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NSCAジャパン S&Cカンファレンス2018講演レポート
アミノ酸摂取の新常識~運動のPre・Intra・Postに求められるアミノ酸について~
第2部「アミノ酸に関する世界の最新スポーツ栄養学」#2 鈴木いづみ氏

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掲載日:2019.03.22
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アスリートが本来のパフォーマンスを十分に発揮するには、普段の食事に加えてアミノ酸等の栄養素を補足的に用いる事が鍵となる。これら栄養素の補給に関して運動前・中・後のベストタイミングで摂るべきアミノ酸を紹介する。

本セミナーは3部構成になっており、第1部ではスポーツサプリメント先進国であるアメリカの事例を紹介、第2部ではアミノ酸に関する最新スポーツ栄養学についてスポーツ栄養士から紹介する。そして第3部ではスポーツ栄養士と、フェンシングナショナルチームコーチによる対談形式で実際の現場で摂るべきアミノ酸について議論する。
NSCAジャパン S&Cカンファレンス2018における講演をレポート!

サプリメントの根拠

皆様はAISってご存知ですか?
オーストラリアのスポーツ科学の研究所、日本で言うところのJISS(国立スポーツ科学センター)です。
AISでは、サプリメントを等級分けしているのです。科学的根拠のしっかりしているものがA、その下がB、C、Dというように分類して、それを公表しているのですけれども、このNOに関しましては、Aグループになっています。

正しくは、ビートルート・ジュースという名前で出ているのですが、中身はNOです。こういった点からも、どうやら世界的にもアルギニン・シトルリンから生み出されるNOのスポーツ・パフォーマンスの効果に期待が高まっているということがあります。

先ほどの話に戻りますが、アルギニンはアルギニンで、パフォーマンスアップに影響した。シトルリンはシトルリンで、それを食い込むような形で、パフォーマンスアップに貢献していた。

ところが、とても多くの量が必要になるわけです。
お互いに兄弟の関係であるならば、別々に摂るのではなく、「一緒に摂ったら、もっと少ない量でもっと良い機能が期待できるのではないか?」という仮説が立てられましたので、実験してみました。

シトルリンとアルギニンを合わせて摂る効果

シトルリンとアルギニンが、NOを介して運動パフォーマンスを上げるということを、スポーツ選手を使って実証した試験です。

それぞれ単独だと、とてもたくさん取らなくてはいけないのですが、これは非常に少なくて、シトルリンを1.2g、アルギニンを1.2g。二つ合わせても、たった2.4gです。これを摂らせて、同じような効果が得られるのかを見ています。

試験デザインとしては、1週間毎日、シトルリン1.2gとアルギニン1.2gを摂らせます。
そして7日目に運動試験をします。自転車エルゴメーターを用いて10分間の全力疾走ですが、この当日もパフォーマンスの1時間前にシトルリン・アルギニンを摂って、1時間後に10分間の試験を行っています。

そして2か月の期間を空けて、最初に試験食を摂ったグループは次はプラセボ。元々摂らなかったグループは、1か月後に同じ摂取法をやるということをしていました。

そうすると、5分以降はプラセボよりも摂取群のほうが優位にパワーの出力が上がっています。
言うなれば、ある程度パワーの発揮を継続しなければいけない種目に関して言うと、少なくとも5分以降の力の発揮がずっと継続できることがわかります。

10分間の平均のパワーの出力をまとめてみると、プラセボ群より摂取群のほうがより高いということがあるので、やはりそういった機能が、たった1.2gでも示されたということが報告されました。

今はパワーの話をしましたが、例えば陸上の中長距離に関しても同じことが言えて、自転車の走破距離を調べてみるとどうなのかと言うと、距離もやはりシトルリン・アルギニン摂取群のほうがしっかりと長距離動いているということがあるので、持久力もアシストするらしい、ということが分かってきました。

ということから、シトルリン・アルギニンはどうやらプレワークアウト型のアミノ酸であると言えます。

BCAAの研究と結果

では、運動中はどうすべきか。
ここもう20年ぐらいは使っている方、多くなっていますよね。ブランチド・チェーン・アミノ・アシッドです。BCAAですね。イントラ・ワークアウト、運動中でのアミノ酸はやはりBCAAになると思います。

BCAAもいろんな論文があって、正直、怪しいものもあります。
なので、最新のシステマティックレビューを引っ張ってきました。これは非常に貴重です。

これまで行われたBCAA関連の研究を集めて「じゃあBCAAはどうなのか?」と論じた論文です。
合計2133本の論文を論じている「BCAAは筋損傷を緩和するための効果的な栄養戦略になるか?」というシステマティック論文です。

BCAAに関連する2133本の論文を全部調べてみたところ、しっかりとした研究はわずか11論文。

結果として、痛みに関してやクレアチンキナーゼという血液中の疲労物質に関してや運動パフォーマンスはどうだったかということがあるのですが、この11本の論文のうち、BCAAの効果があったものが11本中6本の論文で、おそらくポジティブなのではないかということが出てきているので、やはりどうやらBCAAはいいらしいです。

しかし「そうでない」と言っているの研究も半分近くあるのですけれども、それでも、研究デザインを見ると、ほとんどが運動前か運動中の摂取になっています。まずBCAAはどうやら運動前もしくは運動中が、タイミング的にもよさそうです。

研究の一つを例にすると、筋損傷の段階である血漿クレアチンキナーゼを、試験運動前から運動後の経時的な変化を確認しています。血漿クレアチンキナーゼの値が高ければ筋疲労の程度が高いということになります。

7日間毎日20gのBCAAを摂取して、運動前、24時間後、48時間後、96時間後までを追った結果、プラセボのクレアチンキナーゼが高い。つまり、筋肉の疲労度が高いということが分かります。非摂取群のほうが低くて済んでいます。

経時的にも落ち方は一緒ですが、とにかく、24時間後の筋疲労のレベルがBCAA摂取で少なくて済むということです。

それから最大筋力。当然、運動後は最大筋力が落ちますが、プラセボに対して、BCAA摂取群のほうが落ちる程度が少なくて済んでいます。

以上の点で「筋肉を守る」ということを考えた時に、BCAAの摂取は、前あるいは中というようなタイミングがどうやら良いだろうと言えると思います。

ということで、「1日にこれぐらいの栄養を摂りましょう」ということをスポーツ栄養士の方達は言いますが、「タイミング」あるいは「回数」というところをしっかりと理解して使うということも非常に重要になってくるということがこれらの研究から分かるのではないかと思います。

サプリメントの正しい使い方

さて、これは私がサポートしている、高タンパクかつ低脂肪で大変バランスの良い食事をしているJリーグ選手からの質問です。

「サプリメントとかにいろいろ頼るのは、選手として能力を上げようとするのに、いいことですよね、自分に投資という意味で?」

「いいことだと思いますよ。ベースとなる食事をしっかり取って、栄養でどこにも穴がないように気を付けている人が、さらに高みを目指したいという場合に、エルゴジェンは有用です。でも、日頃の食事がいい加減であれば、まずはそこを改善してからですね。やれることはちゃんとやっている人だから、エルコジェンをするというのはいいと思いますよ」

という風に答えています。
それこそ食事でできることは全部やって、さらにもう一皮剥けたいとか、もう一歩高いところを目指したいという時に、上手にサプリメントをタイミングよく使うということも大事なのではないかと思います。

私からは、世界のアミノ酸に関する最新情報としまして、いくつかの文献をお話し、皆様への情報提供とさせて頂きたいと思います。ご静聴ありがとうございました。