NSCAジャパン北関東・東北地域S&Cシンポジウム 現場で使える簡単なメンタルトレーニング#2 笠原 彰
掲載日:2019.02.04
2018年10月13日に作新学院大学にて行われた、特定非営利活動法人NSCAジャパン 北関東・東北地域S&Cシンポジウムにおける笠原 彰氏(M.S.,作新学院大学経営学部スポーツマネジメント学科教授)の講演をレポート!
メンタルトレーニングの基本原理
メンタルトレーニングの基本原理(伊藤,2005)として4つのキーワードを抜き出してみました。
・思考
・感情
・身体反応
・行動
まずは思考、認知。
思考を定義すると、「頭の中で言葉を思い浮かべること」になります。
人が考えているときは、一瞬ですが頭の中で言葉を思い浮かべています。
「絶対勝つ」、「失敗したらどうしよう」などです。これらは自動思考と呼ばれ、一瞬で出ては消えていきます。
「感情」という言葉を辞書などで引くと「気持ち」と出てきますが、喜怒哀楽のことです。
アスリートは「気持ち」という言葉をよく使うのですが、気持ちと思考は分けて考えます。
思考は頭の中で言葉が出る。感情は頭の中で言葉が出なくて、主観としては胸の中で感じやすい。平仮名四文字でうれしい、たのしい、かなしいなど。平仮名三文字だとつらい、きつい、やばいなど。
あとはメンタルを表しそうな二字熟語。自信、弱気、緊張、不安、集中。ひらがなで言葉が続くものもあります。いらいら、わくわく、そわそわ、うきうき。
「身体反応」というのは体の内部の変化で、自律神経系の反応と言われていますが心臓がドキドキしたり、手足が震える、お腹が痛くなる、体が固くなるなどです。
「行動」に関して、行動分析の分野でアメリカの心理学者がジョークを込めて言っていますが、「死人にはできない」。行動とは他人から見てわかる動きのこと。講演を聞いて頂いて今メモをとっているのも行動です。
・思考
・感情
・身体反応
・行動
まずは思考、認知。
思考を定義すると、「頭の中で言葉を思い浮かべること」になります。
人が考えているときは、一瞬ですが頭の中で言葉を思い浮かべています。
「絶対勝つ」、「失敗したらどうしよう」などです。これらは自動思考と呼ばれ、一瞬で出ては消えていきます。
「感情」という言葉を辞書などで引くと「気持ち」と出てきますが、喜怒哀楽のことです。
アスリートは「気持ち」という言葉をよく使うのですが、気持ちと思考は分けて考えます。
思考は頭の中で言葉が出る。感情は頭の中で言葉が出なくて、主観としては胸の中で感じやすい。平仮名四文字でうれしい、たのしい、かなしいなど。平仮名三文字だとつらい、きつい、やばいなど。
あとはメンタルを表しそうな二字熟語。自信、弱気、緊張、不安、集中。ひらがなで言葉が続くものもあります。いらいら、わくわく、そわそわ、うきうき。
「身体反応」というのは体の内部の変化で、自律神経系の反応と言われていますが心臓がドキドキしたり、手足が震える、お腹が痛くなる、体が固くなるなどです。
「行動」に関して、行動分析の分野でアメリカの心理学者がジョークを込めて言っていますが、「死人にはできない」。行動とは他人から見てわかる動きのこと。講演を聞いて頂いて今メモをとっているのも行動です。
メンタルトレーニングとは具体的に何か
これがわからなければメンタルをトレーニングしようがありません。
では具体的に何をトレーニングすべきかというと、先に出した4つのキーワード(思考、感情、身体反応、行動)のうち、思考と行動です。
人から見てわかる動きと、頭に浮かぶ言葉をコントロールします。そうして感情と身体反応をコントロールしていきます。
感情と身体反応をコントロールすると言ってもどうすればいいのかよくわかりませんので、わかりやすい思考と行動を変えていきます。
メンタルトレーニングを行う上での悩みトップ2は、「試合中に気持ちの切り替えができない」、「試合前に緊張したり不安になる」、この2つです。
では、いつそうなるのか。
試合前に緊張すると言っても、試合開始の一秒前も試合前だし、前日も試合前です。いつから緊張し始めるのか。また、いつ最も緊張が強くなるのかを見極めます。
試合中に気持ちの切り替えができないのは、ミスをした時。しかしすべてのミスで気持ちの切り替えができないわけではありません。
連続でミスをしたとしても、ある特定の状況下でミスをしたときや勝敗に大きく影響する重要なポイントを落としたとき、競っているときなども考えられます。
では具体的に何をトレーニングすべきかというと、先に出した4つのキーワード(思考、感情、身体反応、行動)のうち、思考と行動です。
人から見てわかる動きと、頭に浮かぶ言葉をコントロールします。そうして感情と身体反応をコントロールしていきます。
感情と身体反応をコントロールすると言ってもどうすればいいのかよくわかりませんので、わかりやすい思考と行動を変えていきます。
メンタルトレーニングを行う上での悩みトップ2は、「試合中に気持ちの切り替えができない」、「試合前に緊張したり不安になる」、この2つです。
では、いつそうなるのか。
試合前に緊張すると言っても、試合開始の一秒前も試合前だし、前日も試合前です。いつから緊張し始めるのか。また、いつ最も緊張が強くなるのかを見極めます。
試合中に気持ちの切り替えができないのは、ミスをした時。しかしすべてのミスで気持ちの切り替えができないわけではありません。
連続でミスをしたとしても、ある特定の状況下でミスをしたときや勝敗に大きく影響する重要なポイントを落としたとき、競っているときなども考えられます。
思考を変えるためにはその時の思考を聞く
緊張してしまったり体が固くなってしまったりに関して聞いても仕方ない。
緊張したときに、頭の中でどんな言葉が思い浮かんでいるかということが大事です。
大体は「~したらどうしよう」という言葉が浮かんでいることが多いです。失敗したらどうしよう、負けたらどうしよう。
思考を変えるためにはその時の思考を聞かなければいけません。
大抵、アスリートは感情と身体反応を伝えてきますが、そのとき思考としてどんな言葉が浮かんでいたかを知る必要があります。その「頭に浮かんだ言葉」をメンタルトレーニング的には「セルフトーク」といいます。
緊張していたときに何をしていたか。例えば「うろちょろしていた」という表現だったとしてもそれを見逃さないで掘り下げて、具体的にどんなふうにしていたかも聞きます。下を向いて歩いていたのか、小走りで動いていたのか、タオルを被って座っていたのか。
緊張したときに、頭の中でどんな言葉が思い浮かんでいるかということが大事です。
大体は「~したらどうしよう」という言葉が浮かんでいることが多いです。失敗したらどうしよう、負けたらどうしよう。
思考を変えるためにはその時の思考を聞かなければいけません。
大抵、アスリートは感情と身体反応を伝えてきますが、そのとき思考としてどんな言葉が浮かんでいたかを知る必要があります。その「頭に浮かんだ言葉」をメンタルトレーニング的には「セルフトーク」といいます。
緊張していたときに何をしていたか。例えば「うろちょろしていた」という表現だったとしてもそれを見逃さないで掘り下げて、具体的にどんなふうにしていたかも聞きます。下を向いて歩いていたのか、小走りで動いていたのか、タオルを被って座っていたのか。
思考を否定せずに置き換える
思考と行動がわかったら、望ましい思考と行動に変えていくのがメンタルトレーニングです。
例えば、「失敗したらどうしよう」という考え方に関してそれを打ち消そうとしないで、「でも」という言葉をつけます。
つまりその言葉は認めて、「でも、今やるべきことに集中しよう」というように、別の言葉に置き換えます。これは認知の置き換えというのですが、セルフトークではこういった形で言葉を置き換えます。
これを打ち消そうとしてしまうと「逆説的思考侵入効果」と言って、かえって不安を思い起こしてしまいます。選手によってはこれを「滲み出る」という言い方をします。
なので、「でも~」というように、強がりでもなんでもいいので呪文のように言い聞かせる。言い聞かせることがセルフトークなので、そういった点を強化していきます。練習日誌にそれらを書くことも有効な手法です。
練習を積み重ねていくことで自然と変わっていくものではなくトレーニングなので、何回も繰り返して身につけていくことが重要です。
例えば、「失敗したらどうしよう」という考え方に関してそれを打ち消そうとしないで、「でも」という言葉をつけます。
つまりその言葉は認めて、「でも、今やるべきことに集中しよう」というように、別の言葉に置き換えます。これは認知の置き換えというのですが、セルフトークではこういった形で言葉を置き換えます。
これを打ち消そうとしてしまうと「逆説的思考侵入効果」と言って、かえって不安を思い起こしてしまいます。選手によってはこれを「滲み出る」という言い方をします。
なので、「でも~」というように、強がりでもなんでもいいので呪文のように言い聞かせる。言い聞かせることがセルフトークなので、そういった点を強化していきます。練習日誌にそれらを書くことも有効な手法です。
練習を積み重ねていくことで自然と変わっていくものではなくトレーニングなので、何回も繰り返して身につけていくことが重要です。
重要な局面で行うためには日頃から練習を積むこと
行動に関しても、下を向きうつむいているようならば姿勢を正したり口角を上げるよう促す。
こういったことを「アティチュードコントロール」と言い、普段の練習ではできるのですが非常に重要な勝負の局面でアティチュードコントロールができるかということです。
そのためには習慣化する必要があるので、やはり普段から練習していく必要があります。簡単に言えば、メンタルトレーニングとはこういった感じです。
魔法のようなマル秘テクニックがあるわけではなくて、セルフトークの置き換えと、姿勢のコントロールやルーティーンを身につけて大事な場面でもできるようにする。
そのためにはいつからそうすべきか、そのときには何を思ってどんな気持ちでどう動くのかを明確にして言葉と行動をコントロールすることを普段からトレーニングしていく必要があります。
こういったことを「アティチュードコントロール」と言い、普段の練習ではできるのですが非常に重要な勝負の局面でアティチュードコントロールができるかということです。
そのためには習慣化する必要があるので、やはり普段から練習していく必要があります。簡単に言えば、メンタルトレーニングとはこういった感じです。
魔法のようなマル秘テクニックがあるわけではなくて、セルフトークの置き換えと、姿勢のコントロールやルーティーンを身につけて大事な場面でもできるようにする。
そのためにはいつからそうすべきか、そのときには何を思ってどんな気持ちでどう動くのかを明確にして言葉と行動をコントロールすることを普段からトレーニングしていく必要があります。
IZOF(アイゾフ)理論 (Hanin, 2007)
アイゾフ理論では「ゾーン」という言葉が出てきます。
最高の実力が発揮できる、最高の心理状態です。スポーツ心理学的には「フロー」と言われることが多いです。
ここで大事なのは、ゾーンに入る緊張状態は人それぞれ違うということです。
不安や緊張度が低い状態のほうがゾーンに入りやすい人もいれば、不安や緊張度が高いほうがゾーンに入りやすい人もいます。
メンタルトレーニングプログラムも人それぞれ変わってくるため、チーム全体に対するメンタルトレーニングプログラムの作成は個人に対してのメンタルトレーニングプログラムの作成よりも遥かに難しいものになります。
最高の実力が発揮できる、最高の心理状態です。スポーツ心理学的には「フロー」と言われることが多いです。
ここで大事なのは、ゾーンに入る緊張状態は人それぞれ違うということです。
不安や緊張度が低い状態のほうがゾーンに入りやすい人もいれば、不安や緊張度が高いほうがゾーンに入りやすい人もいます。
メンタルトレーニングプログラムも人それぞれ変わってくるため、チーム全体に対するメンタルトレーニングプログラムの作成は個人に対してのメンタルトレーニングプログラムの作成よりも遥かに難しいものになります。
カタストロフィー理論
もう一つが「カタストロフィー理論(Hardy,1990,1996).」です。カタストロフィーとは破局という意味です。
この理論を簡単にまとめると、体が緊張していて不安や心配が多くマイナス思考の状態でも高い実力発揮が可能ということです。しかし、一歩間違えて一定の範囲を超えてしまうと一気に緊張が高くなり実力も発揮できなくなる。
ゴルフダイジェスト社より「タイガー・ウッズも震えてる」という本が出ていまして、体が緊張していても考え方をコントロールすれば実力は発揮できるという考え方です。
トップアスリートに話を聞いてみると、オリンピック等の大会でも決して緊張していないわけではなく体の緊張は凄い。しかし、それでも金メダルを獲れる。あがってしまって実力が発揮できない人と比べて何が違うかというと、要は考え方、つまりセルフトークが違います。
選手たちにサッカーの本田圭佑選手のペナルティキックの映像を観せて、蹴る前に何をしていたかを質問します。その行動が毎回同じならば「ルーティーン」。
大抵、ルーティーンは飛びやすいのですが、どんな緊張をしてもルーティーンを飛ばないようにするためには繰り返しの練習が必要です。
この理論を簡単にまとめると、体が緊張していて不安や心配が多くマイナス思考の状態でも高い実力発揮が可能ということです。しかし、一歩間違えて一定の範囲を超えてしまうと一気に緊張が高くなり実力も発揮できなくなる。
ゴルフダイジェスト社より「タイガー・ウッズも震えてる」という本が出ていまして、体が緊張していても考え方をコントロールすれば実力は発揮できるという考え方です。
トップアスリートに話を聞いてみると、オリンピック等の大会でも決して緊張していないわけではなく体の緊張は凄い。しかし、それでも金メダルを獲れる。あがってしまって実力が発揮できない人と比べて何が違うかというと、要は考え方、つまりセルフトークが違います。
選手たちにサッカーの本田圭佑選手のペナルティキックの映像を観せて、蹴る前に何をしていたかを質問します。その行動が毎回同じならば「ルーティーン」。
大抵、ルーティーンは飛びやすいのですが、どんな緊張をしてもルーティーンを飛ばないようにするためには繰り返しの練習が必要です。
蹴る瞬間ではなく蹴る前までに何をするか
メンタルトレーニングで扱うのは蹴る瞬間ではなく、蹴る前までに何をするかという部分です。
今年サッカーのワールドカップでイングランドが4位に入ったときに、久しぶりにPKで勝ちました。ずっと今までPKで負けていたんです。監督が代わり、新たに導入したものがメンタル的な分析。
その結果、PKのときにボールに向かうスピードが他のチームよりも早いことがわかり、代表選手に対してセンターサークルからボールを蹴る位置までゆっくり歩く練習を何回も繰り返したそうです。
歩くという単純なことが、大きな舞台になると普段できている選手もできなくなってしまう。それくらいプレッシャーが大きいわけです。
また、本田選手は試合後のインタビューでPKに関して「真ん中蹴って取られたら仕方ないな」と思ったと言っています。これがセルフトークです。
まずは「真ん中に蹴る」というプランを明確にします。目標設定だと「行動目標」という目標です。
一方、「シュートを決める」や「勝つ」は「結果目標」。結果目標はすごくプレッシャーになりやすい。それに対して、真ん中に蹴り「取られたら仕方ない」は、言葉を変えれば結果を気にしないという思考です。
つまり緊張はしていますが、先程のカタストロフィー理論にあてはめると思考を良くコントロールできているということがわかります。
肩を動かしたり目を閉じて上を向いたり等、リラクゼーションで使われる動作で緊張をほぐそうとする様子も見られますが、動作で緊張をほぐすには限界がありますので、それを補うためにセルフトークで良くコントロールしていると思います。トップアスリートのこういった行動や証言は非常に説得力があります。
続きは近日公開!
今年サッカーのワールドカップでイングランドが4位に入ったときに、久しぶりにPKで勝ちました。ずっと今までPKで負けていたんです。監督が代わり、新たに導入したものがメンタル的な分析。
その結果、PKのときにボールに向かうスピードが他のチームよりも早いことがわかり、代表選手に対してセンターサークルからボールを蹴る位置までゆっくり歩く練習を何回も繰り返したそうです。
歩くという単純なことが、大きな舞台になると普段できている選手もできなくなってしまう。それくらいプレッシャーが大きいわけです。
また、本田選手は試合後のインタビューでPKに関して「真ん中蹴って取られたら仕方ないな」と思ったと言っています。これがセルフトークです。
まずは「真ん中に蹴る」というプランを明確にします。目標設定だと「行動目標」という目標です。
一方、「シュートを決める」や「勝つ」は「結果目標」。結果目標はすごくプレッシャーになりやすい。それに対して、真ん中に蹴り「取られたら仕方ない」は、言葉を変えれば結果を気にしないという思考です。
つまり緊張はしていますが、先程のカタストロフィー理論にあてはめると思考を良くコントロールできているということがわかります。
肩を動かしたり目を閉じて上を向いたり等、リラクゼーションで使われる動作で緊張をほぐそうとする様子も見られますが、動作で緊張をほぐすには限界がありますので、それを補うためにセルフトークで良くコントロールしていると思います。トップアスリートのこういった行動や証言は非常に説得力があります。
続きは近日公開!