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IFBB パウエル国際審査委員長ジャッジ&コーチセミナー 参加レポート 第一部

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掲載日:2022.10.28
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2022年10月1日、北とぴあにて開催されたIFBB パウエル国際審査委員長ジャッジ&コーチセミナーの参加レポートを掲載。
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このセミナーは最新のルールや基準を共有し、一貫性を持たせるために世界中で行っています。基本的に審査員向けのセミナーですが、その知識はコーチや選手にも役立ちます。
いつもセミナーを始める前にはこの写真をお見せしています。私も選手でしたので選手の気持ちもわかります。

ボディビルカテゴリにおいて我々審査員は大きい筋肉やディフィニションを重視した審査を行っており、それらで順位をつけることは難しくありません。

しかし近年新設されたメンズフィジークやビキニのカテゴリは一般的な多くの人が憧れる理想的な体型の象徴として位置づけをしているため、ボディビルとは異なる審査基準になります。
メンズフィジークやビキニでは筋肉量やディフィニションよりは「カテゴリーに適した身体をしているか」が重要になります。審査員はこの点を把握する必要があります。

また、審査の結果はそれぞれのジャッジの採点によるもので、審査委員長や特定の一人の審査員の見解がそのまま結果として反映されるわけではありません。

ボディビル

この4名をどう評価するか

この4名をどう評価するか

鍛え上げた人間の身体は芸術です。
その中で、いま表示している数名のボディビルダーを皆さんはどう評価しますか?

私は一番右が最も美的だと思いますが、ルールの中には「美とはなにか」は記されていませんので各々の主観に委ねられてしまう部分でもあります。この部分が審査員に求められる技術のひとつです。

一番右の選手と一番左の選手の違いを指摘できますか?
一番左の選手は腹部が肥大しています。
そもそもボディビルダーは体脂肪が少ない状態が理想なのに、腹部が膨らんでいるのは良くありません。はっきりとは断言できませんが、状態を見る限りインスリンなどの禁止されている薬物を使用している疑いがあります。
この状態であればステージに並んだ時点で審査員は順位を下げるべきです。膨らんでいる腹部はボディビルではありません。ベリービルダー(腹部を育てる者)であってはいけません。
禁止薬物の弊害

禁止薬物の弊害

ステロイド系の禁止薬物の弊害として女性化乳房があります。しかし性ホルモンの量は個人差が大きいため、女性化乳房の状態であれば全員失格になるわけではありませんが、身体が美しく見えない以上、審査員は順位を下げるべきだと考えます。下位になることで選手自身に今の状態は良くないと知ってもらうことも重要です。

また、その選手から「なぜ順位を下げたのか」と尋ねられた場合には薬物使用の疑い等の話しはせず、シンプルに「美しくないから」と伝えるべきです。
審査員として正しい判断をしなければいけません。

本日の大会(JBBF FITNESS JAPAN GRAND CHAMPIONSHIPS 2022 ボディフィットネス / ビキニフィットネス / メンズフィジーク)の参加者は皆素晴らしい体をしていましたが、メンズフィジークとビキニは少し筋量が多すぎるように思いました。

筋の不自然な隆起によりシントールが疑われる場合もそれがその場で証明できない以上、審査員はその選手を失格にすることはできません。過去に、選手に直接不自然な隆起を問いただすと「これは腫瘍であり、大会が終わったら切除してもらう」と言った選手もいました。
こういった極めて不自然な体型をしている場合も審査員は順位を下げるべきです。

どのカテゴリにも共通して言えることですが、選手が横に並んでポージングをしている間、審査員は多くの選手から上位の選手を素早く見極めなくてはなりません。
例えばダブルバイセプスポーズは上腕二頭筋だけが重要というわけではなく、どのポーズにおいてもトータルパッケージで捉えて比較することが大事です。

メンズフィジーク

この画像の選手がメンズフィジークの本来の理想体型

この画像の選手がメンズフィジークの本来の理想体型

メンズフィジークは最も審査が難しいカテゴリーだと思います。このカテゴリーは大きすぎず、魅力的に映る身体を理想とします。
ボディビルと比べて大会に出場するまでに時間がかからず、若者を中心に人気を博している出場しやすいカテゴリです。なお表情も審査対象のため髭は望ましくありません。
どの選手もポージングが不自然。左から二番目の選手はコスチュームが大きすぎる例。「お兄ちゃんから借りてきたようだ」

どの選手もポージングが不自然。左から二番目の選手はコスチュームが大きすぎる例。「お兄ちゃんから借りてきたようだ」

現在このカテゴリーは成功しているので規則やルールを改変しない方が良いと考えます。そのためには基準を守らなくてはいけません。
筋肉が大きい選手に良い順位をつけてしまうと、上位に入るためには大きな筋肉が必要であると他の選手に勘違いをさせてしまいます。メンズフィジークでボディビルダーのような筋肉をしているのは望ましくありません。

現在メンズフィジークとビキニにこの傾向があることを懸念しています。また、どちらもポージング時の過度なラットスプレッドには注意する必要があります。

クラシックフィジーク

記事画像7
クラシックフィジークはボディビルのカテゴリーで、採点基準はボディビルと同様です。自由にポーズがとれるクラシックポーズは身体を正面か横へ向けますが、顔は正面に向ける必要があります。
クラシックフィジークに特徴的なバキュームポーズは腹部が肥大している選手を排除する目的もあります。

もし、エントリーの時点でバキュームポーズができないのであればこのカテゴリーではなくボディビルカテゴリに出るべきです。
例え腹部が出ていなくても、しっかりとバキュームポーズがとれていなければ順位は下がります。腹部が出ている上でバキュームポーズがとれていなければ失格になる可能性もあります。
右の選手はバキュームができているように見えるが実際はできていない

右の選手はバキュームができているように見えるが実際はできていない

バキュームポーズができなければ順位が大幅に下がることはもちろん、本来は出場できずに失格になります。
しかし受付の段階でそれを判断することはできません。判断するのは受付ではなく審査員です。そのためステージに上がってもらい、ステージ上で審査員が判断します。

続き:第二部