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ロイシン大量配合の是非

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掲載日:2019.02.07
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こうして見てくると、BCAAの効果の大半はロイシンにあるように思えます。
ではロイシンだけ摂取すれば良いのでしょうか。またBCAAの中でもロイシンの割合を大量にしたサプリメントが見受けられますが、そのほうが効果は高いのでしょうか。

最初に考えなければいけないのが、ロイシンがタンパク合成を高めるとしても、材料となる他のアミノ酸が足りなければ意味がないということです。
どんなに腕の良い大工がいても、材料がなければ家は建てられないからです。その観点からも、ロイシンだけではなく他のアミノ酸も重要だということは、まず押さえておきましょう。

またロイシンがタンパク合成を高める時間は長く続きません。
そのためmTORの下流にあるelF4Fなどを十分に増加させることができず、実質的な効果をもたらすことができないのです。

しかしその場合、他のアミノ酸(必須と非必須両方)と同時摂取することにより、タンパク合成を実質的に高めることができたという報告があります。(※115)

これはロイシンが瞬間的にタンパク合成を高めるため、血漿中の必須アミノ酸レベルが低下してしまうことが原因だと思われます。
これは後で重要になってくることですが、筋タンパク合成が高まっているときには、必須アミノ酸(EAA)が十分にあることが必要なのです。

またロイシンを過剰摂取した場合、バリンの不足をもたらす可能性や(※116)、トリプトファン→ナイアシンへの変換を阻害する可能性もあるかもしれません。(※117)またβ細胞の機能を低下させたり、インスリン抵抗性を惹起したりする可能性もあるかもしれません。(※118)

つまりロイシンだけでなく、他のアミノ酸もそれなりの量を摂取する必要があるのです。
ここで同じBCAAのバリンに着目しましょう。
バリンはTCAサイクルの中間体を作り出します。ロイシンがつくるのはアセチルCoAだけであり、中間体はつくりません。

なおイソロイシンはアセチルCoAと中間体の両方を作り出します。中間体が足りないとオキサロ酢酸がつくられなくなるため、TCAサイクルが回りにくくなってしまいます。
なおケトン体は中間体を作り出せますので、ローカーボ・ダイエットでケトーシスになっている場合、この心配は少なくなります。ちなみに脳や神経には特別な酵素(BCATC)が存在し、ロイシンからグルタミン酸を作り出すことができます。

筆者は15年ほど前にバリンを多めに配合したBCAAを開発し、「運動時のエネルギーアップが体感できる」、「汗をかきやすい」といったフィードバックを多く戴いております。商品名はLIV845ですので、興味のある方は検索してみてください。ロイシン(Leucine)のL、イソロイシン(Isoleucine)のI、バリン(Valine)のVを8:4:5の割合で配合したものです。
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次にイソロイシンです。
実はイソロイシンにはロイシンにも勝る強いグルコース取り込み作用があることが最近になってわかりました。(※119、※120)
またイソロイシンはPPARaをアップレギュレートさせると同時にUCP2やUCP3を増加させ、体脂肪を減らす可能性もありそうです。(※121)

こう見てくると、BCAAの配合比率としてロイシンだけを特に増やす必要はなさそうです。医療用BCAA(リーバクトなど)ではバリンが多めに配合されていることなども考慮してBCAAサプリメントを選ぶようにしたいところです。

115: Amino acid availability and age affect the leucine stimulation of protein synthesis and elF4F formation in muscle. Am J Physiol Endocrinol Metab. 2007 Dec;293(6):E1615-21. Epub 2007 Sep 18.

116 : Effects of excess intake of leucine and valine deficiency on tryptophan and niacin metabolites in humans. J Nutr. 1975 Oct;105(10):1241-52.

117 :Effects of a dietary excess of leucine and of the addition of leucine and 2-oxo-isocaproate on the metabolism of tryptophan and niacin in
isolated rat liver cells. Br J Nutr. 1989 May;61(3):629-40.

118: Chronic exposure to leucine in vitro induces B-cell dysfunction in INS-1E cells and mouse islets. J Endocrinol. 2012 Oct;215(1):79-88. doi: 10.1530/JOE-12-0148. Epub 2012 Jul 13.

119: Isoleucine, a blood glucose-lowering amino acid, increases glucose uptake in rat skeletal muscle in the absence of increases in AMP-activated protein kinase activity. J Nutr. 2005 Sep;135(9):2103-8.

120 : Hypoglycemic effect of isoleucine involves increased muscle glucose uptake and whole body glucose oxidation and decreased hepatic gluconeogenesis. Am J Physiol Endocrinol Metab. 2007 Jun;292(6):E1683-93. Epub 2007 Feb 13.

121 : Isoleucine prevents the accumulation of tissue triglycerides and upregulates the expression of PPARalpha and uncoupling protein in diet-induced obese mice. J Nutr. 2010 Mar;140(3):496-500. doi: 10.3945/jn. 109.108977. Epub 2010 Jan 20.
  • 山本 義徳(やまもと よしのり)
    1969年3月25日生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。
    ◆著書
    ・体脂肪を減らして筋肉をつけるトレーニング(永岡書店)
    ・「腹」を鍛えると(辰巳出版)
    ・サプリメント百科事典(辰巳出版)
    ・かっこいいカラダ(ベースボール出版)
    など30冊以上

    ◆指導実績
    ・鹿島建設(アメフトXリーグ日本一となる)
    ・五洋建設(アメフトXリーグ昇格)
    ・ニコラス・ペタス(極真空手世界大会5位)
    ・ディーン元気(やり投げ、オリンピック日本代表)
    ・清水隆行(野球、セリーグ最多安打タイ記録)
    その他ダルビッシュ有(野球)、松坂大輔(野球)、皆川賢太郎(アルペンスキー)、CIMA(プロレス)などを指導。

  • アスリートのための最新栄養学(上)
    2017年9月9日初発行
    著者:山本 義徳


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