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孤高の探求者 山本義徳インタビュー #2 ダイエット法とサプリ編

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掲載日:2017.11.13
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インタビュー#1はこちら
インタビュー#3 Q&A編

ボディビルダーでありトレーニング指導者として幅広く活躍する山本義徳さん。ダルビッシュ有選手、松坂大輔選手らトップアスリートから一般の方までクライアントを指導し、サイトを通してトレーニングや栄養に関する知識を発信されています。

このほど、Kindleの電子書籍として7冊出版してきた栄養に関する最新情報を、『アスリートのための栄養学 上下』(NextPublishing=ネクストパブリッシング)より紙の書籍として出版された山本さんに、トレーニングや栄養に関して最新のお話を伺いました。

□ 「ボトルネック」をなくす

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-- 山本さんは様々な方のトレーナーをされていますが、どういった観点でトレーニングメニューを作成されますか?


いちばん大事なのはボトルネックをなくすことですね。弱いところがあるとパフォーマンスが制限されてしまいますので、それぞれの弱点をなくすことです。スクワットなどのいろんな種目やストレッチをして、関節の可動域をみたり、いろんな検査方法でボトルネックが分かると思います。

その上で、たとえば体操や競馬の騎手は体重をあまり増やさないほうがいいから、できるだけ筋肉を増やさないで筋力を高めるトレーニングを指導したりします。


-- 栄養面でも種目ごとにレシピは変わるものですか? マラソンなら持久力が必要だからなど。

まったく違ってきます。メールでの指導もしていて、まずタイムスケジュールですね。
この時間に食べて、この時間にトレーニングをしてというスケジュールを送っていただいて、それにあわせて食事やサプリメントのプログラムを送ったりしています。


-- ダイエットもいろんな方法がありますが、山本さんのオススメの方法はありますか?

いろいろあるんですけど、ダイエットで問題になるのがプラトー(Plateau、停滞期)です。
体重の減少が止まってしまう停滞期のことで、停滞期を克服する方法にサイクルダイエットがあります。ある程度の短い期間だけダイエットをして、普通の食事に戻す。たとえば2週間ダイエットして、2週間普通の食事に戻す。それを何回も繰り返すことによってプラトーを避けて体重を落としていく。

どんなダイエットでも2、3週間経つと停滞してしまいます。そうなる前に普通の食事に一旦戻す。ただし体脂肪は増やさないようにする。短期のプチダイエットと普通の食事を繰り返すサイクルダイエットが、継続的に体重を落とすのに効果的だと思います。


-- ストレスもたまりづらいですね。体重というより体脂肪を落とす。

体脂肪ですよね。筋肉を落とすダイエットは身体にもよくないですし、代謝が落ちてダイエットをやめた時にリバウンドしやすくなってしまいます。


-- ローカーボ、ケトジェニックはどう思われますか?

ローカーボといってもいろいろありますけど、ケトジェニックの方が効果が高いと思います。ローカーボでエネルギー源になる糖質が制限されると、筋肉を分解してアミノ酸を糖質にしようとする「糖新生」という働きが高まるんですね。

だから、糖質を中途半端に制限するダイエットだと筋肉が分解されやすくなります。それよりは一気に糖質を減らして脂肪からケトン体を作る方がいい。ケトン体をエネルギーにしておけば糖新生が起こらず、筋肉の分解も発生しにくい。1日の糖質の摂取量を50グラム以下に抑えるような厳しいケトジェニックのほうが、筋肉を落とさないで有効にダイエットできると思います。


-- 1食だけご飯を抜いておこうといった中途半端のはよくないんですね。糖質を50グラム以下にしたらすぐにケトジェニックになりますか?

すぐにはならないです。ケトン体をエネルギーにするまでにある程度の時間が必要ですので。でも2日もするとケトジェニック状態にはなりますね。


-- ウェイトをして、その栄養状態でも筋肉は発達していきますか?
初心者なら起こりうるんですけど、ある程度トレーニングしている人には難しいです。
身体を作るのはアナボリックかカタボリックですね。筋肉や脂肪が増える状態をアナボリック、減る状態をカタボリックといい、筋肉だけアナボリック、脂肪だけカタボリックというのはなかなかうまくいかないです。
だからまずはダイエットをして体脂肪を落としたあと、ちゃんと食べて筋肉を増やしていくのがいい。できればダイエットする時期、筋肉を増やす時期を切り分けたほうが効率が高いと思います。

□ ワークアウトで栄養を摂るタイミング

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-- 以前総監修された『体脂肪を減らして筋肉をつけるトレーニング』(永岡書店、2003年)でも栄養について書かれていますが、当時からどんな変化がありますか?

出版した2003年頃に比べると、だいぶ変わっています。プロテインを飲むタイミングもそうで、今はトレーニングの前にも飲みましょうというふうに変わってきています。


-- トレーニングの前に。

1時間くらい前に飲んだほうがいいと。あとはワークアウトドリンクといって、トレーニング中のドリンクが大事と言われています。
ウェイトトレーニングを始めて15分くらいすると、筋たんぱくの合成が活発になります。だからトレーニング中にはもう筋肉を増やすような栄養素を入れてあげた方がいい。以前はトレーニングのあとにプロテインを摂るので十分と言われていましたが、今はトレーニング中から補給したほうがいいと。

なぜかと言いますと、たとえば腕のトレーニングをすると腕の筋たんぱくの合成が活発になり、栄養素が足りないとほかの部位の筋肉を分解するんです。腕の筋肉を取りだすために足の筋肉が分解されるといったことが起こる。だからほかの部位の筋肉が分解されないようにアミノ酸を摂ってあげて、腕の筋肉の材料を補給するということです。


-- 筋肉の分解がトレーニング中に起きているんですか?

そうです。ですからトレーニング前にある程度プロテインを摂って血中アミノ酸濃度を高めておいて、さらにトレーニング中もアミノ酸を飲むと。


-- 摂る適量といいますか、それぞれの目的によりどのように違いが出ますでしょうか?

筋肉を増やしたい場合は今話したような摂り方になり、ダイエットしたい場合は体脂肪をいかにエネルギー源として使うか、脂肪細胞をいかに分解するかですね。脂肪酸とグリセリンがくっついたものが体脂肪で、2つを引き離して脂肪酸を血中に出してあげる。たとえばカフェインはその働きをしてくれます。だからコーヒーを飲んで脂肪酸を血中に出すと、脂肪酸がエネルギーとなってトレーニング中に燃えてくれます。


-- HMBの販売が始まるなどサプリメントが多様化していますが、今後こういうサプリがあったらいいというのが何かありますか?

筋たんぱくの合成に働くmTOR(エムトール)を活性化するような栄養素、ホスファチジン酸というのがあるのですが、そのホスファチジン酸がエムトールを活性化してくれるサプリが日本ではまだ出ていません。

リンゴの皮などに含まれるウルソル酸もエムトールの活性化やダイエットに役立ってくれたり、海外では出ていても日本ではなかったりしますので、今後日本でサプリメントとして認められるようになったら入れていきたいですね。


-- エムトールは細胞の増殖や糖代謝に関わるものですよね。

インスリンの働きでエムトールが活性化してきます。ただエムトールが活性化すると細胞を増殖しますので、がん細胞が増殖してしまう問題もあります。ですからエムトールを活性化させずにたんぱく合成酵素だけを活性化するサプリがあったりします。

インタビュー#3 Q&A編

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