[ PHYSIQUE MAGAZINE 004 ]

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