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魚に多く含まれるDHA (ドコサヘキサエン酸)の様々な働き

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掲載日:2018.01.24
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DHA (Docosahexaenoic Acid=ドコサヘキサエン酸)

エイコサペンタエン酸と同様に魚油に含まれる、名前の長い多価不飽和脂肪酸です。ドコサヘキサエン酸も分子構造がそのまま名前になっています。エイコサとは炭素数20の事で、ペンタとは二重結合が5つあるという意味でしたね。ペンタといえばアメリカのペンタゴンを思い浮かべる方もいらっしゃるでしょう。ペンタゴンの建物が五角形をしているところからネーミングされていると言われています。同様に、ドコサとは炭素数22で、ヘキサとは二重結合が6つあるという意味です。

二重結合の部分が「空の手」で、この手に酸素がくっつくと酸化する、と先ほど説明しました。という事は、EPAよりもDHAの方が二重結合が1つ多いですから、DHAの方が酸化しやすいという事です。エイコサペンタエン酸と同様、ビタミンEも同時にしっかり摂取しないと有効に働いてくれませんね。

プロスタグランディンという大事な成分の元になるのは、実はエイコサペンタエン酸の方だけで、ドコサヘキサエン酸はなりません。しかしドコサヘキサエン酸はエイコサペンタエン酸が体内で不足している時にエイコサペンタエン酸に変わる働きを持っています。不足に備えた非常食の様なものです。

また、体内ではエイコサペンタエン酸は単独ではなく、ドコサヘキサエン酸と一緒に摂った方が効果的に働きます。食品中にはエイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸は一緒に含まれていますので、自然の形で摂るのが望ましいと言えるでしょう。サプリメントではどちらかだけが含まれているものもある様ですが、両方入っている物を選びましょう。

DHAの働き

ドコサヘキサエン酸といえば脳、というほど、ドコサヘキサエン酸は脳、網膜、神経関連組織に多く含まれます。若い時は神経細胞の樹状突起が多く、頭の回転が速いのですが、老化が進むと樹状突起が減り、情報伝達が遅れます。つまり頭の回転が遅くなる訳です。映画やテレビを観ていて、俳優さんの名前が出て来なくて「ほら、アレ、アレ」なんて言うと「老化現象だね」と言われるのはこういう訳です。ドコサヘキサエン酸はこの樹状突起の情報伝達に関与していますので、学習能力向上に寄与します。

老化だけでなく、成長期の子供にたくさん食べさせると頭が良くなるという訳です。魚をたくさん食べる日本人の頭が最近良くなくなったのは教育制度のせいだけでなく、魚を食べなくなったからだという学者もいるくらいです。

生殖能力に、母乳に

精巣、精子にドコサヘキサエン酸は多く含まれます。亜鉛やビタミンE、ビタミンB群などと同様に、精子の活動性に関係します。
また、日本人の母乳中には、欧米人と比較してドコサヘキサエン酸が2~3倍含まれています。もちろん、これは日本人が欧米人に比べてドコサヘキサエン酸の多い食生活をしているからです。

お母さんのお腹の中にいる時からたくさん必要とされていて、だいたい妊娠40週頃から胎盤を通してドコサヘキサエン酸が集められ、赤ちゃんの脳が作られると言われています。お母さんが魚好きだと、頭の良い子が生まれるかも?!

網膜機能の維持

ビタミンAの時にちょこっと勉強しました、ロドプシンという眼にある成分。これは暗順応という暗いところでもすぐ見えるように眼が反応する能力に使われます。ドコサヘキサエン酸はこのロドプシンの成分や、酸化ストレスによる視力の低下予防にも使われます。
  • 星 真理(ほし まり)
    栄養整合栄養医学協会認定 分子栄養医学管理士
    栄養学の専門家として老若男女を問わず、一般人からトップアスリートにいたるまで、あらゆるニーズにも対応した栄養指導/栄養セミナーを個人、競技チーム、学校、企業を対象に行っている。
    著書「アスリートのための分子栄養学」(体育とスポーツ出版社)
    分子栄養学(正式名称:分子整合栄養医学)
    Ortho-Molecular Nutrition and Medicine
    ノーベル賞を2つ受賞した米国人生化学者ライナス・ポーリング博士(1901~1994年)が、栄養学と医学とを融合させて研究し、分子整合栄養医学として確立した栄養医学。

  • アスリートのための分子栄養学
    2014年3月31日初版1刷発行
    著者:星 真理
    発行者:橋本雄一
    発行所:(株)体育とスポーツ出版社


[ アスリートのための分子栄養学 ]

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